無個性で普通の俺と魔獣母胎で病んでる彼女   作:鏡狼 嵐星

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夏休みはいるまで次はなしかなぁ。

アンケートしといてなんですが、AB組合同訓練は正直微妙だったので、英霊憑依編を踏み台転生者ありのプロットで作ってます(キャラをがっつり増やす気です)。ごめんなさい。
イチャイチャ編はちゃんと書きます。

また感想くだしゃい。最近ちょっと少なくて悲しい(投稿ペースのせい)。


discommunication

「いよいよ、スルトが倒れましたか。ティアマトを自由にさせるのは相当まずいですし、ベル・ラフムをほっておく訳にもいきませんし。結構万事休すですねえ。もう全部諦めて、このまま寝てもいいですか?」

 

「いやいやいや、それで済ませないでくれたまえ!? 私を呼んだのは君だろう!?」

 

「いやだって、あなたがついたときには顔面工業地帯がぼろ屑になってたじゃないですか。やることないなら手伝ってください、一応No.1ヒーローですよね?」

 

「そうだけど! 私、君たちに言いたいこと山ほどあるんだけどね!? 割とマジで私のちょっと前の決意なんだったのかな!?」

 

「お前の状態を考えれば戦わなくてよかったことを喜べ、俊典。まぁ、もっとやばいのを相手にしなきゃならないかもしれないがな。できれば想像したくないが」

 

現在、オールマイトと合流したドゥムジ本体。グラントリノに担がれたままではあるが、軽口はそのままであることが二人の緊張感をわずかに緩ませていた。先ほどオール・フォー・ワンとの接触に成功したオールマイトだが、すでに見るも無残な姿で放置されていた。現在は、そばにいて監視していたサリエリ協力のもと、警察に引き渡してきた後である。

 

「ティアマトのほうには、知性魔獣ほぼ全員で向かうよう言ってあります。ティアマトの出力は知性魔獣たちを余裕で上回りますので、人間相手だとミンチになりますから」

 

「ミンチって怖い表現だよね!? ティアマトには勝てないといったのは君だ。だから我々はベル・ラフムを探しているんだろう!?」

 

「一向に見つからないのが問題です。いくらあなたでも本体を見つけなきゃ殴れないでしょう。大量の魔獣を取り込んで一体どこに潜んでるんでしょうか、あいつ」

 

様々な場所でベル・ラフムを探すヒーローたちだが、ドゥムジの力を以てしても見つからず、全員の焦燥感をあおっていた。

 

「その魔獣の個性の中に潜伏とか透明化するみたいな、隠れられる系の個性はいねえのか?」

 

「基本、魔獣類は戦闘用に製作されていますから、戦闘できない個性は自分だけです。体を変形させられるあいつが隠れるのに、わざわざほかの個性を使うわけが……」

 

その時、ドゥムジは一つの可能性があることを見つけた。ベル・ラフムの性格的にそんなことをするのかと怪しんだが、もしかしたらと思わせる考えを思いついた。

 

「オールマイト。この都市で一番見つかりにくい場所はどこだと思います? もし巨大な液体を隠すとしたらどこですか?」

 

「いきなり何かな!? そ、そうだね、倉庫とかかな?」

 

「今目に見えているものでお願いします。町に住むとして当たり前に、そこら中に存在するもので」

 

「えっとね……」

 

答えに悩むオールマイトに対し、ドゥムジの想像する答えにグラントリノが気づいた。

 

()()()()()()!」

 

答えが叫ばれた直後、地面が大きく隆起する。地下から黒い液体が噴き出して、集合してゆく。家一軒分は軽くある液体が徐々に鋭利な腕をはやし、いくつもの口を出現させる。翼のようなもの、足のようなものを含め何本も周りに生やしていく。

 

「ずいぶんあなたらしくない場所に隠れていましたね、ベル・ラフム。排水管の居心地はよかったですか?」

 

「……4og@lmkt@。u/q口ヲghな。母様i逆ラ4愚か者。貴様かラ殺してもカマワナイんだぞ?」

 

奇妙なケタケタ音から、日本語へと変わっていく。いくつもの口が違う動きをして言葉をしゃべっているその様は気持ちが悪い。

 

「オ前ら」  「滅べ」   「母様のタめに」

 

  「殺セ」 「下ラなイ」  「シネ」

 

「敵だ、敵ダ!」  「裏切者」  「消エろ」

 

いくつもの口から聞こえる罵倒。その声は初めの音のようには聞こえない。既に殺意を込めた怨念を含む低く、高い老若男女の声たち。

 

「いったいどれだけ魔獣を食らったのか。あなた自身の自我が増えているじゃないですか」

 

数えるのが億劫なほどの、棘のような腕がオールマイトたちに襲い掛かる。グラントリノは後方に退避、オールマイトは初撃を避けつつ、そのうちの一本をつかもうと手を伸ばすが、反射的にそれをやめて避ける。その黒い腕は一瞬にして燃え盛る業火を宿した。

 

「それはっ! スルトまで吸収したんですか、あなたは!?」

 

「全てハ母様のたメに……!」

 

翼が凍りだし、巨大な翼膜を形成し、空へと飛びあがる黒い塊。いくつもの口から、炎、電気、黒いガス、毒などが大量に噴き出していく。炎は建物を燃やし、電気は電灯を爆発させ、ガスは道路を破壊し、毒は信号機を溶かしていく。

 

「町を丸々壊す気か、こいつは! 俊典、撃ち落とすぞ!」

 

一定の高さに達したベル・ラフムは一本一本の腕の長さを大きくし、ただ振るっていく。それは風を纏い、周りにある様々な建築物を切り刻んでゆく。

 

ドゥムジをビルの屋上に置き、空へと上がったグラントリノはベル・ラフムの真上へと飛び、下へと急降下する。

 

TEXAS(テキサス) SMASH(スマッシュ)!」

 

ビルの上へと飛び乗り、ベル・ラフムの真横に立ったオールマイトは倒壊したビルのほうに向けて拳を振るう。

 

「邪魔ダ、ニンゲン!」

 

翼から赤いレーザーがグラントリノに向け、上空に放たれる。腕が異様なまでに肥大化して、オールマイトを襲う。両者ともかろうじて避けるが、バランスを崩してしまう。

 

「トどめダ!!」

 

二つの巨大な口が開き、エネルギーが収束していく。巨大な白い熱線は両者に向け遠慮なく放たれる。

 

しかし、その二人がまるで引っ張られるように空中を離脱する。

 

「ふう、間にあったようで何よりだ。まさに見た通りの怪物だな、ベル・ラフムとやらは」

 

「すまない、ジーニスト!」

 

ベストジーニストはドゥムジから位置を知らされてから、ベル・ラフム対策として複数の策を用意していた彼は、ベル・ラフム発見の知らせを聞き、本人のみがこの場に来た。

 

「情けないぞ、オールマイトぉ!」

 

巨大な爆炎がベル・ラフムへと飛んでいく。しかし、周りに巨大な風が発生し、炎を受け流す。

 

「何をしている、貴様! さっさと雑魚など片付けろ!」

 

エンデヴァーが地上からオールマイトに向けて叫ぶ。その隣にはギャングオルカ、シンリンカムイも同伴していた。

 

「ずいぶんけったいな姿になっとるなぁ。まぁ、落ちときや」

 

身の丈ほどもある巨大な刀を振るう少女がベル・ラフムに向けて、その刀を振り下ろす。風を切り下ろし、本体に直撃したその一撃はベル・ラフムを地面へと叩きつける。

 

「ギィィィーー!?」

 

「もうちょっと重くしてもええよ? 大して変わらんけどなぁ」

 

ほとんどの知性魔獣はティアマトを抑えに向かったが、酒呑童子は向かわなかった。もとより命令に忠実でない彼女は自らの欲を最優先にする。ベル・ラフムを殺してみたくて、彼女はここに立っている。

 

「オノレぇえぇええっ!! 酒呑ッ、童子ィぃィ!!!!」

 

叩きつけられた部分がひしゃげ、体を動かしにくそうにしている、ベル・ラフム。そんな獲物に舌なめずりをする酒呑童子。

 

「まぁ、多少は楽しめそうやし? ちょっと相手してもらおかなぁ? あはっ」

 

盃から酒を飲みながら、笑い、片手で刀を担ぐ。軽く踏み込むようにしたその瞬間、地面が割れ、ベル・ラフムへととびかかっていく。

 

「オールマイト、今は彼女に任せておけ。ジーニストと練った作戦を伝える!」

 

エッジショットは酒呑童子を案内した後、すぐさまオールマイトのもとに向かい、合流した。あの怪物を止めるための巨大な作戦を。

 

 

 

 

 

「LAAAAaaaaa-----!!!!」

 

ティアマトは巨大な叫び声をあげ、道路をすすむ。周りの建物はその足から放出される黒泥に押し流されて崩れていく。そんな巨大な怪物を真正面に見据え、満面の笑みを浮かべる、灰色の筋肉だらけの男。その名はスパルタクス。すべての圧政に反逆する男。

 

「ぬうははははッ!! 今こそ偉大なる我が母への反逆の時!」

 

全長はビルを超えるその怪物に向かって、遠慮なく全力疾走してゆく。元より筋肉でおおわれ巨大であった肉体は、まるで風船のように膨らみ始める。魔獣が数多い道を通り、戦闘をしながら一切止まらずにティアマトのもとにやってきたため、『被虐の誉れ』で貯めた痛みは既に相当な量になっている。

 

「あははははは! 行くぞっ、我が愛はっ! 爆ッ発するゥゥゥゥ!」

 

大きく膨らんだその体ごとティアマトの肉体へと飛び込み、巨大な閃光とともに巨大な爆発を起こす。周りの建築物の残骸もろとも消し飛ばした。

 

「AAAAaaaaaaーーーーーーー!?」

 

あまりに巨大なその爆発はティアマトにダメージを負わせた。その体勢はわずかに崩れ、一つの足を折った。

 

「我が降臨は永劫に続く。踏み砕くは神の獣」

 

ティアマトの背後に位置取る蒼き皇帝。ティアマトの真上に存在する雷球を放つ。一つの柱とも呼べるその落雷はティアマトの胴体を貫通し、地面に落ちる。

 

「『我が旅路に従え獣(ズヴェーリ・クレースニー・ホッド)』」

 

体勢を崩したティアマトへの追い打ち。ただし、ティアマトはその体勢をそれ以上崩さず立ち直る。焼け焦げていた皮膚はどんどんと修復されていく。

 

「母が中に存在する以上、黒泥の供給は止まらぬ。友が止めねば、事実上だれも止めることはできぬ。余らはただ、ティアマトを自由にさせぬようにするだけだ」

 

イヴァン雷帝はティア、そして柊と最も長い付き合いの知性魔獣の一人である。彼らの関係を長く見てきた彼にとって、初めて見るティアマトという魔獣の性質をすぐに理解できた。そしてそれを止められるのが一人であることもすぐに理解した。

 

「我が友よ。我が母が唯一愛を注ぐ人間よ。汝が全ての鍵を握るのだ。母はここで人類の悪になるかが決まる。早くせねば手遅れとなる。……どうするのだ、我が友にして、我が父よ?」

 

ティアマトが立ちなおし、背後を向く。イヴァン雷帝に向けその口を開き、噛み付きにかかる。その前に出たのは黒い体に緑の炎を宿す、最強とされる魔獣の武将。その六本の刀をティアマトの歯にあてがい、その巨大な口を開いたまま止める。

 

「我が製作者、汝のその力は世界を塗り替える程度軽く行えよう。我が生、我が躯体は平和のために作られた装置であり、機構。然らば、たとえこの身が滅んだとしても、その役割を果たさねばならぬ。否、違う。滅ぶことは我が主導者の望むところではないだろう。ならば私は、生きて平和を勝ち取らねばならぬ。そのための我が命」

 

刀をずらし、ティアマトを受け流す。頭の位置をずらされようと、先ほどのように体勢を崩さずに、雄たけびを上げる。

 

「LAAAAAAAAAAAAAAAAーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

 

今までないほどの巨大な咆哮。それは今までただ道を進むだけであったティアマトが知性魔獣たちを敵と認識したということになる。

 

「イヴァン。本当に母をとどめておくのか。人を守るのか」

 

空からかかる声にイヴァンは一瞥だけを送る。長い緑髪の人型兵器が欺瞞と期待を込めた声でそう聞いてきたのだ。

 

「キングゥか。余はただ、母と友が望むことをしているにすぎぬ」

 

「本当にそうだといえるのか」

 

「そうだと考えて、汝はここに来たのではないのか?」

 

既にエルキドゥとの戦闘を終えていることを理解しているイヴァン雷帝は、すでに結論が出ていることを見抜いていた。

 

「まだ迷っている。僕は父様を救えなかった。エルキドゥの言い分も聞いたが、そんな僕がどうして父様のために戦っていいのだろうか……」

 

「魔獣の中でも汝は最も人間らしい。それは誇ることであり、卑屈になることではない。信じた道を貫くことを友は誇りこそすれ、貶めることはせぬだろう」

 

「……うるさい、僕は僕が許せないだけだ。やるべきことはわかってる!」

 

鎖を伸ばし、ティアマトを縛りにかかる。その目には迷いはあれど、技には遠慮がない。

 

「父様! 時間は稼ぎます、どうか母様をッ!!」




誤字報告、毎回ありがとうございます。

仮免、誰がいい?

  • 炎の厄災
  • 獣の厄災
  • 呪いの厄災
  • 奈落の虫

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