機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲 作:ジャッジ
前回、前々回が長かったからこれでもいいかな?
襲撃事件が終わった後、全員に事情聴取が行われた。
謎の所属不明機との激戦の後もあり全員疲れてはいたが、体に鞭を打って事情を説明した。
「ふう…やれやれ、流石に疲れたな。風呂でも入ってゆっくりしたい所だ。」
他の誰よりも先に出て来たのは箒は事情聴取が行われていた校舎から出てアリーナに並立されている格納庫へと向かった。
そこには白式を始めアカツキやレッドフレームと言った専用機持ち達の機体が鎮座していた。
今日の襲撃事件で全員の機体は少なからず傷つき、補給も必要な状態だ。
そんな格納庫の近くに箒目当ての人物が居た。自分の姉、篠ノ之束である。
「……久しぶり、姉さん。」
「やっほ〜!久しぶりだね箒ちゃん!」
「はは、そのテンションも変わらないね。本当に。」
箒は近くの壁に凭れかかりふぅ、とため息をついた。流石にあの長時間戦い続けるのはキツかったようだ。
「ふっふ〜ん、やっぱお疲れの用だね箒ちゃんは。
見てたよ〜結構強くなったし、かなり育ってるんじゃないかな?特にこのおっぱいとか!」
「頼むからそう言う冗談は後にしてくれないか?
今の状態でそれに応える元気は無いんだ…それで、要件は?」
うん!と元気よく答えて束は二、三歩歩いて空を見上げる。学園の明かりも少なく、星かよく見える。
だが、そんな綺麗な星空とは裏腹に束が聞いたのは突拍子もないことだった。
「箒ちゃんは…かー君…怪斗君の事、好きなの?」
「ぶっ⁉︎な、な、ななな何をいきなり⁉︎
わ、私が怪斗の事を好きだなんて!そんな根拠も何も無い話をする為に私を呼んだんですか⁉︎」
そうあたふたする箒を見て、束はちょっと意外そうな顔をしていた。
実はからかいのつもりで言ったつもりだったのだがどうやら的を射ていたみたいだと。
そう思うと笑いと共に感慨深い感情が芽生えてきた。自分の見えない場所で妹達も成長しているのだと。
「そっかぁ〜、箒ちゃんも恋するお年頃なんだね。安心したよ人並みに成長しててさ。」
「う…そ、それより呼びたした案件はなんですか!」
「そうそう、忘れる所だった。取り敢えずこれを見てくれない?」
そこに表示されていたのはレッドフレームだった。しかし、ただのレッドフレームではない。
背中のフライトパックに三本の剣を背負いアンテナの形状にも変化が見られる。
「これは…レッドフレームの改修案?」
「違う違う。これはレッドフレームの特殊パッケージ『レッドドラゴン』!
これのデータを見せにきたんだよ、それとこの特殊武装『カレトヴルッフ』のデータとね。」
パソコンに刺してあったUSBメモリを箒に投げ渡しそれを受け取った瞬間にはもう束は居なくなっていた。
「はやっ!やっぱり姉さんは姉さんだな。」
ケータイを取り出し現時刻を確かめようとすると、メールが来ていたことに気づいた。
『モッピーどこおんの〜?
今、ウチら食堂におんねんけど。メーやんがパエリア作ってくれるんやて!
せやからなるべくはよ来てな〜、ぜーんぶ食べてまうで!
P.S.
怪斗の事情聴取がまだ終わっとらんらしいからゆっくり来てもええで〜!』
「全く、こっちはこっちで…早く行けばいいのかそうでも無いのか、はっきりと書けばいいものを。
とにかく待たせるわけにはいかないな…急ぐか。」
束がどこに行ったかは気にはなったが…あの自由奔放な姉だ。
きっともう自分の隠れ家に帰ったのだろう。
ケータイを閉じて箒は食堂に急いだ。
その後、江理華のメール通り一番最後に事情聴取が終わった怪斗は江理華のメールを見て食堂に向かっていた。
「ふむ、パエリアか。そういえばメーヤはイタリア出身のはずだが…
親族にスペイン人でもいるのだろうかな?」
そう言いつつも少し楽しみにして食堂に向かっていた。同世代の女子の手料理ともなると少しワクワクする。
どうやら、美女に弱いのは父親譲りのようだ。
彼の父親、ルパン三世もよく美女(主に峰 不二子)に騙されて酷い目にあっていたと、彼は聞いている。
「あら、随分とご機嫌見たいね。黒崎君?」
「…君は実に僕の事が気に入っているようだね。更識楯無…いや、更識刀奈?」
怪斗が今まさに通り過ぎようとしていた角に立っていたのは更識楯無。
だがその顔には笑みはなく、その代わりに敵に向けられる殺気が彼に向かって立てられていた。
「よっぽど僕の事が気に入ってるようだね、僕のストーカーかな?」
「茶化すのもいい加減にしなさい。
それと、年上には敬語を使うこと…あなたの居る組織から習わなかったのかしら?」
「ふっ…これは失礼しました、更識会長殿?」
怪斗は素直にそれに従う。それもそのはず、楯無の服の中には拳銃が眠っている。
下手に事を荒らげたくない、それからなるべく早くここ用を済ましたいというのが彼の本心だ。
「あなたよね、IS学園に入った亡国機業のスパイっていうのは。」
「さぁて、何のことですかね?」
「とぼけないで頂戴。あなたに答えないという選択肢は無いわ。
答えないと…今晩中に学園の生徒が一人減ることになるわよ?」
怪斗はやれやれとでも言いたそうな表情で両手を上にあげ降参のポーズを取った。
「負けましたよ、あなたにはね。
では正直に答えましょう、答えは半分Yes。
確かに僕は亡国機業の構成員です。
でも残り半分はNo。
僕はIS学園に入ったスパイではない。」
「なるほどね、じゃあ第二の質問。
どうしてあなたはこの学園に来たの?何かしらの任務を貰ったからじゃなくて?」
「……ええ、僕は任務を貰いましたよ。君の殺害という任務を…ね。」
そう言うと彼女よりも先に護衛用の拳銃を懐から覗かせる。それこそ、かのルパン三世が使った名銃…ワルサーP38だ。
しかし怪斗はそれを打つことなく、また懐に戻した。
「今日は疲れまし、興も冷めたことですし。
今回の所は辞めにしましょう。それにここじゃ殺したことがすぐにバレてしまいますからね。
では、またいつかあなたの命を頂きにいかせて貰います。」
最後に怪斗は楯無に向けてトランプのジョーカーが描かれたカードを投げ渡し、その場を後にした。
因みにその後。一夏と鈴の仲直り、転校生の五反田弾のお祝いを兼ねて(簪を除く)一年専用機持ちによるちょっとしたパーティがあったそうだ。
場所と時間は変わり、深夜のIS学園地下50mの所にある深部で織斑千冬は二つの戦闘データを見比べていた。
一つはアリーナでの大規模な戦闘、もう一つはビットでの小規模の戦闘。
同時刻の同一犯による犯行…それは分かりきっている。だが、千冬が問題視しているのはまた違う所だった。
「…やはりこれは『アストレイ』か…束め、これを完成させていたとは。」
三機のアストレイを見て千冬は奥歯を噛み締めた。
実は数年前、束に試作機体のテストをして欲しいと言われて手伝った事がある、それがアストレイの一号機だった。
そして千冬は後ろの扉に背を向けたまま口を開いた。
「…私を利用したのか、束?」
「別に利用したわけじゃないよ、ちーちゃん。」
扉が開いてそこから入って来たのは…束だった。
「どういうつもりだ束、亡国機業に肩入れするとは。」
「う〜ん、あれかな。世界の平和を願うためかな〜。」
「ふざけるなっ‼︎」
ドンッ!と机を叩き怒りを露わにする。だがその顔は怒りと共に悲しみの表情も含まれていた。
その後、千冬は自分を落ち着かせるように一息ついた
「分かっているのか。奴らの行った事で何人もの人が死んでいるんだ。
その事を分かっているのか?」
「もちろん、分かっているよ。」
「…お前はこの件に何か関与しているのか?
この無人機はお前の作ったアストレイに似ている、正直に答えろ。」
「関与してないよー!」
「…そんな事信じられると思っているのか?」
「もちろん!思ってないよ。
でも、今は信じてもらえる手段もない…けど。」
そう言うと束は千冬に近づいて赤いブレスレットを腕に着ける。
「なんだこれは?」
「ちーちゃん専用にカスタマイズした打鉄。
ホントはガンダムタイプにしたかったんだけど…間に合わなかったからさ!
多分近い内に使う時が来るから、じゃあ、またねちーちゃん!」
「あ、待て束っ!」
扉を出た束を追うように千冬は急いで外に出るが、まるで消えたかのように姿を消していた。
そして右腕に着けられたブレスレットを見る。その色はとても綺麗な桜色、かつての自分の愛機『暮桜』をイメージしたものだろう。
「はぁ、あいつは昔からお節介が過ぎる。こんなもの、使うことなどないな。」
そう言ってそれを外しポケットにしまった。
しかし、彼女の予想とは裏腹にそれを使う時は確実に近づいていた。
第十四話完
さて、意外に時間がかかった一巻もこれで終了。
次回からは二巻の内容に入っていきます。では次回予告。
次回
ゴールデンウィークに突入したIS学園。
ルームメイトの江理華は地元へ帰り弾は一夏と出かけてしまい怪斗は退屈にしていた。
そんな時、箒と鈴がそれぞれ街を案内すると申し出てきて…
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第十五話
「
感想、ご意見お待ちしております。(感想返しをしてませんが、ちゃんと感想は見てますよ。