機動戦士インフィニットストラトス 怪盗が奏でる六つの協奏曲   作:ジャッジ

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お久しぶりです(汗
テストや受験勉強やらでかなり更新が遅れてましたが、年内に投稿できて良かったです。



第二十四話 「刀を振るう理由」

No side

 

緊急事態宣言から少したって、専用機持ちの全員が宿の一番奥の部屋に集められた。

 

「織斑先生、全員揃いました。居ないのは、欠席している黒崎くんだけです。」

「ありがとうございます山田先生。

全員が揃ったところで、状況を説明しよう。」

 

千冬は後ろの投影式モニターを操り、一つの写真を出した。

そこに映し出されていたのは、彼女たちも見たことのないISだった。ただ、唯一わかることがある。

 

「あれはまさか…!」

「ガンダム、タイプ。」

 

簪と一夏がそうポツリとつぶやいた。

全身装甲(フルスキン)と青い双翼に、4本のアンテナとツインアイ。

その機体は、まさにガンダムタイプの特徴の全てを取り入れたデザインだった。

 

「数時間前。米軍がハワイで試験中だったISの一機。コードネーム『フリーダム』が暴走した。委員会の見解では、約2時間後にこの近くの海域を通るそうだ。」

 

その言葉が、全員にピリッとした緊張を走らせた。いつもはヘラヘラとしてる江理華やリューカも、今度ばかりは笑っていられない状況だと感じたのだ。

 

「そこで、委員会はお前達にフリーダムの回収という任務を押し付けてきたわけだ。」

「わたくしたち…だけでですか⁉︎」

「ああ、私たち教師は海上の封鎖や他の生徒たちを見張る役で動けない。今動けるのはお前達だけだ。」

 

千冬は、生徒を危険な目にあっているのに自分は安全な場所で指示を出すだけ。

その悔しさを胸に、ぎゅっと手を握りしめる。

 

「最初に言っておくが、これは極めて危険な任務だ。降りたい者は降りればいい、別に責めはしない。」

 

ここで全員が降りて欲しい。

切実に、彼女はそう思った。こんな危険な任務は一夏たちの手に余る。生徒たちにこんな任務を任せたくはなかった。

がしかし、生徒たちは彼女の期待に反して、全員残っていた。

 

「…いいのか、下手すれば命に関わる。」

「覚悟の上です。教官、指示をください。」

 

ラウラはいつもより鋭い眼光で千冬を見つめた。

それぐらい本気なのだろう。ならば、千冬も腹をくくって送り出すのが筋だ。

 

「よし、ならば作戦会議を始める!

これから各自に配るのはフリーダムのスペックだ。まさかとは思うが、どこかに流出するなよ。

した場合は、極刑も免れないと思え。」

 

千冬はそう言って、各自に配られた端末にフリーダムのデータを送る。

そうして、対フリーダム戦の作戦会議が始まった。

 

「高機動の砲撃型…それにしては武装の火力が高い。いや、高すぎるな。」

「なんだよこの出力⁈バスターの4倍以上はあるぞ!」

「一発一発がアグニ以上…化け物だね。」

「それに速いね〜。すごくすごーい!」

「いやリューカ、何もわからないぞ…」

 

まず全員が、フリーダムの特性とその出力に注目した。

相手の適性を知ることで、作戦に参加する機体を変えなければならない。

 

「ってこたぁ、複数で出るっきゃねぇな。」

「理想としては、スピードタイプとバランスタイプ、そして圧倒的攻撃力を誇るアタックタイプが必要ですね。」

 

弾とミレイナはそう言って、ちらりと一夏の方を見た。それを感じ取った一夏はこくん。と小さく頷いた。

 

「白式の零落白夜だな。」

「おそらく、それしかないかと。」

「一夏…お前は、それでいいのか?」

 

箒は一夏にそう尋ねた。千冬の言う通り、この作戦が危険なのは間違いない。

だがその答えとして、一夏はさも当たり前と言わんばかりの声で答えた。

 

「俺が出来ることならなんだってやるさ。だって、俺も専用機持ちで、戦えるんだから!」

 

それを聞いた箒は、一瞬フッと笑った。だが見ていた一夏は少し不愉快そうに尋ねた。

 

「な、なんだよ。そこまで笑うことか?」

「いや、随分と強気だと思っただけだ。よし、私も出るぞ!」

「なっ…無茶だ!お前のレッドフレームじゃ相手にならない!」

「レッドフレームのパッケージ、レッドドラゴンならサポートぐらいはできる。私に任せろ。」

 

実も反論したが、それでも箒は自信があった。その理由としてはやはり、アストレイレッドドラゴンの存在が大きいのだろう。

 

あれなら二倍の出力が出せるし、複合武器カレトヴルッフのおかげで火上がっている。

おまけに、ミラージュコロイド散布装置を取り付けたことで、機体の安定度も格段に上がってもいる。

 

「そのレッドドラゴンってのがどれほどのもんかは知らねぇけど。箒がそこまで言うなら、いいんじゃねぇか?」

「せやせや、モッピーを信じようや!」

 

箒の熱意が伝わったのか、メーヤも二度頷いて、江理華は満面の笑みでサムズアップを返した。

 

「そうなると、あとはスピードタイプのISだけね。赤龍じゃそこそこのパワーがあってもスピードが…」

「そんな時は、私におっ任せ〜!」

 

鈴の言葉を遮るように、ガラッ!と天井の板が外れ、まるで忍者のように束が降りてきた。

いつからそこに潜んでいたのだろうか、砂浜で着ていた白い服には所々にホコリが付いていた。

 

「何の用だ束、用がないなら帰れ。」

「うわぁぁん、ちーちゃんが冷たい〜!冷たくするんなら、フリーダムよりも早いってISがここにあるって事を教えないんだから〜!」

「なんだと?」

 

いつもの千冬なら聞き逃すような内容だが、今度ばかりは聞き逃せないことだ。

しょうがないと観念した千冬は、いつもより優しい声で話しかけた。

 

「…束、いい子だから話してくれ。」

「うん!ちーちゃんのお頼みとあらば仕方ない!答えてあげよ!」

 

束ひ泣き顔から一転、満面の笑みで答えて手元に投影式のキーボードを出現させ、目にも留まらぬ速さであらゆる情報を呼び出していった。

因みにこの時千冬は、この変貌ぶりに頭を抱えていた。

 

そして、束は無数に展開されたデータからいくつかをピックアップして、全員の端末に送る。それは、スターゲイザーのデータだった。

 

「実はスターゲイザーには、ヴォアチュールリュミエールが組み込まれてんるだ!」

「お姉ちゃん、そもそもヴォアチュールリュミエールってなに?」

「いいね実ちゃん!ナイスな質問だよ!」

 

ヴォアチュールリュミエール。

太陽風と呼ばれる高温のプラズマを原動力として加速するシステム、その最高速度は亜音速にまでいたる。

 

その説明を聞いた途端、その場はしんと静まり返った。

 

「ありゃ?どうしたのみんな、作戦失敗みたいな顔してさ。」

「束…いつも言ってるだろ、やり過ぎるなと。」

「やり過ぎてないよ〜!ただ私にできる目一杯の事をしただけじゃん!」

「限度というものがあるだろう。しかし、今度ばかりは助かった。いけるか実。」

「大丈夫です、絶対にやり遂げてみせます!」

 

実は意気揚々に答えた、どうやら気合十分といった感じだ。

かくして、箒と実そして一夏。この三人がフリーダムに対処する事となった。

 

その後、箒と実はISの改修に。一夏は超高速下における戦闘の心得の簡単な説明を受けるのに時間を費やし、二時間はあっという間に過ぎていった。

 

箒side

 

海岸から発進した私たちは、作戦通りのルートで海上を飛んでいる。もう少しでフリーダムと会敵するはずだ。

 

『箒、フリーダムは見えるか?』

「いいや。だが、ソナーはフリーダムを捉えている。あと五分以内に視覚できる。」

 

そう答えると、一夏はわかったと言って前を見据える。

レッドドラゴンのドラゴンヘッドのセンサー類は、どのガンダムよりも優れていて、旅館の司令室と連動している。

今頃、残っている江理華たちもソナーにフリーダムを捉えているだろう。

 

『…聞こえるか箒、プライベートチャンネルで頼む。』

 

ふと、弱々しい声で実が話しかけてきた。そういえば、砂浜に出た時からずっと元気が無かった。何かあったのか?

 

「どうした実…怖いのか?」

『当たり前だッ…!相手は以前のような無人機じゃない、有人機だ!

一つ間違えれば、私たちは人殺しだ…お前はそれに対するプレッシャーが、何一つないのか⁈』

 

…確かにそうだな。今回はあの時と違う。暴走しているが相手は人だ。

それにここは海、落ちればタダでは済まないだろう。

 

「それでは何か?お前は暴走しているISに向かってやめろ!とでも言うのか?」

『…できるなら、そうしたい。』

 

これは意外だな。あいつの事だからてっきり、そんな事はしない。とでも言うと思ったが…

 

敵と向かい合った時は切る前に切り倒す…いつもそんなことを考えていた。

けれどどうやら、この考えは少し殺伐とし過ぎていたか…そこは見習わないとな。

 

「なら、それを心がけるべきじゃないのか?倒すのではなく守るために力を使う。それこそ、フリーダムのパイロットを守るために…な。」

『…ああ、もちろんそのつもりだ。』

 

最初よりはかなり言葉に覇気が戻ってきたな。うん、よかったよかった。

と、そう思っているとレッドドラゴンのセンサーにフリーダムの機影が映った。

 

「見えたぞ!一夏、準備はいいな!

『おう!…ってなんで俺だけ?』

「まぁ……そこはノリだ。行くぞ!」

 

スターゲイザーの肩から手を離し、ガーベラストレートを抜刀する。実と一夏もそれぞれデュランダルと雪片弐型を構える。

 

もう肉眼でも見えるほどまで近づいた、このままカレトヴルッフのレーザートーチで…

すると、突然目の前にビームが横切った。

 

『な、なんだ!別方向から…』

 

いや横からだけじゃない、前後左右全てからだ。それも私たちだけに限らず、フリーダムにもだ。だがそっちはまるで近づけさせないようにしているような…

 

それよりもこの攻撃だ。こんな事が出来るのはビットやドラグーンのようなBT兵器の類か、くっ本体はどこだ!

 

『…見つけた、真上だ!』

 

一夏に言われて、バッと真上を見上げる。

太陽を背にしても、そのシルエットで大体の形はわかった。大きなバックパック、大型のライフル、特異な形のシールド…そして頭部には、ツインアイと特徴的なアンテナ。

 

「ガン…ダム…?」

 

そこには、見たこともないガンダムタイプのISが仁王立ちしていた。

 

第二十四話完




いかがだったでしょうか?
これからも更新を続けますが、桜(リメイク中)との同時進行に加え勉強も忙しくなってくるので、今まで以上に更新が遅れるかもしれません。しかし、それでも頑張っていくので応援お願いします!
それでは次回予告。

突然現れた謎のガンダムが箒たちに襲いかかる。
このままでは一夏たちが危ないと感じた箒は、二人に向かって厳しい選択を言い渡す。

次回
機動戦士インフィニットストラトス
怪盗が奏でる六つの協奏曲
第二十六話
「折れる刃」

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