機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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第十六話 「五反田 弾の憂鬱」

No side

 

彼の名前は五反田 弾。今や日本中…いや世界中に名が轟く三人目の適性者だ。

そんな彼にはもう一つの顔がある。篠ノ之束の勧誘によって亡国機業の一員でもあるのだ。

そんな訳で彼はIS学園にいるわけだが、思った以上にレベルが高い。もちろん女の子のだ。

だが、男の子なら誰もが夢見るパラダイスの中で弾は悩みを抱えていた。それは…

 

「くそぅ、どうして俺には彼女一人出来ねぇんだよ…」

「さっきから何をブツブツ言ってるんだお前は?」

 

ゴールデンウイーク明けの朝、食堂で朝飯をとってる俺の隣でコーンフレークを食ってんのは更識簪。

弾より後に亡国機業に入ったアストレイミラージュフレームのパイロットで生徒会長の更識楯無の妹でもある弾のルームメイトだ。

 

「でもさぁ、お前も早く彼氏欲しいとか考えた事ねぇのか?」

「ないね。てゆーか姉さんがそういうのに厳しいから。」

「なーるそういう事ね、あの生徒会長なら納得だわ。」

「中学の時は特に厳しかったな。多分姉さんはシスコンの気があるんじゃないかと思うんだが…」

「それだったら俺は命を狙われかねねぇな、全く。」

 

そうぼやきながら彼は焼き魚の最後の一切れを口に放り込んでトレイを返却口に持っていって食堂を後にする。

手には学生カバンと首にインパルスの待機状態であるネックレスをぶら下げて。

 

弾side

 

今日は久々の登校だ、予習復習もバッチリだし宿題もやった。忘れ物無いかのチェックも万全。

これで今日も千冬さん……もとい、織斑先生の出席簿アタックは回避出来そうだ。

 

教室に入るとちらほら人がいてそこには怪斗と箒、そして机でぐったりしている江理華がいた。

 

「おはよーっと。」

「やぁおはよう弾。充実した休日を過ごせたかな?」

「お前ほどじゃねぇけどな怪斗。

聞いたぜ、箒と鈴と二人連れてデートに行ったんだって?

女子二人連れてデートとは…男としちゃあ羨ましいねぇ。」

「で、でででデートじゃない!ただ怪斗が街を見たいって言っただけで…」

「はいはい、って今日はえらく沈んでんな江理華は。」

 

いつもなら真っ先に話しかけてくるだろう江理華がぐったりしている、よーくみたらこいつプリントとノートを枕にしてんじゃねぇか。

もしかして…こいつ宿題してなかったなぁ?

 

「ご愁傷様だな江理華、けど宿題やってこなかったのはお前のせいだぞ。」

「いやそうちゃうんや。宿題無くしてん…大阪の実家で…」

「お、おう…」

 

忘れてよりこっちの方が重症だな…てかどうやったら宿題を無くすんだよ。

なるほど、だからノートにやり直してたって訳か。確かにそりゃだるいな。

 

「おっはよー怪斗!今日も元気?」

「おはよう鈴。君も元気のようだね。」

 

そう言って二人はハイタッチしている。なんだかんだであの二人は仲良いんだよな。

実際この間のペアでの模擬戦も一夏と俺のペアに余裕だったしな。まぁ箒とのコンビネーションも抜群だったし。

 

噂で聞いた話だと、この三人ゴールデンウィーク中にデートしたらしい。

そして皆、怪斗が箒か鈴と付き合ってるんじゃ無いかと探りを入れてるそうだ。

ちくしょう、なんで俺には彼女ができないんだよぉ…

 

箒side

 

予鈴がなる直前に帰っていく鈴に手を振る怪斗を見てハァとため息をつく。

 

姉さんに言われた通り私は怪斗の事が好きなのだろう…多分。

自分でもわからない、いつからこの思いを抱き始めたのかも。自慢ではないが色恋沙汰には疎い方だ。それは自覚している。

 

「ふぅん、その顔。恋する乙女の顔だな。」

「ひやぁ⁉︎み、実…やっぱりそう見える…のか?」

「もちろんだ、だって私も同じような顔をする時だってあるんだから。」

 

そう言って実はセシリアや布仏さんらと話している一夏をちらりと見た。

そういえば小さい頃から何かあれば一夏の話だったな、姉さんの事であいつと離れ離れになってしまってもどうしてるのか気にしてたな。

 

「それにしても、私は箒が羨ましいよ。」

「えっ…?」

 

ふと実はそんな事を言い出す。見るとその顔は少し影が見えていた。

 

「お前はISが…専用機がある。

一夏と同じ場所に立つことが出来るお前が羨ましくて…どうしてあそこに私も立っていないんだと思うと…な。」

「実、お前……」

「ふふっ、そろそろ織斑先生が来る。一時間目は第二アリーナだったな。」

 

そんな実を見送りつつ私は朝礼の最中も私は考えこんでいた。

 

実は多分この前の襲撃事件の時に何もできなかったのが許せなかったのかもしれない。

一瞬、姉さんに実の機体を作ってもらおうかと思ったが…それは実を傷つける事になるかもしれないしな…

 

『え、えええ〜〜⁉︎』

「な!なんだ⁉︎」

「も、もももモッピー聞いてなかったん⁈転校生やん、しかも三人も!」

「な、なんだと!」

 

確かにそれは驚きだ、この間弾が転入して来たばかりだというのに。

流石にこれについては怪斗も驚きを隠せない様子だ。

 

「ではデュノア、ボーデヴィッヒ、クロステルマン。入ってこい。」

「はーい!」

 

一人甲高い声が聞こえ三人が入ってくる。そして、その内の一人を見て全員息を飲んだ。

だって、その内の一人が男子だったのだから。

 

「えっと…シャルル・デュノアです。フランスから来ました、一応日本についての予備知識はあるんですが…よろしくお願いします。」

 

デュノアが挨拶を終えた後、一夏や怪斗、弾の時よりも長い沈黙が流れた。

なんだか嫌な沈黙だな、と思ったその瞬間やはり嫌な予感は的中した。

 

『きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!』

「わ、わわっ⁉︎」

 

突然の事でデュノアは怯えた表情を浮かべて慌てていた。まぁ確かにこれは酷いな。

酷いと言うか…このテンションの上がり用はどうなんだ?

 

「静かに!ボーデヴィッヒ、挨拶しろ。」

「はい教官。」

「教官はもういい、何年前の話だ。」

「わかりました。ラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

「………え、以上ですか?」

「もちろんです。」

 

デュノアとは打って変わって挨拶はすぐに終わった。早すぎて山田先生も心配しているな。

 

それよりも、気になるのは教官という言葉だ。

織斑先生が昔どこかの軍で教官をしていたというのは怪斗から聞いている。となると軍人…

やっかいだな、私たちの動きを軍が探りに来たということか?

 

「え〜、流石に早すぎじゃないの?

じゃあ僕の番だね!リューカ・クロステルマンだよ〜!

好きなものはお菓子で嫌いなものは苦いのかな?皆〜よろしくね、イェイ!」

『おお〜!』

 

一番右のちびっ子が元気良く空にピースを掲げて元気良く挨拶していた。

今度は今度でその元気からまたテンションが上がってあちこちでよろしく〜と言っている。

 

「騒ぐのもそこまでだ、一時間目は実技だったな、全員おくれないように!」

『はい!』

「ああそれと織斑、黒崎、五反田。お前らでデュノアの面倒を見てやれ、分かったな。」

 

すると怪斗はもの凄くがっかりした顔をして席を立った。まぁ気持ちはわからなくもないがな。

 

No side

 

一通りの朝礼が終わって弾と一夏はシャルの元に行った。

 

「えっと、君が五反田君で、君が織斑君?僕は…」

「悪い!話は後にしてくれないか、急ぐぞ弾。」

「おうよ、さっさとしねぇとな!」

 

一夏はシャルの手を握って弾と一緒に教室を出る。だがその時に弾はシャルの顔が赤くなっているのを見逃さなかった。

 

その後三人は渡り廊下を走っていた。ここを通ればアリーナまでの近道だからだ。

 

「俺たちが着替える所がアリーナのビットルームぐらいしか無いからさ、急いで行かないと織斑先生に怒られるんだ。」

「そ、そうなんだ。更衣室が無いのはちょっと不便だね…」

「いやいや、ちょっと所じゃねぇんだよなコレが。

……ってあれ?怪斗がいねぇ!」

 

弾にそう言われて走りながら一夏とシャルはその場を見回す。確かに怪斗の姿はない。

どこで居なくなったのかを考えてると、そもそも教室を出る時点で居ないことに気がついた。

 

「おかしいな、あいつどこ行ったんだ?近道はここしかないはずだけど…」

「ええっと…あ、下の道にいるよ。」

 

ふたりとも渡り廊下の下にある道を悠然と歩く怪斗を見つけた。そして何か意味深な顔でこっちを見て廊下の少し先を顎で示した。

 

するとシャルが何かに怯えたように顔を引きつっていた。そしてその方を見るとそこには…

 

「あ、転校生君発見!」

「しかも織斑君と五反田君も一緒!」

「怪斗様が居ないのはのが残念だけど…者ども!出会えい出会えい!」

 

その声と同時に女子の大群が姿を表す、しかもどこからか法螺貝の音も響いて一夏と弾はここは武家屋敷か!と突っ込んでいた。

 

「ま、まさか黒崎君はこの事を見越して…」

「あ!あいつこっち見てほくそ笑んでる!確信犯だ絶対!」

「ええいこうなりゃヤケだ‼︎」

 

一夏とシャルを置いて弾は窓の鍵を外し開けて枠に足をかける、そして…

 

「アイ、キャン、フラァァァァァイ!」

 

勢いある掛け声よろしく窓から飛び出した。コンクリートの部分に落ちれば大変だったが、運良く落ちたのは脇の柔らかい土の所だったからなんとか助かったのだった。

 

「おい、大丈夫かよ弾!」

「お、おう…んじゃ俺はこのまま向かうから、頑張れよ〜二人とも!」

「あ、しまった!ええいこうなりゃシャル!ちょっとごめんなぁ!」

「え…う、うわぁぁぁ⁉︎」

 

今度は一夏がシャルをお姫様抱っこして飛び降り着地する。

 

その様子を見て上にいる女子達はきゃー!と歓喜も混じったような悲鳴を上げるているが…三人とも気にせずアリーナを目指した。

 

「ひゃあ、危ない危ない。あの軍団に捕まってたら絶対間に合わなかったな。」

「う、うん、そうだ…ね。」

「どうしたシャル。顔赤いけど大丈夫か?」

「ふぇ⁉︎そそそ、そんなことないよ!うん、僕は大丈夫だから!」

 

そして、そんな二人を見ながら弾はこう思うのだった。

 

(シャルってまさか…いやまさかな…はは、こんな美少年がホモな訳ないよな…)

 

所変わって第二アリーナの入り口付近、そこにはすでにISスーツに身をまとった怪斗がいた。

彼の目の前にはさっき皆の前で挨拶していたラウラとリューカがいた。

 

「全く、君は変わらないねラウラ。

もう少し自己紹介のレパートリーを増やしたらどうだい?」

「敵に情報を与えるべきではないと思うんだが?」

「安心したまえ、少なくともクラスメートは敵じゃない。

さてと、ラウラはもう専用機を持ってるんだったか?」

「ああ、シュヴァルツェア・レーゲンの予備パーツとガンダムのパーツを使って作られた機体だ。」

 

そう言ってラウラは足に巻いている黒いレッグバンドを見せびらかす。

へぇ〜と言って怪斗は関心を示すが、唯一示してない者がいる。

もう一人の転校生、リューカ・クロステルマンだ。

 

「ねぇねぇ〜、怪斗は僕にプレゼントがあるんでしょ〜!

早く渡してよー!はーやーくー!」

「はいはい、今すぐ渡すよ。」

 

そう言って怪斗が取り出したのはグリーンを基調としたバックルだった。

リューカは嬉々としてそれを喜び小躍りするようなスキップでアリーナに入っていった。

 

「やれやれ、リューカもまだ子供だね。」

「しょうがないだろう、本当に子供なんだからな。

む、そろそろ時間のようだな。行くぞ怪斗。」

「ああ、もちろんだとも。」

 

そう言って怪斗らもアリーナに入っていく。

この後、着替えに手間取り一夏と弾が織斑先生から一撃喰らうのは…もう少し後の話だ。

 

第十六話完




まぁた駆け足気味になってしまった…orz
多忙だとどうしてもこうなっちゃうんですよね…では次回予告

授業の一環で模擬戦をすることになった箒とシャルル、ついに彼の機体が姿を現す。
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第十七話
「シャルル初陣」

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