Fate/Force Order   作:ロベスピエール龍

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前回までのあらすじ
・老年のスカイウォーカーは若き日の自分に全てを託して、彼を召喚する。
・若きスカイウォーカーがフランスの地についに降り立つ。





第二話:リヨンの街

ー遡ること数日前ー

 

そこはある城の玉座の間であった。

 

座に佇むのは漆黒の甲冑に身を包み、病的なまでに色白な少女。

 

周りには統一感の無い、寄せ集めた様ないでたちの者たち。

 

各々が見据えるのは一つ。

 

座の前にいる一人の肥えた中年の男。

 

「お願いです助けて下さい何でもしますから。」

 

「いけませんわ、司教様。聖職者である貴方がそんな紙のような信仰では。」

 

少女は司教を嘲笑った。

 

 

「私が聖なる焔で焼かれたならば、お前は地獄の焔でその身を焦がすが良い。」

 

 

そうして男は足元から燃え上がった。

 

 

「ギャァァァァ!!アツイアツイアツイ!!アツイィィィ!!!」

 

 

 

「この世界の裁定者として、審判を下します。主の愛を証明できなかった人類に存在価値はありません。」

 

 

「恐ろしいまでに有罪です。人類は善人であれ悪人であれ平等である。」

 

 

「故ににすべて殺しなさい。ただの一人も逃すことは許されない。」

 

 

「老若男女の区別なく、異教信徒の区別なく、あらゆるものを平等に殺しなさい。」

 

「そして始めるのです。真の百年戦争・・・邪竜百年戦争を。」

 

 

 

ーーー

 

 

 

“僕”を包んでいた眩い光が消えていく。

 

 

辺りを見渡せばそこは草原だった。

 

そして空には光の輪、というよりはブラックホールのようなものがあった。しかし、この惑星が無事なので、違うのだろう。

 

このブラックホールもどきは後回しにしよう。

 

 

たった今“僕”は召喚されたのだ。老年期”の自分を犠牲にして。

 

聖杯の知識、これまでに起こったこと全ても、もちろん把握していた。

 

 

やることは決まっている。カルデアのマスターを探すことだ。

 

 

だがその前に、自身の身の回りを確認してみる。

「自身の宝具であるはずのフォースやライトセーバーが使えませんでした」では話にならない。

 

近くの小池で、自分の姿を写して見てみる。ブロンドの髪、青い目、見慣れた顔があった。

そして黒い衣装、右手にはグローブ。これらのことから、恐らくエンドアの戦いの後の私であることが伺える。腰のユーティリティベルトに手を当てる。そこには自らの手で作り上げたライトセーバーがあった。

 

試しに起動してみると、緑色の光刃が現れた。セーバーには特に問題はない。

 

 

そして近くの小岩に手をかざし、岩を浮かせる。

フォースも使うことができた。

 

フォースとはありとあらゆる万物に流れるエネルギーのことである。

人だけに限らず、岩や木、船など全てのものに宿っている。しかし、全ての生き物が、その力を使えるわけではない。とても神聖な力である。

無論、辺境の惑星、地球にも、フォースは存在しているようだ。

 

 

カルデアのマスターに会うこと。

 

 

そのために、まずは人を探すことから始めよう。周り一面が草原だが、少し離れた所に、嵐に襲われたかのような街が見える。そこから探っていこう。

ここはシラミつぶすに探して行くしかない。

 

そうして僕は廃墟とかした街へ向かった。

 

 

 

ーーー

 

街は・・・と言うよりそこはもう街とは言えなかった。

 

瓦礫の山を進んでいくと、人の形をした異形が多数蠢いていた。

 

 

 

 

 

「コロ…シテ。」

 

「いや・・・人なのか。」

 

 

しかし、見た目は傷んだ死体そのものだ。とてもどうにか出来るとは考えられなかった。

もう手遅れだろう。

 

 

「すまない。」

 

 

私はそう呟いて、セーバーで一人一人の首を刎ねていった。

死んでいるであろう彼らに出来る、これが精一杯の手向けだった。

 

 

私は簡易的ではあるが、火葬に取り掛かった。遺体を一箇所に集めて、手近な木を使い燃やした。

彼らが、少しでも安らぎをへられるようにと。

 

 

 

 

近くで瓦礫の崩れる大きな音がした。

 

 

「新手か…。」

 

 

息を殺し、音の方向へ向かうと、崩れかけた石造の城があった。

おそらくこの中に何かいる。僕は中へ進んだ。

 

 

 

長く薄暗い廊下を進み、広間に着くとそこには、傷だらけの男が倒れていた。

僕は治療の為に近づこうとするが、手には剣が握られており、容赦なくこちらへ切りかかってきた。

 

 

「こんな時に、また…。次から次へと。」

 

 

「待ってくれ。旅のものだ。危害を加えるつもりはない。」

 

 

対話を試みる。フォースを使わずともわかる。恐らく彼は…。

 

 

「嘘が下手なようだな。サーヴァントが旅をしているのか?」

 

 

自分が本能でサーヴァントを感知できるなら、他のサーヴァントができてもおかしくはない。迂闊だった。

マインド・トリックが通じるような相手でないことは明らかだ。ここは正直に話すしかない。

 

 

「そうだ。僕はサーヴァントで旅をしている。カルデアのマスターとやらを探している最中だ。それと盾を使う戦士もだ。」

 

 

彼は僕を見据えていた。

 

 

「僕はルーク・スカイウォーカー。ジェダイの騎士だ。さっき人型の怪物に襲われた。君は彼らにやられたのか?」

 

 

「いや、違う。あの怪物達は、このリヨンの街の人々だった。あれは彼らの遺体を元に造られたもの。私は彼らを守れず、竜の魔女の使役するサーヴァント達に深傷を負わされた。」

 

 

やはり人だったのか。更にそれを使役する者がいたとは。

 

 

「竜の魔女とは?」

 

「このフランスを壊滅まで追い込んだサーヴァントだ。サーヴァントでありながら何人かの強力なサーヴァントを従えて…くっ…。」

 

彼は苦痛に顔を歪めた。傷が痛むのだろう。彼の説明で大方の事情は読めた。

 

 

「教えてくれてありがとう。少し良いかな?」

 

 

僕は彼に近づき、彼の胸に手をかざし、そこから自身のフォースを流し込む。わずかながら、傷が癒えた。

 

 

「どうやらこれが限界みたいだ。あとは待つしかない。」

 

 

「この傷はただの傷ではない。呪いの類いのものだ。聖人のサーヴァントでなければ完全には治らない。この地にいるかどうかも怪しいが。」

 

 

「分かった。それじゃあその聖人とやらを探そう。こっちとしては協力したいんだけど、信用してくれるかい?」

 

 

男はまっすぐ此方を見ながら語る。

 

 

「すまないがルーク・スカイウォーカーという名前は聞いたことがない。怪しさしかない。」

 

 

その通りだ。私が彼でも同じだろう。

 

 

「だが、嘘を言っているようにも見えなかった。それに魔女の手下なら、もうとっくにやられているだろう。騎士というだけあって、君はなかなかの手練れのようだ。」

 

 

男は不敵に笑う。

 

 

「魔女に敵対するサーヴァントは多分まだ、他にもいるはずだ。仲間を一人でも多く集めよう。君の探しているカルデアのマスターとやらも、サーヴァントといるかもしれない。」

 

 

僕は肩を貸し、彼は立ち上がった。

 

 

「そうか、それじゃあよろしく。ところで君の名前は?」

 

 

 

「あぁ。すまない。俺は・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジークフリートだ。」

 

 

 

 

 

 

 

まだ聞きたいことがあったが、挨拶はこれまでのようだと悟った。 

 

 

 

 

 

直後、サーヴァントが近くにいるのを感じ取ったからだ。形容し難い禍々しい殺気。これが意味するのは、敵が来たということだ。

逃げるか、いや、間に合わない。怪我人を背負って逃げ切るのは厳しい。

 

それなら…。

 

 

「ジークフリート。その傷では戦闘はきついだろう。僕に任せて。」

 

 

「本音を言えば戦いたいが、すまない。自分の身だけは守るよう努める。」

 

 

「わかった。幸い、相手は単体のようだ。とりあえずここを出よう。戦いには不向きだ。」

 

 

そうして城を後にし、彼らは先程の街の中心へ向かった。

 

 

 

 

 

ーーー

 

 

彼らは街の中心へ辿り着いた。

 

 

周囲に瓦礫が広がる街の広場。

そこに長い爪、割れた仮面、白い肌の不気味な男が立っていた。

 

 

サーヴァントだ。

 

 

「君は何者だ?出来れば話し合いで解決したい。」

 

 

勿論、彼はそれが可能とは思っていなかった。

 

 

「対話など意味を成しません。今からここは竜の魔女の命により、私の絶対的支配下となる。」

 

男は自身を抱き締めながら、身体を捻る。

 

 

「ここは死者の蘇る地獄の只中。貴方はどうします?」

 

 

仮面の男は楽しそうに、そう尋ねる。

 

 

「街にいた異形の人々は君達の仕業かい?」

 

 

ルークはただ前を見据え、質問に質問で返す。

 

 

「左様です。私、オペラ座の怪人(ファントム・ジ・オペラ)の舞台に相応しい小道具です。」

 

対話は不可能と判断し、

ライトセーバーを起動した。

 

「気は進まないが、君の命を奪う。これ以上、人の命を奪わせない為に。」

 

 

「宜しい。舞台の幕開けです。」

 

 

男は細く尖った爪を武器に向かって来る。

 

ルークは大きく振りかぶり、ライトセーバーをスイングする。

 

 

「なっ…!!」

 

 

緑のセーバーは、ファントムの右手の爪を、五本全て切り落とした。

 

 

「どこか不思議な青年ではあったが、あのような光の剣を使うとは…。聞いたことも見たこともない。」

 

 

ジークフリートは瓦礫に背中を預け、二人の戦いを少し離れた場所から見つめていた。

 

 

 

「もう諦めろ。君の爪じゃ、このセーバーには太刀打ちできない。」

 

 

 

「いいえ。一度挙がった幕は、自分で降ろすもの。それが舞台の上に立つ者の義務です。それに私は魔女によって狂わされた。ここに来て、後戻りはできません。」

 

 

「そんな悲しい舞台、言われなくても僕が終わらせる。」

 

 

ルークは剣先を前に突き出し、突進していく。

ファントムも、犠牲者の死骸で創り上げたオルガンを出現させる。

 

 

「…。」

 

構わず進むルーク。

 

 

地獄にこそ響け我が愛の唄(クリスティーヌ・クリスティーヌ)

 

 

ファントムはオルガンから衝撃波を放つ。

 

 

 

 

しかし、ルークの左手から放たれる緑のフォース・ライトニングで相殺される。

 

ルークはファントムに肉迫する。

ファントムも応戦し、残った左手の爪で斬りかかる。

 

 

ルークは身を屈めながら、流れるようにそれを避け、懐に入り込み、

 

 

 

 

そしてファントムの首を刎ねた。

 

 

 

 

 

 

「損な役回りだ…。全く報われない。だが…。務めは果たした。」

 

 

 

石や木材が散らばる地面に落ち、首だけになったファントムが消えかけながら語る。

 

 

 

「私の歌は途絶える。されど、地獄はここから始まる。」

 

 

「龍が来る!悪魔が来る!お前達の見たことのない邪悪な竜が!」

 

 

 

そう吐き捨て、ファントムは粒子と化して消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直後、大地に凄まじい咆哮が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回の投稿もいつになるか不明です。気長に待っていただければと思います。

一話につき大体、何文字がよろしいでしょうか?

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