機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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第十二話 「幻影の名を持つ外道」

No side

 

弾とインパルスがアリーナに降り立た時、オータムと簪は隣の第二アリーナへと急いでいた。

 

つい先ほど弾を送り届けに来た束と出会い一時的に繋がった回線から向こうも楯無の暗殺を企てていると知ったからだ。

 

「ちっくしょう!何もこんな日に襲撃に来なくてもいいじゃねぇか!

しかも、楯無の暗殺まで知ってやがるとは!」

「お前らの中にスパイがいるか、あるいは学園の中に奴らと精通している奴がいるかのどっちかだな。」

「んな事は後だ!急いで楯無を保護するぞ!」

 

第二アリーナに入り彼女のいるビットに向かおうとする二人。だが途中でオータムは近くにある階段から降りていこうとしていた。

 

「待て、そっちじゃないぞ。そこから先は確か格納庫だったはずじゃ?」

「格納庫からラファールをとってくる!私の甲龍はここで使うとマズい事になるからな!」

「なら、私も打鉄を…」

 

オータムの後を続き降りようする簪に向かって彼女は紫色のイヤリングを投げ簪に渡す。

 

「お、おい!これは?」

「そいつぁ怪斗から預かったアストレイの一機、アストレイミラージュフレームだ。付ければ搭乗者登録してすぐに乗れるようになる!

急げ!お前の姉さんを殺されてぇのか!」

 

そしてオータムはラファールを取りに第二格納庫に、簪は一足先に楯無の所に向かった。

 

そしてビットには既に怪斗らが相手しているのと同型の遠隔操作機が楯無の囲っていた。

 

だが、そんな状況とは裏腹に狙われている本人。更識楯無は不敵に微笑んでいた。

 

「あら、あなた達が噂の亡国機業(ファントムタスク)かしら?

それで、この予告状を送ってきたジョーカーっていうのはこの中にいるんでしょ?出てきなさい。」

 

その声を合図にしたかの様に遠隔操作機達は手持ち型のバズーカや薙刀、アサルトライフルを構えた。

 

「あくまで名乗らないつもりなのね。あなたがそんな無礼な奴だとは思わなかったわ…黒崎怪斗!

最も、暗殺しようとする奴が名乗るとは思わないけどね。」

(…⁉︎姉さんは怪斗がジョーカーだって事を知っているのか…)

 

ロックが破壊され開閉が出来ないドアからではなくダクトを通ってビット内に侵入した簪は楯無の一言を聞いて驚いていた。

 

確かに彼女はここの所二人の男性適正者、織斑一夏と黒崎怪斗について調べていた。そんな事は更識のネットワークを使えばすぐに出来る…だけどどうやって知ったんだろう…

 

だが、簪の思考は急遽始まった銃撃音で途切れる。遠隔操作機がついに攻撃を始めたのだ。

 

だが、黙ってやられる程楯無も甘くはない。アサルトライフルの弾は彼女を守るように展開されている水のヴェールによって阻まれていた。

 

『その機体、モスクワの深い霧(グストーイ・トウマン・モスクヴェ)か?』

「流石、IS専門の怪盗と言った所かしら。そういうのには詳しいのね。

でもそれは前の名前。今は霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)よ。それより顔も名前も知られている私にボイスチェンジャーを使うなんてね。」

『職業柄ボイスチェンジャーを使うのは日常茶飯事でね、クセなのさ。』

 

ライフルと剣で武装した遠隔操作機がそう言う。だが、奴らは決定的なミスを犯している。と簪はイヤリングを付けながら考えていた。

 

一つは数で圧倒すれば殺せると思っていたこと。更識の当主たる者、常に身の危険を案じ鍛錬を怠るべからず。初代の楯無から受け継がれてきた言葉だ。

 

そしてもう一つは…本物の亡国機業(ファントムタスク)がここにいるという事だ。

 

〈搭乗者登録完了。マイスター簪、起動しますか?〉

「…展開だ。」

 

ボソッと彼女が言った瞬間、彼女の身体に白と紫の装甲が装着される。腕部と脚部ののブレード、腰に付けられた日本刀そしてビームサーベル。

 

アストレイミラージュフレームを展開した簪は楯無と遠隔操作機達の前に姿を見せた。

 

『なんだお前は!』

「あなたは一体⁉︎」

 

アストレイミラージュフレームを発見した二人(?)はライフルと槍を向けてくる。

 

何者かと言われて簪は黙ってしまった。正体を正直に答えるべきか、偽るべきかで。

 

(正直に更識簪と言えば姉さんを混乱させてしまう。なら、コードネームを考えるか…何がいいかな?)

 

数秒考えた後、ボイスチェンジャーで声を変えた簪は刀を抜刀し下段に構えてから口を開いた。

 

「我が名は…サイクロン。

漆黒の闇に吹く旋風…私は、亡国機業のサイクロンだ。」

『サイクロンだと?そんな奴は亡国機業には居ない!』

「お前こそ、本物のジョーカーなのか?ボイスチェンジャーで声は変えられても人間には独特の口調ってものがある。

まぁそれはいいとして…私は彼女を守らせてもらうぞ。」

 

簪は左手を楯無をかばうように広げ刀を遠隔操作機達に向けた。それを見て楯無は驚き、奴らは各々の武器を構えた。

 

『どうやら楯無と共に死にたいらしいな。いいだろう、その全身装甲(フルスキン)タイプのISと共に君の命共々盗んでやる。』

「そんな事はさせない。おばあちゃんが言っていた、マズイ飯屋と悪が栄えた試しはないってな。」

 

そしてビームサーベルで斬りかかってきた機体を日本刀『天羽々斬』でその光剣ごと腕パーツの一部を破壊する。

 

特に痛がる様子もなくバックステップでそいつは下がる。改めて確認しても奴の腕からも刀にも血が付着していない。

 

(やはり遠隔操作機…いや無人機か。)

 

すると、先ほどの奴が勝ち誇るように口を開いた。

 

『どうだい、亡国機業製の無人機は?これこそ死を超越した究極の戦士さ!』

「こんなもんがあるから世界のあちこちでISは兵器だとか叫ぶバカが生まれるのさ…

わかったなら。さぁ、お前の罪を数えろ!」

 

簪は右手の天羽々斬と左手のビームサーベルを巧みに使いながら無人機達が放つライフルの弾をよけつつ攻撃していく。

 

彼女の攻撃に防御の姿勢はない。攻撃こそ最大の防御、これが彼女の座右の銘である。

 

しかし、それ故に隙も生まれる。後ろから狙っていた一機が手に持つミサイルランチャーからミサイルを放つ。咄嗟のことで受け身が取れなかった簪はそれをモロに受けてしまう。

 

「ぐうっ!しまった!」

『さぁ、ジ・エンドだ!』

「そうはさせない!」

 

自称ジョーカーを名乗る奴の握るビームサーベルと楯無の蛇腹剣が交わる。だがそれはすぐに蛇腹剣が真っ二つに折れてしまった。

 

『そんなものビームサーベルを!』

「これでも喰らえ!」

『なにっ⁉︎』

 

簪は蛇腹剣の刀身を投げつけそれを払う隙を突いて肉薄、ついでにたまたま拾ってスタートさせたストップウォッチを空に投げる。

 

「これで決める、グラディエイターモード!」

 

そこからの攻撃はまさに疾風のごとき速さだった。目にも止まらぬ速さで両手のAソードで蹴撃しBソードで切り刻む。

 

絶対防御が発動しSE(シールドエネルギー)がみるみる削がれていく。元々至近距離格闘戦特化のミラージュは幻影が見える程の速さで両手足の剣を振るう。

 

そして、エネルギーがゼロになった瞬間その場を飛び退き空に投げたストップウォッチのボタンを押しタイムを確認する。

 

「17.5秒…それがお前の絶望までのタイムだ。」

『ぐっ…こ、こんな奴に…機体損傷甚大…撤退するしかないのか…』

 

そう言ってようやく撤退して行く、それを助けるかのように無人機たちはスモーク弾を何発も放って目眩ましをする。

 

そしてその煙が晴れたときにその場に残っていたのは楯無だけだった。

 

「もう、逃げ足の早い連中ね。それにしても…サイクロン。彼女は一体…」

「姉さん!」

「その声は…かんちゃん⁉︎」

 

破壊されたドアの向こうから走ってきたのは既にミラージュフレームを解除した簪だった。

 

スモークを隠れ蓑にライフルでバルカン砲(イーゲルシュテルン)でドアを破壊、その隙に外に出て収まったから中に戻ってきたのだ。

 

「なんか、変な機体が出てきてそこから出てったんだけど…姉さん怪我はないか⁉︎」

「大丈夫よかんちゃん。生徒会長はこの学園の最後の砦なんだから、これぐらいでやられてちゃダメよ。」

「そうだよな…そういえば第一アリーナの方に馬鹿でかいISが現れたって!」

「…そっちの方は先生たちがいたわね、それと彼女も…大丈夫よ。そっちもすぐに片付くわ。

かんちゃんは先にシェルターに行ってて、私は逃げ遅れた生徒がいないか確認してくる!」

 

そういうと楯無はミステリアスレイディをまとった状態でアリーナから離れる。

 

その後ろ姿を見ながら簪はボソッと呟いた。

 

「騙してごめんな…姉さん。」

 

そして簪はシェルターに向かって走り出した。

 

第十二話完




こっちもTGGM方式で書くことができました。
この書き方の方が楽ですね、人物描写もしっかりできるし。
では次回予告。

簪が楯無の危機を救っているのと同時進行で怪斗たちも大型ISに立ち向かう算段を考えていた。
その時、ミレイナがある作戦を思いつく。
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第十三話
「魔女と呼ばれた女」

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