無個性で普通の俺と魔獣母胎で病んでる彼女   作:鏡狼 嵐星

10 / 26
オールフォーワン編、相当アイデア練りました。とりあえずこれだけは絶対描き切ります。
最初言ってたことと違うことしてるかもしれないですが、描ききるまでは見守ってください。


生命とは海より生まれるものなり

結局誘拐されてしまいました、北水です。

現在、敵連合のアジトにて、捕縛されている状態で、周りには黒霧と死柄木、エミヤのみ。ここは原作と違う。まぁ、もし知性魔獣たちが暴れたら、敵たち帰ってこれるとは思えないもんな。

 

「結局、攫ってこれたのはこいつだけか。割りに合わないな」

 

「そう思うなら、まずさらわないほうがよかったんじゃないの、死柄木 弔さん?」

 

実物を見たのはこれが初めてだが、怖いなあ。肌が荒れているっていうより、崩れているようにも見える。黒霧の方は、正直ちょっとかっこいい。っていうか、こんなことを考えられる時点で、俺も彼女に相当毒されているってことかもな。

 

「……あの女の想い人って聞いたから、相当なキチガイだとは思ってたが、どうやらそうらしいな」

 

「そのキチガイから正論かまされている現状をどうお思いで?」

 

ラフムを使っているうえ、エミヤに打ち破られている以上、俺に対抗手段は存在しない。それにこの場所にはオールフォーワンがいる。時間は稼げて数秒。ラフムの本質が戦闘ではなく、『細胞変質』であるため、回復手段としては上等だが、それ以外では自衛程度しかできない。

 

「弔、彼に手を出すことは絶対にしないでくださいよ?」

 

「そんなことはわかってる。こいつをさらうのに相当苦労してるんだ。先生、本当にこいつをひきいれるのか?」

 

死柄木の先にあるモニター。そこにいるかのような存在感を持つ相手。まさか、直接話せる機会があるなんて思いもしなかったけど。

 

「ふふふ、そうだね。流石の僕も彼女の個性に対して何もしないわけにはいかないんだよ。その子は自分の状況と価値を理解しているみたいだし、無駄なことを話さなくていいのは助かる」

 

やっぱり聞いているだけで、背筋がひやりとする。恐怖の体現者って言うべき存在だよ、ほんと。

 

「はじめまして、というべきかな? 自己紹介はいるかい? 僕は個人的に君とは仲良くしておきたいからね、質問があれば、遠慮なくしてくれて構わない」

 

やけに好印象だなあ。まぁ、100% ティアのせいだと思うんだけど。彼女は個性の『愛の深さが黒泥生産量に直結する』性質上、オールフォーワンは『魔獣母胎』を扱えない。かといって、彼女を仲間に引き入れるなら、俺が必須だしね。

 

「まさか敵連合の親玉様にスカウトされちゃうとは、俺の彼女は人気者で困るよ」

 

「いや、僕が欲しいのは君さ、北水柊くん。もちろん彼女が欲しいのは変わらないが」

 

あれ? おれ? なんともまあ。まさか公式ラスボスからスカウトが来るとは。人生わからないもんだ。

 

「正直言いますけど、俺の価値は彼女の制御装置以上の価値はないですよ」

 

「いや、違うね。確かに君は個性と呼ばれるものを持っていないようだが、それはなんの問題にもならない。君の能力は実に素晴らしい。弔のアドバイザーとして是非とも欲しい」

 

アドバイザー、か。そんな大層なもん嫌だけどね。と言うか悪事とかやった記憶ないのに、敵連合のアドバイザーって何?

 

「情報管理と制限、魔獣自体の個性のアイデア、魔獣たちの性質も含め、君が彼女の個性を理解したと思われる10歳前後からの君の知性、理念、精神はとても二桁になりたての子供ではなかった。あの時、回帰母 愛という少女を見つけられなかったのは僕の人生でも相当の失態の一つだけど、それと同等レベルに君を見つけられなかったのは失敗だったよ。こちら側にいながら、こちらに染まらなかった精神も含めて、弔の隣にぜひいて欲しい存在だと僕はおもっている」

 

……まぁ、10歳なりたての子供が一人で生きていけている時点で、普通のガキではなかっただろうね、俺は。実際精神年齢だけで言うなら、俺は既に三十を超える。アウトドアだって、キャンプした程度の知識だった。だが、中身が成人してたお陰か、社会常識を勉学してたお陰かわからないが、生き残ることができてしまっただけの話だ。強いて言うなら俺の個性は『原作知識(一般常識)』と表現できないことはないはずだけど。

そこを評価されたのは俺が転生者だから。Fateという作品を知っていて、ティアがたまたま知っていたキャラクターであっただけ。俺が生み出したものは何一つない。嬉しくないなあ。

 

「評価は一応受け取っておきますよ。なんと呼べばいいですかね、親玉様?」

 

「……おおっと、僕としたことが自己紹介を要るかと聞いておきながら、自己紹介をせずにベラベラと語り出してしまうとは。久しぶりに興奮していてね、すまない。オールフォーワン。そう呼んでくれたまえ」

 

さて、死柄木たちを前にオールフォーワンと交渉の真似事か。精神すり減ってたまったもんじゃない。ま、俺の武器は口先ぐらいしかない。精々情報を漏らさないようにしますかね。

 

 

 

 

 

 

「うぇ〜、これ本当に生きてんの〜〜?」

 

「機動隊、すぐに移動監獄を!」

 

「ラグドールよ、何をされたのだ!?」

 

作戦を開始して数分。十数体の脳無を回収し、誘拐されたプッシーキャッツのメンバーも発見。順調だ、出来過ぎなくらいに。

 

「すまない虎、前々からいい個性だと思ってたんだ。丁度いいからもらうことにしたんだ」

 

施設の奥から誰かが出てくる! 個性で服ごと縛り上げ…!?

何かがくるっ!?

 

「個性擬似展開。我が氷炎、太陽を簒奪せり。壊劫の天輪(ベルヴェルク・グラム)

 

巨大な風の壁が来たと感じたと同時に、背後から現れた謎の影がその壁に対し、いくつもの炎と氷で作られたナイフのようなものを突き刺し、まるで我々を守るようにその勢いを殺してみせた。

 

「ふむ、英雄志望者どもは守れたが、建物は原型が無い。俺もまだ甘いか」

 

目の前に立ったその男は黒いマスクを被った銀髪の男。こちらを守るような行動をとった以上、敵では無いのか?

 

「人理を守ろうとするものどもよ、その人形の処理を急げ。母とあの兵器は今、父以外の存在を認識できん」

 

母。この状況でその単語を使うということは、こいつはオールマイトの言っていた雄英生徒の一人で、行方不明になっている二人のうちの一人、回帰母 愛という少女の個性によって生み出された個性を持った生物、知性魔獣か。恐ろしいとしか言いようがない。この男そのものが個性のほんの一端に過ぎない。私が周りにいる人間を僅かに離すことしか出来ないと感じた攻撃をいなしたこの男が。

 

「ギャングオルカ、虎、Mt.レディ。君たちは脳無の処理を任せる」

 

「ジーニスト、どうする気だ!?」

 

「この状況でヒーローが一人も残らないのは問題だ、違うか、オルカ」

 

いくら桁違いに強力でも生徒相手に敵の処理は任せられん!

破壊された周りの状況を見るに、被害者も相当数いる。脳無の暴走を考えても、私だけでもここに残るべきだ。

 

「ククク、俺は構わんが。ただ、距離を保ち、アシストに徹しておけ。俺でもあの二人の前に好んでは出ない」

 

更地になった敷地に元々いたその男に対するように、降り立ったものが二人いた。体に赤い線が大量に走った体と巨大な角を持つ少女と、緑の髪を揺らしている白い布を被ったような格好をした少年らしきもの。

 

「お前が、オールフォーワンか」

 

「随分と様相が変わったんじゃないかな、回帰母くん。あと後ろの君は誰かな? 少なくとも柊くんには君のような子がいるとは聞いていない」

 

「お前がしゅうの名を呼ぶなァッ!」

 

見ただけでわかる、あれは激昂状態だ。感情を制御できていない。不安定な子だとは聞いていたが、爆豪くんのように、なぜ個性が強力な子には一定数感情を制御できない子が多いのか。

 

「ここからは母さんに代わって僕が話をしよう、オールフォーワン」

 

「先に名前を聞いてもいいかな? 名前も知らない相手と会話はできなくてね」

 

「魔獣の人類、キングゥ。母さんに設計された人の一つの完成形だ」

 

「人の完成形、か。素晴らしい、確かに僕の個性で見ても君は人間としては規格外の能力を持っている。ふふふ、全く。君たちと会話していると、退屈しなくて済むよ」

 

人間の完成形、あの少年が。その単語を聞くだけで、異常の一言だ。そんなものを作り上げる時点で、あの少女は異質、いや狂気そのものだ。

 

「まずは父さんをここに連れてこい。話をしたいならまずそこからだ」

 

「それはそうだ。僕は君たちとは友好的に居たい。それに、弔の方にヒーローも来たようだから丁度いい」

 

まるで空間に液体が湧くように黒い液体がいくつくか空間に出現し、人影が現れる。あれは、報告にあった、もう一人の生徒!

 

「ゲッホッ、くさいし、苦しいなぁ、これ……」

 

「……そこから動くな、回帰母 愛。誰かが少しでも近づけば、お前の想い人の頭が飛ぶ」

 

しかし、体に包帯が巻かられた男に銃を突きつけられている! たしかあれは、暗殺者(アサシン) エミヤ! 世界でも賞金首になっている一流の殺し屋、あのような男まで手下にいるのか!?

 

「ティア、落ち着くこと、できることを考えること、暴走しないこと。キングゥ、暴走しそうなら止めろ、命令だ」

 

「……っ、御意」

 

回帰母を一瞥することなく、彼は端的にやるべきことを伝えた。彼女らがそれに一瞬、ためらいつつ、従う。彼は無個性の、経営科のはずだ。なのに、彼はこの状況で僅かな笑みを浮かべてすらいる。頭に銃を突きつけられていながらっ! 一体、一体なんなんだ、彼らは!?

本当に彼らは学生なのか!?

 

「……先生」

 

「弔、失敗したらやり直せばいい。僕はそのためにいる。さぁ、失敗を取り返そう。僕も手伝うよ。一人の少年のために世界を滅ぼせる少女。そして、それを理解し、そうさせないために、彼女を守るために自らを変えた少年。君を僕の後継者たらしめる大切なピースを手に入れよう。ほんの数分だがね、楽しもう」

 

 

 

 

 

 

「全て返してもらうぞ、オールフォーワン!」

 

「また僕を殺すか、オールマイト」

 

オールマイトが現れることをここにいる全員が知っているだろう。だが、具体的なタイミングは誰も知らない。この場で俺だけが知る原作にだけ載っているその瞬間を。

 

「チッ」

 

オールマイトにほんの、ほんの少しだけ持っていかれた意識の隙。そこに無理やりラフムによって硬質化を頭に挟みつつ、腕を変質させ、拘束を解く。その一瞬の隙をキングゥは見逃さない。黒霧、死柄木、エミヤを捕らえにかかる。オールマイトはオールフォーワンと戦闘中、そして、ティアがこちらにかけてくる。

 

 

 

うまくいくと考えてしまったのが間違いだったのかもしれない。

 

 

 

原作を、僕のヒーローアカデミアとFateを知っていた自分だけが反応できた。体勢を崩しつつも、エミヤが懐から抜いた古い型のリボルバー。それをティアに向けた。直感でそれが『起源弾』だと思った。魔術回路(個性)を破壊する個性だとも瞬間的に感じた。オーバーホールによるそれを知っていたから。もしそうなら、『影を変質させる個性』であるドラウンでは守れない。そう思った時にはラフムに指示を出していた。腕を硬質化させてティアの前に飛び込んでいた。

 

自分の体を何かが貫く感覚。叫び声も上げられず、呆然とした表情で倒れる自分を受け止めるティアにもたれかかる。腕と腹を貫通したのか、声が出ない。意識も朦朧とする。

 

せめて、やることはあるだろう。俺がこの世界にいる責任を果たさなければならないだろう。

 

「……ティ…ア、約束……守ってね…………」

 

最後の力で、彼女の唇にキスをする。

 

「あ……ああ」

 

不思議と暖かいのはなんでだろう。

 

「A、あ……aa、あ…あ、aaッ!」

 

もう少し……彼女に……甘えてよかった、かもね……。

 

「AaAAAAA、LAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーッッッ!!!」




感想ください、超ください。
もし、感想がこの話で100件超えたら、頑張って一週間で投稿します。
追記 なるべく急いで書きます。なんで感想ください。何度も言いますが、やる気に直結します。

仮免、誰がいい?

  • 炎の厄災
  • 獣の厄災
  • 呪いの厄災
  • 奈落の虫

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。