Lv.0の魔道士 re   作:蓮根畑

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更新が遅くなって申し訳ない。
最近は忙しくて書く暇がありませんでした。もう少ししたら書き始めて一年・・・こんなペースじゃ絶対に終わらないので今後は早めていきたい所。


Lv.47 黒閃

 

 

 

 

話はエルザとジョニィが戦った日に戻る。

エルザとの接戦をしたものも惜しくも破れてしまったジョニィはギルドの2階で休憩しておりエルザ、ルーシィ、サクラの3人はギルド1階のカウンターで話し合っていた。

 

「やっぱりS級って強いわね。ジョニィが負けちゃったんだから」

「そうですよね。アルさんが強いことは身にしみて分かってたんですけどそれを更に超えてくるとは」

 

マグカップに入ったコーヒーを持ち上げるのをやめたエルザが苦笑い気味で二人に言葉を返した。

 

「いや、あれは実際には私の負けだった」

「「え?」」

 

エルザの言葉に思わず驚きを隠せない二人。

あの戦いはどう見てもエルザの勝ちだったのにどうしてそんなことを言うのだろうか。

 

「えっと、どうして?」

「これは戦った私にしか分からないと思うのだが・・・確かに形式上では私の勝ちだった。が──」

 

エルザが強張った顔でマグカップを持ち上げようとするがソーサーから持ち上がらない。正確には持ち上げようとしているのだが震えているのかカタカタと音を立てていた。

 

「恐ろしいキレと重さだった・・・!

未だに痺れが残っている・・・!」

 

 

ふぅ、と一呼吸置き、マグカップから手を離すエルザ。

 

「私はほとんど魔力を体の強化に注ぎ込んでいたのに対し、あいつは限られた一瞬だけ強化して私とほぼ同等の技量だった。魔法なしの戦いか、あいつが私と同じだけど魔力を持っていればおそらく──・・・」

 

言葉は続かない。しかしその言葉の真意を2人は理解していた。

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああぁぁぁぁぁぁァァァ!!!」

 

叫び声が反響する。痛みに神経が集中し過ぎているのか涎は口から垂れ、目が充血していく。黒い魔力がジョニィの中に集まり、それらが体外へと放出され形作る。

 

「アルさん!?」

「やめろ!今行ったら巻き込まれるぞ!」

「けど・・・!」

 

自分は何の助けにもなれていない。自分の無力さを思わず恥じてしまう。

黒い魔力はジョニィを取り囲み、姿を隠させた。離れていても分かる魔力の量。ただ魔力そのものが感情でも持っているのか、肌に突き刺さるような感覚が残る。

 

「ジョニィ!」

「待て!ナツ!あぁ、クソッタレが!」

 

ナツについでグレイが飛び出した。ジョニィを球状に囲う黒い魔力に向かって、炎を纏った拳や蹴りが何度も何度も炸裂するが壊れる気配がまるでない。

 

「くそっ!何でだよ!」

「やめろナツ!腕が壊れるぞ!」

「うるせぇ!」

 

静止するナツをグレイは必死に止めるがそれでも止めない。黒い魔力に拳が当たるたびに裂けた肌から痛々しい血が吹き出す。

 

「ジョニィを・・・離しやがれええぇぇぇぇ!!!」

 

祈りが届いたのか、ナツが再び拳を放った時、黒い魔力にヒビが入った。ピキピキと少しずつ黒い魔力がひび割れ、中から白い光が漏れ出した。

 

「ちょっと待てよ・・・幾ら何でもこんなのあるか・・・!?」

 

漏れ出す白い光は聖なる光ではなく、反転の光。白なのに闇という矛盾を抱えた光は周りから吸収した魔力を自分の中へと溜め込み、蛹から蝶へと生まれ変わるように、今それが降臨する。

 

 

「二人ともすぐに離れ───」

 

 

ジョニィを囲んでいた黒い魔力、いや殻が内側から爆発し極光を辺り一帯に放った。爆発の影響は凄まじく、離れたところにいたエルザ達の視界すらも埋め尽くした。

 

「「うおおぉぉ!!??」」

「むんっ!」

 

ジュラは爆発で飛んだ二人を器用に土を操作して滑り台のようなものを作り二人を地面に戻した。

 

「どうなった・・・?」

「おい、アレは何なんだ・・・?」

 

レンが指差した方向は未だ煙が舞い上がり視界良好とは言えなかったが、黒い何かの姿を微かに捉えた。

 

「まさかとは思うがニルヴァーナの核を体内に取り入れたのか・・・!?」

「どういう事?」

「ニルヴァーナの魔法は説明したね?ホットアイ程の魔道士が反転したんだ。そんなものを体内に直接打ち込まれたりでもしたら・・・」

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎────!!!」

 

獣のような咆哮が轟いた。巻き上がっていた煙は咆哮によって掻き消され、うっすらと見えた黒い影の正体が分かった。

鬼のような仮面をかけた化け物と言えば一番近いのだろうか。黒い魔力を纏った手足が地面につけられ、仮面から飛び出た鈍く光る黒い角が体が動くたびユラユラと動く。

 

「あれがジョニィなのか・・・?」

「見る影もないがおそらくは・・・」

 

 

黒い獣はサクラ達のいる方向を何をするわけでもなくじっと見つめている。

 

「こっちに来ないな」

「意識があるんじゃない?」

「いや・・・どちらかと言うとアレは」

 

エルザは自身が行ったクエストで対峙した獣達を思い出していた。じっと見つめる目は興味がないということではなく───

 

 

 

「こちらを品定めしているような・・・」

 

 

 

 

3人、空中に飛んでいた。

 

 

 

「は?」

 

 

目は一瞬たりとも離していなかった。しかし、動く瞬間も動いたという認識すら全く出来なかった。音もなく静かにレンとイヴ、そしてシェリーが空中に舞い上げられ意識も奪われているのか地に落ちる音だけを残して動かなくなった。そこまでしてようやく黒い獣が元いた場所が陥没した。

 

「ジョニィ何を───!」

「◼︎◼︎◼︎・・・」

 

エルザの問いかけに反応すらせず黒い右腕が伸びる。エルザの顔のすぐ横を通り過ぎた腕はエルザの後ろにいた一夜を正確に掴みそのまま伸び続け壁に叩きつけた。伸縮自在の腕なのか伸びた腕はシュルシュルと元の長さに戻る。約5秒。5秒しか経っていないのに既に4人がやられた。

 

「お前・・・!

何をしている!」

 

ここまで来てようやくリオンが動いた。思考が停止していたが直ぐに拳を掌に乗せ魔法を放つ。リオンとグレイは同じ氷の造形魔道士であるがグレイが剣や、斧といった武器を作る「静」という性質を持っているのに対し、リオンは鳥や虎のような「動」と性質を持っている。同じ魔法ではあるがリオンの魔法の方が機動性がよく追尾、操作が出来る。それを使い黒い獣の左右上下に氷の鳥を放つ。まともに受ければ大ダメージが期待出来るが黒い獣は逃げない。

 

(何故逃げない・・・!?

当たれば致命傷だぞ!?)

 

青い残光を残して、氷の鳥は黒い獣に直撃した。氷の爆風は離れた所にまで届き地面の上に氷の結晶がパラパラと落ちる。狙った箇所は首の裏、心臓を前と後ろ、そして腹。一箇所でも当たると後に響く痛みを追うはず。だというのに───

 

 

「◼︎◼︎◼︎・・・」

 

 

無傷。

黒い魔力が体全体に纏っているせいだろうか。それとも目に捉えることが出来ない超高速によって迎撃したのかは分からない。しかしまるで効いていないということには変わりはない。

 

「アイスメイク───牢獄(プリズン)!」

 

氷の牢獄が降り、黒い獣を閉じ込めた。次いで格子と格子の隙間に打ち込まれた氷の剣や斧が直撃する。

 

「リオン!しっかりしろ!やられるぞ!」

「あ・・・」

 

考えることが静止していた。あの黒い獣は人間の本能的な所で敵わないと理解してしまう。だから恐怖しないように考える事を自然とやめていたのだ。取り戻した意識を使い氷の魔法を再び放つ。

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎◼︎!!!」

 

 

例えるなら音の爆弾。巨大な咆哮は氷の牢獄をいとも簡単に粉砕し、次いで降り注ぐ剣や鳥を無残に破壊した。あまりの音で耳を塞ぐ。塞いでしまった。

グチャッ!と、音にすればそんな風になるのか。体の臓器を保持する骨など容易に砕き、そのまま内蔵を貫いていた。





あーあ、この後どうしよう◀︎何も考えていない!

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