とか言いながら短めです。
就活は終わったのですが、大学院の対外発表が近いため、準備していました。
次回も頑張って書きます!
仮免会場に向かうバスの中。一番前に相澤と北水、回帰母の三人を乗せ、その後ろではA組の面々が渡されたキーワードからなんとか情報を読み取ろうと頑張っていた。
「いろいろ調べたけど、結局、あんまりわからなかったな。せいぜい、全員の名前が妖精だってことぐらい?」
「あと、バーゲストとブラックドッグは同一のことを表してる、ってことも載っていたね。逆に言えばそれだけなんだけど」
切島と芦戸がお互いに諦めたような顔をしながら、乾いた笑みを浮かべた。
「伝説のお話ですけど、メリュジーヌとは、水の妖精か竜の妖精と呼ばれていて、アルビオンとはブリテン島の古い名前であったり、アーサー王伝説でのブリテン島をはじめに支配した巨人というお話もありますの。次に、バーゲストとは角を持つ赤い目の犬の姿を持つ妖精で、不吉の象徴らしいですわ。後は、バーヴァンシーは若者に死をもたらす魅惑の吸血鬼や妖精のことで、ケルヌンノスはケルト神話での冥府の神、豊作を司るとされていますわ。オベロンは妖精王として有名で、ヴォーティガーンはアーサー王伝説の登場人物ですわね」
「ヤオモモ、物知り~」
「皆さんで一緒に調べたではありませんか。まとめたに過ぎませんわ」
少し自慢げになる八百万を横目に緑谷がいつもの発作を始める。
「まずメリュジーヌだけど、龍の妖精とされているんだよね。ここで、ブリテン島ってドラゴンがいたって伝説も有名なことも関係してくるんじゃないかな。アーサー王の伝説で、ヴォーティガーンはドラゴンの血を飲んだって伝承もあるくらいだから、それとも関係がありそう。更に言うと、4種類の魔獣についている8つの固有名詞は、全部ヨーロッパの神話にあったことも引っかかる。
今回、出てくる魔獣は妖精の名前に、怪物だったり、神様だったりの名前がある。ケルヌンノスは獣の王様という意味もあるみたいだから、今回の魔獣のコンセプトは、妖精に怪物の要素を付け加えたものという解釈なんじゃないかな。今までと違って、厄災という名前もついている以上、その魔獣には災害級の何かがあって、試験の内容に組み込まれているとか? 唯一、厄災という名前がついていない『奈落の虫』は虫の厄災なのか、奈落の厄災なのか、それとも違うのか。……う~ん、考えることが多い」
「おおう、個性関連の調査に関しては、緑谷がやっぱりやばいな」
ブツブツと考え続ける緑谷に、上鳴が引きつつもその話を聞いて、頭の中で噛み砕いていく。
「確かに、あの北水が『厄災』とわざわざ書いてる。今までにないレベルの何かがあるといえるだろう」
「ケロ。もし緑谷ちゃんの言う通り、『奈落の虫』も厄災の一つだとしたら、地震や台風のような災害に意思を持たせたものが今回の魔獣と言えないかしら? 人を助ける状況を創るために、そういった子を用意していそうだわ」
「なるほど。ということは、炎、呪い、獣、虫に関連する災害が起こるってことやね。……大火事くらいしか想像できひん」
「昔、バッタが大量発生して農作物を食い荒らした災害があったはずだ。虫の厄災があるとしたら、それに近いかもしれない!同じ理由で、獣に関しても説明がつくだろう!ただ、呪いだけはどうにも想像できないな」
常闇、蛙吹、麗日、飯田と考察が続く。それをバスの最前席で聞いていた相澤は、北水から提出されたその件の魔獣たちに関する資料を見て眉間にしわを寄せていた。
(またとんでもないものを用意したな。今年の試験は一体どうなる?)
1次試験が始まり、いわゆる『雄英つぶし』は行われたものの、1-A全員は誰も脱落することなく、それに対処してみせた。雄英高校の面々を含め、各高校は現役ヒーローたちが恐れる『知性魔獣』たちがいつ来るのかを警戒しつつ、その戦闘が行われており、緊張感が高かったものの、各自がそれぞれの個性を活かし、合格を勝ち取っていった。
緑谷、麗日、瀬呂がどうにか合格を達成し、待機場にたどり着く。八百万たちがそれを歓迎する中、夜嵐イナサと轟に何かしら因縁があったり、緑谷とケミィの間になにかがあったことに騒ぐ上鳴と峰田がいたりと騒がしかった。
「いや~、なかなか厳しい試験だったね。疲れちゃったよ」
雄英の面々が騒いでいる中、一人の男が伸びをしながら待機所に入ってきていた。その男は近くにあった壁にもたれかかる。全身が白い羽毛のような服を身に纏う子供らしくも大人びた雰囲気を持つ美丈夫。
「これもやらなきゃいけないことだからやらなきゃね」
彼の腕には手のひらほどのサイズの蛾が止まっている。それに語りかけるように話す。周りの騒音を何一つ気にしていない。
「周りのみんなも頑張っているみたいだし、僕も頑張らなきゃ」
その発言を最後に、蛾は彼の懐に戻る。そして、合格して浮かれている周囲の挑戦者たちを一瞥した。そして、笑顔を浮かべて、小さな声で呟いた。
「本当に□□□□□」
1次試験後の客席。相澤とMs.ジョークのところへ、試験の最終調整のため、運営本部に移動していた北水と回帰母が帰ってきた。
「おー、さっきぶり。君たちが噂の魔獣使いかい?」
「どうも、Ms.ジョーク。先程は挨拶もできず、すいません。相澤先生、隣に座ってもいいですか?」
「そんなこと気にするな!」
相澤はむしろここに座れと言わんばかりに視線で訴える。北水は相澤の隣に座り、回帰母はそのまま彼の上に座る。もたれかかりつつ、既に目を閉じていた。
「はっはっは、聞いたとおり、お熱みたいだね!どうだ、イレイザー、わたしたちもやってみないか?」
「しない」
大笑いしながら、北水の逆隣に座るジョークが、相澤の肩を叩く。それを振り払うことなく、相澤は北水から渡された資料をジョークに無理やり渡した。ジョークは一瞬真面目な表情になった後、舌なめずりをしながら資料のページを捲り、すぐ青ざめた。
「北水、お前の口から改めて、今回の魔獣とその役割を説明しろ」
「資料に書いてありませんでした?」
「今までの経験上、知性魔獣の性能は想像以上のケースがほとんどだ。第2試験ももう始まる。お前の口からも聞いておきたい」
「……今回のコンセプトは名前のまま『厄災』ですよ。普通の知性魔獣と違うのは、『一体の知性魔獣が、魔獣形態と人型形態の両方を同時に持っている』ことです」
「それは書いてあったが、なぜそういった能力を追加した?スルトと同様に形態変化すればいいだろう」
「まぁ、表向きの理由は『
「……お前は魔獣を人間に寄せることをなるべく避けているようにしていると思っていたが」
「それは、はい。ティアの個性を危険視されるのを防ぐためにそうしてましたけど、これからは変に隠しておくほうが面倒なことになると思ったので」
相澤は神野区の一件と回帰母の妊娠の件で、少し吹っ切れてしまった北水になんとも言えない表情をしてしまった。
「裏の理由は?」
「1つ目は『見た目も知能も人とほぼ変わらない知性魔獣を、世間やヒーローがどう受け止めるのかを知りたかった』、2つ目は『知性魔獣たちの価値観から見て、ヒーローたちはどう映るのかを確かめる』ためです。知性魔獣のヒーロー活動を要求されている以上、それに適した子を創るようにするべきなんですが……」
「……社会常識の話か」
相澤の苦い顔に、北水は頬をかく。
「はい。知性魔獣の持つ知性はティアが与えたものです。大前提的な常識の知識を与えられますけど、社会、命、ルールを含め、人間と魔獣たちの価値観や性格があまりにも違います。ここをどうするかを色々考え、知性魔獣たちとも話しました」
「結論は?」
「『楽しませてくれるならそれでいい』派と『俺が認めるような存在ならば良し』派でくっきり別れました。なので、俺が認めるような評価基準を一つ追加して、それにどう対処できるかを『厄災』組の子たちで判断してもらいます」
相澤は眉をひそめつつ、今までの話を整理する。
知性魔獣たちを次世代が育つまでの代わりとしたい公安や警察庁に対し、北水は同意した。しかし、知性魔獣たちの考えは一般的なヒーローから乖離している可能性が否めない。
「神野区の戦いに参加した、まだ常識的な子たちならヒーローになってもいいって言ってくれるんですけど、『俺とティア以外の言うことを聞く気はない』らしく、それが元手に事件になると非常にまずいので……」
そこで、北水と回帰母以外の人間の指示を考慮できるようにするためにはどうするか。
「一般的な『ヒーロー』というものを知性魔獣たちに一度認めさせる必要がある、ということか?」
「はい。そうすれば、他の人の意見も頭の片隅に入れてくれると全員と約束しました」
つまり、ヒーロー仮免試験が行われている中、知性魔獣たちがこれからヒーロー活動を本格化するかどうかの試験が同時に行われており、しかもその判断基準であるタマゴたちはその事実を知らない。
相澤は随分と難しいことを子供たちに仕向けるなと思いつつ、回帰母に認められるより、難易度は多少下がるかと納得した。
「お前の示した評価基準はなんだ?」
北水は少し含みを持つ笑いを浮かべ、その内容を話した。
「……あのヒントはそういうことか。確かにヒーローとしては必要な力だが、この場でやるのは性格が悪い」
「まぁ、やってくれるでしょうと期待を込めて。
話し終わるのとほぼ同時に、一次試験の会場が破壊され、二次試験が開始した。
良ければ感想をください。
仮免、誰がいい?
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炎の厄災
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獣の厄災
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呪いの厄災
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奈落の虫