Lv.0の魔道士 re   作:蓮根畑

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旅行先でビックリするほど何もないので投稿速度アップ。せっかくのゴールデンウィークがどんどん消化されていく・・・


Lv.62 第零魔戦部隊

 

 

 

 

 

 

 

───私の槍は何処だ

 

 

夜の闇と炎の赤が視界が覆う。見渡す限り赤赤赤赤。炎ではないもう一つの赤。全て人間の臓物から溢れ出した血。彼を止めるために真っ先に特攻した彼女だったが、ふと自分の槍がなくなっていることに気づいた。右腕を持ち上げ────

 

 

ない。右腕がない。サクリ、地に何かが刺さる音がした。見るな、と何かが警告する。だがもう遅かった。

 

 

槍を持ったままの腕があった。ずるりずるり、と徐々に握る力がなくなり、ズチャと血の沼に落ちた。

 

 

死体の山に立つその鬼を見る。人でありながらまさしくその姿は鬼。狙いを見つけたかのように歪んだ目を向け───

 

 

 

 

 

 

 

「夢か・・・」

 

最悪の目覚めだろう。暖かな陽光が部屋を照らす中、エルザ・ナイトウォーカーは冷や汗で濡れた服を脱ぎ捨て、シャワーを浴びた。新たな服を着て、鎧を付ける。もはや身体の一部と化している鎧の重さは心地よかった。ドアを開け少し開けると城下街が見えた。視線を上げる。空を流れる雲のようにプカプカと浮かぶ大地。その一角に青のラクリマが山のように鎮座していた。

 

「おはようエルザ。相変わらず早起きだねぇ」

「シュガーボーイか。早起きというのならそちらもだろう」

 

エルザの反対側の通路からやってきたシュガーボーイは確かにね、と爽やかな笑みを浮かながら、少し生えたヒゲをなぞる。リーゼントにケツアゴとかなり特徴的な彼だが、その実力は本物であり第四魔戦部隊長の位を持っている。その彼の後ろを少し遅れて来る少年は眠たいのか大きな欠伸をしていた。

 

「おいヒューズ。見てみろよ」

「なぁに?俺昨日も遊園地で働き詰めで──ってスゲェ!なんかスゲェなおい!」

 

手すりに身を乗り出し、好きなおもちゃを見つけたようなキラキラした瞳でラクリマを見つめるのは第三魔戦部隊長のヒューズ。エルザよりも若く部隊長になった彼は一見ただの少年に見えて頭脳明晰で冷静た判断を出せる男だ。ただ語彙力が崩壊するのが玉に瑕なのだが。

 

「なんかスゲェを通り越して・・・スゲェ!マジスゲェ!なぁ、シュガーボーイ!」

「んー凄い凄い」

 

軽く受け流すシュガーボーイ。もはや慣れっこだった。

 

「エルザよ・・・また逃したらしいな」

 

足音もなく近づいてきたのは加齢により腰が少し曲がった初老の男バイロ。科学者でありながら幕僚長でもある彼はニタニタと醜態を笑うような引き攣った笑みを浮かべた。

 

「んー・・・残ったギルドは妖精の尻尾だけとは言えども彼らは逃げ足がとんでもないくらい早いからねぇ」

「でもそろそろ転送装置も切れるでしょ。時間はかかってももうすぐヤレるよ」

 

妖精の尻尾の殲滅。エルザが王より直接言い渡されたその任務は中々上手く行かなかった。その理由として他ギルドが持ってなかった転送装置を持っていること。そして彼らが臆病が故に察せる危機感。この二つが重なりギルドを発見してもすぐさま逃げられてしまうのだ。

 

「ラクリマ抽出でヤツラもどう出るか分からんからのぉ・・・早く仕留めろ」

 

了解、と。ただ簡潔に述べる。自分のミスをどれだけ言い訳してもミスをしたことには変わりない。それにバイロは人の苦しむ様を見るのが好きなやつだ。だからあえて何も反応しない。

 

「・・・フン」

 

バイロの後ろに立っていた長身な獣。目元に傷が入った歴戦の戦士を思わせる彼はパンサーリリー。神の国エクスタリアから追放されたエクシードの1人。王都に入ってまもなくその腕が認められて第一魔戦部隊長に任命された彼は空に浮かぶラクリマを見ても何も思ってないのか一度見たきり、過ぎ去って行ったバイロの後を付いて行った。

その彼の後ろ姿を見てシュガーボーイとヒューズは呆れた目をしていた。

 

「なんだあいつ。興味なさそうだな。あんなスゲェのに」

「うぅん。最近軍の強化が気にくわないらしいからそこで苛立っているのかもねぇ。それとも───」

 

 

 

 

「また彼女(・・)に負けたのが悔しかったのかな?」

 

 

コツコツと、大理石の床を鳴らす音が2つ聞こえた。シュガーボーイが噂をすればと笑いながら言う。影を指していた全貌に光が差す。現れたのは紋が刻まれた純白のマントに煌びやかに輝く銀の鎧。サラサラとした絹のごとき白い髪が光によって更に美しく見えた。天使のように見えどその目に宿す鋼のような冷めた瞳は死神。

 

 

───第零魔戦部隊長 サクラ・ナイトウォーカー

 

 

「流石<死を告げる天使>と呼ばれているだけあるねぇ・・・様になってる」

 

 

エルザの前で止まる。両者睨み合うような形だ。謎の緊迫感が生まれその場にいる全員が思わず黙り込んだ。ヒューズは何だこの緊迫感と内心ツッコミを入れた。

睨み合うこと約10秒。両者口がゆっくりと開く。

 

「何だか久しぶりだなサクラ。任務か?」

「えぇ、レジスタンスの弾圧で・・・中々手こずりました」

(何だったんださっきの緊迫感!?)

 

ヒューズは自分の内にしたツッコミをもう一度己の内で行った。ワザワザ黙り会う必要もないだろうと言いたいがガールズトークを邪魔するわけにもいかない。

 

「ラクリマの抽出も上手く行ったことですからね・・・反乱分子が何かと企てるんですよ」

「それは大変だったな。そうだ・・・仕事終わりだ。この後暇か?」

「え?まぁ時間はありますけど・・・」

 

 

 

「そうかそうか!なら飯に行かないか?美味い(・・・)店を見つけたんだ」

 

 

ピクリ、とサクラの肩が少し上がった。美味い店。甘美な響きだ。美味しいものを食べるとは幸せなことだろう。ただし人によって美味いの定義は異なってくるが。

 

「へ、へぇ・・・それはぜひ行ってみたいですねぇ・・・」

 

目が泳ぐ。サクラは知っていた。エルザ・ナイトウォーカーが狂っているとしか言いようがないほどの辛いもの好き(・・・・・・)言うことに。初めてエルザに食事に誘われ楽しみにしていたのに、出てきたものは赤一色だった。まさに地獄だろう。

 

『さぁ、今日は私の奢りだ!食え!』

 

何を、と聞き返さなかったサクラは賢かった。マグマのようにグツグツと何かが煮えたぎる何かを食べた。そのあとは何も覚えていなかった。ただ記憶の中にポッカリと穴が空いたような気持ちになったことは確かだった。辛味は人を壊す。

 

「で、ですが任務の報告しに行かないと・・・ですからジョニィが代わりに・・・」

「隊長、もう報告し終えてます」

 

 

───第零魔戦部副隊長 ジョニィ・ナイトウォーカー

 

 

サクラの後ろで待機していた彼が遠くを見ながらそう告げた。サクラはすぐに後ろに振り向きキッとエルザに見えない角度で睨みつけた。彼に背負われている大剣が体を表しているのか返事も無骨。ただ内心彼はパニック状態だった。それはエルザと知り合って間もない頃の話。エルザから飯に行かないか?と言う誘いを受けたサクラとジョニィ。彼は初めてエルザと食事に行くことになったがサクラは冷や汗を垂らしながら報告があると言って立ち去っていったのだ。何だ?と彼は思ったが特には気にせずエルザに付いて行き───

 

 

後は語らなくても良いだろう。

 

 

故に押し付け合い。ヒューズとシュガーボーイはエルザの恐ろしさを知っているため我関せず。浮島のラクリマを見てあれ何年分だろうねー、と言った会話をしている。

 

「そうですか。でも武器の手入れをしなくては───」

「俺がダイヤモンド級に磨き上げて置きますからどうぞ行ってくださいよ。俺なんかほっといて」

「いえ、部下の仕事は私の仕事。代わりにやっておいてあげましょう」

「いやいや、隊長にそんな事させるのは我が一生の恥。死んでも死ねませんよ」

「「・・・」」

 

二人の視線の間に火花が散った。食事を誘ったエルザ以外がその熱線が可視化される。

 

(いいから行きなさい!隊長の代わりに死になさい!)

(部下の仕事は隊長の仕事ってさっき言ってました。だから代わりに行ってください)

 

そんなやり取りが簡単に読み取れてしまう。シュガーボーイは相変わらず仲がいい事と内心呆れつつ笑った。

「分かった分かった。二人とも来れば問題解決だ。さぁ行くぞ」

「「あ」」

 

エルザの脇に抱えられて二人は連れ去られた。シュガーボーイとヒューズに向けられた視線はまさしく捨てられた子犬。助けてやりたい。だけど死にたくない。だからこそ二人は地獄に連れ去られる二人に敬礼をした。

 

 

(後で覚えてろチクショォォォォォォ!!!)

 

 

そんなジョニィの呪いじみた心の声が二人に聞こえた気がした。・・・気がしたのだ。





地上の二人の関係がジョニィ(師)、サクラ(弟子)であるならエドラスでは立場が逆転。
あとエルザの辛いもの好きはオリジナルです。ユルシテクダサイナンデモシマスカラナンデモスルトハイッテナイ
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