機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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こっちは久しぶりの投稿です。
それでは、臨海学校編のスタートです!


第二十三話 「怪斗のいない臨海学校」

箒side

 

照りつける太陽、ひたすら広がる青い海と白い砂浜。

 

私たちはIS学園から少し離れた入江にある海岸に来ていた。

今日から一年生ほぼ全員参加の臨海学校が始まったのだ。

 

だがそれは明日から、今日丸一日は海岸で自由行動となっていた。

 

「いっえ〜い!海だ〜!」

「こらリューカ、走ったら危ないで〜!」

「五反田くーん!一緒にビーチバレーしようよ〜!」

「おっしゃ任せとけ〜!簪、お前もいくか?」

「あぁ、久しぶりにやってやろうじゃ無いか。」

 

 

無邪気に海岸を走り回るリューカとそれを母親同然に追いかける江理華

 

他の女子生徒と一緒にビーチバレーに興じる弾と簪、入念に準備体操をする一夏など、全員遊ぶ気しか無い様に見えるが…

 

まぁ、今日ぐらいはいいのだろう。

 

「ねぇちょっと箒。」

「なんだ鈴、探し物か?」

「似たようなもんよ。んで、怪斗はどこ?まぁたラウラって奴の方に行ってんの?」

「む、知らされてないのか?今回。怪斗は休みだぞ。」

 

それを聞いて鈴はぽかんとして黙ってしまった。

 

なんだ?聞こえなかったのか。ならしょうがない、もう一回言ってやろう。

 

「もう一回言うぞ、怪斗は今日…」

「聞こえてたっての!ってかなんでよ⁉︎なんであいつ休みなのよ!」

「わ、私に聞かれてもだな…」

 

そうとは言ったものの。本当は、どうして怪斗が休みなのかを知っている。

 

そして、あいつが今どこで何をしているのかも。私だけでは無い、亡国機業に入っている奴は全員だ。

 

 

 

事は四日前、江理華のメールがキッカケだった。

 

私は部屋でこの臨海学校の為に準備をしていた、そんな最中に例のメールが来たのだ。件名は緊急事態。

 

その内容とは…怪斗は臨海学校の時にミッションに行くことになったと書いてあった。

 

『特別ミッション?』

「そうだ、ハワイまで行く事となった。」

「またどうしてハワイなんだ?」

「なんでも、とあるISの試験運用をやるとの事だ。

それを監視、危険と判断すれば強奪、もしくは破壊すること。それが今回の任務だ。」

 

そうとだけ言い残し、おととい日本を後にした。

 

無論、これをそのまま鈴に伝えることは出来ない。今は知らないとしかいい様が無いのだ。

 

「でも、風邪とかじゃ無いのよね?」

「え、あぁそうみたい…だな。」

「そう…わかったわ、ありがと。」

 

鈴はそう言ってトボトボと歩いて行く。それにしても、何がわかったというのだ?

 

 

No side

 

怪斗には何か秘密がある。鈴がそう感じたのはだいぶ前からだった。

 

コソコソ何かを探ったり、彼に絡んでる奴は次々と専用機持ちになっていったり。果てにはドイツ軍の友だちまでいる。普通の高校生にそんなのはまず無いだろう。

 

その時からかしらだ、怪斗には裏があるって思ったのは。

 

鈴は知りたかった、彼の秘密を。この間のことを聞いた時はとても驚いた。まさか一夏と同じく誘拐された過去があったとは思いもよらなかったからだ。

 

「おっ、鈴じゃねぇか。なんだぁそんな暗い顔しやがって。さては怪斗が休みだからかぁ?」

「別に、なんでもないわよ。」

 

ニタニタしながら近づいてきたメーヤを適当に聞き流して、鈴はまた考え事に浸ろうとする…が。

 

「へへっ、そうかい。ならよぉ!」

「ふぇ⁈ちょ、ちょっと何よ!」

 

メーヤは鈴を小脇に抱え、そのまま海へと投げ込んだ。

 

一瞬だけ沈んだ鈴だが、すぐに浮かび上がって大声で怒鳴りつけた。

 

「なぁにすんのよメーヤ!」

「へっへーん、それ!」

 

自分も海に飛び込んだメーヤは、手でめいいっぱいの海水を掬い、思いっきり鈴にかけた。

 

「きゃっ!やったわね〜!」

 

それに対して鈴もメーヤに海水をかける。

それを続けていくうちに、鈴はどんどん笑顔になっていく。それを見たメーヤは嬉しかった。

 

「ははっ、それでいいんだよ鈴!」

「えっ?」

 

突然そんなことを言われて鈴は戸惑ったが、メーヤは満面の笑みで言葉を続けた。

 

「お前には仏頂面は似合わねぇからな。もっと笑っていけよ!」

「メーヤ…あたしの事、心配してくれたって訳?」

「あったり前だ、仲間だろ?」

 

ニィと白い歯を見せなからメーヤはまた笑った。

鈴もそれにつられて笑い、声を出して笑っていた。

 

その顔に、さっきまでの重苦しい雰囲気は無かった。それでこそ鈴だ。

もしここに怪斗がいたら、きっと同じことをしていただろう。

 

 

そしてここには、鈴とは逆に暗い顔をしている人物がいた。ミレイナである。

 

彼女は海に入らず、ビーチパラソルで日陰を作りレジャーシートの上で三角座りしていた。

 

「…ミレイナさん?さっきからとても暗い顔をしてらっしゃいますが…」

「気のせいです、気にしないでください。」

「いや、ですが…」

「気のせいです。」

 

隣でサンオイルを塗っているセシリアは、ぼんやりと海を眺めているミレイナが気になって仕方がなかった。

 

でもその心配も後回し、なぜならこれから…

 

「おーいセシリア。悪い悪い、弾に捕まってな…」

 

そう一夏だ。セシリアはビーチに出る前に彼にサンオイルを塗って欲しいと頼んでいたのだ。

 

「コホン。と、特別に許して差しますわ、特別ですからね!

それより、サンオイルを背中に塗っていただけませんこと?」

「お、おう。わかった。」

 

一夏に塗ってもらってる間も、セシリアはチラチラとミレイナの方を見ていた。

 

別に気になるわけではないが…とても残念そうな顔をしているからだ。

 

「よっと、終わったぞ。」

「あ、ありがとうございます。」

「いいよ。それよりミレイナは海で泳がないのか?」

「必要ありません。そもそも、人類は海から進化してきたというのに、なぜ海に戻りたがろうとするのです。」

「は、はい?」

「第一、我々は人類というのは……」

 

四六時中仏頂面の彼女を、一夏も心配したのであろう。

ただ理由が知りたくて聞いただけなのに、なぜかそんな哲学に入ってしまった。

 

その時、一夏の頭に一つの答えが浮かんだ。それは…

 

「もしかして…ミレイナって泳げない?」

「な、何をバカな!

この私が泳げないのがバレるのが嫌で海に入りたがらないとでもお思いですか!」

「いや…たった今自分で言ったよな?」

「…はっ!」

 

図星を突かれ、なおかつ真意までさらけ出してしまったミレイナは、耳まで真っ赤になって両手を握り震えていた。

 

そして、おもむろに立ち上がり傍に置いてあったバスケットからナイフを取り出し、両手に構えた。

 

「図りましたね…図りましたね一夏さん!

私の尊厳のため、口封じさせて頂きます!」

「べ、別にそんなつもりじゃなぁい!」

 

そして一夏は海岸を疾走、ミレイナもまたそれを追いかけていた。

 

それを見たラウラはこう思った。

ああ、あいつはまたデリカシーの無いことを言ったのか。と。

 

「全く、女ことを考えないからそうなるのだ。」

「お前の言う通りだボーデヴィッヒ。

全く、私が目を離している間にあんな風に育ってしまうとはな。」

 

ラウラの横では黒いビキニを着た千冬が頭を抱えていた。

 

一夏のデリカシーがない発言は今に始まったことでは無い。

箒にブラジャーを着けるようになったんだなと言ったこともあれば、鈴にチビと言ったこともある。

 

無論、その事は教師として知っていたが、別に咎めることでは無いと言うことで黙っていた。

 

「全く…これ以上、バカ者が増えるのは勘弁願いたい物だ。」

 

千冬はそう言って首を横に振る。

その時ラウラは思った。クラリッサ風に言うならそれは…フラグとやらではないかと。

 

実際、その読みは翌日に当たることとなる。

前日の遊びモードとは一転、二日目からは完全な合宿型訓練へと変わる。

 

「それでは、これより班ごとに分かれて貰うが…

全く、何か弁論はあるか遅刻者。」

「い、いえ…ありません…ホンマすみませんでした〜…」

 

案の定、唯一の遅刻者は江理華だった。

いつもは怪斗に起こしてもらっている彼女だが、あいにくと今日は怪斗がいない。誰も起こしてくれることなく朝を迎えてしまったのだった。

 

「はぁ…専用機持ちと篠ノ之姉は、後で私のところへ来い。では後は山田先生に従え、以上!」

 

織斑先生の号令で生徒たちがゾロゾロと移動を開始する。

その最中、実をジト目で見つめていた箒が彼女に話しかけた。

 

「おい、何をしたんだ実。」

「い、いや…全く身に覚えが…」

「まったく、お前は昔から嘘が下手だな。目が泳いでるぞ。」

 

箒はそう言って、実に詰め寄る。彼女自身、決して嘘をつけないタイプの人間だ。もちろん、双子の姉である実もまた同じだ。

 

「えっと…本当はな…」

「ちぃ〜〜ちゃぁぁぁぁん!」

 

実が答えようとした時。

ドドドドッ!と土煙をあげながら、一人の女性が猛スピードで近づいてくる。

 

何事だ、と専用機持ちが土煙の方を見る。もちろん、この中にはアレが誰なのか判ってる者もいた。

 

「もしかして…束さん?」

「あっ!束博士だ〜!」

「ね、姉さん⁉︎」

 

そのまま箒達の前を通り過ぎ、そのまま猛ダッシュしていく。

目的はもちろん、彼女の幼馴染の千冬だった。

 

「アイ!ラブ!マイ!ワーイフ!」

 

歓喜の表情のまま、束は千冬の体…もとい、その豊満な胸に抱きつこうとするも…

 

「うるさい。」

 

冷たく接する千冬は一言で受け流し、飛びついてきた束をひらりとかわす。

砂浜に、頭から激突した束だが、別に痛がる素振りも見せず、そのまま続けた。

 

「相変わらずツンデレだねっ!でも束さんは、ちーちゃんのそーゆー所も大好きだよ!」

「まったく、お前の頭は常に花畑だな。一度、ちゃんとした医者に診て貰う必要がありそうだ。第一、女同士である私たちが、結婚など出来るわけかないだろう。」

 

えーっ!とわざとらしい返事を返す束。いや、もしかすると素なのかもしれない。

 

果たして、こんな駄々っ子のような女性を、ISの生みの親だと信じる者は少ないはずだ。

だが悲しいかな、それが現実なのだ。

 

束と千冬の痴話喧嘩を見つつ、恐る恐る実が割って入った。

 

「あの…お姉ちゃん、頼んでたものは?」

「おーっす実ちゃん!ふふんっ、私を誰だと思ってるの?お姉ちゃんだよ?

そんな物、出来てるに決まってるじゃん!」

 

そう言って、束は空を指差す。

すると、ヒューッという音を立てつつ、一つのコンテナが、束らの近くに落下した。

それがパカッと開き、中から一機のISが、姿を現した。それは一夏の白式と同じく、白銀の色をしたISだった。

 

「ジャーン!これが実ちゃんの専用機、名付けて…スターゲイザー!」

 

束は自信満々の声でそういった。

 

 

目立った武装は手持ちのロングソード、そしてビームライフルだけだが、特に目を引くのは、背中の大型リフレクターユニットだ。

 

そして、ヒョコッと実の目の前に立った束は、彼女に対して満面の笑みで言った。

 

「よぉし、サクサクっと一次移行済ませちゃおっか!」

「うん、頼むよ。」

 

実はスターゲイザーを装着し、束も投影式のキーボードを叩いていく。

 

その間、箒は改めて二人の姉を見ていた。

今思えばあの時の嘘、アレはこの事を悟られないための物だったのかもしれない。

 

「それにしても…ガンダムタイプ、か。」

 

頭部だけを見る限りでは、自分たちのアストレイとは別系列の機体だ。

しかし、その形状はアカツキやストライクなどと似ている。おそらくプロトタイプなのだろう。

 

「これでオッケー!じゃあ起動確認するから、試しに飛んでみて。」

「わかった。篠ノ之実、スターゲイザー…発進する!」

 

少ししゃがんで勢いよく飛び出す、そのまま高度300メートルまで上昇した。

 

スターゲイザーは、まるで実に翼を与えたかのように、自由に空を飛ばせた。

 

「凄い、これが私の…私だけの!」

 

シャキン!

彼女は腰に携えたロングソード「デュランダル」を抜いた。

 

「はぁ!」

 

振り下ろした剣から半月型のエネルギー刃を海へと放つ。

海面にぶつかった途端、大きな水しぶきがあがった。

 

「早い。わたくしのデュエル以上ですわ…」

「斬撃の速さじゃ、私のミラージュを超えるな…チートスペックキタコレ。」

「うわぁぁ!凄い凄い!」

 

セシリアと簪、リューカが率直な感想を述べてる側で、弾は一人別の事に集中していた。

 

みんながスターゲイザーに夢中になってる横で、千冬と真耶がコソコソと何かを話しているのを聞いてしまったのだ。

 

遠いからよく聞こえないが、わかった単語は「アメリカ」と「フリーダム」の二つだけだった。

 

と、その時。千冬が二回パンパンと手を叩いた。

 

「緊急事態が起こった!すぐに実習を終了しろ!

 

いきなりの号令に騒めく生徒たち、続いて専用機持ち達の方に向いた千冬は再び号令を出した。

 

「専用機持ちは別室にて待機、もちろん実もな。」

 

ただ事ではない、そんな緊張感が彼女たちの頭をよぎった。

そして、これから始まる何らかの事についても、気を引き締めなければならない、と。

 

第二十三話

 




いかがだったでしょうか?それでは次回予告。

実験中だった試作ISが暴走した。IS委員会は、それを止めるために専用機持ち達を動員することを決めた。
果たして、止めることは出来るのか。

次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第二十四話
「刀を振るう理由」

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