えーと、最初になんて言えば良いのかな?
この物語を読んでくれてありがとう?
うんとね。
ちょっと言葉にしづらいけど、私は凄い感謝しているよ。
それで今から少し長い話になると思うから、苦手な方には申し訳ない。
さてと、じゃあ始めちゃおう。
私達の物語の一番最初、開幕劇を───
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無限と思える程、広大な暗黒の海に漂う巨大な天の川銀河。
その天の川銀河を構成する無数の星々の一つ。
皆の知っての通り、太陽系に位置する青き美しい惑星。
それは地球。
時代は西暦2018年。
人類は北から南の隅々まで定住し、蒼天を仰ぎ見ればジュラルミンの鳥が空を泳ぎ、人の乗った小さな船が宇宙に浮遊している。
狩りをしていた頃から人類はここまで成長し繁栄した。
しかし地球での人の繁栄は“無知”という平和な証に包まれていたからだったよ。
貧困、経済危機、地球温暖化、大災害、核戦争。
どれも人類を衰退させる要因になり得るもの───だけど、今から伝える出来事に比べれば凄く些細なものと断言可能なんだよね。
ある存在達によって・・・・・
良くも悪くも発達した科学と科学者の懸命な努力によって、今までほのめかす事で害の無かったものを偶発的に突き止めてしまう事がある。
人類が決して知るべきものではない、慄然たる景観や事実に───
もしその存在の欠片でも知ってしまった者は、後悔の念に苛まれながら発狂するか、その狂気に呑み込まれ自身を見失ってしまうか、だろうね。
どちらにせよ、まともな死に方がではないのは明白。
これらの事態を引き起こす存在とは、私達人類の誕生から十数億年前に地球を支配した神とも呼ばれる旧支配者達。
今でこそ旧支配者達は休眠状態に入っているけど、星辰の揃う時、目覚める圧倒的な力の前に全ての人類は思い知るだろう。
人類の繁栄は“つかの間の現象”だと───ね。
例えるなら、マッチに火を点けたら直ぐに燃え尽きて消える。人類の繁栄も基本は同じ事。
そして追加ではっきり言わせて貰うよ。
人自らが理解している。人とは傲慢で愚かな生物であると、ね。
んっ?
どうしてそんな表情をしているかな?
───あー成る程ね、なんで私がそんな事を知っているって?
そっか、絶対に人目に触れられてはいけない出来事をどうして知っているか気になるよね。
よし!じゃ言う前に、分かりやすいように旧支配者を含めた物や情報を“クトゥルフ神話”と定義しようか。
それで私が知っている理由なんだけど、簡単に言えばクトゥルフ神話関係の監視をする仕事に就いていたからだね。
まぁ監視と言っても実力行使も良くあったよ。
いやぁ大変だったよ。
狂信者達がクトゥルフ神話に触って色々と面倒な───おっとごめん。随分と話が逸れちゃったね。
話を戻してと、今から話すのは人が愚かであると体現したある一つの出来事。
まず最初に、どうやら私達の監視外にクトゥルフ神話に関する祭壇があったらしい。
それで祭壇を自ら力を得る為に利用しようとした人物が居た。
その人物をこれから背神者と呼称するね。
この背神者は祭壇が原因で己がどれだけ危険か───いや、もしかしたら人類の終焉を握り締めたとも気づいていないだけなのかもしれない。
加えて背神者は神を利用するだけでは飽きたらず、魔術の際に必要な大量の血液や人を手にしようと、事前に用意した手駒の怪物に無知なる大衆を襲わせた。
私達はその時点でようやく行動に移ったけど、町は既に手遅れで、思わず鼻がひん曲がりそうな死臭の屍で山が形成されていた。
こうして初動は完全に背神者に先手を取られた。
でもすぐに差を埋めようと仲間と一緒に動き、途中で新人が入って来たりもしたね。
最終的には背神者の本拠地を突き止め、八人の仲間で本拠地へ強襲を開始したよ。
でも、本拠地の防衛は頑強どころかそれ以前の状態だった。
本拠地内では床に血が赤いカーペットのように撒かれ、蛆の湧く腐敗の進んだ死体がそこらに投げ棄てられていた。
死んでいる人は全員背神者の手駒だった者ばかり。
背神者に利用され、挙げ句の果てに命まで刈り取られるなんてねぇと思いつつも、私は興味を持たなかった。
クトゥルフ神話に関係すればこんな事態、よくある事だから。
やがて背神者が姿を現し、戦闘を開始した。
戦況は劣勢、あらかじめ地形を知り防衛準備の整った背神者は正直辛い相手だった。
それに背神者は私達の最も恐れていた旧支配者の召喚を敢行。
祭壇の上に旧支配者が召喚され、背神者は魔術で莫大な量の魔力を使い、強引に旧支配者を相手に魔術を掛け、人形と同じように操られてしまっていた。
旧支配者という強大な存在を自らの手の内に取り込んだ背神者は、私達にその力を振るわれそうになる。
しかしここで、仲間の一人が旧支配者に怯えた恐怖で銃を発砲。
撃たれた銃弾は旧支配者とは違う明後日の方向へ飛んで行き、背神者の隣に置いてあった大きなカプセルを破壊してしまった。
その瞬間、敵味方関係無く想定外の状況へ変化した。
破壊されたカプセルから赤い気体が噴出し、何故か旧支配者が赤い気体を吸収してしまう。
今思えば赤い気体、クトゥルフ神話的な興奮剤に近い役割があったんじゃないかな。
やがて気体を吸収した旧支配者の体が段々赤く変化していき、全身が赤黒く染まった時、背神者の制御を拒否して暴走を始めた。
旧支配者の急激な変化に困惑する背神者は再度旧支配者の制御を行おうとするが、旧支配者から放射された光線を受け姿を完全に喪失した。
こうして背神者が消え去った時点で旧支配者の暴走を制御可能な者は居なくなった。
背神者は自分から面倒な事に足を踏み出し、勝手に消え去るなんて本当に厄介な人物だよ。
でもまぁ、居なくなってしまったならしょうがないよね。
私達は背神者ではなく、今度は暴走する旧支配者を止める為に動き出した。
幸いにも、仲間の一人が暴走を止められる可能性を知っていた。
しかし可能性の発動にはこの場を離れなくてはならず、準備にも時間が掛かる。
だから私は殿を務め、仲間全員を後退させようとした。
でも私と比較的長く一緒に居た三人が同じく殿を務めたいと発言した。
私は余計な事は話さず、三人へ戦う準備を、とだけ言った。
そして私達四人を残して他は急いで後退させた。
目の前に立ちはだかる旧支配者を相手に、勝利が不可能なのは明白。
だから、ほんの少しでも時間を稼ごうとした。
私は特殊な材質の小太刀を抜き、視線を右へ向けた。
右隣で仲間の弓が巨大な銃器を持ち、弓の奥で由夢が手榴弾を手に持つ。
視線を左に移せばMP5を構えた市が旧支配者に照準を合わせる。
私は内心ため息を付き、戦闘開始の合図をした。
それからはまぁ、大体想像はついていると思うけど私を含めた全員が地に伏せたよ。
由夢を最初に弓、市、そして最後が私。
私が床に転がり、ダメージで動けなくなった頃には生きている人間は私だけ。
ただ、生きていると言っても切り傷からの出血による貧血。
全身に打撲跡、連続回避によるスタミナ切れ、筋肉の過負荷などが全身に及び、こんな状態では回避どころか動くことさえままならないよね・・・もう。
やがて旧支配者が私を完全に消し去る光線のようなものを溜めていると分かった時、もう消え去るんだなぁと諦めたね。
でも当時の私はここから新たな物語が始まるなんて、全く想像もしていなかったよ。
やがて溜め終わり放出された光線に私が巻き込まれる瞬間、見知らぬ声が頭に響いた。
「「我は、もはや自らを制御できぬ・・・せめてお主だけでも。」」と。