機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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推奨BGM
怪斗&ラウラ、戦闘開始
銀魂
「バクチダンサー」


第二十一話 「アウェイクニング」

衝突から約一週間後、ついに学年別タッグトーナメントの開催日となった。

第一回戦、その組み合わせは。

織斑一夏&シャルル・デュノアVS黒崎怪斗&ラウラ・ボーデヴィッヒペアとなった。

もちろん、それは偶然…ではない。

 

「頼んだんだ、巻紙先生…オータムに。トーナメント表を弄ってくれとね。」

「それはありがたいな、礼を言わねばならなん。なにしろ、面倒事が早く片付く。」

 

ビットのカタパルト前で、怪斗とラウラは機体のチェックをしていた。

両機とも、新武装が施されているからだ。

 

全てのチェックが済むと、アカツキに乗り込む。ラウラもまた、ゴールドフレーム天へと乗り込み、カタパルトへと歩を進める。

 

「黒崎怪斗。アカツキ、行きます!」

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。ゴールドフレーム天、出るぞ!」

 

勢いよくカタパルトから出た二人は、アリーナへと降り立つ。

すると、程なくして向こう側から白式と、ストライクが出てくる。

 

「いやはや、奇遇だね。こうも早く君たちと決着が着けられるなんてね。」

「怪斗。僕はまだ、君を…君たちを許したわけじゃない!」

「怪斗!流石に今回のは見逃せない、ちゃんと二人に謝ってくれ!」

「それはこっちのセリフだ。

私も、貴様らを許した事など。一度もないし、謝るのはそっちの方だ!」

 

 

ビッーー!

ラウラの言葉が終わると同時に、試合開始のブザーが鳴る。

 

それと同時に、一瞬だけ目を合わせた一夏とシャルは、一気にラウラ達に迫る。

 

「見せてあげるよ、僕たちの一週間の成果!」

「ああ、俺たちの、コンビネーション!」

『うおぉぉぉ!』

 

一夏とシャルのコンビネーションという言葉で、様々な意味で盛り上がり、歓声が響く。

アリーナにいる全員が、このペアの勝利を確信した。

 

一夏は雪片弐型、シャルはビームサーベルを構えて挟み込むように旋回する。だが。

 

「…何を勘違いしているのだよ。」

「ただの仲良しこよしは。」

「「コンビネーションじゃない!」」

 

バキッ!ギャリィ!

怪斗の裏拳と、ラウラの回し蹴りが一夏達に炸裂し、砂埃を立たせながら、アリーナの地面を転がる。

 

すると、さっきまでの歓声が、嘘のように静まり返える。

 

すると、ラウラはおもむろに、ゴールドフレーム天の頭部を解除し、左眼にしてあった眼帯を取る。

 

左眼の色は、右のそれとは違う金色。両の眼の色が違うオッドアイ。

それを見せると、再び頭部マスクを展開する。

 

怪斗もまた、マスクの下で一度目を閉じ、再び開けた時には、その目は真っ赤に染まっていた。

 

「私たちが見せてやろう。本物のコンビネーションとやらをな。」

「そうだね。もう謝っても許さない。ここからが、僕たちの本気さ。」

 

そう言って、二人は一夏とシャルに対して、親指を下に向ける。

 

『さぁ、地獄を楽しみな!』

 

その言葉と同時に、アカツキとゴールドフレーム天が飛び出す。

それぞれの獲物、ストライクと白式に向かって。

 

怪斗は腰に携えていた、伸縮型ハルバード『ダーインスレイヴ』を、ラウラは、両刃の剣『ムラクモ』を手に持って疾走する。

 

「せいやぁ!」

「はぁ!」

 

ガンッ!バチィ!

二つの斬撃を、一夏が雪片と、ストライクのシールドを使って受け止める。

 

「うおぉぉぉ!」

 

白式のフルパワーで、それらを弾き返し、雪片を横薙ぎに振る。

一夏の斬撃をよけた二人に、サブマシンガンを両手に持ったシャルが襲いかかる。

 

二手に分かれてよけたラウラに、一夏が接近戦を仕掛ける。

すぐに援護を。と考えた怪斗に、ミニガンを構えたシャルが立ちはだかる。

 

「君のアカツキ、その特性は聞いたよ。ビームを弾く特殊装甲だって?

けど、このストライクには実弾兵装しか搭載してないんだ。残念だったね。」

「ふっ。」

「…何がおかしいのかな?僕は真剣なんだけどなぁ!」

 

ガガガガッ!

ミニガンから連続して放たれる銃弾を、怪斗はシールドを使って防ぐ。

すぐさまライフルに持ち替え、応戦するが、今度はコンバットナイフ「アーマーシュナイダー」による接近戦に切り替えられる。

 

相手が接近戦に持ち込もうとすると射撃戦に、射撃戦に持ち込もうとすると接近戦に切り替える。

これこそシャルの得意技、砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)だ。

 

そして、ラウラに攻撃を仕掛けた一夏もまた、自分が得意とする範囲(レンジ)で戦っていた。

 

「くらえ!」

「ふんっ。」

 

ギンギンギィン!

実体剣どうしがぶつかり合い、幾重にも火花が散る。

 

一夏の雪片弐型が1.6mなのに対し、ラウラのムラクモは1.0mと少し短めだ。

 

その剣と、アストレイ共通のシールドを巧みに使って、受け止めていた。

唐竹、袈裟斬り、横薙ぎ、居合い、逆袈裟斬り…と連続して放たれる一夏の斬撃を、ラウラは防戦一方で受けていた。

 

そして、再び一夏が唐竹の構えをとった時、頭上に掲げたシールドを一夏の蹴りで吹き飛ばされる。

 

怪斗もまた、ソードストライクのシュゲルトゲベールによる一閃で、シールドから手を離してしまう。

 

さらにいつの間にか、二人は背中合わせになるように追い詰められていた。

 

しかし。そんなピンチに対して、マスクの下では二人とも…ニヤリと笑っていた。

 

「行くぞ怪斗。」

「そろそろ、頃合いだと思っていたのだよ。」

 

それと同時に、二人は自分のエモノを空高く、放り投げた。

 

『キャスリング…ターン!』

 

そして、二人は仲良しみたいに腕組みをして、時計回りに回った。

構図的には。怪斗VS一夏、ラウラVSシャルになるように。

 

互いの敵と、武器を交換した二人は、虚を付かれ動けなくなっている隙を突く。全て、計算通りに。

 

 

 

そんな中、来賓用の特等席で怪斗とラウラの戦いを見ている女がいた。

 

その女の名はスコール・ミューゼル。怪斗とラウラの隊長を務めている彼女は、ドイツ軍関係者という名目で、ここに来ていた。

 

「なかなか面白くなって来たわね、あなたもそう思うでしょ。篠ノ之箒さん?」

「え、ええ…まさか、怪斗があそこまで強いとは…」

 

スコールの目の前の席には座っている箒は、怪斗の戦いっぷりに見惚れていた。

 

確かに、あいつには潜在能力がある。と前々から思っていたが、まさかここまではとは…

それが、箒の正直な感想だった。

 

「相棒との場所を入れ替える『キャスリング・ターン』に、空中に投げた武器を交換する『バトンタッチ』どれもこれも、あたしとスコールの連携技さ。

あいつ、いつの間に覚えやがったんだ?」

「流石あの二人って事かぁ?ったく、見せてくれるじゃねぇか。」

「ホンマそれやわ〜。怪斗のヤツ、めっちゃイキイキしとるで。」

 

もちろん、ここにいるは二人だけではない。

江理華や弾を始め、オータムに簪、リューカも来ていた。

 

今までの怪斗なら、あんなに凝った作戦はせず、中央突破で瞬殺される…のだったのだが。

今回は違う、全力で一夏とシャルを潰しにかかっている。

 

「それにしても〜、なんで二人とも本気出さないんだろうね?」

「なっ…あれで本気じゃないのか⁈」

「当たり前だよ〜!

あ、そうか!本気だったらすぐ終わっちゃうもんね〜!スコールもそう思うでしょ?」

「え?えぇ、確かにそうね。特に怪斗はね。」

「それはどういうことですか?怪斗には、まだ隠している才能があるってことですか?」

 

簪の質問に、スコールは少し困った表情を浮かべる。

 

「才能…なのかしらね、アレは?

まぁいいわ、教えてあげる。怪斗は知的障害があるの。」

『…え、えぇ⁉︎』

 

全員が、すっとんきょうな声をあげて驚く。

まさか、あの怪斗に知的障害があったなんて…と思っていたさなか、江理華が疑問を抱いた。

 

「おろ?ちょい待ちぃな。それやったらさ、怪斗って授業とかついていけんようになるんとちゃうん?」

「ああ、だかあいつは優等生。どこに知的障害があるんだ?」

「おいおい、何も知的障害は頭が悪い奴とは限らねぇんだぜ。

怪斗はその逆、特に計算能力が高過ぎるんだ。いや、もう演算って言ってもいいレベルだな。」

 

そう言いながら、オータムは再び、アリーナへと視線を戻した。

 

 

再びキャスリング・ターンとバトンタッチをして、相手をシャルに戻した怪斗は、ダーインスレイヴの斬撃で、彼女を追い詰めていた。

 

「最初の威勢はどうしたんだい。やっぱり、君はその程度なのか?」

「ぐっ…うぅ!」

 

先ほどとは打って変わって、今度はシャルが防戦一方となっている。

 

アサルトライフルによる射撃も、まる最初から狙いがわかっていたかのようにかわされ、ストライクのSE(シールドエネルギー)を削っていく。

 

しかも、怪斗はシャルの得意技である砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)を使っているのだ。

 

ビームサーベルを使おうとすると、ビームライフルで。実弾ライフルを使おうとすれば、ハルバードで押し返される。

 

「調子に…乗らないで!」

 

シャルは、弾切れとなったアサルトライフルを投げ捨て、サブマシンガンを構え、自分も砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)の動作に入ろうとする。が。

 

「(あ…れ…?)うわぁ⁉︎」

 

いつも通りのはずなのに、体勢を崩し、シャルは墜落する。

 

「ダメだよシャルル。それはもう、君の技じゃない。」

「させるか!」

 

ダーインスレイヴを握る手を狙った一夏の斬撃も、ちょっと手首を返しただけで防がれ、そのままラウラの所まで後退する。

 

「その技はもう、僕のものだ。」

「ぅぅ…一体、どんなトリックを?」

「演算模倣、私たちは怪斗のこれをそう呼んでいる。

まぁ、一度マネされたしばらく使えないと思え。」

 

これこそ、怪斗の能力を最大限に使った、ある種の必殺技。演算模倣。

 

今回の場合では、怪斗の特出した演算能力でシャルの筋肉、ストライクのスラスターなどの動きを、全て0と1に還元して、模倣する。

 

怪斗の異常過ぎる演算能力あってこその技だ。

 

むやみやたらと使っていいものではないのだが…とマスクを掻きながら、怪斗はそう呟く。

 

「それより、まだ続ける気なのかい?見るからに、君たちの方がダメージは大きいと思うけど?」

「今ならまだ、許してやるぞ。コイツは許さんと言っていたがな。」

「…んなわけねぇだろ。」

 

シャルに肩を貸しつつ、ゆっくりと一夏は立ち上がり、キッと怪斗とラウラをにらんだ。

 

シャルが自力で立ったのを確認してから、雪片弐型を右手で構えて、その切っ先を二人に向ける。

 

「許してやるとか、許さないとか。それって、お前らそんなくだらないもんの為に戦ってんのか⁉︎

俺が今、刀を向けたのはトーナメント戦だからじゃねぇ。セシリアと鈴の敵討ちとか、ましてやあいつらを傷つけたからじゃねぇ!シャルを、護るためだ。

だから!お前はあの時、俺に剣を振るったんだろ⁉︎」

「…………ッ」

「みせてやるよ、護りたいものがある奴の力を…本当の強さって奴を‼︎」

 

その言葉の受け取り方は、会場にいる者それぞれだった。

その通りだと感心する者。かっこいいと憧れる者。青臭いと吐き捨てる者。嫌悪感を抱く者。

 

だが、それで十分だった。その言葉はしっかりと、怪斗とラウラに届いていたのだから。

 

そして十分だった。

 

「…なに悟ったように説教してんだよ…あぁ⁉︎」

「そんな事など釈迦に説法。貴様なんぞよりも深く、心得ている!」

 

そう、二人の堪忍袋の緒を切るには、十分だった。

 

『来いよ勘違い!テメェの(お前の)強さなんて、鼻で笑ってやる!』

 

第二十一話完




いかがだったでしょうか?流石に、三つは大変ですね…(汗
もう少々お待ちください。では次回予告。

二人の強さに翻弄される一夏とシャル、冷静さを欠いた怪斗とラウラは、彼らを止めるために割って入った彼女にも、刃を向ける。
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第二十二話
「怒りの矛先」

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