機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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第十八話 「Xナンバー奪還作戦」

No side

 

シャルルらが転校して来た次の週の土曜日、一般の高校と同じくこの日の授業は半日まででアリーナを使った本格的練習をする者も多くいた。

 

もちろんそれは学年で二番目(?)に弱い一夏もそうだった。

彼はシャルルに頼んでISについてのイロハを教えてもらっていたのだ。

 

「えっと、織斑君がデュノアさんやビショップさんに勝てないのは単に射撃武器についての知識が無いからだと思うよ?」

「そうなのか?一応、知識ではわかってるつもりなんだけど。」

 

練習前に模擬戦をして、それを踏まえてから訓練をする事になっていて。

シャルルは一夏の弱点、射撃についてのレクチャーをすることにしていた。

 

「うーん…知識としてって感じかな?

さっきの模擬戦も全然距離詰めれなかったもんね。」

「ゔっ、痛いとこ突かれたな…」

「一夏の白式は格闘戦オンリーの機体だから、よく射撃武器について理解しておく必要があるよ。

特に一夏みたいな直線的なタイプは、軌道が読みやすいからね。」

 

そんな二人のことを遠くから見ている数人がいた。

実、セシリア、鈴、メーヤそしてミレイナであった。

 

「全く何だというんだ一夏の態度は、男同士の何がいいんだ。」

「全くその通りですわ!わたくしというものがありながらぁ〜!」

「はいはい、あんたらの言ってる事は聞き飽きたの。」

 

実とセシリアの嫉妬を軽く受け流している鈴、そんな彼女自身も別件で頭を抱えてる事があった。

 

最近、怪斗がラウラという転校生につきっきりなのだ。そして口を開けば彼女の事…

もしかして怪斗は……いやいやそんなわけ無い、ってかそう思いたく無い。

と、鈴も悩んでいた。そして彼女も…

 

「うーんやっぱなぁ〜…」

「どうしたんですメーヤさん?」

「いやなぁ、どう見てもシャルルがホモにしかなぁ〜。」

「あの…ホモってなんですか?」

 

恐る恐る聞いたミレイナに対して、メーヤは信じられない物を見るかのような目で彼女を見つめた。

 

いくらそういうのに疎いだろうミレイナでも、流石にそれは知ってるだろうと思っていたのだが…まさか間反対の結果になるとは思ってもなかったようだ。

 

「お、おまっ、本当に知らねぇのか⁉︎」

「知らないから聞いているのですっ!ホモとは一体なんなのですか?」

 

実際、メーヤは説明するか否かで迷っていた。純情無垢で真っ白のな彼女を汚してしまっていいのだろうか…

そして、メーヤはミレイナの熱意に負けた。

 

が、予想通りにメーヤが教えれば教える程ミレイナの顔はどんどん赤くなっていった。

 

「な、な、なんですかそれは!あ、あなたそんな破廉恥な事を考えていたのですか⁉︎」

「いや、破廉恥って事は無いだろ?ホモが嫌いな女はいないんだろうしさ。」

「私は嫌いです!」

 

それ以上聞きたくないかのようにミレイナはプイッと横を向くが、その顔はすぐに緊張感漂う表情に変わった。

 

なぜなら今まさにこっちに向かって一機の黒いISが向かってきているからだ。それが気になってかメーやも同じ方を向く。

 

「あ、あれはドイツの第三世代⁉︎トライアル中のはずでは…?」

「見たところバスターと同じ砲撃型だな、あのドでかいランチャーは…ビームって感じか?

…って、ありゃラウラじゃねぇか。代表候補生やってたんだなぁ〜。」

 

ラウラはそんな憶測などを気にせず目の前にいる一夏とシャル()をその鋭い眼でしっかりと捉えていた。

 

「おい貴様、織斑一夏だな。私と戦え。」

「そうだけど。それよりなんで戦わなきゃいけないんだよ、全く理由が無いだろ?」

「ふん、貴様には無いが私にはある。あの時は言わなかったが私はドイツの軍人でな、織斑教官には世話になった。」

 

ドイツ、教官。一夏はこの二つの言葉に覚えがあった。

彼の姉、千冬はかつてドイツのどこかの部隊に行ってそこの隊員に戦闘技術を教えたと聞いたことがあるからだ。

 

その理由はもちろんある、それは彼が誘拐された事だ。

 

第二回IS世界大会『モンドグロッソ』当時はまだ現役で日本代表の千冬の応援に行った一夏は謎のグループによって誘拐、監禁されたものの決勝戦を放棄してまで駆けつけた千冬によって救出されている。

 

一夏は知らないが、その時彼が監禁されている場所の情報を提供したとはドイツ軍だったのだ。

 

「貴様がいなければ教官が二連覇という偉業を成し遂げることなど造作も無かっただろう。

私は貴様を…いや、貴様の存在そのものを認めん。」

「…そうかよ、でもな。俺だってあの時の自分が許せないんだ、だからこうやって自分を磨いてる。

今はまだ足りてないから…また今度な。」

「そうか、ならば私は勝手に戦いを始めるとしよう!」

 

ガギンッという音と共に右背中にあるバズーカを展開、そこから音速の実弾を発射する。

だがそれはシャルルの対ビームシールドによって防がれると同時にビームライフルをラウラへと向ける。

 

「…危ないね、一夏に当たったらどうするつもりだったのかな?

ドイツの人はずいぶん沸点が低いように見えるけど?」

「…ふん。フランスのルーキーにそんな事を言う資格があるのか?」

「それは君のだってそうだろう?

しかも研究所に眠っていたみたいな試作機みたいだね。なるほど、沸点が低いのは開発競争に負けそうでイライラしてるからなのかな?」

 

冷静な顔で返すラウラに対してシャルのそれは怒り心頭といった様子だった。

それを見てなのかラウラも背中のバズーカを収納、さらにISも解除した。

 

「興が冷めた、今日は引くとしよう。」

 

そう言って彼女は近くのアリーナゲートからスタスタと退出していく。

そのゲートの出口付近に人影があった。黒髪に碧眼、そしてその顔に笑みを浮かべた怪斗だった。

 

「やはり君は変わらないね、あの事をまだ気にしているのかい?」

「当たり前だ、あいつだけは許さない。絶対にだ。」

「確かに、君は口を開けば常に織斑先生の話だったが。」

「それより、手はずの方はどうなんだ?もう二週間になるぞ、お前の準備期間は。」

 

怪斗は少し困ったような顔をしてはぁ、とため息をついた。その後、彼女の肩にポンッと手を置いた。

 

「大丈夫さ。簪に頼んだ物も届いたし、準備は万端さ。後は彼…いや彼女しだいって訳さ。」

「ふむ、ならいいんだ。確か集まるのはその簪の部屋だったな。

すぐに着替えてこよう、ここで待っていろ。」

 

そう言って笑みを浮かべラウラは更衣室へと向かう。

そんな彼女を見つつ、怪斗は壁に背中を預けてまたため息をつく。

 

「それにしても。ラウラは本当に織斑教諭の話しかしない、どうしたモノかな?

…やれやれ、やはり男の嫉妬とは醜いものなのだよ。自分で言うことじゃないと思うけど。」

 

彼は頭の中にラウラの顔を思い浮かべつつそう言った。

実は鈴の予想は当たっていたのだ。怪斗はラウラの事が好きだ、それはLikeの意味ではなくLoveの方でだ。

 

もちろん、その思いはラウラに届いてはいない。いや届いていればここまで悩むことは無いだろう。

 

「…いつまでそうしているつもりだ?」

「っと。もう着替えたのかいラウラ、では行こうか。」

「おい、さりげなく手を握ろうとするな。別に迷子になる事はないぞ。」

「はいはい、わかっているのだよ。」

 

さりげなく手を結ぼうとする作戦も失敗し怪斗は本日三回目のため息をつく、これからの先も長いと感じながら。

 

 

時と場所は変わって夕方の学生寮、その廊下をシャルルはイライラしながら一人で歩いていた。

 

理由は昼間のラウラによる介入だった。あの時、隣に自分がいたからいいものの、いなかったらどうするつもりだったのか。

 

「(全く、一夏に何かあったらどうするつもりだったんだ。もし怪我でもしたら…

次にあんな事をしたらどうするべきか、考えとかなきゃダメだね…)あれ?」

 

シャルルが部屋に入ろうした時、ドアの隙間に一枚の手紙が挟まっているのに気がついた。

拾い上げて見ると真ん中にハートマークのシールが封をするように貼り付けてあった。

 

「(誰からだろう、もしかしてラブレターってのかな?

困ったなぁ…どうすればいいんだろう?)」

 

そう言って彼は部屋に入り手紙を開ける、そこには手紙もましてやラブレターなど入っていなかった。

入っていたのは数枚の写真、そこに撮られていたのは…

 

「っ!こ、これって⁈」

 

その写真には、彼…いや彼女が着替えている瞬間を収めていた。しかもただの着替えではなく男装している時の写真だ。

すると、タイミングよく携帯が鳴りメールが届く。アドレス帳にはない、未知の物だった。シャルルは恐る恐るケータイを操作してそれを開封する。

 

『シャルロット・デュノア、君の素性は判明しているよ。

君はデュノア社の社長と愛人の間に生まれた娘、今から数年前、その愛人は他界して君はデュノア社長に引き取られされるがままに男性パイロットとして入学したのでしょう?』

 

画面をスクロールしていき次の行に目を移す。そして、それと伴って彼女の顔はどんどん青くなっていく。

 

『友人と呼んでくれる人間を裏切り騙す日々はさぞ愉快なことだろうね。

別に気にすることはないよ、気付けないあいつらが愚かなんだから。』

 

読み終わった時、彼女の心臓の鼓動はバクバクと速まり嫌な汗をかいた頭を抱えた。

 

「な、んで…どうして、どうやって僕の事をっ。」

 

答える相手もいないのにそう尋ねる、もちろん誰も答えるわけはない。

そんな彼女に追い打ちをかけるかのようにまた一通、メールが届いた。

 

 

「なるほど、性別詐称を利用した恐喝か、よくこんな事を思いついたな、怪斗?」

「なぁに、こんなの朝飯前だよ。

詐欺の手順は今も昔も変わらない、正常な判断をさせず、相手をパニック状態にさせる事だ。」

 

シャルルと一夏の部屋から少し離れた所にある簪と弾の部屋、そこには怪斗を初めとした亡国機業の面々が集まっていた。

 

ベットの上に置いてあるスピーカー付きのノートパソコンにはまさに今、メールを見て更に息を荒くしているシャルル…いや、シャルロットの声とその姿が映し出されていた。

 

この二週の間、怪斗は彼らの部屋に盗聴器と盗撮用のカメラを設置し、簪の力を借りて彼女の写真とメールアドレスを入手していた。

 

「シャルって面白いね〜、メール見るたびにビクビクしちゃってさ〜!」

「リューカ、人の不幸を笑っているとロクな大人になれないぞ?」

「いやモッピー、それはおかしいで。

亡国機業にこの子がおる時点でそれはどないかと思うけど?」

「確かにそうだな。それより、あいつには今なんと送ったんだ?」

 

簪の何気ない質問に対して怪斗は君の目で確かめたまえと言ってケータイをいじる、すると…

 

『ソイヤッ!オレンジアームズ、花道オンステージ!』

「ん?なんだ、わざわざメールで送ってきたのか。」

「ちょぉ待てって!何なんその着メロ⁈」

「あぁ、歌は気にするな。」

 

いや、気にするやろ…という江理華のツッコミをさておき簪はそのメールを確認してなるほど、と納得する。その内容はこうだった。

 

『この写真をばら撒かれたく無いならば私の言うことに従ってもらうよ?

ただし断れば……君のだぁい好きな一夏クンの命は保障できないなぁ〜?』

「なるほどねぇ、確かにこりゃ断れねぇわな。

それで、返信は来たのかよ?」

「もちろんさ、協力するとのことでね。」

 

納得する弾を横目に、怪斗は今きたメールの返信を打っている。一つ一つ言葉を選びつつ、相手を追い詰めるように…

 

『それじゃあお願いを言うわ、あなたを含めた一年の代表候補生の専用機を渡してもらおうかしら。

受け取りは二週間後、またれんらくするわ。』

 

このメールを送信し怪斗はやり切った感のある顔をしてその場で背伸びした。

 

「これで終了だ、皆さんお疲れ様っと。」

「本当にこんなのでいいのか?それに引き渡しの時はどうするつもりなんだ?」

「まぁ、亡国機業の下っ端に取りにいってもらうのが得策だろう。

ここから僕たちの仕事は無いよ。」

 

そう言ってパソコンのモニターを消そうとする怪斗。そこにシャルロットの姿はなく、音から察するにシャワーでも浴びているのだろう。

 

だが、そこに彼が予想しえないイレギュラーが舞い込んで来た。

 

『ただいまー、あれ?シャルは…なんだシャワーか。

そういえば、ボディーソープ切れてたっけ。』

「おいおいおいおい!何をしようと言うのだよ一夏は!やめろ、やめるんだっ!」

 

無論、盗聴器越しに怪斗の声が聞こえるはずもなく、一夏はその禁断の扉を開いた。

 

「ええいっこなくそ!」

「お、落ち着け怪斗!」

 

思わすケータイを叩きつけそうになった怪斗を箒が急いでなだめる、その横では映像を見ながらラウラが一夏を睨みつけている。

 

しかも最悪な事に、シャルは一夏にあの写真とメールの事を打ち明けたのだ。

そこまで見ると怪斗はノートパソコンを閉じてそそくさとその場を後にしてしまった。

それに続くようにラウラも部屋から出て行く。

 

「ふん、やはりどこまで行ってもお前は邪魔ばかりだな。織斑一夏…!」

 

部屋を出たラウラは今すぐにでも奴らの部屋に乗り込みたいという衝動を抑えつつ帰路についた。

 

まぁいい、明日に地獄を見せればいいだけ。と考えながら…

 

第十八話完




行事が重なるこの季節、毎回言ってますが忙しいのです(汗
それでは次回予告。

一夏と言う名のイレギュラーを払拭するため、ラウラは彼をおびき寄せるエサとしてセシリアと鈴に戦いを挑む。
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第十九話
「黒い月、満たされる時」

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