・老年のスカイウォーカーは若き日の自分に全てを託して、彼を召喚する。
・若きスカイウォーカーがフランスの地についに降り立つ。
ー遡ること数日前ー
そこはある城の玉座の間であった。
座に佇むのは漆黒の甲冑に身を包み、病的なまでに色白な少女。
周りには統一感の無い、寄せ集めた様ないでたちの者たち。
各々が見据えるのは一つ。
座の前にいる一人の肥えた中年の男。
「お願いです助けて下さい何でもしますから。」
「いけませんわ、司教様。聖職者である貴方がそんな紙のような信仰では。」
少女は司教を嘲笑った。
「私が聖なる焔で焼かれたならば、お前は地獄の焔でその身を焦がすが良い。」
そうして男は足元から燃え上がった。
「ギャァァァァ!!アツイアツイアツイ!!アツイィィィ!!!」
「この世界の裁定者として、審判を下します。主の愛を証明できなかった人類に存在価値はありません。」
「恐ろしいまでに有罪です。人類は善人であれ悪人であれ平等である。」
「故ににすべて殺しなさい。ただの一人も逃すことは許されない。」
「老若男女の区別なく、異教信徒の区別なく、あらゆるものを平等に殺しなさい。」
「そして始めるのです。真の百年戦争・・・邪竜百年戦争を。」
ーーー
“僕”を包んでいた眩い光が消えていく。
辺りを見渡せばそこは草原だった。
そして空には光の輪、というよりはブラックホールのようなものがあった。しかし、この惑星が無事なので、違うのだろう。
このブラックホールもどきは後回しにしよう。
たった今“僕”は召喚されたのだ。老年期”の自分を犠牲にして。
聖杯の知識、これまでに起こったこと全ても、もちろん把握していた。
やることは決まっている。カルデアのマスターを探すことだ。
だがその前に、自身の身の回りを確認してみる。
「自身の宝具であるはずのフォースやライトセーバーが使えませんでした」では話にならない。
近くの小池で、自分の姿を写して見てみる。ブロンドの髪、青い目、見慣れた顔があった。
そして黒い衣装、右手にはグローブ。これらのことから、恐らくエンドアの戦いの後の私であることが伺える。腰のユーティリティベルトに手を当てる。そこには自らの手で作り上げたライトセーバーがあった。
試しに起動してみると、緑色の光刃が現れた。セーバーには特に問題はない。
そして近くの小岩に手をかざし、岩を浮かせる。
フォースも使うことができた。
フォースとはありとあらゆる万物に流れるエネルギーのことである。
人だけに限らず、岩や木、船など全てのものに宿っている。しかし、全ての生き物が、その力を使えるわけではない。とても神聖な力である。
無論、辺境の惑星、地球にも、フォースは存在しているようだ。
カルデアのマスターに会うこと。
そのために、まずは人を探すことから始めよう。周り一面が草原だが、少し離れた所に、嵐に襲われたかのような街が見える。そこから探っていこう。
ここはシラミつぶすに探して行くしかない。
そうして僕は廃墟とかした街へ向かった。
ーーー
街は・・・と言うよりそこはもう街とは言えなかった。
瓦礫の山を進んでいくと、人の形をした異形が多数蠢いていた。
「コロ…シテ。」
「いや・・・人なのか。」
しかし、見た目は傷んだ死体そのものだ。とてもどうにか出来るとは考えられなかった。
もう手遅れだろう。
「すまない。」
私はそう呟いて、セーバーで一人一人の首を刎ねていった。
死んでいるであろう彼らに出来る、これが精一杯の手向けだった。
私は簡易的ではあるが、火葬に取り掛かった。遺体を一箇所に集めて、手近な木を使い燃やした。
彼らが、少しでも安らぎをへられるようにと。
近くで瓦礫の崩れる大きな音がした。
「新手か…。」
息を殺し、音の方向へ向かうと、崩れかけた石造の城があった。
おそらくこの中に何かいる。僕は中へ進んだ。
長く薄暗い廊下を進み、広間に着くとそこには、傷だらけの男が倒れていた。
僕は治療の為に近づこうとするが、手には剣が握られており、容赦なくこちらへ切りかかってきた。
「こんな時に、また…。次から次へと。」
「待ってくれ。旅のものだ。危害を加えるつもりはない。」
対話を試みる。フォースを使わずともわかる。恐らく彼は…。
「嘘が下手なようだな。サーヴァントが旅をしているのか?」
自分が本能でサーヴァントを感知できるなら、他のサーヴァントができてもおかしくはない。迂闊だった。
マインド・トリックが通じるような相手でないことは明らかだ。ここは正直に話すしかない。
「そうだ。僕はサーヴァントで旅をしている。カルデアのマスターとやらを探している最中だ。それと盾を使う戦士もだ。」
彼は僕を見据えていた。
「僕はルーク・スカイウォーカー。ジェダイの騎士だ。さっき人型の怪物に襲われた。君は彼らにやられたのか?」
「いや、違う。あの怪物達は、このリヨンの街の人々だった。あれは彼らの遺体を元に造られたもの。私は彼らを守れず、竜の魔女の使役するサーヴァント達に深傷を負わされた。」
やはり人だったのか。更にそれを使役する者がいたとは。
「竜の魔女とは?」
「このフランスを壊滅まで追い込んだサーヴァントだ。サーヴァントでありながら何人かの強力なサーヴァントを従えて…くっ…。」
彼は苦痛に顔を歪めた。傷が痛むのだろう。彼の説明で大方の事情は読めた。
「教えてくれてありがとう。少し良いかな?」
僕は彼に近づき、彼の胸に手をかざし、そこから自身のフォースを流し込む。わずかながら、傷が癒えた。
「どうやらこれが限界みたいだ。あとは待つしかない。」
「この傷はただの傷ではない。呪いの類いのものだ。聖人のサーヴァントでなければ完全には治らない。この地にいるかどうかも怪しいが。」
「分かった。それじゃあその聖人とやらを探そう。こっちとしては協力したいんだけど、信用してくれるかい?」
男はまっすぐ此方を見ながら語る。
「すまないがルーク・スカイウォーカーという名前は聞いたことがない。怪しさしかない。」
その通りだ。私が彼でも同じだろう。
「だが、嘘を言っているようにも見えなかった。それに魔女の手下なら、もうとっくにやられているだろう。騎士というだけあって、君はなかなかの手練れのようだ。」
男は不敵に笑う。
「魔女に敵対するサーヴァントは多分まだ、他にもいるはずだ。仲間を一人でも多く集めよう。君の探しているカルデアのマスターとやらも、サーヴァントといるかもしれない。」
僕は肩を貸し、彼は立ち上がった。
「そうか、それじゃあよろしく。ところで君の名前は?」
「あぁ。すまない。俺は・・・。」
「ジークフリートだ。」
まだ聞きたいことがあったが、挨拶はこれまでのようだと悟った。
直後、サーヴァントが近くにいるのを感じ取ったからだ。形容し難い禍々しい殺気。これが意味するのは、敵が来たということだ。
逃げるか、いや、間に合わない。怪我人を背負って逃げ切るのは厳しい。
それなら…。
「ジークフリート。その傷では戦闘はきついだろう。僕に任せて。」
「本音を言えば戦いたいが、すまない。自分の身だけは守るよう努める。」
「わかった。幸い、相手は単体のようだ。とりあえずここを出よう。戦いには不向きだ。」
そうして城を後にし、彼らは先程の街の中心へ向かった。
ーーー
彼らは街の中心へ辿り着いた。
周囲に瓦礫が広がる街の広場。
そこに長い爪、割れた仮面、白い肌の不気味な男が立っていた。
サーヴァントだ。
「君は何者だ?出来れば話し合いで解決したい。」
勿論、彼はそれが可能とは思っていなかった。
「対話など意味を成しません。今からここは竜の魔女の命により、私の絶対的支配下となる。」
男は自身を抱き締めながら、身体を捻る。
「ここは死者の蘇る地獄の只中。貴方はどうします?」
仮面の男は楽しそうに、そう尋ねる。
「街にいた異形の人々は君達の仕業かい?」
ルークはただ前を見据え、質問に質問で返す。
「左様です。私、
対話は不可能と判断し、
ライトセーバーを起動した。
「気は進まないが、君の命を奪う。これ以上、人の命を奪わせない為に。」
「宜しい。舞台の幕開けです。」
男は細く尖った爪を武器に向かって来る。
ルークは大きく振りかぶり、ライトセーバーをスイングする。
「なっ…!!」
緑のセーバーは、ファントムの右手の爪を、五本全て切り落とした。
「どこか不思議な青年ではあったが、あのような光の剣を使うとは…。聞いたことも見たこともない。」
ジークフリートは瓦礫に背中を預け、二人の戦いを少し離れた場所から見つめていた。
「もう諦めろ。君の爪じゃ、このセーバーには太刀打ちできない。」
「いいえ。一度挙がった幕は、自分で降ろすもの。それが舞台の上に立つ者の義務です。それに私は魔女によって狂わされた。ここに来て、後戻りはできません。」
「そんな悲しい舞台、言われなくても僕が終わらせる。」
ルークは剣先を前に突き出し、突進していく。
ファントムも、犠牲者の死骸で創り上げたオルガンを出現させる。
「…。」
構わず進むルーク。
「
ファントムはオルガンから衝撃波を放つ。
しかし、ルークの左手から放たれる緑のフォース・ライトニングで相殺される。
ルークはファントムに肉迫する。
ファントムも応戦し、残った左手の爪で斬りかかる。
ルークは身を屈めながら、流れるようにそれを避け、懐に入り込み、
そしてファントムの首を刎ねた。
「損な役回りだ…。全く報われない。だが…。務めは果たした。」
石や木材が散らばる地面に落ち、首だけになったファントムが消えかけながら語る。
「私の歌は途絶える。されど、地獄はここから始まる。」
「龍が来る!悪魔が来る!お前達の見たことのない邪悪な竜が!」
そう吐き捨て、ファントムは粒子と化して消えていった。
その直後、大地に凄まじい咆哮が響き渡った。
次回の投稿もいつになるか不明です。気長に待っていただければと思います。
一話につき大体、何文字がよろしいでしょうか?
-
3000字くらい
-
5000字くらい
-
10000字くらい