~なのはの部屋~
あの後、なのはは協力を申し出てアースラの嘱託魔導師として協力することに決定し、俺もフリー魔導師として動くことが決定している。ということは、数日間家を空けるいうことになるのだ。ちなみに、フェレットモードのユーノは、なのはの右肩に乗っている。
ともあれ、今後の話し合いである。
「リンディさんからは事情説明の許可を貰ったんだから、高町家の代表として、なのはのお母さんには言った方がいいと思う」
家族全員に説明すれば、混乱は避けられないかもしれないので、代表としてなのはのお母さんを挙げたのである。……決して、恭也さんたちを除け者にしたという意味ではない。もしかしたら、家族全員で探索。となったら危険が増すし。
「そうだね。私の予想では、ジュエルシード探索は難行するかもだし」
リビングに向かい、テーブルの椅子に座り、向かい合わせになった俺となのは、桃子さんだ。ちなみに恭也さんたちは、夕方の鍛錬からまだ戻っていない。
「なるほどね。最近何かしてるって思ってたけど、こういうことだったのね」
桃子さんは一拍置き、
「わかったわ。士朗さんたちには私から話を通しておきます。……だけど、元気な姿でこの家に帰ってくるのよ。なのはたちの帰る場所はここなんだからね。――これはお母さんとの約束よ。千尋君も例外じゃないからね」
確かに、ミッドチルダには俺の家はあるが、今俺が帰るべき場所はここで間違えはないだろう。てか、俺の母さんは船で寝泊りをしているので、空き巣に入られてないか心配である。まあ、重警備の家なので問題ないと思うが。
「うん!ありがとう、お母さん!」
「了解です、桃子さん。きちんと約束は守ります」
事情を話し終えると、桃子さんは了承してくれた。
上手く言葉にできないが、これが母親の暖かさというものなのだろう。まあ、俺の母さんも似た感じのものをくれるけど。俺の予想だが、フェイトも母の温もりを求めているのかも知れない。どんな扱いを受けても、きっとフェイトの中でのプレシアは【特別】なのだろう。テスタロッサの名も外さず名乗っていたのがその証拠だ。
――――今決めた。俺は過去に囚われているプレシアの目を覚まさせ、酷なことでも現実を直視させる。親子関係に水を差すのは無粋なのかも知れないけど、やるって決めたからには、有限実行である。
「(……つっても、プレシアさんが居る場所がわからないと、どうしようもないよなぁ)」
覚悟は決めたがいいが、肝心の所がわからない。うーむ、どうするか。
それからは順調にジュエルシードを回収しているが、フェイト側も管理局の手を掻い潜ってジュエルシードの回収をしている。予想はしていたが、あちらもかなり優秀な魔導師だ。
「私たちが手に入れたジュエルシードの数は6つ。たぶん、フェイトちゃん側は推定8つ」
俺となのはは、アースラの空き部屋で対面するように椅子に腰を掛けている。
「フェイトちゃんのを合わせて半分は集まったんだけど、残りはどこにあるんだろうね?」
「街全体は調べ尽くしたしなぁ。管理局の人たちは、海まで探索範囲を広げてるらしいけど」
街にはもうジュエルシードが無いということは、残りのジュエルシードは海の中に眠っているという仮説がかなり高い。おそらく、フェイトもそのことに感づき始めているだろう。
『もしかして、海に魔力流を打ち込んで調べる魂胆なのかな?』
いや、セレイナの言葉にも一理あるが、
「(海にあると予想される、残りのジュエルシードを強制発動させるってことか?てか、無謀すぎるだろ)」
ジュエルシードを強制発動させても、フェイト一人で封印できるかは怪しいところである。
その時、突然警報が鳴り響く。どうやら、管理局が探索していた海上で、大型の魔力反応が出たらしい。理由は、フェイトが海上に魔力流を打ち込んだそうだ。
『……無茶をする子だね、フェイトちゃんは。さっきの冗談で言ったつもりだったんだけど……』
「(……まあな。ところでセレイナ、前に完成させた術式は使えそうか?)」
『ベルカ式の転送魔法陣のこと?でも、使うにしても、一回の転送で魔法陣そのものが壊れちゃうよ』
独自の魔法陣で形成した転送系系統となれば、何度も使えないのが相場が決まってる。アースラのように、転送ゲートがあれば別だけど。ちなみに、組むのもかなり苦労した代物である。
「(作り直せばいい話だから、出し惜しみはしないさ。セレイナ、なのはたちがブリッチに行ったところで魔法陣を起動。それから、フェイトが魔力を発する海上まで転送。いけるか?)」
『大丈夫。いけるよ、千尋』
「(そうか。んじゃ、フリー魔導師として動きますか)」
俺は、なのはがブリッチに向かった所でバリアジャケットを身に纏い、足元にベルカ式の魔法陣を展開させフェイトがいる海上へ転移した。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
転送して一番に見た光景は、フェイトが竜巻に追われている所だった。
「さて、セレイナ。
『OKだよ。それじゃあ、バスターモード起動』
セレイナの言葉と同時に、俺のデバイスがバスターモードに変更が完了し、俺は竜巻に狙いを定め足元に漆黒の魔法陣を展開させ、砲撃口からは漆黒の魔力と、桜色の光が渦巻く魔力が集束する。
俺は念話で、
「(フェイト、そこにバスターを撃ち込む)」
「(……あなたは、あの時の。でも、ジュエルシードは私が……)」
「(今はそれどころじゃないだろ。ジュエルシードを封印前に死んだら元もこうもないだろうが)」
フェイトは凄まじい加速で、竜巻を振り切る。
「――ディバイン、バスター・フルバースト!」
凄まじい魔力が砲撃口から放たれるが、封印できたのは2つだけだ。
「(ッち、やっぱり俺のバスターじゃ全部封印とはいかないか)」
愚痴を言いながら、俺は2つのジュエルシードをデバイスの中に封印する。
「(……AAAつっても、残り全部は俺一人じゃきついな……)」
あくまでも俺は接近戦タイプであり、砲撃タイプではない。
竜巻相手に、接近戦は意味を持たないのだ。そして、残りの竜巻も俺に襲いかかるように突撃してくる。
俺は防御魔法陣を展開するが、徐々に押されていく。……こういう時にカートリッチがあればな~。と内心でぼやく。
その時、金色の魔法陣が展開され、俺の魔法陣と共に竜巻を押し返した。
「……私も、あなたには死んでもらったら困るから……」
「……まあなんだ、助かったよ。んで、俺たちの砲撃で全部封印できると思うか?」
「……わからない。私は半分以上も魔力を使い切ってるから」
「だよな。俺の砲撃もどこまで通用するか解らんし」
こう話している内も、竜巻は勢いを増していた。予想通り、残り5つのジュエルシードは纏まって一つになってしまった。……うん、これってやばい展開だったり?やっぱ、7つのジュエルシードの暴走に魔導師2人は無謀だったのかも知れん。でもまあ、俺の予想が正しければ――、
「フェイトちゃん!千尋君!」
空中からバリアジャケットを身に纏ったなのはの登場である。俺の元に来たなのはは、デバイスをフェイトに向け、桜色の光を放つとフェイトの魔力は回復した。その証拠に、鎌状になっていた金色の光も元の大きさに戻っている。
「千尋君、フェイトちゃん。私たちの力で、ジュエルシードを止めよう」
「俺は別にいいけど、フェイトは?」
「……私も協力する。暴走したままじゃ、ジュエルシードを集めることができないから」
アルフと、現場に駆け付けたユーノも手伝ってくれるらしい。
暴走したジュエルシードの竜巻は、翡翠色の鎖とオレンジ色の鎖に拘束され、ほぼ動きを止める。その隙に、なのはとフェイトのデバイスは砲撃形態に変わり、俺もデバイスを構え直す。
「ユーノ君とアルフさんが止めてくれてる。今の内に、せーので一気に封印!」
そして、砲撃口からは魔力が集束され、雷撃も回りに降り注ぐ。俺たちの足元には、漆黒の魔法陣、桜色の魔法陣、金色の魔法陣が展開され、
「せーの……」
「疾けろ……」
「サンダー……」
「ディバイン……」
二つの砲撃と複数の雷撃は、一つに絡み合い大きさを増していき、ユーノとアルフは安全な場所へ退避する。
「漆閃!」
「レイジ!」
「バスター!」
魔力の塊といえる砲撃に爆発音。
暗雲が晴れると、残り5つのジュエルシードは完全封印された。ジュエルシードは空へと上がり、俺たちの近くで浮遊する。
「……ねぇフェイトちゃん。私、やっと言葉にしたいことが纏まったよ。――私はフェイトちゃんと……友達になりたいんだ」
俺は、なのはらしい言葉だな。と笑みを浮かべようとしたが、急激な魔力反応と共に海上目掛けて紫電が降り注ぎ凄まじい爆発を起こす。だが、フェイトはこの紫電を直撃し、俺となのはは寸前で回避。なのはは、フェイトを助けようとしたが紫電に阻まれる。
『……千尋、この魔力……』
「(……ああ。プレシアさんで間違えはないだろう。セレイナ、逆探知はできそうか?)」
『もちろん、アースラよりも探知能力が高い私を舐めないでね』
だが、紫電が振り終わった時、俺の体はアルフに投げ飛ばされてしまう。
俺は何回か海上を跳び、体勢を立て直す。つーか、クロノがジュエルシードを手に入れようとするアルフを止めてるのは予想外だ。
まあ、クロノも俺と同じく吹き飛ばされたが、クロノの手には2つのジュエルシードがあった。飛ばされる瞬間に奪ってたのだろう。
アルフは憤怒の表情を見せていたが、オレンジ色の魔弾を海面に放ち、フェイトと共に姿を消していた。
まあ、これからジュエルシードは、なのはたちに任せよう。――セレイナのお陰で、俺にはやることができた。だが、代償と言えばいいのか、それも大きかったのも否めなかった。
逆探知に成功したセレイナさん。千尋君に居場所がバレたプレシアさん。
さてさて、今後どうなるんだろうか?
では、次回もよろしくです。
追記。
プレシアさんと千尋君は、既に面識がありますね。
ちなみに、探査してた海上の名前は、事前に千尋君は知ってました。