「……それで力量差を埋めてった所かしら。そんな秘術を編み出すなんて、本当に天才ね」
「俺は自分を天才と称したことはない。俺はただ、皆より若干優れてる人間だ」
回りの皆は俺のことを天才と呼ぶが、俺はそう思ったことは一度も無い。
「そう。でも、貴方は私に勝てるのかしら、力量差をそれで埋めたとしても、根本の所は変わらないわ」
プレシアが杖で床を叩くと、10個程の紫色のスフィアが俺の周囲を取り囲む、だが、俺は表情を変えずにプレシアを睨み付ける。
「……あんたがそう思っていても、やって見ないと解らないだろうが」
この話の間にも、俺とプレシアの読み合いは続いている。……それに俺の予想では、この庭園こそがプレシアの魔力源と言ってもいいだろう。――だが、それはなのはたちに任せて、俺はこっちに集中しよう。
対する俺も、自身の回りに漆黒の魔弾をスフェアと同じ数を展開し、それはぶつかり合い相殺された。
「――月牙、天衝!」
俺がソードデバイスをプリシアに向けて振り下ろすと、剣からは斬撃が放たれたが、この斬撃はプレシアに届くことはなかった。そう、防護障壁で意図も簡単に防がれたのだ。解っていたことだが、プレシアの防御は硬すぎる。普通の魔導師ならば、今の攻撃で吹き飛んでもおかしくはない。流石、S+の魔導師といった所だ。
「アリシアが死んで、悲しんでるのがあんただけだと思ってるのか!俺もアリシアのクラスメイトも、悲しいに決まってる!でも、現実を直視しても前に進んでいる!でもあんたは、大勢の人に迷惑をかけて、現実逃避をしてるだけだ!」
「……お前が、私の感情を知った口を聞くな!」
お返しとばかりに、プレシアの紫電が俺を包むように放たれたが、俺はそれを跳びながら交わし、デバイスをバスターに変更。
「俺だってその悲しみは解る!何であんたは、それを受け入れない!」
俺は砲撃口をプレシアに向け、空に浮きながら、
「――ディバイン、バスターッ!」
だが、この攻撃もプレシアの障壁に阻まれる。
「ふん。千尋、貴方の攻撃は私には届かない。模擬戦で、私に
『千尋!あれだけはダメッ!』
セレイナの、涙交じりの声。
だが、俺は――、
「――――――
更に身体能力を強化。おそらくこれで、ランクだけならプレシアを上回っただろう。ちなみに、この技は使用実験もしてないし、未完成のもの。それに、暴走の危険性がある。本当は廃棄するものだったのだが、ここで役に立つとは思ってなかった。
俺は加速し、魔力を纏った砲撃口を、プレシアの背後の障壁にめり込ませる。
「貫けッ!」
砲撃口が徐々に障壁を壊して先端部分が、めり込んだ。
「――放て、
これは、なのはの砲撃を改良した俺のオリジナル砲撃だ。
ほぼゼロ距離攻撃。これで幾らかは攻撃が通ったはず。まあ、戦術もないゴリ押し攻撃だ。
そして、プレシアの体が宙に浮いた。僅かだが、障壁を張られる前に幾分かの攻撃が入ったのだ。
「……なるほど。あの白い魔導師の砲撃の改良版ね。……接近戦に遠距離戦。こんなに厄介なものだとはね」
プレシアは体勢を立て直し着地し、杖状のデバイスを鞭に変え無造作に振り回す。俺は鞭の動きは予想できずにいて、鞭は急所を貫こうとする。
俺は反撃としてデバイスをソードに変更し、感覚だけで鞭を弾き切り落とすが、凄まじい速度でプレシアが動き、俺の後方に移動してから杖状デバイスを俺の背後に向けた。
「逝きなさい。――サンダースマッシャーッ」
紫電が背後から襲いかかり、俺は前方の壁に直撃した。咄嗟に防御魔法陣を展開したが、このダメージは大きいものだ。
俺は瓦礫の中から飛び出し、インファイトに持ち込む。これならば、簡単に魔法を放つことはできないだろう。
「……もう止めるんだプレシアさん。管理局もそろそろ突入してくる。勝ち目がないはずだ」
「ふん。私は、貴方からジュエルシードを奪い、アルハザードに飛ぶから関係ないわ」
剣撃の押収をしているが、この人は接近戦も強い。……この人、どんだけチートなんだよ。マジで。
そろそろ、俺の体も軋み始めてきた。もう限界だと、体が悲鳴を上げているのだ。だが、こんな所で倒れるわけにはいかない。
そして、俺とプレシアは距離を取り、再び睨み合う。
動き出したのはほぼ同時だった。握られたデバイスが衝突し、鍔競り合いが起こる。魔力を纏ったデバイスが衝突した余波で、周りの遮蔽物は跡型も無く消し飛ぶ。
デバイスの火力はほぼ同格。何か一つ、道を切り開く技があれば――いやある、この場を打開する技が。この技は、相手に複数の俺の幻術見せ、背後に回り込み斬撃を繰り出すものだ。この技は、所見で防ぐことは不可能なので、初見殺しの技とも言えるが、今の俺では成功の確率は五分五分。所謂賭けだ。
俺は力でデバイスを弾き、距離を取ってプレシアの背後に回る。
プレシアは咄嗟に此方を向くが、
「――穿て、
プレシアは俺の幻術にかかり、俺が複数人見えているはず。
そして、複数の俺からは無数の斬撃が降り注ぐ。ちなみに、幻術でできた俺の複製の攻撃も、本物と大差ない。
凄まじい爆発で煙が立ち込め、それが霧散した時には、プレシアは杖のデバイスで体を支えていた。魔法陣で防御したとしても、かなりの威力だったはずだ。それを受けて立っていられるとは、最早、唖然という言葉しかない。
「ま、まだよ……まだ終わらない……――ライトニングスマッシャー!」
俺は、プレシアが杖から放った巨大な蛇のような紫電が直撃し、後方に飛ばされたが空中でそれを受け止め着地。
だが、着地と同時に俺はかなりの量の吐血をする。防御魔法陣を展開したが、蓄積ダメージが洒落にならない一撃だ。
「「……はあ、はあ、はあ」」
俺とプレシアは、最早限界突破してる。
「……私はアルハザードに飛んで、アリシアを蘇らせるの……邪魔をしないでちょうだい。私には約束があるの、あの子をもう一度抱いて、遊園地に行くって約束がッ!」
「……それで、それで本当に幸せになれるのかよ!あんたは間違ってる!死者は還らないし、天で見守っているアリシアも悲しむだけって、何でわからないんだよ!」
「……ただの友達だった貴方に何がわかるの!私には、アリシアが人生の全てだったのよッ!アルハザードで、あの子が待ってるのッ!」
「だからって、禁忌に手を染めるなんて間違っている!何であんたは他人を頼らない!何で一人で抱え込むんだよ!あんたは本心を語らないし他人を頼らない!でも、頼ることで、悲しむことも苦しむことも、悩むことも一緒にできる!……あんたには、あんたにはフェイトがいるじゃないかよ!」
「だから、あれは粗末品って言ってるでしょ!あの子は失敗作なのよ!」
「そんなことはどうでもいいんだよ!あの子はな、プレシアさん。フェイトは、アリシアのクローンでも、あんたが
プレシアは驚愕の表情になるが、俺は構わず言葉を続ける。
「――フェイトは、あんたが手を差し出してくれるのをずっと待ってる!アリシアはもういないけど、フェイトは、アリシアのたった一人の妹だろうが!何でそれがわからないんだ!」
「……黙りなさい!」
「何でそんなにあの子を拒む!フェイトはずっと待ってるんだぞ!」
「……黙りなさいって言ってるのよ!」
言葉と同時に放たれる紫電。それは、庭園を破壊する程のものだ。
紫電は、俺とプレシアの中央に落ち巨大な穴を穿つ。そして、プレシアの周りに展開したジュエルシード。プレシアは、今あるジュエルシードだけでアルハザードに飛ぼうとしているのだ。だが、21個のジュエルシードが揃わない次元転移は自殺行為だ。
「私は、私はアルハザードに行きアリシアと会うのよ!あの子なんていらないわ!」
そして、プレシアは穿たれた穴の中に飛び込んだ。おそらく、着地点にはアリシアの亡骸もあるのだろう。
「ダメだ!あんたはまだ死んだらいけない!」
俺は躊躇なく、穿たれた穴の中に飛び込んだ。
千尋君。かなり無茶をしてますね……。今後に響かないかな(^_^;)てか、千尋君の思いと、プレシアさんの想いのぶつかり合いでしたね。
一応、次回で決着と考えてます。さて、今後の展開はどうなるんでしょうかな。
では、次回もよろしくです。