無個性で普通の俺と魔獣母胎で病んでる彼女   作:鏡狼 嵐星

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早めに書けたので、あげます。
次回は新しいやつの可能性が高いです。ワートリか僕ヒロの何かかなぁ。


進化する仮免試験

ティアの妊娠報告の際、何人か数日間おかしくなってしまったが、現在は『彼女はそういう人だ』と納得している。というかしてもらった。そうじゃなきゃ無理よ? 無理無理。俺が逆の立場なら、理解できるとかするとか以前に、頭大丈夫なのかこいつって感想になるから。というか、出久とか、飯田くんとか、八百万さんとか、妊娠を祝う方向で進めようとするあたり、混乱していてもいい子なの、改めて感心する。こんな子がヒーローになるなら将来安泰だわ。

 

と、無駄なことを考えつつ、これからどう振る舞っていくかを考え直す。まず、敵連合のことなのだが、神野区の一件で全員捕縛した。オール・フォー・ワンはイヴァンたちが完全に沈めた結果、再起不能に近いらしい。項羽によると、個性の再使用は可能ではあるそうだが、体がイカれすぎていて、まともには使えなくなっているそうなので、多分、もうなにもできないと思われる。死柄木弔と黒霧は以蔵とゴルゴーンにさんざんボコられたあと、ヒーローに捕縛されて、タルタロス送り。いろいろ調べているうちに二人の真実がわかりそうだから、とりあえず放置状態。氏子達磨?とかギガントマキアに関してはわかってないので、多分逮捕されてない。『オール・フォー・ワン』そのものに関しては、ヒーロー側に説明しようがないので、後回し。これに関しては、俺はどうしようもない。他の敵連合に関しては、訓練のあとで捕縛されているままらしい。マグネやトゥワイスは生きているみたいで、ある意味原作破壊だな。今更すぎるけど。

 

「敵連合の一部メンバーは、魔獣に監視させて、仮釈放とかありだと思うんだよなー。強い個性もあるし、見方を変えれば、被害者だし」

 

「ふむ、言いたいことはわかりますが、ティアさんが許してくれないと思いますよ。あと、柊さんは単純に優しすぎるかと」

 

「そう? 知性魔獣達を見ている以上、逆らう気は起きないと思うんだよね。エッジショットとか、ジーニストとかに戦いたくないって言われた子たちだよ?」

 

「いえいえ、チャンスが有れば逃げ出しますよ。ラフムを埋め込むなら話は別ですが」

 

「それは流石にダメ。おれでも拒否しかけたんだから。……希望者がいるなら、話ぐらいは聞くとして」

 

1-Aの宿泊校舎のリビングルームで、ティアに膝枕をしながら、ドゥムジと談話をしていると、玄関の扉が開く。

 

「今日の分の鍛錬は終了した。我が父よ、今日も生徒たちは鍛錬に励んでいるぞ」

 

黒いマスクに赤い目をきらめかせ、スルトが中に入ってきた。まだ、お昼過ぎて一時間立ってないんだけど。

 

「おや、スルト。授業が終わるまで、まだ三時間ほどありますが?」

 

「轟という生徒をメインにした、クラス全員による俺の撃退戦という名目だったのだが、全員個別に倒してしまってな。相澤をお供に復習して、残りの時間を使うそうだ。轟は似た個性だったので、少し乱暴ではあるが、使い方をレクチャーしておいた。あの出力で、俺と同じことができるとは思えないが、似たことはできるだろう」

 

ちょっと? アイデア出した自分が言うのも何だけど、君の個性は轟くんの上位互換なんだからね? そういえば、エンデヴァーに詰められたって、ドゥムジ言ってったっけ。

 

「……ドゥムジ、エンデヴァーからなにか言われてる?」

 

「とりあえず、毎日、雄英高校に電話が来ているそうです。あ、電話に出ること自体、お断りしています」

 

しまったァッーー! どうにかしなければ! かといって、そのままスルトを貸し出すわけにも行かない! このまま轟くんの訓練に付き合わせることだけでも伝えねば!

 

「ドゥムジ、次に電話が来たら、とっておいて。俺が電話し直すから」

 

「了解しました」

 

本当に従順すぎるよ、この子たち。

 

「しゅう、こっち」

 

下から伸びてきた腕に顔を引っ張られ、キスをされる。ある程度答えてから、唇を離す。最近はこれの繰り返しだ。

 

「もう一段回待って、許可を取れない?」

 

「しゅうならしてくれるんだから、いらない」

 

「いや、そうじゃなくてね。場所とか、周りの目とか……」

 

「気にならない」

 

「俺はするの」

 

いつものことだ。雄英高校の特別講師になったはいいものの、基本は校舎の中で待機だ。知性魔獣たちに任せておけばどうにかなるし、いざとなればドゥムジとキングゥが止める。なので、ほぼ出番がない。これも悲しいところ。

 

「柊さん、柊さん。お暇なようなので、私から一つ提案があります」

 

「何?」

 

「仮免許取得試験に参加してみませんか?」

 

「…………はい?」

 

 

 

 

 

 

 

「あー。こんにちは。ヒーロー公安委員会の目良です。好きなものはノンレム睡眠です。よろしく」

 

「よろしくおねがいします」

 

仮免許試験の会場の会議室の中で、俺とティア、ドゥムジの三人?は仮免許試験の運営を行っている考案員の人達の前にいた。椅子に座っている俺に、もたれかかるように腕に抱きつくティアと、掌のない金の腕で器用にスマホをいじっているドゥムジ。流石に二人に注意しようとしたのだが。

 

「あー、事情はあらかた聞いています。私がお話したいのは北水柊さん、あなた一人です。他のお二人は自由にしていただいて結構です」

 

他の公安の人も全員理解をしてくれているのか、目が優しい。いや、本当に申し訳ない。

 

「……すいません。一応、ドゥムジから仮免許試験に参加してみないか、という言葉だけ聞いて来たのですが、運営側で参加するということで間違ってないですかね?」

 

「はい。事前に根津校長を通じて話を通していただきました。簡潔にお伝えしますと、仮免試験に、回帰母さんの魔獣を貸していただきたい」

 

まぁ、だろうね。ヒーロー、特に有名な人達は引く手あまたの状況で、ヒーロー並みの戦闘力と知能を持つことがほぼ証明されている魔獣を使わない手はない。

 

「貸すこと自体は何も問題ありません。ただ、どういった内容の試験なのか、どの子を貸してほしいかが問題になります」

 

魔獣類に関しては、ティアしか命令を下せない。会場が複数ある以上、知性魔獣しか出向けないのだが、性格に難ありな子が多いからなあ。

 

「こちらが今回の試験内容です。軽くまとめたものにはなるのですが、その点は情報機密のため、ご了承ください。全国で、四つの試験会場があります。なので、四体の知性魔獣、公安としては項羽、キングゥ、チャールズ・バベッジ、ジークを希望したいと思っております」

 

さすが公安委員会だ、社会的に問題ない子たちばっかり。ギャングオルカしか知らないけど、代わりには十分な子たちだ。……なんだけど、ちょっと足りないと思ってしまう。

 

「その子達でも十分働けると思いますが、雄英高校が彼らの能力を直に経験で知っている分、他の高校と差ができてしまいますよね?」

 

「不本意ですが、毎度、雄英高校は始めに他の高校から狙われます。なので、妥協すべきものかと思っていますよ」

 

それこそ、相澤先生に言わせれば、超えるべき壁だろう。それに、今の雄英生徒たちは原作よりも明らかに強いはず。知性魔獣たちはたしかに強いけど、今回はあくまで仮免試験で、知性魔獣との戦闘が目的じゃないわけだし……。

よし、新しく作って(・・・・・・)しまおう。

 

「ティア。知性魔獣を新しく作るのに、どれくらいかかる?」

 

公安の人たちが全員固まった。目良さんなんかは、目を見開いてしまった。気持ちはわからなくもないが、今は無視させていただく。

 

「いつものやりかたなら、一日あれば、一人作れるよ?」

 

「仮免試験まで二週間以上あるわけだし……。よし、少しばかり特別な子を用意しようか。ドゥムジ、まとめたい資料ができたから、準備をお願い」

 

「了解しました。雄英高校に帰れば、始められるようにしておきます」

 

「……あの、知性魔獣とはそんなに簡単に用意できるものなのですか?」

 

目良さんの質問にはどう答えればいいのだろうか。正直な話、俺が練るのは知性魔獣としての性格、個性、外見などの必要な要素だけで、実際に作っているのはティアなわけで。

 

「それに関しては情報機密ということでお願いします。あと、目良さん、確認したいことがありますので、いいですか?」

 

「は、はい。どうぞ」

 

「今回の仮免試験は、『質の高いヒーローをより多くほしい』という目的のために行われるわけですよね?」

 

「え、ええ。そうです」

 

「知性魔獣たちにもやる気がありまして。最近は育てることに興味を持ってくれているのですが、やり方(・・・)によって、やる気の出方が極端になるんです。なので、一つ、評価点を増やしていただいてもよろしいでしょうか」

 

ここまで原作を壊してしまった以上、雄英高校を含めて、新しい『敵』に対抗できる人材を育てておくべきなのだから、少しくらい難しくしても大丈夫だろう。他の高校の人は不憫かもしれないが。

 

 

 

 

 

 

「いろいろあって、仮免試験に知性魔獣を参加させることになりました」

 

あのあと、やりたいことを伝えた結果、色々複雑そうな顔をしながら目良さんがOKを出してくれた。雄英に帰ってきてから、計画を練り上げ、その資料を公安にメールで届けた。ドゥムジから事前に連絡が行っていた相澤先生の『またお前は……』みたいな呆れた顔を見ながら、A組を集めて、事情の説明に入る。最近こんなのばっかりだな。

 

「もう突っ込まなくていい気がしてきた」

 

上鳴くんや、いろいろすまんかったが、突っ込んでくれ頼む。

 

「でも、知性魔獣なら戦いまくってるわけだし、戦って勝たなきゃいけないわけじゃないんだから、どうにかなりそー!」

 

「そう言われると思って、新しい子を用意しました」

 

「用意周到だー!? 初見で完封されたトラウマががががが……」

 

「三奈ちゃーん!? 倒れるのには早いよ!?」

 

芦戸さんと葉隠さんのリアクションに笑いをこらえつつ、続ける。

 

「今回、知性魔獣を新しく用意したのは、試験のためでもあるんだけど、魔獣そのものの宣伝でもあるからね」

 

「宣伝? 神野区の事件のせいで、魔獣がやばいやつだってのは認知されてるはずだ。どういう意味なんだ?」

 

珍しく障子くんのツッコミ。疑問点投げかけてくれてありがとう。

 

「雄英高校で、知性魔獣を使った訓練を行って来た結果、ヒーロー協会から他の高校に斡旋してほしいって意見がチラホラあったらしいんだ。公安に直で彼らを見てもらいつつ、派遣していいか判断してもらう意味もあるわけだ」

 

なるほど、と全員が納得した様子。やだ、この子たち、理解力の権化。ファンになります。

 

「まぁ、そこはこっちの事情。集まってもらったのはこれを見てもらうためさ」

 

試験会場から帰ってきた跡、まとめた資料の一部をみんなに配る。

 

 

 

『炎の厄災』 メリュジーヌ=アルビオン

『獣の厄災』 バーゲスト=ブラックドッグ

『呪いの厄災』 バーヴァン・シー/ケルヌンノス

『奈落の虫』 オベロン・ヴォーティガーン

 

 

 

「なんだコレ。名前? っていうか厄災っておっそろしい事書いてあるんだが、まさか……」

 

「はい、切島くんの予想通り。新しい知性魔獣たちの名前だよ。全国の4つの会場に4人のうちの誰かがそれぞれ襲撃する形になる形式さ」

 

「…………これ、話していい情報なのか?」

 

「大丈夫だよ、轟くん。各高校に公開する情報だからさ、これ。ちなみに他の高校には4人の個性とその戦闘スタイルも含めていくつかの情報が追加で渡してある」

 

「おい、俺達の資料には名前しか載ってないんだけど?」

 

もちろん、そのツッコミが来ると思っていたよ、峰田くん。

 

「普段から知性魔獣たちを相手にしているってことで、個性の内容と戦闘スタイルに関してはハンデってことで」

 

「流石にそれはきついでしょ。確かに訓練はしてるけど、情報なしじゃどうしようも……」

 

「いや、耳郎さん、ちょっとまって」

 

お、出久がなにか見つけたかな?

 

「柊くんが用意したなら、この文章にも意味があると思う。今までの魔獣たちって歴史や神話上の存在の名前が参考にされていて、その個性もその延長線上に近いものだった。なら、名前だけでもわかることはあるんじゃないかな」

 

出久からの信頼が厚いの嬉しいね。名前が参考になるのは事実だけど、そこに着目してくれるのはありがたい。

 

「それに、知性魔獣たちはあくまでお邪魔キャラ。試験の内容をクリアすれば、倒す必要はないし、撃退の条件があるんだ。各高校はそれぞれ、撃退のために必要な要素を一つずつ渡してある。そして、その要素をすべて満たさないと撃退ができないんだけど、そのことを知っているのは君たちだけ」

 

そう、雄英高校は魔獣たちの詳しい情報がわからない代わりに、高校すべてが協力または情報提供しなければ、魔獣を撃退できないことを知っている。逆に他の高校は、個性や戦闘スタイルを知っていて、撃退の要素を一つ知っている代わりに、撃退するには自分たちが持っている情報では足りないことを知らない。

 

「知性魔獣を撃退するのもしないのも君等の自由。撃退する前に試験内容をクリアすれば、戦う必要はないし、撃退をするなら、各高校と情報交換をすればいい。そのあたりは、君たちの判断に任せる」

 

 

 

 

 

寝室でしゅうと二人きり、今はしゅうの腕を枕にして、ベッドで一緒に寝転んでいる。今日、しゅうは忙しかったみたいで、ふうって息を深くついている。

 

「今日は大変だった。あとはティアに知性魔獣を用意してもらえるようにするだけなんだけど……」

 

ちらりとこっちを見るしゅう。はぁぁぁ、かっこいい……。疲れた顔もいい……。

 

「何をしてほしい?」

 

ニコって、少し笑って、手を伸ばしてくる。しゅう、しゅう、その手で私をなでて?

 

「デートがしたい。二人で一緒に、お出かけして、食事して、夜に改めて愛を囁いてほしい」

 

「そういうデートプランって、俺が作るものじゃない?」

 

「しゅうと一緒ならどこでも幸せ……」

 

移動して、しゅうの胸に顔を埋める。そう、この匂い、この鼓動。もうこれがなければ、生きていけない。

 

「いろいろ考えておくよ。明日もやることはあるから、今日はゆっくり寝よう?」

 

しゅうはいつものように抱きしめてくれる。ふふふ、しゅうとの子を孕んで、抱きしめてもらいながら、一緒に寝られる。幸せ、幸せ、あぁ、幸せ。ずっと、ずっと、ずっっっっといっしょだよ?ねぇ、しゅう?

 




アンケートを下にも関わらず、結構色んな要素をぶち込みました。
文句は受け付けません。

感想いっぱいください。やる気に直結するんで、お願いします。この言葉何度目かな? 何度も見て、やる気を出してるんで、ください。

仮免、誰がいい?

  • 炎の厄災
  • 獣の厄災
  • 呪いの厄災
  • 奈落の虫

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