最後の夏休みってことで、私用でエンジョイしてたのも合って、遅れ気味になりました。
後、色々考えたのですが、仮免試験を書き終えたら、この作品ではないものを書こうと思っております。書きたいものが多すぎるんじゃ~。
投稿頻度は遅いし、何ならヒロアカの原作のほうが早く終わりそうですが、許してクレメンス。
一次試験会場の建築物が破壊され、要救護者の救助という第二試験が始まる。最初こそ、その意味を把握できなかった受験者たちも、かつて学んだことを思い出しながら、状況に応じて対応していく。
「そこの瓦礫の下にも一人いるみたい!」
「こっちにも人手をくれー!」
救護者にも、優先的に助けなければならない重傷者と軽傷者が分かれる。各々、教えられた基準を持って救護活動に移るが、どうしても人手が足りない。各高校の面々が今は協力するべきだと、他校同士で助け合う場面も多く見られ始めた頃。
「そこの瓦礫の下にいる人は足に重傷を負ってるようだ。優先度高めで頼むよ。あ、瓦礫の撤去のときは上に重なっている家具に気をつけて。その建物の裏にもひとりいるよ、軽症みたいだから、後で見に行ってあげてくれ」
白い服を身にまとった美少年が周りに指示を出していく。最初こそ訝しんだ参加者も居たが、彼の言った通りの場所に要救護者が居てから、彼の指示に従いつつ、協力する人が増えていっていた。
「すまない、君はこのあたりの救護者の位置を把握しているのか!?」
飯田が指示を出す青年に声をかけると、きらびやかな笑顔を見せて答える。
「君たちは雄英高校の面々かな?そうだよ、僕の個性は周囲の虫たちと会話して力を借りる個性だ。ちょうどいい、力仕事は苦手なんだ。トリアージや調査は僕に任せて、他を手伝ってくれ」
周りから蝶が集まり、誘導するように移動を始める。蝶が向かう先々に救護者がいることを確認した雄英生徒たちもひっきりなしに動き始める。
「僕らも動かなきゃ!」
緑谷もまたその一人。瓦礫を移動させる手伝いをし、その個性を持って、要救護者を救出場へと運搬する。しかし、その途中でも拭いきれない不安が彼の心をよぎる。被災現場のバイスタンダーとしての経験の少なさ、回りの動きの良さからくるものではあるが、もっと大きな不安があった。これだけ大変な状況下にあるにも関わらず、あの北水が『厄災』と称した知性魔獣がまだ来ていない。それに対して、どう対応するのかを考える時間が今はない。
「顔が暗いぞ! そんなことでヒーローが務まるのか!?」
「は、はい!」
HUCに激励に近い指摘を受け、顔に笑顔を戻す。今はそれを考えても仕方がない。そう頭を切り替え、救護者を移動させた後、再度力仕事に戻ろうとするが、地下から音が聞こえる不可解な地響きが発生する。
「下からなにか来るぞ!退避っ!!」
誰かがそう叫ぶやいなや、周囲の参加者たちが怪我人を抱えて移動し、まだ救出できていない部分への手助けが始まる。しかし、すぐに近くにあった破壊された建物による巨大な山が、地下に落ちるように消えた。そして轟音と暴風とともに、黒い何かが地下から現れる。
オオオォォォォン
鳴き声とは思えないような音で鳴く『ナニカ』が空でその体をうねらせる。半透明な黒色で幼虫のような体を持つそれは、翼というより触角に近い4つの触手を羽ばたかせるように動かす。十分に上昇した後、そしてその顔を参加者たちに向ける。
「ひぃっ……」
その外見に誰かが思わず、恐怖の声を上げる。本来、顔がある部分にそれはなく、あるのはただの大きな『穴』。ただ黒く、底が見えないような『空洞』。現実にはありえない見た目に嫌悪感がにじみ出る。
「『奈落の虫』だっ!吸われたら終わりだぞ!」
冷静だったある受験者がその名を叫ぶ。ほぼ同時に、周囲にあった瓦礫が空中にいるはずの『奈落の虫』の口に吸い込まれていく。
(あれが『奈落の虫』!柊くんが『虫の厄災』とも『奈落の厄災』とも書かなかったのは、知性魔獣の形態が口の中が奈落になっている虫だから!……いや、ちょっと待てよ)
『奈落の虫』から離れるために、フルカウルを発動させる。移動しながら、空中で口を開くそれを見つめ、事前に調べた『オベロン』とも『ヴォーティガン』とも関連性が見えない姿を見て、考察を続ける。
(奈落の……虫……。確かにトンボのように見えなくないけど、何か違和感がある。何だ?僕は今、何に引っかかっている?)
漠然とある不安を抱えながら、会場端に設置されている救護者が集められている場所に移動する。すると、
「緑谷!今回の知性魔獣ってあれか?とんでもないデカさじゃねえか、会場の上空ほぼ埋め尽くしてんぞ!」
「あれなに!?周囲は『奈落の虫』って言ってるけど、合ってそう!?」
緑谷の到来に気づいた、峰田、芦戸、口田が近寄ってくる。
「ビル一棟はある大量の瓦礫を飲み込んだはずなのに、それらしきものが口の中になかった。多分、口の中が奈落になっている虫なんだ」
緑谷の考察を聞き、もう驚かないと言いたげな峰田と芦戸を押しのけ、口田が緑谷に話しかける。
「み、緑谷くん、ちょっと聞いてほしいことが、あるんだけど……」
緑谷は何か重大なことを発見したかのような口田の顔を見て、その耳を傾ける。
「うぉぉぉ、何だありゃあ!?巨大な幼虫か、キモッ!!」
「無駄なこと言ってないで走れ、上鳴ィ!明らかに、こっちに向かって飛んできてる!」
緑谷が向かった救護者を集める場所と反対側の端。『奈落の虫』の出現を確認し、そこを迂回するように会場端を移動し、救護者を運ぶ上鳴と切島。しかし、『奈落の虫』は彼らを発見し、触手をうねらせ、空中をもがくようにこちらへ進んできている。
「……」
そんな中でも、沈黙しながら『奈落の虫』を観察し続ける爆豪。自分の個性とその出力を持って、あれにどう攻撃するのかをじっくりと考える。コスチュームに付随している爆弾には十分な量の汗が溜まっており、体の調子も万全。これまでの知性魔獣と行われた訓練で完膚なきまでに倒された苦い思い出を振り返り、悪手であった行動も全て頭で復習した。
「行くのか、爆豪?」
「……あぁ。テメエらはそいつらを運んでこい」
「任せろ!っていうか、俺たちはあの高さじゃ何もできねえからな」
「ポインターさえ届けばなーっと、気をつけろよ!」
爆豪は自らの爆発で空を飛ぶ。近づけば近づくほど、その異質さが沸き立つ。半透明の体なのに、吸い込んだものが中に見えない。翼がないのに空中に浮いており、頭がないため、弱点らしきものも見当たらない。『奈落の虫』は飛んでくる爆豪には目もくれず、切島と上鳴を追いかけ続ける。
「すげえ、これが知性魔獣……」
『奈落の虫』上部まで飛び上がると、そこにはもう一人の参加者が居た。士傑高校の夜嵐イナサである。
「凄まじい相手! 乗り越えるべき壁! うおぉお、頑張るッス!!!」
強風が渦を巻き、『奈落の虫』の触手の一本に向けて飛んでいく。強風が触手を狙い撃ちにするものの、動きを多少制限するだけで、ダメージを与えているようには見えない。
「バカが! そんなヒョロヒョロ風で何かできると思ってんのか、クソ風!」
「クソ風!? 酷い言われようで、俺、びっくりしてるッス!」
生半可な攻撃が通用する相手ではないと知っている爆豪と知性魔獣と対面すること自体が初めての夜嵐では、認識の違いが大きい。そこから出るギャップの差が、モロに爆豪の神経を逆なでしていた。
「見りゃわかんだろ! あれは個人の個性ごときで倒せるもんじゃねえ、てめぇの個性貸せ! 爆発の威力を上げてブチ込む!」
「はぁ!? いや、ちょっと自分勝手すぎるでしょう、あんた!」
言い争いが加熱しているとき、『奈落の虫』がうめき声を上げる。爆豪と夜嵐が言い争いを止め、『奈落の虫』に注目し、それが不自然に背中を反らし始めていることに気づく。
「おい、止めるぞ! 背中にぶち込め!」
「言われなくても!」
2人で『奈落の虫』の反撃に対処できるほどの距離まで詰めた後、夜嵐の出す竜巻に合わせるように、爆豪は両手の爆発を仕込む。合わせたことのない技のはずだが、爆発を伴う竜巻は寸分違わずに背中へ命中する。
オォォオオォォン
爆発に少し応えたかのように見えたが、『奈落の虫』はそのまま反らした背中を勢いよく、逆側へ戻す。その時、背中から大量の黒いナニカが空中へと放出される。飛び出たものは空中で爆散し、会場の至る所に飛び散っていく。ただ、飛び散っただけで何か被害があるようには見えない。
「……何がしたかったんだ?」
夜嵐は警戒こそ解いていないものの、『奈落の虫』の行動の意図が読めていない。爆豪も『奈落の虫』が何をしたのかは理解していない。ただ、彼は訓練を通して知性魔獣の桁外れな個性とその出力を知っている。
オオオオオオォォォン!
『奈落の虫』の声に応じて、飛び散った者たちが動き始める。液体状に盛り上がり、その中に目のような2つの光を宿す。大小様々なそれは、試験会場一帯に散らばっていた。その全てが救護者のいる場所へと動き始める。
「チッ、めんどうくさい手札を切ってきやがる」
爆豪は悪態をつくと同時に、
イナサと爆豪って関わりないのよな。あったらいいな~的に書きました。ちょっとイナサが変な気がするけど。
仮免、誰がいい?
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炎の厄災
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獣の厄災
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呪いの厄災
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奈落の虫