機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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千冬、戦闘開始
仮面ライダー555
「Ego-Eyes Glazing Over」


第二十二話 「怒りの矛先」

「マズイわね、とても。」

 

来賓席のスコールは、アリーナのラウラと怪斗を心配そうな目で見つめる。

先ほどとは打って変わり、二人の戦いは激しい乱闘となっていた。

 

「マズイって、確かに二人とも頭に血ぃ昇ってるみたいやけど…それがどないしはったんです?」

「手が付けられないのよ、あの二人が怒るとね。

ヘタすると殺されるわよ、一夏君たち。」

『…え?』

 

殺される。という言葉が、妙に生々しく聞こえる。

いや、逆に言うと怪斗たちは殺してしまうかもしれない、と言うことだ。

 

スコールは飲んでいた紅茶を置き、いつも以上に厳しい目つきになった。

 

「あの子たちに死なれては困るわ。

命令よ、峰 怪斗・ルパン四世、並びにラウラ・ボーデヴィッヒが彼らに手をかけようとした場合、両名のISを破壊してでも阻止しなさい。」

『了解!』

 

全員が一斉に返事して、部屋から出ていく。

それを見送り、スコールは再びアリーナに目を落とす。

その目は、さっき下した命令とは違う。迷っている目だった。

 

「ヴォーダン・オージェ…あなた達も、それに飲み込まれてしまったの?」

 

 

『はぁぁぁぁ!』

 

ラウラと怪斗は、普段とはかけ離れたような大声を出しながら、自分のエモノを持って駆ける。

 

しかも、怪斗はアカツキのもう一方の武装パック『シラヌイ』に換装し、全方位からの攻撃を仕掛けている。

 

「BT兵器⁉︎そんな物を隠していたなんて!」

「切り札は最後まで取っておく!それが基本なのだよぉ!」

「うわぁ!」

 

ドラグーンを展開しつつ、怪斗は最大加速からの飛び蹴りをお見舞いする。

畳み掛けるように、着地した場所に向けてドラグーンのビームが雨のように降り注ぐ。

 

それが次々とストライクのSE(シールドエネルギー)を削り取っていく。

かわそうにも、怪斗の演算でよける場所か読まれ、無駄に終わってしまう。

 

「シャル!」

「どうした、その刀は奴を守るための物じゃなかったのか!」

 

マスクの下で笑いながら、ラウラはムラクモを振るう。そして雪片弐型を受け止めると、それから手を離し、思いっきり肘鉄をぶつける。

 

一夏を数メートル飛ばした後、ラウラは怪斗に合図を送る。

 

コクンと頷いた怪斗は、ゲイボルグを呼び出してビームサーベルを構えているシャルに向ける。

 

「シャル!」

 

その間に一夏が割って入る。ゲイボルグを受けた一夏は痛みに顔をゆがませるか、なんとか耐え切っていた。

さらに怪斗はそれを連射するが、決して動かなかった。

 

「う、ぐっ…守って…みせる!」

「い、一夏…」

 

すると、怪斗はフッと笑うと一夏に近づいていく。

そしてPICで浮くのではなく、アカツキその物の足で一夏に歩み寄り、肩に手を置く。

そして、全てのドラグーンのビーム砲を一夏へと向ける。

 

「もういい加減。うぜぇよ、お前。」

 

一斉に放たれたビームが、白式の装甲を破壊し、ついにSE(シールドエネルギー)が底をついた。

 

それと同時に一夏は倒れ、急いでシャルが駆け寄る。

それを見たラウラは、シャルに対してプライベートチャンネルを開いて嫌味をこぼす。

 

「ふふふ、なにが守りたいものがある奴の力だ。結局守れてないじゃないか。」

「黙れ…」

「そんな力で守れるなら、誰だって守れているさ。やはり、口先だけの奴だったか。」

「黙れぇ!」

 

落ちていた雪片弐型を掴んだシャルは、まっすぐそれを構えて突っ込んでくる。

ラウラはマルチウェポン『オキツノカガミ』のビームシールドを発生させそれを防ぐと、背部ユニット『マガノイクタチ』を展開しストライクの首を締め上げる。

 

「ぐっ、がふっ…」

「痛みは一瞬だ。」

「ぐぁぁぁぁぁ!」

 

マガノイクタチから放たれたスパークが、ストライクのエネルギーを吸い上げていく。

やがて全てのパワーを吸い付くしたラウラは、まるでゴミを捨てるようにシャルを投げ捨てた。

 

『お、織斑一夏およびシャルル・デュノアペア。共にシールドエネルギーゼロ。

よって、勝者は黒崎怪斗およびラウラ・ボーデヴィッヒです!』

 

アナウンスと共にブザーが鳴って試合が終了する。…かのように思えた。

それを聞いてなお。怪斗は一夏の首根っこを掴んで壁へと投げつけ、ラウラは倒れているシャルを思いっきり踏みつけた。

 

「おいおい。冗談はよしたまえよ、まだ終わっていないじゃないか。」

「ああそうだ!まだ終わっていない!」

 

バキッ!ガギンッ!

怪斗はビームサーベルで白式とストライクの装甲を切り裂き、ラウラはレイピア型ブレード『トツカノツルギ』でバーニアを貫く。

 

さらにアリーナの地面に叩きつけて

腹を蹴り、これでもかというぐらいに踏みつける。

 

「う、ぅぅ…」

「ほら立てよ、さっさと立てって言ってんだろ!」

「がはっ!」

 

髪の毛を掴み、一夏を無理やり立たせた怪斗は、何度も何度も彼の腹を、足を、顔を蹴る。

 

「い、一夏…」

「何度も言わせるな、人の心配より自分を心配しろとな。」

「お、お願い…やめて…」

「そんなのでやめると思っているのか?」

 

完全にエールストライカーを破壊し、鉤爪型ブレード「ツムハノタチ」でガリガリとその装甲を削っていく。

 

「今の気分はどうだい、数分前の自分と比べてみて!

惨めだろう?馬鹿らしいだろう?でも、全て君のせいだ。」

「…俺のせいなら…俺だけにすればいい。だから、シャルを巻き込むな!」

「一夏…お願いもうやめて!僕たちが悪かったから…一夏を傷つけるのはもうやめて!楽にしてあげて!」

 

その声を聞いたラウラは、笑顔でシャルの目を見た。全く笑ってない目をして。

 

「いいセリフだ、感動的だな。だが無意味だ。」

 

シャルの腹を蹴って黙らさせると、ラウラは怪斗にトツカノツルギを渡した。

そして、怪斗はそれを大きく振りかぶる。

 

「シャルルの願いだ、今すぐ楽にしてやる。死を持ってな!」

「ち、違う…僕はそんなつもりじゃ!やめて…やめてぇ!」

「死ね!織斑一夏ぁ!」

 

ビュン!

風を切る音と共に、何かが怪斗の手からトツカノツルギが弾き飛ばす。

その何かは、まさにブーメランのように持ち主へと帰っていく。その持ち主とは…

 

「やめろ、それ以上は私が許さん。」

「千冬…姉?」

 

そこに立っていたのは織斑千冬。しかも、この間束に渡されたばかりの、打鉄のカスタム機に乗っていた。

 

千冬は左手に装備されたガトリングとシールドが一体化したコンバインシールドにビームブーメランを戻すと、自らの背丈ほどの大剣『アスカロン』を取り出す。

 

「そんなに人が切りたければ、私を切れ。

昔から、弟の落とし前は姉がつける物だからな。」

「織斑先生〜!」

 

少し頼りない声を出しながら、ピットからブルーフレームを纏った江理華が姿を表す。それに続いて箒や簪達も出てくる。

 

「お前たちは織斑とデュノアを頼む。こいつらは私が。」

「いえ、私も戦います!」

「篠ノ之妹…ダメだ認めん。織斑たちを連れて、さっさと行け!」

 

アスカロンを振りかぶり、千冬はラウラと怪斗に向かって駆ける。

二人はグランドスラムとオキツノカガミで、それを受け止める。

 

一夏たちを背負ってピットに戻る箒たちを確認してから、それを振り切ってラウラたちを吹き飛ばす。

 

「ぐぁ!」

「くぅ…行けドラグーン!」

 

怪斗の命令通りに動くドラグーンが、千冬を捉えるべく動き回る。

だが、それは軽々とよけられる。それがさらに、怪斗の怒りを逆なでした。

 

怪斗のグランドスラムは、千冬の体を捉える事なく空を切る。

さらにダーインスレイヴを構え、変則的な二刀流で切り込んでいくが、アスカロンの一薙ぎで吹き飛ばされる。

 

「ぐぅ!」

「……っ!」

 

怪斗が手放したダーインスレイヴを掴んだラウラは、まっすぐに千冬へと走る。

 

「守る為の力…奴らはその意味を履き違えている!それをわからせようと言うのが、なぜいけないのですか!」

「確かに、あいつらには過ぎた言葉だ。だが、貴様のそれも間違っていると言っている。

思い上がるなよ小娘が。貴様風情が何を知ったような口を聞くか。」

「それはあんたもだ、あんたの時代は終わったんだよ!」

 

怪斗は再びグランドスラムを振るい、千冬と切り結ぶ。

しかもただ振るっただけでなく、さっきとは違う構えだった。

 

「…ッ!」

「織斑一夏の構えだ、どうだい驚いただろう?弟の剣術で身を滅ぼせ!」

「全く、大馬鹿者め。」

「なっ⁉︎」

 

怪斗のそれを捌くと、グランドスラムを叩き落として、首筋に剣を怪斗に突きつけた。

 

「弟の構えなど昔から見て知っている、それは私には効かん。」

「くっ、うぉぉぉぉ!」

 

怪斗はビームサーベルとビームライフルを使い、全身全霊で千冬に切り込んでいく。

一夏の剣術だけでなくシャルの砂漠の逃げ水(ミラージュ・デ・デザート)までも使って戦う。

 

「まだ気付かないのか。本当の守る為の力とは、誰も彼もを守れる者の事だ。

一人を守る為に、誰かを傷つける事ではないのがわからないのか?」

「何も知らないくせに…あんたは闇をなんにも知らない!」

 

怪斗のビームサーベルの連続切りをよけながら、アスカロンと斬機刀で徐々に怪斗にダメージを与えていく。

 

格闘戦は不利だと確信した怪斗はビームサーベルを収め、ゲイボルグを取り出し、ドラグーンを展開して全ての砲門を同時に向ける。

 

「なら、これでどうだ!」

 

セシリア以上の速さと正確さを持つ射撃が千冬を襲うが、難なくすり抜けた彼女はアスカロンを振り切って、怪斗を吹き飛ばす!

 

「…私は、あなたの事を尊敬し過ぎていた。

だがもう我慢の限界だ!二度とあなたを師と謳わない!うぉぉぉぉ!」

 

ラウラは右手にダーインスレイヴ、左手に怪斗がこぼしたグランドスラムを握りしめて、両手のそれを振るう。

 

無論、単騎で倒せるほど千冬は甘くはない。そんな事、ラウラは百も承知だった。

だが一人じゃない、仲間がいる。

 

怪斗はラウラの稼いだ時間で、ドラグーンを四方に展開していた。しかも逃げ道はない。あえてラウラがそこに誘導したのだ。

 

「落ちろ、織斑千冬!」

「機体を傷つけることなく終わらせたかったが…やむを得ないか。」

 

ラウラが後退したのを見て、怪斗の全てのトリガーを弾く。全てが射角をずらしての砲撃、逃げ道はどこにもない。

 

全てが当たってから一瞬遅れての爆発。そして、もくもくと上がる爆炎を見て怪斗は確信した。

流石のブリュンヒルデでも落ちただろうと。

 

「ふっ…ふふふ…あはははははは!勝ったぁ!勝ったぞ最強の女に!

なんだよ撃てるじゃないか、殺せるじゃないか!化け物だ怪物だ言われてるが、たったこれだけの事で死んでるじゃないか!

僕の…勝ちだ!あはははは!」

「こ、これで私を縛るものは無くなった…そうか、私は教官を好いていたのではない、憎んでいたのか…!

可愛さ余って恨み百倍とは、まさにこの事!私は、自由だ!」

 

ピットでそれを見ていた全員は、目を丸くして見ていた。本当にやられてしまったのかと。

唯一、一夏を除いて。世界最強の称号は伊達じゃないと、彼は知っているから。

 

「何を高笑いしている。その理由、私にも教えてもらおうか。」

 

その声を元に、怪斗とラウラは空を見上げる。そこには彼女の打鉄が、太陽を背に剣を振りかぶっていた。

 

千冬はビームが当たる直前、ストライカーパックを解除した上で、その爆風に乗って上昇。全てをかわしたのだった。

 

「貴様らの変わりよう、何かに操られていると見ていい。

私が解決するまで、寝て頭を冷やせ…この大馬鹿者共!」

 

振るわれたアスカロンが、ラウラと怪斗を切り裂き、地面に叩きつける。

 

そして二人は、意識を手放した。

 

 

 

「はっ⁉︎」

 

先に目を覚ましたのはラウラだった。

左目にはいつも通り眼帯を着け、ISスーツではなく、見にまとっていたのは制服だった。

 

「よっ、気がついたかラウラ。」

「オータムか、私は何を…?」

「やっぱ覚えてねぇか。ヴォーダン・オージェの暴走なら仕方がねぇか」

「う…うーん…」

 

なんとも目覚めの悪そうな声を立てて怪斗も目を覚ました。

キョロキョロと辺りを見回し、ラウラとオータムを見てから首を傾げた。

 

「はて、なんで僕はこんな所で寝ている?

一夏が何か言った所までは覚えてるんだが…」

「やっと目が覚めたか。ったくお前ら寝過ぎだ、三日も寝やがって…」

『三日ぁ⁉︎』

「うるせぇ!何があったか説明するから、ちゃんと聞いとけよ。」

 

オータムは二人のヴォーダン・オージェが暴走したこと、それで一夏とシャルをかなり傷つけたこと、そしてそれが原因で千冬にやられたことを話した。

そして全てを話した後、改めてそのバトルの映像を見せた。

 

それを聞き終わると、二人とも苦い顔をして目を背けた。

 

「またか、どうも僕はヴォーダン・オージェの適性が低いらしい。」

「私もだ、いくら暴走してたからと言って、教官にあんな事を言うとは、私はなんと言うことを…!」

「まぁ、そう落ち込むなよ。」

 

そもそも越界の瞳(ヴォーダン・オージェ)とは、擬似ハイパーセンサーとも呼ばれる物で、胴体反射の強化や脳への信号伝達向上の為に、眼球にナノマシンを移植した目の事を言う。

 

理論上は不適合者などはない。が、それは机上の空論だった。

 

その処置を受けた後、ラウラの左目は金色に変色、常に稼動状態で制御不能に陥ったのだ。

また、当時ドイツ軍にいた怪斗にも施されたが、信号伝達は想定よりも低く発動した時に目が赤くなる。

 

さらに極めつけが…ヴォーダン・オージェの暴走だ。

彼らはISを使ってその基地を破壊、研究者たちを皆殺しにしたのだ。

 

その後、二人は亡国機業派のドイツ軍に引き取られたのだ。

 

「ったく、ここは通夜か。

それよりも、もっとマズイ事があってだな…」

「失礼します。」

 

コンコンとドアを叩く音がした後、一夏とスカートを履いたシャルが姿を見せた。

 

それを見た怪斗は、引きつった顔をしてシャルを指差した。

 

「しゃ、シャルル…君は一体…?」

「あ、うん…僕、女の子なんだ。騙しててゴメンね。

それから、怪斗やラウラの事何にも知らずにあんな事言って、本当にごめんなさい。」

「私と怪斗の事…?」

 

ラウラが聞き返すと、一夏が一瞬だけオータムの方を見てから口を開く。

彼の表情を見る限り、とても話辛そうだった。

 

「お前ら昔、誘拐されて変なもん目に移植されたんだろ?そのせいで暴走したって、ドイツ軍の人が言った。」

 

それは違う。と怪斗は言い返そうか迷ったが、オータムの殺気が混じった目で見られ、言葉を飲み込む。

 

「そんな辛い事があったなんて…何も知らないでそんなこと言って、俺も悪かったと思ってる。許してくれ。」

「あ、あぁ。まぁこっちにも非があるからお互い様さ。

その代わり、二度とその事を言わないでくれ。思い出したくない。」

「うん、わかったよ。

あそうそう、今アリーナで箒と実ペア対ミレイナとメーヤペアのバトルなんだ。一緒に見に行こうよ。」

「そうだな…気晴らしに行くか。」

 

そう言って、ラウラはベッドから出て一夏たちと一緒に外へ出る。

怪斗もそれに続き、保健室から出てから空を見上げながらフッと笑った。

 

「いろいろ誤解はあるけど、一夏の優しさにはかなわないねぇ。

やれやれ、また勝てなかった。」

「何をしている怪斗、置いて行くぞー!」

「そんなに急かさなくても、今行くのだよ。」

 

ラウラに呼ばれて怪斗は走り出す。その顔は三日前の戦闘とは程遠く、太陽のように眩しい笑顔だった。

 

第二十二話完




これにて二巻の内容は終了となります。
次回からは三巻…しかもいきなり臨海学校です。
それでは次回予告。

海へとやってきたIS学園一年生達。一人を除き、全員が訓練に励む中、一人の乱入者が現れる。
次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第二十三話
「怪斗のいない臨海学校」

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