幻想と忘却   作:けんちく

15 / 16
今回はちょっと違う感じで、
どぞどぞ


第十五話 信愛

雫羽「ほらほらー遅れるよー」

雫羽がそう叫ぶ。

それに応じて聡が駆け足で追いかける。

俺はそれを後ろから、笑いながら見ている。

 

周りには静かに揺れる木々が生え、

小鳥達が朝のしらせを口ずさんでいた。

 

靖貴「俺の前で惚気んじゃねーよ」

 

そう、冗談交じりに言うと

2人は顔を赤らめながら、うるさいなーと小さく呟いた。

全く、昔っからつるんでいるこいつらが

まさかくっつくとはね。

人生何があったか分かったもんじゃない。

それに、今から向かう所だって夢にも思ってなかった。

 

 

 

聡の家は、昔から貧乏だったなぁ。

聡は少し前までこの山の中心の市場で色んな店で働かせてもらって、色んなものを売っていた。

魚に、肉に、武器に、何に使うか分からないものまで

ずーっと働いていた。

そして、その間にも俺らとも仲良くしてくれて、

疲れてるくせに笑顔は絶やさないんだよなぁ。

雫羽は多分、そんなお前に惚れたんだろう。

 

雫羽は昔っからお前と居る時は楽しそうだった。

少し男勝りな部分もあったっけなぁ。

今じゃすっかり乙女だが。ははは。

そして、聡の行く道にはとことん着いていくよなぁ。

どんだけ好きなんだよ全く。

昔よりがっついてんじゃねえか。

良かったなぁ。ほんとに、良かった。

 

そんな2人に出会えて、一緒につるんでさ、

たまには怒られるような事もしたけど

俺にとっちゃお前らとの思い出はかけがえのないものになったよ。

って、俺も幸せ者ってことかな。

俺なんて、なんにも持ってねぇのに。

お前らの道に着いていくだけで精一杯だ。

 

康貴「あぁ、最高の人生かもな」

そう、呟いた瞬間、聡が寄ってきた。

 

聡「んー?なんだよ、茜さんに会えるのがそんなに最高か〜?」

 

そう、俺は今、茜さんに恋をしている、が

康貴「ばか!そんなんじゃねぇよ!」

改めて言われると恥ずかしいものだ。

 

茜さんに出会ったのは聡のおかげでもある。

十分大人に近づいてきた俺らに、聡は戦闘部隊で働く事を提案してくれた。

そこでは、命の危険こそあるものの、山を守り、人々を守る事が出来るのだという。

昔から聡はこういう何かを守るヒーローに憧れていたのだ。

さすがにまだ憧れていたとは思わなかったが、目をキラキラさせながら話をする聡を見た俺は、変わらない奴だなと思いながら、その案にのることにした。

雫羽は聡が目指すなら私も、と最初からのる気だったらしい。

 

そして、戦闘部隊になる為、訓練施設に着いた途端、そこに居る茜さんに一目惚れしてしまったのだ。

この2人に相談したのが悪かったかもしれない...。

こんなにからかわれるとは、悪気はないんだろうけどなぁ〜。

 

まぁそういう事で、俺らは今、訓練施設に向かっている。

ばか、と俺に言われた聡は

なんだよ〜、そこまで言うことないじゃないかー、と口を膨らませていた。

 

こうやって朝早くから3人並んで歩くのにも

慣れてきた。

はじめの方は聡がなかなか起きなくて、かなり遅れた事もあったなぁ。

あの時期は大変だった。

今は何ヶ月目だ。1年経ったかな。未だに俺らは戦闘部隊に入れさせてもらえないが、もう少しの辛抱だと

心に強く思っている。この2人も同じ気持ちだった。

 

そして最近、新しい友人に出会えた。

セト、という名前らしい。

2日目からほとんどの訓練を回るのには驚いたが、

かなり動きの基本がなっていた。まぁ、その後、案の定クタクタになってたが。

これじゃ、俺らが越されるのは時間の問題かもしれない、そう思ったが俺にとっては、この3人で居られる時間があれば、それで良かった。

セトが嫌だって訳じゃない、むしろ良い奴だと思っている。まぁそれは頑張りすぎたセトに聡の影を重ねてしまったせいもあると思うが。

 

 

そして、しばらく歩いて訓練施設が見えてきた。

この、歩く度にのっそりと見えてくる訓練施設も見慣れてきたものだ。

そして、3人でだべっている内に施設内に着いた。

今日も3人が一番乗り!まぁその前から茜さんは居るが。

 

未だに茜さんの顔を見ると目を逸らしてしまう。

いつまでうじうじしてるんだ、と自分に言い聞かせてはいるものの、そうそう慣れるものでもなかった。

そんな様子を見て聡と雫羽はにやにやと笑っていた。

訓練の準備をしている中、2人が話しかけてきた。

 

聡「今日も目逸らしてたな、そんなんで大丈夫かよ、ははは」

雫羽「ふふふ、私達が二人っきりにさせてもいいんだよ?」

そう、笑いながら言ってくる2人にいらない気遣いだ!と言ったが、茜さんと二人っきりになる事を想像してしまった。その様子を見て笑う2人を、追いかけ回す。

そして、さっさと始めろ!と怒られる。

この、なんでもないような、そんな日常を3人で過ごせるのが、俺は大好きだった。

 

しばらく木刀を振り続けていると、

セトが息を切らしながら、施設内に入ってきた。

休憩がてら、セトに話しかけると

朝にカラスのイタズラで昼だと言われて慌てて支度をして来たそうだ。来る途中に、朝だと気づいた時は、

安心と、カラス達の怒りで頭がいっぱいになったが

その勢いのまま来たらしい。

今日のおやつは抜きにしてやる、と言っていたセトを見ておやつだけかよ、と笑ってしまった。

確かに、、でも他に罰が思いつかない、とセトは言った。

よほどカラス達の事が好きなのだろうか。

 

そして、疲れた体のままセトは休憩もなしに訓練に向かった。

あの方向は弾幕の訓練かな。

少し前まで弾すら撃てなかったのに、出来るようになったのか、角がある時点で変わったやつだと思っていたが、もしかしたら相当なやつかもしれない。

まぁ、今は訓練に集中するか。

 

 

 

 

そして、夕方、考え事もしなくなるほど集中した訓練は毎日の事だが体がきつい。

奥からへろへろになりながら歩いてくるセトを見て

俺らにもあんな時代があったなぁと感じた。

そんなセトを見て、聡は水を差し出しに行っていた。

なるほど、俺もあんなふうに自然に気遣いが出来れば

茜さんにも振り向いてもらえるのではないか。

と、バカみたいな事を想像する自分に、

振り向いてもらおうとしてる時点で駄目だろう

頭の中の自分がそう言った。

 

まだ、勇気が持てない...。

 

 

帰り道、日中聞こえていたセミの鳴き声もしなくなり

辺りには涼しい風に葉っぱを揺らす木の音だけが響いていた。

月明かりは、優しく3人の道を照らしていた。

 

康貴「今日も疲れたなぁ〜」

そう呟くと、聡が笑顔を見せながら、めっちゃ疲れた!

と言った。

雫羽も疲れ切った声で同意した。

 

聡「でも、いつか戦闘部隊になれるって思ったらこの疲れも、悪くはないのかもなって思うんだよ」

 

康貴「どんだけポジティブなんだよ〜、俺はもう寝たい!それだけ毎日考えてる!」

 

雫羽「もぉ〜3人で一緒に戦闘部隊になろうって言ったのは康貴でしょ〜」

 

確かにそんな事を言った覚えがある。

悪い悪い、と頭を下げた。

 

そして、聡は空を見上げ、

深く息を吸うと

聡「絶対、なろうな!3人でこの山の平和を、そして、皆を守ってみせるぞ!」

と叫んだ。

 

おう!!という力強い声が山に響く。

その声は、理想の叫び。

その声は、信念の叫び。

その声は、純愛の叫び。

3人の強い意志を、改めて燃やすには充分だった。




友というのは素晴らしいものですね
時には喧嘩したり、時には支えあったりなんかして、
そんな良き友人がいたらなぁと考えながら書きました。
理想とはちょっと違うかもだけど
3人の絆がどれくらいか、伝われば幸いです
伝わんなくても、私が伝えたいものはそれです。
意味わかんないですね。
この3人は2話前に登場したあの3人組です。
ちょっと掘り下げたかったのです。
まぁ、書き方とか、いつもより戸惑ったけど
戸惑ったところで、という話なので、あまり気にしてません。
それでは、次回も幻想と忘却
よろしくお願いします〜
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。