Lv.0の魔道士 re   作:蓮根畑

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お久しぶりでございまする。
グラブルやら学業やらが忙しすぎて書く暇はないし、原作はないしで難儀でございます。そして次の月曜から地獄が始まるのでまた投稿期間が遅れそうだZE・・・


Lv.49 覚醒

 

 

 

 

 

俺はただ伝えたかっただけだった

 

 

 

一筋の光は俺を照らしてくれ生きるための目的を教えてくれた

 

 

なのに何でやつらはそんな目を向ける

 

 

そんな目をするな

何も分かってないくせに

 

 

そんな目をするな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジョニィ!すまん!」

 

身に迫る大剣を担ぎ、石柱に押さえつけられている黒い獣めがけて疾走するエルザ。黒い獣は敗北を受け入れたかのように大人しくしている。エルザの腕力にスピードが加わった一撃は巨石すらも容易に塵となるだろう。しかし使うのは側面だ。仲間思いのエルザの優しさであると言えるだろう。

 

 

「◼︎◼︎◼︎◼︎・・・!」

 

 

距離は残り2メートル。空気の層を裂きながら迫る大剣は、無抵抗な胴体に振り落とされる。これで終われ、と心で願い落ちた刃は──

 

 

 

「───◼︎◼︎◼︎(天彗龍)

 

 

 

赤い噴流によって掬だけを残して消えていた。

 

 

「──な!?」

 

 

その技は、彼ではない彼が見た技の一つ。竜の力を持つ少女が用いた滅竜魔法。天彗龍。字のごとく天をかける彗星のような速さで飛ぶ竜の力が今具現化した。

エルザがそんなことを知っているわけがなく驚きのあまり反応が遅れ空中に吹き飛んだが、バランスを立て直し両足で静かに着地し正面を睨みつけた。

 

 

「────」

 

 

赤い噴流は縛り付けていた岩石を跳ねどけ、降り注ぐ雨のように砕けた石が空から落ちる。その中心に立つ黒い獣は今までの四足歩行の体勢から、二足歩行に移行し、その振る舞いは人間そのものであった。

黒い獣は顔に張り付いたツノの生えた仮面に手を当てて、引き剥がす。ガラスが砕け散るような音が響くと同時に、纏わりついていた黒い魔力が弾けた。

 

 

(荒れ狂っていた魔力が収まった・・・安定している)

 

 

そこに立っていたのはジョニィ・アルバートそのものであったが、肌は褐色に染まり、髪色も真っ白へと変貌している。その二つの点さえ除けば違いはないのだが第六感というやつなのか、エルザはさらに気を引き締めた。

 

「誰だ──?」

 

最初に発した言葉は安堵の声ではなく、緊張に包まれた確認だった。剣を持つ手が強張るエルザに対して、ジョニィはおちゃらけた声で言葉を返した。

 

「おいおい、仲間の顔を忘れたっていうのか?」

 

正面を向いたジョニィの目は赤色に染まっており、瞳孔は万華鏡のように美しく、しかしどこか狂気を感じさせるような紋様が描かれていた。自身の体を確かめるように手を握っては開きを繰り返し、つま先を地面に軽く打ち付けた。

 

「そんな警戒するなよ。戦う気はないからさ・・・」

 

ニタニタと笑うその姿はピエロのように見えた。黒い獣よりも穏やかで、理性があるというのに何故か冷や汗が止まらない。

来る、と確信し正体が分からないがそれ以上に何か恐ろしい気配を感じ取ったエルザは最大量の魔力を体に流し大地を踏みつけて前に出た。

 

「ハアアアァァァ!!!」

「大振りだな。そんなんじゃやられたい放題だ」

 

エルザが大剣を振り上げて打ち降ろすまでにかかる時間は1秒もかからない。人間が何かに反応するまでにかかる時間はどんな超人でも0.1秒を超えることはできない。故にエルザのこの一撃は目に入った瞬間には既に刃が体に迫っている。仮に防御姿勢を取っていたとしても弾き飛ばされるのが精々だ。

 

 

「──六龍牙」

 

 

神速とは正にコレを意味するだろう、と言わせるかのごとく放たれた六連打は全て同じ箇所に撃ち込まれた。六発全て鎧の上。剣や斧による斬撃から守るためのプロテクターにはダメージは無くとも衝撃が伝わる。それが奥に差し込まれる釘のごとく奥に奥へと衝撃が伝わり背中で反射して前から来た衝撃とぶつかり体内で爆発が起きる。

 

 

「───カハッ」

 

 

エルザの口から外傷とは不似合いな血液が溢れ出した。打ち込まれた6撃で空中に浮かんだエルザの軌道に合わせて技を撃ち終わったジョニィの体が回転する。鞭のようにしなる足は体ごと空中で一回転しエルザの背中に蹴落とし地面へと叩きつけた。しかし地面が途端に湾曲し柔らかいソファに落ちたように叩きつけられた衝撃が分散された。

 

「──ん?」

「地面を柔らかくしました・・・そして今デス!」

 

いつのまにかぬかるんだ地面がジョニィの足首を噛み付いた蛇のように絡めとりグイっと空中に引っ張り上げる。いかに化け物じみた強さとは言えど空中では身動きは取れない。そこに四方八方から迫る炎弾、氷の剣、更には石柱が迫り来る。過剰とも言える攻撃。しかしジョニィは焦ることなく飛来する攻撃を万華鏡の瞳で全て目視しおもむろに右手を横に伸ばした。

 

 

「───来い」

 

 

その一言がトリガーとなり地面に刺さっていたジョニィの黒刀がひとりでに抜け、弧を描きながらジョニィの掌に収まった。その瞬間黒い竜巻のようなものが刀身上に現れ絡みつく。細く鋭い刀身が、鋭さは変わらず刀身の幅が増大していく。

 

「オォラァ!」

 

力任せに振り抜かれた太刀は風の刃を無数に発生させ飛来する攻撃を切り裂いた。余波により暴風が吹き荒れ目を開けるのすら困難な状況でもジョニィは変わらず次の獲物を定めた。足に絡みついた土を切り裂き、掌から風を噴出させ一気にヒビキの懐へと潜り込み太刀を大きく後ろに引いた。

 

「お前は何かと面倒だからな。先にやらせて貰う」

 

 

防御の姿勢も取れないままヒビキの胴に吸い込まれるように黒い太刀が迫る。死の覚悟をした瞬間、銀閃がジョニィとヒビキの間を通り過ぎた。閃光のように真っ直ぐ伸びる物の正体は白銀に光る刀。

一瞬気を取られたジョニィ。顔を戻した時には目の前には魔力を帯びた蹴りが飛んできていた。

 

「ハアアアァァァ!!」

 

裂帛の声を乗せた一撃はサクラによるものだった。太刀を戻すには遅すぎるし、手放しても対処は間に合わない。ならばと万華鏡の如き美しい瞳を脈動させる。

 

 

「───須佐能乎(スサノオ)

 

 

地獄からの使者のように地から現れた、人間の骨格の形をした化け物はジョニィを守るように包み込み人間の5倍に匹敵する巨腕を持って蹴りの威力を殺した。そのまま薙ぎ払うように腕を払いヒビキとサクラを吹き飛ばす。

 

「こいつはいい。力が溢れてやがる・・・!」

 

体から外に放出される黒い魔力が、左半身しかない黒い骸骨の空の手に収束される。轟と唸らせるそれはまるで炎の剣のようではあるが、黒を飲み込む闇を思わせるその色が炎でないことを明らかにしていた。

 

「おいおい・・・いくらなんでもあれはやばいんじゃねぇのか・・・!?」

「グレイ!合わせろ!」

 

体から流れる冷や汗が止まらない。しかし、それが諦める理由にはならない。前へと疾走したナツの意図を即座に読み取り、掌に拳を勢いよく乗せた。

 

 

「アイスメイク──氷聖剣(コールドエクスカリバー)!」

 

 

白い冷気が凝縮され、生み出されたのは身の丈に迫る巨大な氷の剣。それが2本、グレイの背後で放たれるのを今か今かと待ちわびる。

 

「オオォラアアァァァァ!!」

 

グレイの手が前方へと伸びるのと同時に一本、そして二本目が数秒遅れで飛翔する。地を凍らせながら真っ直ぐ飛翔する氷の大剣はどういうことかジョニィの直線上にいるナツにも当たるような軌道。

 

 

「ナイスパスだなグレイ!」

 

 

ボッ!!と勢いよく炎がナツの足から放出され軽く宙に飛び上がる。更に炎の噴出が続きナツの体は独楽のように早く回り、炎の残光が円を形作る。

氷の大剣が紙一重でナツの横を通り過ぎたその時、飛翔する大剣の柄を加速された足で蹴り抜く──!

 

 

「──オマケにもう一つだァ!」

 

 

倍の加速となった氷の大剣は青の閃光を残してジョニィとの距離を一瞬で詰める。あの黒い骸骨の耐久力は異常とも言える。現時点で放てる最大の魔法。

 

 

「──無駄だ」

 

 

いとも簡単に、服に絡みついた蜘蛛の巣を手で取るのと同じように飛んでくる氷の大剣を、須佐能乎の刀で簡単に弾いて見せた。

これで終わりだとジョニィは笑みを浮かべたがナツ達の表情がおかしい。笑っている。

まるでこうなるのが予定通りだと言わんばかりに──

 

「お前目ェいいもんな・・・けど見えないところからなら目は関係ねぇ!」

 

──後ろ!

と思った時には緋色の髪をたなびかせ氷の大剣を振り下ろす姿が目に入った。

いつのまに復帰したのだろうか。それにいつのまに連携を取っていたのか。そんなことはジョニィには分からない。しかし、彼らの絆は言葉がなくても伝わる。仲間を救うためならばこんなことは朝飯前だと。

 

 

「目を覚ませジョニィー!」

 

 

驚きはしなかった。だが別の感情が腹の底から沸々と沸く。羨望や嫉妬ではなく憤怒。

仲間との絆?そんな目に見えないものを信じてどうする?信じられるのは己のみ。それ以外は利用価値のあるやつか敵のみ。それを信じるなんて馬鹿らしい。

だがそれを顔に出さず。嘲笑う。

万華鏡の瞳が胎動する。それが無価値だと証明するために彼は口を開いた。

 

 

「──レベルアップだ」

 

 

瞳が、紅く輝く。






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