暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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9:壊れた日常

 ・・・・・・・・ありえん・・・ありえんだろ、こいつ。

 いきなり家に押しかけてきて?挙げ句の果てに奴隷になれだ?

 アホじゃねえか?

 俺は台所に居る大和に横目で顔を覗き込む。

 ほら見ろ。あの東京武偵高一の天使と噂された大和ですら、すっげぇ苦笑いを浮かべているぞ。

 

アリア 「ほら、さっさと飲み物ぐらい出しなさいよ!無礼なヤツらね!」

 

 ぽふ!と盛大にスカートをひらめかせながら、アリアは部屋のソファーに座り、俺らを睨み付けて叫んだ。

 

アリア 「コーヒー!エスプレッソ・ルンゴ・ドッピオ!砂糖はカンナ!一分以内!」

 

 無礼者はそっちだろぉ!?

 つーかおい待て、なんだその呪文みたいなコーヒー名は!

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

 

 

 えっと・・・なんでこんな面倒な羽目になったのかな?

 よし、とりあえず撃たれる前にコーヒーでも入れよう。

 アリアにどやされて台所に戻って来たキンジに、コーヒーがあるか聞く。

 

大和 「キンジ、コーヒーある?」

キンジ 「あんな呪文なコーヒーは論外として、あると言ってもインスタントしかないぞ。」

大和 「ならインスタントでどうにかするしかないね。」

 

 適当にインスタントコーヒーをお湯で溶かして、二人分のコーヒーを作る。

 一つはアリア、もう一つはキンジの。

 私はコーヒーみたいな苦い物は苦手で飲めないから無し。

 完成したコーヒーを両手に持って持ち、机にそれぞれ置く。

 こうして出されたコーヒーを嗅いで、アリアは疑問符が浮かぶ表情をする。

 

アリア 「これ、本当にコーヒー?」

 

 一口味見して、どうも初めて感じる味だったらしく、アリアが首を傾げる。

 

キンジ 「それしかないんだから有難く飲めよ。」

アリア 「・・変な味。ギリシャコーヒーにちょっと似てる・・・んーでも違う。」

キンジ 「味なんかどうでもいいだろ。それよりだ。」

 

 今度は逆にキンジがアリアを指差すと。

 

キンジ 「今朝助けてくれた事には感謝している。それにその、お前を怒らすような事を言ってしまったのは謝る。でも、だからってなんでここに押しかけてくるだ。」

 

 今朝の事?あぁなるほど。

 多分その時ヒスったから、朝から頭を抱えていたのね。

 それにアリアも繋がってるっぽい?

 つまりキンジは朝に何かに巻き込まれアリアが救援に来たのはいいけど、何かしらの要因でヒスってアリアを怒らせたと。

 こんな感じかな?

 

アリア 「分かんないの?」

 

 アリアはカップを持ったまま、赤い瞳だけを動かしてキンジを見つめる。

 

キンジ 「分かる訳ないだろ。」

アリア 「アンタならとっくに分かってると思ったのに・・・なら隣のはどうなの?」

 

 キンジが答えられなさそうなので、アリアが私に話を振ってくる。

 しかしねぇ、正直言って今朝の出来事を詳しく知らないから何も言えないよ。

 

大和 「今日初めてアリアに会ったし、そもそも今朝に何があったの?」

 

 私の立場からすれば当然の質問に、キンジとアリアは顔をお互いに見合せ───

 

キンジ・アリア 「─────ッ!!」

 

 ほぼ同時に顔を赤くする。

 二人の反応とヒスる要因を組み合わせると、自然とどういう状況だったかある程度は想像がつくよ。

 

アリア 「コ、コイツ!ア、アタシにワイセツして来たのよっ!!」

 

 アリアは朝のHRの同様に恥ずかしさから赤く染まって、大声を部屋内に響かせる。

 

キンジ 「お、おい!違うぞ!!あれは偶然起きた──」

アリア 「偶然で、なんで服を脱がそうとするのよ!変なキャラになって・・・ア、アタシに────」

 

 キンジが弁解しようと声を上げるけど、アリアが更に大きな上塗りして叫ぶ。

 しかし後半になるにつれて今朝の事を詳細に思い出したみたいで、アリアの声がどんどん小さくなって、代わりに頭から煙が湧き始める。

 

アリア 「あーもう、コイツのせいでお腹が空いたわ!!何かないの?」

 

 これ以上この話を続けたくない為かな、アリアが無理やり話題を変えて食べ物を寄越せと言う。

 キンジもキンジでこれ以上失言をしたくないようで、アリアの言葉に続く。

 多分私の予想通りの状況だったのだろうけどねぇ、結局細かい所は分からなかった。

 

キンジ 「今作って貰っているから、もうちょっと我慢してろ。」

アリア 「やだやだ!!」

 

 アリアは駄々っ子みたいに手足をバタつかせる。

 んー料理はもうちょっとかかるから、あっ試しに買ってきたあれでいいや。

 私は食材の入った袋の中を探して、紙袋に包まれたそれをアリアの前に置く。

 

アリア 「何よこれ?」

大和 「ももまんっていう饅頭。口に合うかは保証しないけどね。」

アリア 「ふーん、まぁいいわ。」

 

 アリアがももまんを紙袋から取り出して、大きく頬張る。

 さて、ももまんでアリアの時間稼ぎしている間にささっと作っちゃおう。

 

 

▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲  

 

 

 私達が食事を終えて全員が一息ついていると、キンジが最初に話を切り出した。

 

キンジ 「一旦話を戻すが、奴隷ってなんだよ。どういう意味だ。」

アリア 「簡単な事よ。強襲科でアタシのパーティーに入りなさい。そこで一緒に武偵活動をするの。」

 

 強襲科の単語に嫌々顔のキンジは、当たり前に戻るのを拒否する。

 

キンジ 「何言ってんだ。俺は強襲科が嫌で一番まともな探偵科に転科したんだぞ。いずれ武偵を辞めて一般の高校に転校しようと思っているんだ。あんなトチ狂った所に戻るのは嫌だし───無理だ。」

アリア 「アタシには嫌いな言葉が三つあるの。」

キンジ 「人の話をちゃんと聞けよ。」

アリア 「無理、疲れた、面倒くさい。この三つは人の可能性を押し潰す良くない言葉。アタシの前では二度と言わない事。いいわね?」

 

 うーんこれは会話のキャッチボールじゃなく、会話のドッチボールだよ。

 お互いに言葉が一方通行にしかならないってどうなのかな?

 

アリア 「アンタも一緒よ。」

 

 アリアは私の方も向いて警告する。

 えぇ、凄い面倒な子・・・・私は何も言ってないのになぁ。

 

大和 「まぁ、可能な限りね。」

 

 私としては絶対に口にしないとは言えない為、少し言葉を濁したものの一応納得して貰えたらしい。

 

アリア 「・・・取り敢えずはそれでいいわ。それでポジションは───キンジ、アンタは私と同じフロントよ。大和は、まだ保留ね。」

大和 「いやまだ何も承認してないのだけど。」

 

 それにアリアの口から出たフロントという意味。

 戦闘時き危険な前衛の役職にキンジが振られる。

 武偵の編成にとって援護役である後衛の盾役、つまり最も危険なポジション。

 流石にキンジも待ったを掛けてアリアに伝える。

 

キンジ 「よくない。そもそもなんで俺なんだ?そこは大和の適任だろ。」

 

 キンジ~、無意識なんだろうけど私を売らないでよね。

 

アリア 「太陽はなぜ昇る?月はなぜ輝く?その位自分で推理してみなさい。」

 

 なんかアリアが口を開く毎に話がどんどん明後日の方向に飛んで行っている。

 なるほど、これはドッチボールじゃなくてピッチングマシーンの方になってきたよ。

 キンジも何か言いたそうにしてるけど、今朝みたいに撃たれると思って止まってる感じ。

 

キンジ 「とにかく帰ってくれ。大和も頼む。」

 

 私は頷く───が、肝心のアリアについては。

 

アリア 「そのうちね。」

キンジ 「そのうちって、何時だよ。」

アリア 「アンタ達がアタシのパーティーに入るって言うまで。」

キンジ 「既に夜だぞ。」

アリア 「しばらくここに泊まって行くから。」

 

 んっ?ここに泊まっていくの?

 あれ、それはキンジに取って色々とまずいんじゃあ・・・

 そう嫌な予感をしつつキンジの方へ視線を動かした結果、私もこうなるって想定していたよ。

 キンジが嫌とか拒否的な意味でとんでもなく頬が凄い引きつっている。

 ヒスりたくないキンジも堪らず声を荒げる。

 

キンジ 「ちょっちょっと待て、それはふざけんな!!絶対駄目だ!帰れ!!」

アリア 「嫌よ!こんな事もあろうと思って準備をちゃんとしてるわ!見ての通りよ!」

 

 ピシッと玄関にあるトランクを指差し、キンジを睨み付けながらキレ気味に叫ぶアリア。

 あのトランクって、宿泊の為に用意してたんだ。

 そして───

 

アリア 「──出ていけッ!!」

 

 唐突にそう叫んだ───何故かアリアが。

 

キンジ 「なんで俺が出ていくんだよ!俺の部屋だぞ!」

アリア 「分からず屋にはお仕置きよ。横でポケっ聞いていたアンタも!しばらく帰ってくるなぁぁぁ!!」

 

 こんな風にアリアによって無理矢理私達はキンジの部屋から外へ追い出される結果に

 うーん、部屋を追い出されちゃった。

 まぁアリアに追い出されたけど、私は自分の部屋があるからいい。

 問題はキンジの方だね。

 

大和 「どうするの?私の部屋でアリアの様子を観察する?」

 

 ひとまず私はキンジに一つ提案をした。

 しかしキンジは横に首を動かす。

 

キンジ 「いや、大丈夫だ。そこのコンビニで時間を潰してから戻る。」

 

 疲労感漂う雰囲気の中、キンジはそう話す。

 確かに怒りの感情は長続きしないから時間を置くのはいい考えだと思うよ。

 でも結局帰った手前からまた怒鳴られるんじゃないのかな。

 

大和 「本当に大丈夫?別に遠慮はしなくても良いよ?」

 

 一応念の為にもう一度聞いてはみたけど、キンジは変わらず首を左右に振る。

 

キンジ 「あぁ大丈夫だ。」

大和 「そう?わかった。じゃあね、キンジ。良い睡眠が取れると願っておくよ。」

キンジ 「是非ともゆっくり寝かせて貰いたいものだな。」

 

 私はキンジと別れ、自分の部屋へ歩を進める。

 そして帰る最中で少しだけ頭を働かせる。

 さて、どうしようかな?

 んーこれは波乱起きそうだし、備えて用意した方がいいかもしれない。

 久々だけどいくつか用意しておこう。

 備えず損するより備えて損する方が良いよね。

 はぁ~、意識していないのに精神の削れる音が聞こえて来ちゃうよ・・・・・

 部屋に着いて直ぐ、鍵を複数付けたドアの鍵を外す。

 数分程で鍵が開いて、私はその部屋の中に入っていった。




 消え去る化け物:猿と昆虫に似た生物がチカチカ光り始めたら、奴の手の届く範囲に寄ってはならない。一緒に何処に消えてしまうだろう。
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