無個性で普通の俺と魔獣母胎で病んでる彼女   作:鏡狼 嵐星

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いきなりですが、学生生活が始まったので投稿は多少時間が空きます。感想が大量に来てくれたら考えますけど。

設定がわからないとか、質問とかあれば、感想でそれとなーく聞いてください。次の前書きとか感想で返します。ネタバレになりそうだったらそこをぼかしつつ。

誤字報告をなさっていただいてくれる方、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。


Sword,or Death(戦うか、死ぬか) second fight

ティアマトとスルトの決戦が行われている場所から南側。ここはリューキュウを中心に展開されているヒーロー戦線で、人数が少ない中、状況が安定している場所だった。

 

「みんな踏ん張って!」

 

ドラゴンとなったリューキュウは、人並みのサイズがある鶏のような敵を踏みつぶす。人数が少ないのは異形型の個性が多いため。だが、一人が複数の魔獣を相手する状況が長く続いているため、此処にいるヒーローやサイドキックたちに疲れが見え始めている。

 

「リューキュウ、まずいです。他の個体からの情報で、こちらに知性魔獣が向かってくるようです。一気に押し切られます」

 

「だからって引けない! ここで引いたら、此処に戻ってこれなくなることくらいわかるでしょ!?」

 

「わかるからこそ言います。あなたの言う通りですが、此処のヒーローたちが持ちません。そこに知性魔獣まで来たら、戦線が崩壊します」

 

リューキュウは実力も含めて、この地域のリーダー的な役割を任せられていた。引けないが、引くしかないこの状況をどうするか悩んでしまっていた。

 

「く、くひひ、うまそうだ」

 

上空からリューキュウの目の前に白い塊のようなものが落ちてきた。そして、それはその近くにいた鶏の魔獣を捕まえ、かぶりついた。

 

「仲間を食ってる!?」

 

「まさか、この状況の此処にこいつを送り込んでくるとは……!」

 

その白い塊のようなものは体毛だった。その巨人の髪の毛が異常に発達したようなそれは、黒泥にも血にも汚れていない。人間二人分はありそうな斧を両手に一本ずつ持っている。頭には一回湾曲した角が二本。根本は白いが、その先端はまるで血が流れているように赤い。そして、その顔面左側には黒い仮面のようなものをつけ、右側は白い顔に赤い目をそろえた顔が狂気の笑みを浮かべている。

 

「リューキュウ、近づかないでください。彼は知性魔獣、ミノタウロス。個性は『万古迷宮(ラビリンス)』といい、一定範囲内の生物の能力を半減させます。身体能力やら体力やらを半減されるので、彼自身、戦闘技術を持たない代わりに知性魔獣の中で最大の力を持ちます。今の状況も相まって最悪の相性です」

 

リューキュウは上半身にだるさを感じ、後退した。すると、そのだるさが消えたため、個性の内容を大体把握した。だが、その距離は近接攻撃ができるような距離では到底ない。

 

「きひひひっ! お前らはァ、うまいのかぁ?」

 

「ドゥムジ! 弱点は!?」

 

「近接能力しか持ちませんし、動きは鈍重です。思考回路は子供並みなので、単調な動きしかできませんが、摑まれたりすると厳しいです」

 

リューキュウ自身の近接能力は確かに高い。だが力を半減させる個性がある上に、疲労がたまっているこの状況で、ミノタウロスと対することは難しい。そう判断したドゥムジはこの場所の戦線を崩壊させないために、戦えそうな他のヒーローや知性魔獣たちを探すが、見当たらない。

 

(流石に精度落ちてますね……)

 

ドゥムジの現在稼働している分体は既に百を切ろうとしている。最初こそ二百を超えたドゥムジの分体だが、最初から無理をして大量に作った分体を維持すること自体、土台無茶であった。実際、ドゥムジ本体はほぼ動くための体力も残っていない。ちゃんと稼働しているのは五十程度。他は情報をしゃべるので限界だった。

 

「うぬうぅぅっ!!」

 

ミノタウロスが体を低くし、力をためるような態勢をとる。突撃と跳躍しかほぼ選択肢のない彼はどちらにしろ、ただこちらに来るだけだ。

 

「私が受け止めるっ!」

 

リューキュウはここにいるヒーローの中で、異形型の個性では最大の大きさだ。受け止められるのは彼女だけだ。だがそれはヒーローのみの話である。

 

「蒸気圧、最大。見果てぬ夢をここに」

 

空に巨大な影が現れる。巨大な機械音が周りに響き、白い煙を噴出しながら、鈍色と金色の金属の塊が赤いレーザー光をきらめかせ、落ちてきた。

 

「我が空想、我が理想、我が夢想!『絢爛なりし灰燼世界(ディメンジョン・オブ・スチーム)』!!」

 

ミノタウロスの真上に落ち、水蒸気爆発のようなものを引き起こす。やけどしそうなほど暑い水蒸気が周りにあふれる。

 

「うううあぁぁあああぁあっっ!?」

 

「なに!? 何が起こってるの!?」

 

ミノタウロスの悲鳴が響くが、リューキュウは今起きたことを把握できず、混乱に陥りかけていた。ドゥムジは説明するどころか、吹き飛ばされるのを防ぐので手いっぱいでしゃべることもできない。

 

「竜である俺の身であれど、ミノタウロスとは正面からは戦うべきではない。すまない、ドゥムジ。バベッジに肉体を作らせるのに時間がかかった」

 

上空にさらに一回り巨大な影が現れる。その影はリューキュウのような竜の形。胸と腹に特徴的な青い紋様を持つ、黒い竜がビルの上に滞空する。

 

「遅いです、ジーク。ギリギリですよ。あとさすがにその体ではでかすぎます、縮んでください」

 

青い光があふれ、一気に竜の体が萎む。腰に剣を携え、灰色の髪をなびかせた赤い目の少年が降り立つ。

 

「もちろん、バベッジには最高の状態のものを用意させた。彼の体は99%、金属だ。ミノタウロスの個性は最低限に抑えられる」

 

「……あっさり私より個性がすごそうな子が来たんだけど、この子も魔獣なの?」

 

「リューキュウ、だったな。俺はジーク。個性は『邪竜身体』というのだが、君のように小回りが利かぬ巨体だ。こんな場所ではあまり使えない。あなたのほうが頼りになる。助けてくれ、君の力がいる」

 

ジークはリューキュウの竜となった腕に触れながら、彼女の顔を見上げる。リューキュウが顔を赤らめ、もう片方の手で顔を隠す。

 

「……っ! そ、それはありがたい、言葉だけど。こんな状況で言わないでよ」

 

「? すまない、また、俺は空気を読めなかったのか」

 

まじめな顔で考えに耽るジークと顔を赤らめ続けているリューキュウにドゥムジは一言かけた。

 

「そこ、ラブコメしてる場合じゃないです」

 

金属を打ち付けあうような音が響くと同時に、先ほどの巨大な蒸気音とともにロボットが道路を滑走するようにこちらにやってきた。

 

「良質の金属を大量に集められる場所があまりなかったのだ、許せ、ドゥムジ」

 

「構いはしません。戦線は維持できてますし。さっそく……」

 

「待つのだ、ドゥムジ。お前は一度分体を減らして休め」

 

「はい?」

 

バベッジの一言に混乱するドゥムジ。どの場所も知性魔獣が現れ始めているこの状況で、分体を減らす理由がわからない。

 

「上空を移動していて確認したのだが、ウリディンムの司令塔であるバジリスクが一切見当たらない。魔獣種も明らかに数を減らしすぎている」

 

「……まさかベル・ラフムが動き出している、と?」

 

「そう考えるのが賢明だろう。ラフムと違い、あいつは完全に母側である。その上、あの個性ならば魔獣種が数を減らしている理由は簡単にわかる」

 

ラフムの『細胞変質』は、寄生した相手の細胞を変質させる個性であり、その主導権はあくまで寄生した生物の側にある。一時的になら単独行動ができるが、あくまでその生物と共生している関係である。しかし、ベル・ラフムはその上位種であり、寄生した相手の肉体を材料に自らを創り出す、『細胞改造』。つまり、材料にされた場合、その生物はどうなるか語るまでもない。

 

「母様よりの知性魔獣、一番の問題児! 柊さんの言葉があるから、ティアさんがあれは動かさないと高を括ってましたが! よりにもよって、味方の魔獣類を材料に自分を作り出しやがったんですか! 確かに柊さんの言葉を鵜呑みにするなら、人間の命を取らない以外はどうでもいいってとれなくないですけど!」

 

ドゥムジはベル・ラフム出現を想定していなかったわけではない。だが、それを無いと結論付けた最大の理由は自分が動いていること、つまり柊自身はまだ生きていることにある。ラフム、そしてベル・ラフムはティア自身が考えた魔獣である。もちろん、そのやばさを知っている柊はその魔獣の使用を厳しく制限。ティア自身はそれに反抗しなかったものの、USJの襲撃以降、警戒心を高めていた彼女が同意の上で、最終護衛として柊にラフムを埋め込んだ。

柊も埋め込まれることに多少顔を引くつかせたものの、敵連合の襲撃を知っていた彼は保険としてそれを了承。ラフムという魔獣を見極めようとした。このラフム、柊に対してはティアと同等に忠誠心があり、まだまともだった。だが、個性の危険性を理解した柊は、その二体の使用をよほどの緊急事態がない限り出さないようにさせていた。

 

(緊急事態です、確かに! ですが、ティアさんにとって柊さんとの約束以上に重要なものはない。彼女はその約束を破れば、柊さんに怒られることを知っている。彼女が何よりも嫌なこと、柊さんに嫌われることの引き金になりかねないそれを破ることはしない。ほんとに柊さん生きてますよね? 意識不明とかじゃないといいんですけど……)

 

「もしベル・ラフムが動いているならば、狙うのは我ら知性魔獣のだれかだ。人間を材料にできないならば、我らを狙うだろう。最高の材料だ」

 

「なるほど、戦闘能力を持たない私が最高の餌でもあるというわけですか。了解です、最低限、リーダー格のヒーロー以外の分体を下がらせます。本体も避難します。私がいないと戦線維持が不可能ですし」

 

白い蒸気をかき分けながら、ミノタウロスが姿を現す。

 

「痛い、痛い、痛いぃぃぃッ!!! もう怒った、お前らァ、全員、食い殺してやるゥぅっ!!」

 

空に向けて大きく吠えるミノタウロス。バベッジが鐘のような形状をした武器を構え、機動音を響かせる。

 

「我が『機関の鎧』は、我が夢想たるもの、最高の文明。我が父により見せられた、人の知の極致。人よ、我を生み出したものの同族たちよ。あれは我が抑える。ミノタウロスにできる限りの一撃を放て、我のことは構うな」

 

稼働音とともに蒸気を吹き出し、ミノタウロスに向け、その鉄の体を発進させる。ジークはそれと同時に駆けだし、邪竜へとその肉体を変化せていく。

 

「全員、自分にできる限りの遠距離攻撃を! とどめはジークが行います!」

 

ミノタウロスの上に陣を取る、巨大な竜。その口には蒼い炎があふれていく。ミノタウロスはそれがどういうものか察知し、逃げようとするが、バベッジにより邪魔をされる。周りのヒーローたちも、個性で、サポートアイテムで、転がっている石で逃げるのを邪魔する。

 

「竜炎装填、彼方への巡礼を。我が身は人への憧れを抱く、邪竜なり。万物融解!『灼熱竜息・万物融解(アカフィローガ・アルグリーズ)』!」

 

まるで深い場所にある水のような蒼い炎が、バベッジごとミノタウロスを覆う。巨大な叫び声とともにその場所が黒く焼き尽くされていく。邪竜がその炎を吐き終わったころには、そこは黒く固まった塊が二つあるだけとなっていた。

 

「……あのロボット、仲間じゃないの?」

 

「そうですけど? あ、あの程度じゃ死にませんので大丈夫ですよ」

 

黒い塊の片方が震え、その焦げのようなものをつけたまま、もう一つの塊を壊す。体から徐々に黒くなっていた部分が剥がれ落ち、一回り小さくなったバベッジが立ち上がった。

 

「金属の三十パーセントを消費。手痛い出費だが、構うまい」

 

「金属くらい、途中回収しましょう。ベル・ラフムを探すのが先決です。ジーク、空から探索お願いします! シンリンカムイ組が知性魔獣を倒せたそうですので、中心に向かい、合流しましょう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「きゃっはははは! 血が滾る、文字通りなぁ!」

 

背から鬼の顔をした巨大な炎を二つ生やす、黒い角をはやす少女。その少女が振るう、骨のような鍔をした剣は軽く地面を割る。火を吐く背の鬼火に切りかかるものが一人。

 

「Ahrrrr!!!」

 

黒い鎧、その頭部の目の部分から赤い光を残しながら、黒い剣を振るう男。その声は狂ったとしか思えないほど人間離れした声だった。その剣筋は感嘆の一言。吐き出したすべての炎を真っ二つにし、鬼の少女に斬りかかる。

 

「吾らの戦いに怖れ、誰も手を出してこぬ! 改めて問うぞ、狂った黒騎士! 母様のために、共にこの軟弱者どもから、命を、財を、全てを奪わぬか!?」

 

「Ohrr−−−。−−NO−−−!」

 

黒い騎士はその剣を振るうことをやめない。彼は『騎士は徒手にて死せず(全ての物体を武器として扱える個性)』を得る代わりに、常識を投げ捨てたもの。自らのすべてを(女王)に捧げるもの。だが、その母は今や狂気にあふれている。

ならばどうする? 原因を取り除く。

原因は? 父が重傷を負った。

何ができる? 何もできない。……否、何かをしなければならない。

我が母の忌むことは? 父に嫌われること。

我が母と父の約束を守るにはどうすればいい? 人を、人間を守る。

その思考を一瞬で行い、狂気にまみれながら、騎士としての責務を全うする。

 

「ふん、つまらぬなぁ」

 

その姿を見て、ため息を吐くその少女の名は茨木童子。持つ個性は『鬼炎纏い』、鬼火を操作する個性である。小柄な体から噴き出す炎が徐々に形を作り、巨大な赤い掌へと変わっていく。二つ作られた掌、二つの鬼の面の炎。対照的なそれは少女の外見をしたそれが出すものにしてには大きすぎる。

 

「本気で行こうか?」

 

黒い騎士、ランスロットはほんの少しもおびえることもなく、その剣を構える。自らが滅ぼうとも、責務を全うする。責務を全うせずに、死ぬことなどありえない。騎士たる誇りだけを失わない魔獣(剣士)は走り出す。

 

「すまねえ、黒騎士! 準備に手間取った!」

 

消防士のような恰好をしたヒーロー、バックドラフトを含め、十数人が消防車についているようなホースを構え、雨のように水を降らせる。

 

「水か。おのれ、人間が……!」

 

「ヒーローがやらなくてはならぬことをやらず、ただ一人の小柄な少女の個性にいいようにされているなど愚の極み。ランスロットとやら。遅れてしまったし、いまさらだろうが、力を貸してくれ」

 

シャワーの中にいるようなこの場所に来たのは、ギャングオルカ。彼は炎の個性を持つ少女に対する手段として、町の水道を使い、水を降らせることにしたのだ。これもドゥムジの入れ知恵である。

 

「……今、吾を小柄と嗤ったな?」

 

巨大な二つの鬼火の勢いが増す。掌から火炎を噴射する。水が降り続ける状況でありながら、勢いが沈下することはない。

 

「気に食わぬ! 何故汝らのような輩を助ける必要がある!? 母様の大切なものを奪いかけた輩などすべてを奪っても飽き足らぬ! その血を啜り、肉を食らってやるわ!」

 

「Ahrrrr------!!!」

 

襲い掛かる二本の巨大な手に向け、剣を振るう騎士を追いかけて、ギャングオルカが茨木童子本体に向かう。その頭に衝撃波を纏わせて突っ込むが、茨木童子は体に炎を纏わせつつ、体を縦に回転させ、その威力を相殺する。水が常に降り続いているため、ギャングオルカは連続して突進を繰り返す。

 

「酔狂よな」

 

茨木童子はその突進に対し、自らも突進で対処する。互いにぶつかり合い、はじきあう。そこへ、掌を二つ切り伏せたランスロットが乱入する。

 

「Gaaaa-------!!!」

 

「くははっ!」

 

茨木童子は自分の獲物を抜き、獲物を打ち合う。ただ、剣の技術ではランスロットのほうが圧倒的に上。だがそれを鬼火を纏わせることによりカバー。雨で多少、威力は落ちるが、その程度で戦えなくなるほど彼女の個性は弱くない。

 

「鬼とは貧するもの。ゆえに奪い食らう。満たしてみよ、吾の空腹をっ!」

 

「Aaa」

 

短い声。だがそれは了承だと茨木童子に確信させるものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エッジショットは間違いなく一流のヒーローである。捕らえたヴィランは数多く、得た功績もオールマイトに比べれば少ないが、普通よりは多い。冷静沈着な彼も今回の相手には手を焼いた。彼が相手にしているのは少女。だが彼女からあふれ出る艶やかな雰囲気は、明らかに見た目とは違う。赤漆の盃になみなみと注がれている、濃い香りがする酒をこぼさずに飲みながら、角をはやした少女はエッジショットの攻撃をかわす。

 

「そんなに激しいと、うち、昂るわぁ」

 

「……余裕だな」

 

エッジショットの個性は力では劣るが、スピードはだれにも負けない自信があった。だが、この少女のような相手は酔っているかのような動きで攻撃をかわす。そして時折、伸びたエッジショットの体をつかもうとして逃げられるの繰り返し。戦おうとしていないのがわかってしまう。自分よりも強者であることもわかってしまう。エッジショットは何をするべきかを考えていた。

 

「エッジショット、ちょっとお待ち下さいな」

 

ドゥムジが彼の背中から頭を出す。小さいサイズ故か、エッジショットが体を変化させて戦うスタイル故か、ただ張り付くよりも服の中にいたほうがいいと判断した彼は背中の中に隠れていた。

 

「なんや、羊はんやないの、どうしたん?」

 

「酒呑童子、あなた、戦闘する気ないですね? ならこっち側についてくれとはいわないですが、隠れてくれません? ベル・ラフムが動き出しているっぽいので」

 

酒呑童子と呼ばれた少女は多少驚いた顔をしたが、すぐに色気に満ちた笑顔へと戻る。

 

「それはそれは大変やろねぇ。やけど、こんな楽しいお祭り、楽しまな損やろぉ? かといって旦那はんや女将はん(ティア)の言うこと聞かなあかんしぃ……」

 

エッジショットは今起こっている、この災害を楽しいお祭りといった彼女に対し、怒りよりも先に恐怖を感じた。背筋を舐められるような感触。もし彼女が本気を出したら、自分は彼女のおもちゃになっていたであろうと思ってしまった故だった。

 

「ふむ、難しいですね。あなたの言うお祭りは命を奪い合うもの。この場で直接命を奪っていいものは……あ。いるじゃないですか」

 

「ふふ、おるん? そんなけったいなやから」

 

「先ほど言ったベル・ラフムですよ。あれがこの場にいる相当な魔獣を材料にしているのなら、知性魔獣一人では倒しきれないほど膨張しているはず。多少殺しても死なないですよ(・・・・・・・・・・・・・)

 

「確かにそれなら問題あらへんかなぁ。たまには同族を食らうのもありやなぁ。あははっ!」

 

『魔獣母胎』の能力を知っているエッジショットは、作られた魔獣たちが知性を持つと聞いた時点で違和感を持っていた。知性を持つ生物が作られたと認識したとして、その精神はどういう風になっているかを気になっていないといえばうそになる。この時、その違和感と興味が解消できた。彼らにとって命の概念は価値が低い。実際はドゥムジの言った通り、ベル・ラフムは複数の命を持つと表現できてしまうほどタフなのだが、そんなことを彼は知らない。

 

「でもええのん? うちの本質、知っとるやろぉ?」

 

「裏切ったら柊さんに報告します。特に悪く言いますよ」

 

「いけず。それは堪忍や」

 

そんな軽い会話が行われている中、エッジショットは彼女と戦わずに済んだことをひとまず内心で喜んだ。




バベッジの個性ですが、残り一%の核(魔獣本体)の周りを金属で鎧を作る、みたいなものだと思ってください。

イケメンなバラキー。

仮免、誰がいい?

  • 炎の厄災
  • 獣の厄災
  • 呪いの厄災
  • 奈落の虫
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