Lv.0の魔道士 re   作:蓮根畑

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アローラ どうも蓮根畑です。
エーペックスやらEDFをやってたら投稿が遅れてしまいました。
だけどエーペックスは面白いんじゃ・・・許せサスケ。


Lv.58 空の世界へ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──マグノリアはまもなく消滅する

 

先日捕まったジェラールと全く同じ顔をしたミストガンは力なさそうにそう言った。もう一つの世界やアニマという単語は聞いたことがないが、このままだとギルド諸共消滅してしまうことは伝わり、踵を返してギルドへと向かった。疲れや冷えた体を無視し、走る。

 

 

「みんなー!空が───」

 

 

ギルドに入るまであと少しだった。

 

 

───視界が歪んだ。

 

 

違う。歪んでいるのはウェンディ以外の全てだった。建物も、地面も、木々も容赦なく天に開いた穴に吸い込まれる。突風が吹き荒れたせいで思わず目を閉じた。時間にして約5秒間だった。だそれだけの時間で何もかもが消えて無くなっていた。世界という絵に白の絵の具を一滴垂らしたかのように真っ白であり、降り積もった雪のような静けさが包んでいた。

 

「嘘・・・本当に何も・・・」

 

呟いた声は誰にも聞こえず、全てがなくなった街でウェンディは瞳を濡らした。何故自分だけが残っているのか。何故急にこんなことが起こるのか分からない。だからどうしようもなかった。頼る人もいない。ここからどうすれば───

 

 

───ボコっ

 

 

「ひっ」

 

 

真っ白な平野に一つ盛り上がりが出来ていた。ボコボコと膨れ上がり降り積もった雪のような何かを払い退けると中から盛大な呼吸音が聞こえた。

 

「いきなり何が起きたんだ!?」

「ナツさん!」

 

ナツは埋もれた下半身を引きずり出し、体全体に降り積もった何かを払い退けた。

 

「無事だったんですね!」

「寝てたからな。起きたら何が起きてんだこれは?」

「滅竜魔道士の特殊な魔力で地上に残ったのね」

「シャルル!」

 

ウェンディがシャルルに駆け寄ると同時に背中に生えていた翼を消し、足元に降り立った。

 

 

「おーーい!ナツーーー!」

「おぉ!?ハッピーじゃねぇか!」

 

 

そしてほぼ同じタイミングでハッピーのナツを見つけて足元に降り立った。喜ばしい光景であるはずなのに、シャルルは忌々しい物を見るかのようだった。

 

「オスネコも残ってたのね・・・」

「オイラ・・・シャルルを探しに行ってたら急に街が空に吸い込まれて・・・それで」

「今に至る、ということですね」

「あい」

 

ハッピーもウェンディとほとんど同じ境遇だった。シャルルは「本当に何も知らないのね」と周りに聞こえないように呟き、ワザとらしく一度咳をした。

 

「この街は、遥か上空にあるエドラスによって吸い取られたわ」

「エドラス?何だそれ?」

「そうね。私やオスネコの生まれ故郷って所かしら」

「えぇ!?シャルルはオイラの故郷を知ってるの!?」

 

ナツがハッピー、正確にはハッピーが生まれた卵を拾ったのは森の中だった。深くは考えていなかったが捨てられた可能性もあったし、故郷がどこかも分からない。それを知っているシャルルに驚いたのだが、一方のシャルルはストレスを収めるようにこめかみを押していた。

 

「エドラスは魔力が有限。その為定期的にアニマ・・・あの空に開いていた穴から地上の魔力を魔力結晶(ラクリマ)として回収するのよ・・・だけど」

 

 

シャルルの脳裏に現れたのはミストガンと呼ばれていた男。

 

 

「何者かによって地上に開いていた小さなアニマは全て閉じられた。その結果エドラスの魔力は日々減少。それを解消するため───」

「巨大なアニマを作って街一つを吸い取ったってこと・・・?」

「何だそれ!?随分と勝手な奴らだなコノヤロー!」

 

ナツは上空に向かって叫ぶが帰ってくる言葉はなく、シャルルは分かっていたかのように続きを話し始めた。

 

「私やオスネコが残っているのはエドラス出身のため、そして貴方達は繰り返すようだけど滅竜魔道士だったからね」

「そう言えばシャルルは何でそんなこと知っているの?」

「・・・私やオスネコには使命があるのよ。だからきっと知っているのね。だと言うのに・・・!」

 

 

キッ、と冷たい目を向け溜まっていたストレスを吐き出すように言った。

 

 

「何であんたは何も知らないのよ!」

 

 

ハッピーは立ち尽くすだけだ。知らないものは知らないのだ。仕方がない反応だろう。ピリピリとした空気が周りを支配する中、それを壊すようにナツは自身の掌に拳を軽く叩きつけた。

 

 

「それじゃ、そのエドラスって所に行くか!」

「あなた本気!?」

 

 

何の前触れもなく、敵の正体すらあやふやだというのにこの判断。ナツらしい選択だ。

 

「おう。仲間を取られてはいそうですかって見逃せるわけねぇしな」

「どうしようナツ。オイラ考えただけでお腹がすいてきたよ」

 

ぎゅるるるる、と場に不相応な音が響いたが、ナツは元気の証拠だと笑って答えた。シャルルはこうなる事が分かっていたかのような顔を浮かべた。

 

「分かったわ。でもいい?私やここにいるオスネコがエドラスに立ち向かうってことは使命を放棄すること。それでも私達が裏切るような行為をしたなら───」

 

 

 

「───躊躇わず殺しなさい」

 

 

エドラスからの使命が何なのかはシャルル以外分からない。ただその使命が自分の命に関わる程重大な事だと分かった。それでもウェンディは笑って答えた。

 

 

「殺さないよ。だって大切な友達だもん」

 

 

呆れたようにシャルルは笑った。

 

 

「よし!そんじゃ行くか!」

「あいさ!・・・でもどうやって?」

「・・・殴るか?」

「殴って行ける場所じゃないわよ。そもそも何を殴るのよ」

 

シャルルは(エーラ)の魔法を使い、ナツ達の顔と同じ高さまで飛びあがり、蔑むような目でハッピーを見て、翼を出しなさいと冷徹に言った。その無言の圧力とでもいう何かに背を押されたハッピーは敬礼をしながら翼を出し、シャルルと同じように顔元まで飛んだ。

 

「私達の翼はエドラスに帰る為にあるのよ。残ったアニマからエドラスへと渡るわ」

「燃えてきたな・・・!」

 

シャルルとハッピーがそれぞれナツとウェンディの背中に引っ付き、体を浮かした。

 

「それじゃ・・・行くか!」

「あいさ!!」

 

背中に生えた翼が輝き、槍の如く真っ直ぐ空へと伸びた。それに次いでシャルルも同じように槍となり空へと羽ばたいた。冷たい空気が肌を刺すが、それを気にすることもなくさらに高く高く。

 

「魔力を全開放しなさい!突っ切るわよ!」

「あい!」

 

一条の流星が空高く舞い上がる。何もない空に歪みが出来た。取り込むように空間が湾曲し───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ボコっ

 

 

 

─────ボコボコボコボコ・・・!

 

 

 

「ぷっはぁー!死ぬかと思ったーーー!」

 

 

そして、ここにもアニマに巻き込まれなかった姿があった。





最初のナツ達の会話。普段の俺なら100%飛ばしてた自信がある。以外と簡単かなぁと思ったナツの口調がやけに難しく感じたね。
エドラスはガチで書く為投稿速度落ちるかもだけど許してね。

次回はジョニィとサクラ視点かなぁ

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