転生したら取り敢えず原作ルートをぶっ壊すだろ 作:杜甫kuresu
世界に抗う彼等の物語。
――何、難しい? 大丈夫だ。
大体纏めとくと「俺が死ぬ話」だ。
chapter1『勇気が足りていない』
――転生。もう飽きたね、言いたいことは分かる。定番って言うなら許容したいけど、こう数が多いと食傷気味で嫌だ。俺も最近はちょっと距離を置いてる。
そもそも輪廻転生前提かよとか、二次元に三次元の人間が馴染むわけ無いだろとか相当悲しい現実を放り出さないと読むというスタート地点にすら立てない。おっさんにはとことん優しくない分野だろう。
ま、とはいえ今時な創作のスタンダード。人気狙いなら持っておきたいタグだし、要するに『無難な物語』には有って損はない。
艦これの艦娘に転生するタイプってどう? 結構ダークなやつ多いから俺は好き、でもFateでお手軽無双する系統はちょっと…………。
あ、すまん。違う世界にトリップしてた。
「出来たよ~」
まっさらに新しい物語はもう生まれてくることはない。情報そのものが出尽くした現代では、せいぜい組み方を弄るので精一杯だからだ。
素材が見慣れていては新品になるわけがない。
といっても素人目にはよく分からないので気にはしないつもりだったが、細かく見るとどれも二番煎じと言えなくもないのだ。ホントどうでも良いんだけど。
問題は面白いか、だろ? パクリ二番煎じ結構! それが『つまらなくなる原因』だから忌避しているだけで、根本的には興味なんぞ無いさ。
文字を読むやつにそんな道徳観を求めるだけ無駄だろ? なあ?
「にしても急だったからちょっとビックリしちゃったな~」
「すまない、乱暴に扱ったりはしていないのだが…………」
さて、確信へ進もう。何故俺はその話を振ったのかだ。
正直察して。さっきも言った通り物語は組み合わせ、つまり素材は一緒で慣れれば今の状況も自ずと見えてくるはずだ。
コレを機に読み始めるとかどうだ? いい趣味になるんじゃないか。
「さて、治っているはずだが…………」
漫画とかでありがちな
『もしもの話だが』
アレだアレ。大体近辺報告になるんで大人しく吐けやっていつも思う。でも気づかない方にも問題有るしやってみると気持ちはわからなくもない。
また脱線したな。すまんすまん。
「…………ん?」
もう逃げ過ぎだなコレ、そろそろ本題に入りたい。でも入れないこのジレンマ。
美少女がこの手の回りくどい行動をすれば萌えるのだが、俺はおっさん近づく社会人なので特にその情報に意味はないし忘れていい。
ではまず一言、
『何でカセットテープになるんですかね!?』
「……………故障、かな?」
うん。もう種明かしと行こう。
『5W1Hはさておき、どっかの美少女愛用のカセットテープレコーダーに転生してる』
な、二次創作だからって何でもありだと思うなよ? お前は何処へ向かってるんだ的な感想で叩かれまくりだわこんなくそったれ転生。
テンプレ通り過ぎて常識外。お先は真っ暗視界も真っ暗、声はイヤホンからしか出てきてません。
これもしかして憑依? いやでも転生の方が近そうな気がする、気が。
「仕方ない、一回切ろうか」
『辞めてくださいお願いしますぅ!』
そして持ち主はそんなトンデモ展開に耐えれるか不安な至極真っ当な美少女の可能性が、極めて高い。
「誰だあなたは」
『誰? 何、じゃなくて誰なの?』
そう言われると彼女は既に適応してきている疑惑が有る。確かにWhatと聞くのが正解だ、大体彼が人なのか自体が大いに怪しい。
彼は最初にちらりと気に留めただけだが、返ってくる少女の声は現実世界37億人前後のそれと根本が異なる。
頭の中でさながらオペラホールのように響く透き通る声音。言うものが違えば鈴のようと言うだろうし、今回の場合は聞くだけで落ち着くという表現が適切だ。
――まさか、ね。
予想がついてしまっていた。変態的な声優オタだった前世には「こんなんクソの役にも立たんぞ」、なんて生前は豪語した彼なので、そう言い放った同士の友人に頭を下げなくてはならなくなった。
何度照らし合わせてもその声紋の検索結果は一つ。まさかまさか~、とスルーしようとするがそれが大正解であると本人も分かっているはずだ。
『俺は…………まあ、後にして。そっちは誰だ?』
やや狼狽え気味の調子に察したのか、特に揉めることもなく少女は返答する。
「私はヨークタウン型二番艦、エンタープライズ。これで名前代わりになるだろうか?」
聞いた後、小さく
『石川由依……』
と呟いて、僅かな静寂の後
『うぇい!?』
彼の絶叫がイヤホン経由でエンタープライズの耳をダイレクトアタック、既に残りライフは僅かだ。
「――――ッ! 耳が痛いからボリュームを……」
『し、失礼しました』
驚いたと言うだけではない。広がった感情は歓喜、驚愕、混乱、不安――――挙げればキリのない多種多様な色彩のごとく。
舞い上がり、疑問を持ち、じわじわと増える謎に不安で思考が奪われる。人間の一生だけでは中々味わえない情報量の暴力に当然、彼は錯乱気味となってしまっていた。
「ああ、怒っているんじゃない。ただ本当に少し痛かったから……」
『尚更すみません』
わけも分からず敬語になっていた。彼はかなり一杯一杯になっていて、それが辛うじて出来る普通の喋り方のようだった。
エンタープライズもそれは分かるからか、怪しいはずのイヤホン越しの男の声に問い詰めるようなことはしない。
一旦落ち着くまで彼女が立ち止まって待っていると、深呼吸の大きな声の後に堰を切ったように喋りだす。
『マジで? アズールレーンのユニオン所属のヨークタウン級航空母艦のセカンドナンバー、グレイゴースト、ラッキーE、ビッグE、ギャロッピングゴースト等々のヤバメの異名を頂戴したあのエンタープライズ?』
「やたらと詳しいな、まあそれで正しい。そのエンタープライズだ」
――正確にはそれこそ、それの亡霊だが。
敢えてそれは言わない。情報量をこれ以上増やしても彼が混乱するだけなのが分かっているのだろう。
実際彼もウッソだろお前、とその言葉を五回ほど繰り返して軽くショート気味だ。ドッキリを疑い始める始末である。
とはいえ人間は『自分の常識内』での処理を優先してしまうものだからそれは仕方ないことだ。
手足の感覚がなく、声はイヤホンから漏れているだけで視界はない。現実味が薄すぎるのだ。
「信じられない、とでも言いたげだな」
『え、いやそうでもないけど!?』
上ずった声は怪訝を呼び込む。
――いやだって、お前はゲームの中のキャラじゃん。
それは言えなかった。自分が言われても嫌だというのも有ったがもう一つ。
――見えずとも、触れずとも、匂いすらせずとも。今言葉を交わしているのは彼女は、本物だ。
それは事実で、ゲームだと切って捨てられるほど彼は思い切りが良くない。甘いのだろうが、今言葉を交わす相手の全ての否定できなかった。
「変な人だ……いや、人ではないのか?」
『多分違うけど人扱いしてもらえるととても嬉しい』
「了解した」
あっさりと了承してしまったエンタープライズが彼には不思議で仕方ない。
自分だったらこの変なレコーダーを投げて叩き割る自信がかなり有るそうだ。物騒にも程があるが本人がそういうのではそれ以上何も言うことはない。
『俺のこと気持ち悪いとか、怪しいとか思わないのか?』
「思わないなんて言えば嘘だ、それは有り得ない」
声にはしなかったが、彼の気分は重くなった。
分かっていても確認して改めて辛いことも在る。それが例え、自分から尋ねたことなのだとしてもだ。
考え出すと今後のことも不安になってきたのだろうか、ずっと考え込んで黙り込んでしまった彼に何を思ったのかエンタープライズはフッと笑う。
「だが、こう心細げだと怪しんでも仕方なく思えてこないか?」
彼はボソリと
『俺だって困惑してんだよ…………仕方ねえだろ』
とちょっとだけ、本当に心細さを含んで呟く。
その様子の何が面白いのか彼女は大きく笑い出す。
『何がおかしいんだよ、誰でも怖いだろこんなん!?』
「すまない。思いの外しおらしくてつい、な」
悪いか、と呟くといや全く?と返ってくる。
「人間らしくて好感が持てる。あまり常人離れしていると付き合うコッチが疲れるからな…………」
唐突に深い溜息。
『何だ? 心当たりが有るみたいな言い草だな』
「指揮官がな…………とはいっても、あなたもどことなく似ているような気はするが」
――どんな奴なんだよソイツ。
言葉にはしなかったが妙にその台詞が引っかかって仕方なかった。
こつ、こつと気づけばブーツの歩く音。歩き出したらしい。
ふと突きつけられた五感の欠落に呆然としていると、気分の良さそうな鼻歌。これもエンタープライズのもののようで、曲は何か分からない。
「曲は流せないのか? あなたの趣味で全く構わないのだが」
『えぇ、曲か? 何かこう、気合で流せそうな気が……』
面白い仕組みだな、と楽しげな声を彼は放置する。
何となくで埋め尽くされた感覚的な動作で気分だけが右往左往する。
それほど経たない内に『LOSER』が流れ始め、エンタープライズははてと考え込む。
「2nd-ghostか?」
『え、何それ』
知らないで流しているのか、と怪訝な顔付きで説明が入る。
「ネットアーティストだ。歌詞も、曲調も、リズムもテーマもまるで違う曲ばかりを出している」
『へぇ、俺は全然違うものを想像してたんだけどな』
「彼は普段は電子ボーカルで歌わせているようだが、カバーか?」
――むしろコッチ的には本家と言って差し支えないんだがな。
要らないことは言わないが、世界が違うのだという妙な実感だけが頭の奥をウロウロとしていた。
『ともかく俺の知ってる曲以外は無理そうだ、我慢してくれ』
「ああ、問題はないよ」
――むしろ、チョイスとしては嫌いではない。
軽くリズムを刻みながら歩き続ける。嫌いではないというより、実際は気に入ったようだ。
しかしそれきり黙り込んでしまった彼が心配だったのだろうか、小さな声で忠告をする。
「あまり喋ると周りから奇異の目が寄せられてしまう。小さな声で返すぞ」
『別に無理に喋らんでも』
――変人扱いはされたくないだろ。
少しいじけた口調で遠慮した彼をエンタープライズは軽く笑う。
「声から寂しいという本音がダダ漏れだぞ? 流石に放置できないな」
『い、いやっ。そんな事ねえし…………』
クスクスと笑うエンタープライズにからかわれながら歩いていく。
「それにしても災難だな、突然こんな状態になって」
夜。食事も終えて手持ち無沙汰となった彼女は、何というわけでもなく彼に喋りかけた。
傍から見れば大きな独り言を言っているような形に見える、外で自重しようとするのも納得できなくはない。
月を眺めながら返答をぼんやりと待つ。案外速かった。
『そういう事になるな。いや全く、やってられませんなハハハ!』
陽気に取り繕っていたが、強がりなのが透けて見えるとかえって憐れだった。
――この状況で平然としていられる方が不思議なくらいだ。
彼は最初こそ無理に返事をしなくていいなどと言ってみせたものの、喋りだせばまるでノンストップだ。
自分は25歳のただの冴えない会社員だったこと。今さっきまで自分がどんな状態で、どうしてこうなったかについて全くもって説明できないこと。
未知に放り込まれたという情報が、淡々と、されど情感混じりに事細かな具合でイヤホンから届く。エンタープライズが上手く相槌を打ってやれないことも有ったというのに、それでもずっと途切れず。延々と説明が終わるまで彼は話し続けた。
余程心細いのだろうと彼女には思えた。
『急に黙り込むなよ、怖い』
不自然な無音に耐えかねた彼の泣き言すらもエンタープライズは答えない。
再び喋り出すまでは何秒かかったのだろう。きっとそれほど長くなかったはずだが、彼には数分、数十分、いや数時間にすら思えた。長くて、それはとても怖いこと。
静かな時間は長く、辛く、苦しい。彼の乾いた笑いが不安に掻き消されていく。
「…………私は今まで誠実に生きようとしてきたつもりだ」
不安を取り払うのも、同じ彼女の澄んだ言葉。言葉は透明で、意味は明瞭で、そして彼女は純粋。
意味もなく窓ごしの三日月を眺めて、まるで独り言のように言葉を重ねる。
「とても難しいことだと今でも思う」
『急に何だ、気持ち悪いな…………』
尻すぼみな言葉で誤魔化そうとしても誤魔化しきれない。
「辛い時は辛いと叫べばいい。嫌なことは嫌だと抵抗して良い――――それを責める権利など誰にもないんだから」
彼には感覚がないが、その擦れる音で彼女が両手で大事に抱えていることは分かった。
短い時間ながら、言葉を交わした上でそれは心からの心配なのだろうと彼は確信できる。
男は他人を信用しない。小さなすれ違いの積み重ねだったり、虚しい多数決の原理が原因となるがともかく信用をしない。
その彼ですら、彼女を疑うということが出来なかった。
ただの一つも嘘をつかなかったのだ。どれほど小さな事であれ、彼女は返事に世辞も誤魔化しも挟まずに音を奏でる。
とても難しいことだなんて、彼だってよく分かっている。彼だってそうしようとして失敗した人間だからだ。
真実は時に不用意に人を傷つける。嘘は時に自分を守るために必要となる。嫌になるくらいにその現実に打ちのめされてきた。
『会って一日も経たない男の弱音なんて、お前聞きたいかよ?』
ヘラヘラと装って尋ねる。仮面の裏にはそれまで以上にずっと重い何かが潜んでいて、それが彼女に問いかけていた。
それを彼女は恐れない。簡単だ、それでも彼女は彼に誠実に向き合うからだ。
「それでもだ。あなたが潰れる前に」
『言ってどうなるんだよ』
どうなるんだ。
どうにもならない、それだけだ。
彼女は大きく笑って、笑って笑い尽くして涙すら流す。まるで涙で何かを洗い落としているんじゃないか、彼がそんな意味の分からないことを考えるまで大きく、朗らかに。
「言ってどうなるか、それは知らないな」
「したいことはするべきで、あなたは辛いのだから辛いと私に言うべきだ。それだけだよ」
もちろん私もそう在るべきだが、とどこか後ろめたそうに呟く。
氷が解けるように、男は取り繕っていた何かに罅が入ってしまった。
彼は大人になってから嫌なことへの耐え方を多く学んだ。忘れる、遊ぶ、寝る、食う――――――他の何かで塗りつぶす。
知っている、それは間違っている。誤魔化すだけでは傷は何時か膿んでいき、最後には男自身を殺す致死の毒へとすり替わる。
『…………そうか。そりゃご忠告どうも』
だがダメだ。
何故か? それは貴方が思うほど難しい理由というわけではない。エンタープライズに気を使っているだとか、言葉にしきれないとかは理由のほんの一部。末端に過ぎない。
人間は最後の最後で単純な生命だ。もっと明快で簡単な理由で大部分が構成されている。
『でもよ、認めたら――――――いよいよ俺、あっという間に潰れちまうんじゃねえかな』
耐えれない。それだけなのだ。
誤魔化すのは最終手段だ。リカバリーも効かなくなって、死は目前で、だからせめて安楽死するための場繋ぎの手段だ。
男は弱い。普通で、まともで、そして単純で貧弱だ。それが一般人だ。
確かに誠実であることは素晴らしい。やりたいように出来ることは美しい。
だがそれがどうした。
『悪いな、今ので精一杯の弱音だわ』
ほら、これを見るがいい。
一体この男のどこに、それが出来る強さが存在する?
無いのだ。良い悪いなどではなくて――――――残念ながら、無いのだ。
「…………すまない、かえって苦しめたようだな」
『気を遣わなくてもいい、俺は面倒な男だと自分でも思ってる』
違う。上手く言い返せないままその日の彼女は床についた。
「さて、今日はどんな曲を聞かせてくれるんだ?」
『朝だろ? じゃあ早めのテンポで威勢よく行こう』
かけ始めた曲は『Super Driver』。曰く個人的に一番好きな明るい曲なのだとか。
服を着替えてネクタイを締め。帽子を被ればもう完成で、彼女の顔は一転きりりと引き締まる。それがスイッチのオンオフというものだ。
昨夜の会話から彼女が思っていたより彼がずっと考え込む性格であるのは理解していたからか、どうにも空元気という言葉が脳裏をチラついて仕方がない。
「ところで意外と暗いと言われたことはないか?」
『うるせえ、文句あんのか』
「いいや?」
機嫌良さげにリズムを取るのは相変わらずだ。どうやら音楽という概念が好きらしく、趣味が似通っている彼としては親近感のようなものすら感じる。
それでもどこか遠い存在という感覚も取れないが。
何だか彼は生物としての質で負けているような、妙な劣等感を覚えて仕方なかった。勘違いも甚だしい錯覚ですぐに忘れることも分かってはいるのだが、刺さりっぱなしの針のようにふと痛むことが有る。
「自然体のあなたの方が私は好きだ」
へえ、と彼は気の抜けた返事をする。
もちろんすぐにあたふたとし始めたが。
『勝手に言ってろ!』
「声が震えているぞ? 分かりやすいな」
ふふ、と小さく笑われたような気がした。
さて、こうして開始した奇妙な生活は恙無く進んでいく。
『おかえりー。エンタープライズさん、演習どうよ?』
「全勝だ」
『何で当然みたいな感じなんですかね、これが主人公の意識レベルってやつか?』
「避けれたはずの一撃をもらってしまってな…………勝利よりもミスに目が行ってしまう」
面白い話だが、彼女は別に興味本位というわけでもなくそのおかしな機械を手放さない。
「ヨークタウン姉さんに精神病を疑われているのだが、どうしたものか…………」
『そりゃ誤魔化すしか――って、エンタープライズちゃんは嘘が下手なんだっけ?』
「くっ…………アシストは任せた」
『任せろい! お世辞と誤魔化しの上手さこそ大人としての強さよぉ!』
時に語り合い、時に相談し、時に音楽に耳を傾け合い、時に冗談で片方を赤面させる。
『なあ、エンプラちゃんって彼氏居ないの?』
「なっ――――急に何だ! 居ないさ、それが何か!?」
『い、いや俺が悪かったすまん。だが指揮官狙いなら諦めが肝心かと――――』
「もう良い、良いから!」
そしては二人は似ていないようで、案外どこかが通じ合っているのかもしれない。
「今日の昼食? オムライスだったな、それがどうかしたか」
『良いなー、俺も食いたい』
「…………テープの代わりに入れればもしくは」
『なあそれ真顔で言ってる? 壊れるよ、俺壊れるよ!?』
一隻は主人公で、一人はモブキャラで。
『艦載機ってどうやって飛ばすのよ』
「どう? どうって…………ダーンとやってシュババっと出すんだ」
『えっ、なんて? もう一回、聞き間違いじゃなければ予想の斜め上な返答だった気がするんだけど』
「いやだから、ダーンとやってシュババっと」
『は?』
そして普通から外された男と、普通から外れた少女だった。
『目は開けられるか? 気分は良いか? 腹は冷えてないか? 腑抜けどもに目を見開かせる最高の雷撃の快感に耐える準備はオーケイ?』
「朝から元気な人だな。少し考え事は有るがそれだけだ、業務に支障はない」
『頭すっからかんになる曲をプレゼントフォーユー』
独り言が増えたのではと相当数から最初は心配されたのだが、結論から言うと。
「姉さん、最近楽しそうだよね~」
「そうか?」
昼食の最中、向かい合って歓談していたホーネットが突然ニマニマとそんな話を切り出した。
普段から笑顔の多くてこそホーネット、という扱いでは有るがこの手の笑い方は珍しい。からかうということ自体が彼女には少ない事例というべきか。
とはいえ顔から悪意は滲み出るもので、エンタープライズはもう身構えているフシすら有る。
「指揮官と上手く行ってるとか?」
「ホーネットまで何を言ってるんだ、私は指揮官には――――」
「私までって、他に誰が言ったの?」
それはだな……とつい彼女は話してしまいそうになる。
――言ったら駄目だな、ああ。
反射的に答えそうになるのは何故か考え込むが、最近の会話の半数があのレコーダーに埋められてしまったという所に行き当たる。どうやら彼女まで口がゆるくなってしまったらしい。
あまりにも間抜けな理由だと思ってしまったのか、笑いながら
「秘密だ」
と口に指を当てて悪戯っぽく答える。
意味ありげな返事にホーネットは勿論気になるわけで
「えぇ~! はぐらかし方が下手過ぎ………………まさかカレシ!?」
「天地がひっくり返ってもそれはない!」
声を上ずらせながら尋ねてみるが、エンタープライズの返答はご覧の通り。
――今思い浮かんだ誰かがお相手だな?
さすがホーネット鋭い、だが微妙に違う。
完璧に機嫌を損ねたエンタープライズは黙々と食事を続けているが、ただ食べているだけだと思考が誤魔化せない。段々と疑問が頭の中で膨らんでいく。
――なら、何だ?
敢えて避けていた、忘れていた――――そういう質問が頭をぐるぐると回り始める。
何なんだと言われても返答に困る。ただの友人と言うには距離感が近いだろうし、恋人などと言うにはそもそも異性として意識すらしていない気がする。
しかし喋っていてもそれ程不快ではない、どころか安心する時すらあるぐらいだ。
「……………何だろうな、彼は?」
「え?」
何でも無い、と誤魔化して話を切り替えた。言うまでもなくホーネットは何度か質問をしたが、エンタープライズ自身が不思議な顔で
「いや、説明が色々と難しい人だ」
と答えるのでは引き下がる他ない。
残念ながら、彼との関係について言葉に表すには彼女達の知る『日常』があまりにも足りなさすぎる。
例えば『家族』だとか、そんな言葉を知る機会すら彼女達には無かった。
テーマ曲は「ゴーストルール」。最初は真面目にあとがきもカッコつけてたけどメンドイ。あらすじも自分で馬鹿だと思ってる、インパクト求めすぎだろ。っていうかあらすじとタイトルで本文が想像できなさすぎるぞ。
例えどれだけ憑依と言われても転生だと言い続ける。
序盤正直つまんないけど終盤で殺すから頑張ってほしい。内容はいつか書いた短編のリベンジ。
ところで人生って意外と何も変えられなくてつまんなくない?
同意の人、奇遇だな。今回はそういう話になる。