無個性で普通の俺と魔獣母胎で病んでる彼女   作:鏡狼 嵐星

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なんかゲームに飽きて書いてたら一話仕上がってしまいまして、投稿です。
次は感想50件超えてから書き出します。(前回少なかったのを根に持っている)100件超えて。俺期待してるよ皆さん? 100件超えたらいいなぁ。
あと、キャラの名前。北水(ほくすい)、回帰母(かいきぼ)です読みにくい。
ちょっとやりすぎ感ありますが、ご都合主義なので。

書いてて思いましたけど、今回の主役ドゥムジです。


Childhood's End(始まりの終わり、終わりの始まり)

「まず最初にやることから説明しますと、この町から人をいなくすることと、ティアさんを中心に円形状にヒーローを配置していただきます。二十分前後で」

 

オールマイトがスルトの作る氷の上を走って行ったあと、ベストジーニストとグラントリノに対して、ドゥムジは説明を続けていた。

 

「いくら何でも二十分じゃ無理だぞそんなの。おまえ、此処にいったい何人人がいると思っとるんだ」

 

「私の個性は『羊の知らせ』。まぁ、結構いろいろできるんですが、小型の分体をすでに二百体ほど飛ばしてあります。自立して動きますし、通信機能持ちです。それがオールマイトの声を出しながら、避難指示してます。いや~、生声聴けたのはよかったです。真似しがいがあります。本来なら三十体も作れないんですが、これだけ黒泥(原材料)がありますので頑張りました」

 

「すでに対策済みか、用意周到だね、君は」

 

ベストジーニストもすっかりあきれている。たった数分の付き合いだが、先ほどのスルトをじかに見たためか、たとえ外見羊でも規格外に違いないと考えていたためか、すっかり納得していた。

 

「それで、ジーニストさんにやっていただきたいのが、このあたりの人の避難です。この辺りは既に地面が黒泥まみれですし、逃げられてない人も十分いるでしょうし。No.4ヒーロー、それぐらいできるでしょう?」

 

「やるしかないのが答えだろう? 君たち魔獣には、先ほどの攻撃を防いでくれた礼もある。それぐらいやって見せるさ」

 

ベストジーニストが自分の服の繊維を操作し、滑空し、近辺のビル群へと向かう。彼ならば、まぁ、多分、うまくいくでしょうと結構失礼なことを考えてるドゥムジは表情を変えずにグラントリノに向き直る。

 

「俺は何をするんだ?」

 

「運んでください」

 

「は?」

 

「私を運んでください。私体力ないんですよ。正直、二百体の分体を維持するだけでもう疲れてきました。できれば高いビルの上とかにお願いします。そろそろこの辺りは黒泥に覆われると思うので」

 

グラントリノ自身は相当場数を踏んできたと思っている。オールマイトほどではないが、戦闘もできると思っている。だが来た指示は運搬。少々やる気が抜けてしまった。だが、今のこの状況はこの羊の言うことに従うほうがいい、そう判断した彼はその羊を抱えて、一番高いビルの上に飛ぶ。

 

「ついでにもう一つ聞かせろ、ドゥムジ」

 

「なんです? 次の出番まではぐうたらしますよ」

 

「何でお前ら、魔獣は俺たちヒーローに手を貸す? あのでかい角の嬢ちゃんは敵と味方の区別なんてなさそうだったぞ」

 

ドゥムジはビルの屋上で四肢を伸ばして地面に寝転んだ。そして横にごろんと転がって、仰向けになる。顔には二つの黒い目のようなものしかないが、その顔が困ったような顔をしたように見えた。

 

「ふむ、まず、柊さんとティアさんは恋人です。超がつくラブラブの」

 

「あの場にいた坊主か。オールフォーワンが攫いに来る時点であの坊主も相当、色物そうだが」

 

「そして、われわれ魔獣はティアさんの個性です。いくら生物とはいえ、その在り方はティアさんによってしまうのです」

 

左右にごろごろする羊にシュールさを感じながら、グラントリノは話の先を理解し始めた。

 

「つまり、魔獣も全員、あの小僧のことを好いているってことか?」

 

「簡単に言ってしまえばそういうことなのです。そのすべてが恋心というわけではないのですが、イヴァンのような友情、項羽のような忠誠心のように変換されています。愛情は何よりも深く、強い感情です。それは知性が深いほど、思考的なほど強力なのです。よって、柊さんの命令はティアさんの命令よりも強力なものになってしまうのです。まぁ、何体か無視しそうな輩がいますが。というわけで、この作戦、成り立ってるんですよ」

 

ドゥムジは知性魔獣としては完全に異端な存在である。戦闘能力は皆無、できるのは本当にサポートだけ。その上、忠誠心のちの字もない。ただ、逆らったら死んでしまうので従っているだけ。

 

「私、馬鹿な会話をするのが好きなんですよ。他愛もない話題で笑いながら話し合うのが好きなんです」

 

ごろごろしていた羊は立ち上がり、より大きく膨らんでいく柊とティアがいたはずの場所を眺める。

 

「柊さんは私のそんな趣味を笑って、俺もそれしてみたいと受け入れてくれたんです。他にも確か、イヴァンはチェスが好きで、たまに柊さんに相手してもらってます。項羽は本人と一般的な考え方の違いを柊さんに学んでいます。以蔵はかけ事をしてますし、サリエリは音楽を聴いてもらってます」

 

振り返ったドゥムジの目には強い思いが宿っていた。

 

「そんな良い人を救いたいと思うのは間違いでしょうか。我々は人間ではありませんが、感情はあるんです。魔獣、特に知性魔獣は柊さんよりの方、多いんです。ティアさんは柊さん以外には消極的なんですよ、魔獣に対しても」

 

グラントリノは自分が彼らを少々、甘く見ていたことを実感した。ドゥムジの語ったそれは、大切な人を思う心そのもの。緑谷出久(ワン・フォー・オールの継承者)を見て以来の顔がにやける感触。それを本人は面白いと感じた。

 

黒泥の一部が奇妙な動きを見せ始める。それを認識したドゥムジは身を乗り出した。

 

「……! 時間まだあるはずなんですが、先兵が現れ始めましたか。分体の皆さんに連絡です。ヒーローの皆さんに戦闘態勢の準備を急がせつつ、避難を最優先で、めっちゃ急いでください。めっちゃ」

 

 

 

 

 

 

「塚内! どうなっている!」

 

エンデヴァーは大きな声で叫ぶ。大量に送り込まれた脳無を伸しつつ、連絡係の警察に確認を取る。遠方、オールマイトが行った方向で、巨大な音が何度もなり、落雷が落ち、爆発すらしている。

 

「ジーニストからの連絡で分かったことは二つ。人質に取られていた北水くんが銃に撃たれたことによって、回帰母さんの個性が暴走。知性魔獣と呼ばれる強力な魔獣を呼び出し、それにより敵連合が半壊。そして、暴走した回帰母さんに対処するために、知性魔獣の一体の協力を受け、ヒーローを収集しつつ、住民の避難をさせろとのことだ」

 

「何がどうなった、その状況は!」

 

さすがのエンデヴァーも状況の把握が追い付いていない。脳無自体は、現状ではそのほとんどを制圧した。

 

「我々警察は避難とヒーローの収集をなるべく早く行う! 此処にいるヒーローのみんなは、オールマイトのところへ……」

 

「待て、塚内」

 

エンデヴァーは、そのオールマイトがいる方向から何かしらが来ている。そう判断したエンデヴァーは少し待つように伝えた。

すぐにその何かしらの影が見える。こちらに走ってくるそれは全身真っ黒な服を着た人間らしきもの。片手にナイフ、片手に斧のようなものを持つそれは、十数体でこちらに向かってきている。

 

「……あそこまでそっくりな人間はそうはいまい。あれが魔獣とやらか」

 

「はい、殺戮猟兵。通称、オプリチニキといいます」

 

空から声、そして子犬ほどの大きさをした金色の羊が数匹降ってきた。エンデヴァーは無言で手を向け、焼き払おうとするが、塚内がそれを制す。

 

「君がドゥムジ君かな?」

 

「いきなりジンギスカンにされるかと思いました。焼肉は他のところでやってください。……はい、私、ドゥムジの分体、その65になります」

 

「エンデヴァー、この子が協力している知性魔獣らしい」

 

彼は視線を向けず、こちらに迫ってくるオプリチニキに視線を向け、戦闘態勢を取りつつ、確認する。

 

「明らかに雑魚そうな外見だな。使えるのか?」

 

「戦闘に関してはゴミです。ただ、私はすべての魔獣に対しての知識や対策法を知ってますし、他の個体への連絡機能、他の場所の現状報告能力がありますが」

 

「ふっ、合格だ」

 

オプリチニキたちが間近に迫る。シンリンカムイがそれを捕縛するために蔦を伸ばすが、全員がそれを回避。エンデヴァーへと殺到する。

 

「オプリチニキの個性は『命令実行』。指示された内容を果たすまで、肉体が崩壊でもしない限り、向かってきます。高火力で対策を!」

 

一閃。巨大な炎がオプリチニキを覆う。数匹がそれをさらに回避し、斧とナイフを突き刺しにかかる。

 

「甘いわ」

 

腕から細い炎のようなものが噴き出し、一瞬で残ったオプリチニキの頭を打ちぬく。オプリチニキたちは倒れ、黒い液体に戻っていく。

 

「早いですねえ。さすがです」

 

「おい、まさかあれが知性魔獣とやらではないな?」

 

「それこそまさかですよ。あれは魔獣類というランク的には一番下のものです。知性魔獣の大概はただの怪物です。私はかわいいだけの羊さんですが」

 

エンデヴァー、シンリンカムイ、エッジショットの三名の肩の上にドゥムジが張り付く。

 

「とりあえずこれで、ヒーローの連絡手段確保です。警察の皆さんは残りの私を連れて、避難とヒーローの収集を。集まったヒーローには一人一匹、私を渡すのを忘れないでください。後で追加を向かわせます。あぁ、えっと、それから……」

 

「ええい、もう行くぞ!」

 

足に炎を噴出し、ジェット機のように地面すれすれを滑空する。エッジショット、シンリンカムイもそれに追走していく。

 

「エンデヴァーさん、もうちょっと遅くできません? あとひげ熱いです」

 

「黙ってろ、お前は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――かないで―――

 

 

 

―――いかないで―――

 

 

 

―――れないで―――

 

 

 

―――はなれないで―――

 

 

 

―――わたしを―――

 

 

 

―――わたしをおいていかないで―――

 

 

 

かえってきて―――かえって―――

 

 

 

もういちど、わたしのもとに―――

 

 

 

もういちど―――もういちど―――

 

 

 

もう二度とーーーあなたを傷つけさせはしないーーー

 

 

 

この世界をーー変えて見せるーーー

 

 

 

そしてーーあなたとーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最近のヒーローはすごいものですねえ。ぴったり二十分でほぼ完成しましたよ、絶対魔獣戦線」

 

「ドゥムジ君、あまり舐めないでくれ。我々ヒーローは毎日研鑽を積んでいる。私の相棒(サイドキック)たちも十分優秀だ」

 

ベストジーニストの頭の上に乗っかっているドゥムジの分体が感想を漏らす。現在、作戦を開始してから丁度二十分が経過した。柊、そして、ティアがいた黒泥の塊は、既に最も高いはずのビルを超えるサイズになっている。それの周りにヒーロー、相棒を含め、相当な数が集まっていた。ドゥムジの指示により、敵連合と知性魔獣との戦いを邪魔しないため、少々遠方ではあるものの、ほぼ円形に配置ができていた。

 

「エンデヴァー、シンリンカムイ、ギャングオルカ、エッジショット、そしてたまたま近くで活動していたリューキュウ……。この近辺で有名な人材はあらかた集めたよ。今回のこれは私が体験してきた事件の中でも最高峰の被害が出かねないと確信している。できることはやっておくべきだ」

 

「確かにそうです。心配事もありますが……」

 

ドゥムジの心配事。それは柊が復活しているならば、低くなる可能性だったが、切り捨てられないもの。最強の魔獣類が生まれることにあった。

 

「……皆さん、来ます!」

 

誰かに張り付くドゥムジが叫ぶ。まとまって、砂山のようだった黒泥から小さな凸凹ができ始める。まず初めに出てきたのはオレンジ色の獅子、ウリディンム。その数、数十体。

 

「いきなりその数か!」

 

しかし、まだ止まらない。巨大な藍色のトカゲ、ムシュフシュが同じく数十体。ムシュマッヘ、ケンタウロス、魔猪も数十体。そして、ゲイザー、ウシュムガル、キメラが十数体。合計にして、百と数十。黒泥の中からどれだけの数がいるのかとその場にいる全員が思ったことであろう。躊躇したものもいるだろう。

 

「各々、狙う個体を絞ってください! 皆さんのドゥムジがどれに相性がいいかを判断します、対処法を教えます。あがいてください、皆さんが英雄を志すものだというのなら!」

 

その場にいたすべてのドゥムジから一喝。その場にいたヒーローが全員頭を戦闘へと切り替える。火ぶたが切られた、その瞬間である。

 

「Laaaaaa-----」

 

今出てきた魔獣たちよりも明らかに巨大なサイズ。ビルを超えるその大きさを持ったそれは立ち上がる(・・・・・)

 

本体は確かに女性だが、そこから二本の巨大な角以外に巨大な翼を生やし、棘のような足でアスファルトの上に立つ。まさに女の巨人。

 

「しょっぱなから巨神形態ですか!? 手加減してくださいよ、ティアさん!」

 

最強の魔獣類『ティアマト』が今ここに誕生した。ドゥムジは警戒していたことが現実になったこと、その想定でも最悪な状況に、顔をしかめた。

 

「ヒーローの皆さんにっ、緊急通達です。中心にいる巨大な女性には手を出しても無意味です! むしろ回避してくださぁい!」

 

ティアマト、個性は『ネガ・ジェネシス』。常に知性魔獣を作るレベルの黒泥を供給しなければならないという条件があるため、そうそう使うことはできない。が、その能力は至極明快である。莫大なエネルギー体である黒泥を、巨神形態ならば守り、竜形態なら攻撃に全振りするという能力である。

 

「スルト! 出番ですよ、急いでくださいー!」

 

ティアマトの前の空に一人の青年が飛び上がり、巨大な炎と氷を生み出す。その相反する二つは徐々に形を成し、もう一人の巨人へと変貌する。炎を主体としたその肉体は左腕のみが凍ったままになっている。

 

「さぁ、黄昏の時だ」

 

禍々しく立つ女性の巨人。炎と氷で作られた巨人。その二人が徐々に距離を詰める。ゆっくりに見えるそれは実際は相当な速度で。ヒーローたちはその激突を魔獣と対しながら見た。

 

「母よ、我が黄昏を見よ。我が終わりの氷炎を以て、止めさせてもらう」

 

左腕で構えた巨大な炎の剣。それを上段に構え、お互いがお互いの方向に進みあい、激突する。

 

「Aaaaaaaa----!!!!」

 

『太陽を超えて煌めけ、炎の剣』(ロプトル・レーギャルン)ッ!!!!」

 




あれ?ドゥムジさん優秀すぎない?って思ったらコメントよろしくです。

活動報告もコメント次の話まで待ちます。

仮免、誰がいい?

  • 炎の厄災
  • 獣の厄災
  • 呪いの厄災
  • 奈落の虫

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