どうしてこんな事になっちゃったんだろう・・・?
内心気落ちして全くやる気が起きない。
私が気落ちする原因は、正面で戦闘準備を行っているアリアの姿。
この状況を簡単に言えば、東京武偵高の闘技場でアリアと戦おうとしていた手前だよ。
私から数m先に居るアリアは二丁のガバメントを強く握り締め、赤紫色の瞳から鋭く真剣な眼差しを発する。
そして周囲に勝負の観客と化した強襲科の生徒達が野次馬の如く盛り上げる。
周りも乗っちゃってるし、はぁ~・・・憂鬱だなぁ。
アリアがキンジの部屋に凸って来てから明後日。
昨日はキンジが絡まれていたから今日に来るだろうと思ったけど、これは面倒な事になったよ。
事の発端は「アンタ!アタシと勝負しなさい!」と、アリアの盛大な宣言から始まった。
宣言を聞いた周りの同じ科の生徒が興味津々で盛り上げ、更にアリアが大声で宣言したせいで、よりにもよって蘭豹先生の耳に届いたお蔭でそのまま戦闘の流れへ。
アリア 「ほら、アンタも構えなさい!」
私のあんまりやる気の無い様子を感じ取ったらしく、アリアが少しイライラしつつ催促する。
大和 「はぁ、本当に憂鬱ね。」
溜息で気分を入れ換えてから、右手で刀を抜き、左手でFN5-7を構える。
アリアは私の刀の青い刀身に珍しげな視線を送るけど、即座にさっきの目に戻る。
蘭豹先生 「始めぇや!!」
パパパパンッ!!
キィキィキィキィン!!
蘭豹先生から開始の叫びと共に闘技場に響く、四発の銃声と四回の金属の擦る音。
アリアが先制で発砲し、私は銃弾を防御する。
しかし私の防御中にアリアは接近戦を挑もうと直線で駆け抜ける。
対して私は懐に潜り込まれないよう、アリアの足へ左手のFN5-7を照準する。
でもアリアの方はFN5-7の射線を先に読み、素早く射線から逃れる。
次に反撃とばかりにアリアは両手のガバメントを連射した。
飛翔する弾の中で危険なコースだと判断した弾だけを的確に弾き返す。
一方アリアはホールドオープンになったガバメントを放り投げ、颯爽と私の背後へ回り込もうとする。
速度を落とさず姿勢を低く下げ、床をしっかり蹴って急旋回を行う。
アリアの動作は全てが洗練されて、話に聞いていた凄腕のSランクと容易に納得する程だったよ。
更に回り込みと平行して服の中に隠して持っていた刀を抜き、アリアは二刀流で私の後方から全力で刀を振るう。
確かにこれだけの技術があるなら、武偵での活躍は凄いだろうね。
────でも、甘いよアリア。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
昨日アリアを連れての猫探しで0.1単位を貰った翌日。
武偵高でいう四時間目位の昼前に、ある人物に会う為俺は普段絶対に近寄らないと断言出来る女子寮へと足を運んだ。
キンジ 「理子。」
予めメールで呼び出していた通り、理子は女子寮の前にある温室の中で待っていた。
理子 「あっ!キーくぅーん!!」
薔薇園の奥で俺に気づき、理子がくるッと振り返る。
そして振り返った時に遠心力で、理子の制服に付けられた大量のフリルが大きくなびく。
キンジ 「相変わらずの改造制服だな。なんだその白いフワフワは。」
理子 「これは武偵高の女子制服白ロリ風アレンジだよ!キーくん、いい加減ロリータの種類ぐらい覚えようよぉ。」
キンジ 「キッパリ断る。ったく、お前はいったい何着制服持ってるんだ。」
そんな事を言いながら俺は鞄から一つの紙袋を取り出す。
キンジ 「理子、こっち向け。いいか?ここでの事はアリアには秘密だぞ。」
理子 「うー!らじゃー!」
理子はびびしっと敬礼のポーズを取る。
本当に秘密を守ってくれるんだろうな?
不安感を含んだ苦い顔で俺が紙袋を渡して、その紙袋の中を理子が取り出し目をキラキラと輝かせる。
理子 「うっっっわぁーーー!しろしろっ!と白詰草物語と妹ゴスだよー!」
俺が買って来たのはR15のギャルゲーだ。
依頼の報酬に何故理子がどうしてこんな物を要求したかと言われると、理子はアリア程でないが少なくとも高校生としては身長が低い。
どうやらその見た目のせいで中学生と見られていたらしく買えなかったとか、それで俺が情報の対価で買ってきた。
確実に買ってきた店の店員さんにはあらぬ誤解を受けたのは明白だろうが、これもアリア対策用の情報を得る為と考えればまだマシだ。
しっかしなぁ・・・アリアは何故、俺や大和を奴隷にしたがるのか?
理由をアイツの口から話さない以上、こっちが調べないといけないからとことん面倒だぜ。
理子 「あっ・・これと、これはいらない。理子はこういうの嫌いなの。」
理子はさっきまでの興奮した表情を反転させ、選んだゲームを俺に返却しようとする。
キンジ 「なんでだよ。これ、他と同じような奴だろ。」
理子 「ちがう。2とか3なんて、蔑称。個々の作品に対する侮辱。嫌な呼び方。」
・・・妙な事でへそを曲げやがる。
返されたゲームはアリアに見つからないようさっさと砕いて処分しねぇと。
もし発見されようものなら、絶対この前と似てとんでもない誤解を受けちまう。
それもアリア本人の情報を集める用の報酬だから、まともな言い訳が出来ねぇと来た。
キンジ 「こいつらは俺がさっさと処分してやるから、アリアの情報を全部話せよ。」
理子 「あい!」
この変な返事といい、理子は正直言ってバカだ。
だが、そんなバカでも一つだけ良い所がある。
ギャルゲーを要求する所から理子がオタクなのは分かるだろうが、その要素が組み合わさって情報収集が上手いんだ。
キンジ 「よし、じゃあ早くしろ。今日は大和の方に流れているからいいが、それでも早い方が良い。」
理子 「ねーねー、キーくんはアリアの尻に敷かれているの?彼女なんだから自分で聞けばいいのに。」
キンジ 「彼女じゃねぇよ。」
理子 「えっもしかして、キーくんをアリアとみーちゃんが奪い合って、トライアングルになってたりして!痛ッ!」
俺は理子の頭にチョップを落とす。
何バカな想像してんだ、あるわけねぇだろ。
というか今の理子の言葉のせいで、トライアングルの意味が分かってしまったかも知れん、気分が悪ぃ。
キンジ 「お前は一瞬でそっちの方向に飛躍させる。悪い癖だぞ。それよりは本題だ。アリアの情報を・・・そうだな、まず強襲科の評価を教えろ。」
理子 「はーい。んと、ランクはSだったね。二年でSって、片手で数えられる位しかいないんだよ。」
だろうな。
アリアの身のこなしはどう見てもAランク程度の腕前じゃなかったからな。
理子 「あと理子よりチビッ子なのに、徒手格闘も上手くてね。流派はボクシングから関節技まで何でもありの・・えっと、バーリ、バーリ・・・バリツゥ・・・・・」
キンジ「バーリ・トゥードか?」
理子 「そうそうそれ。それが使えるの。それに拳銃やナイフは天才の領域。みーちゃんと同じ両利きなんだよあの子。」
キンジ 「それは知ってる。」
理子 「じゃあ、二つ名は知ってる?」
二つ名───それは優秀な評価を得た武偵に渡される。
基本的に二つ名を持つ者の腕前は保障され、信用も得やすく名前も良く売れる。
キンジ 「いや、知らない。」
それを聞いた理子はニヤッと笑う。
理子 「双剣双銃のアリア。」
双剣双銃の名前から察するに、四つの武器を扱う意味だと思う。
恐らく二丁の白黒ガバメントと刃物系を扱う、近接戦闘型の武偵か。
キンジ 「双剣双銃のアリア・・・か。」
理子 「んーー、あれ?ひょっとしてキーくん。その始めて二つ名をマトモに考える反応は、まさかだと思うけど、もしかしてみーちゃんの二つ名も知らなかったりしないよね?」
あっ?あいつも二つ名持ってるのか?
俺にとって理子の言葉は初耳はだった。
あーでもそうだよなぁ。大和はそう言う事を自慢したりないから、話題に上がらないんだよなぁ。
キンジ 「初めて聞いたが?」
理子 「やっぱりー!キーくん、ちゃんとみーちゃんも見てあげないと駄目だよぉ!」
キンジ 「うるせぇ。」
理子 「しょうがないなぁ。理子、特別に教えてあげる!」
・・・なんか理子がくそ意地の悪い笑顔をしているが、聞いて大丈夫だったかこれ?
俺は変な好奇心を出して若干後悔している中、理子が面白ろそうに発言する。
理子 「みーちゃん、めっちゃ色んな依頼を受けていたんだよ。そして決め手になったのはこれ!二ヶ月前にあった銀行立て籠り事件!」
俺は二ヶ月前の事件について記憶を探る。
二ヶ月前の銀行立て籠り事件といったら、ニュースでやってたな。
確か・・・十数人のテロリストグループが銀行を襲撃したって聞いた気がする。
それで、なんだっけ?大和がメインになって解決したとかどうのこうの。
キンジ 「それがどうしたんだ?銀行立て籠りなんて、そう珍しいものでもないだろ。」
理子 「もぉーやっぱりキーくんはダメダメだなぁ。」
理子がやれやれといった顔をする。
そんな理子を見て、一瞬イラってする。
一方俺の内心を気づいていないであろう理子が続きを話す。
理子 「その事件のテロリストグループって、どんな装備をしていたか知っていたり?」
キンジ 「まったく知らないけどよ。テロリストに回す武器はロクな物じゃねぇよな。相当旧式のコピーとかそういうのじゃないのか?」
理子 「違うよ!犯人グループは全員で十二人だったんだけど、皆がカラシニコフを持ってたの。しかも純正!」
キンジ 「はぁ!?」
カラシニコフと言えば、別名AK47。
突撃銃だけでなく、軽機関銃から狙撃銃、散弾銃まで様々な改良型が開発されたソ連製の傑作銃。
今でもAKの改良版がロシア軍で試験中とか言うとんでもない銃だ。
ちなみに中東の方のテロリストとかがよく使うのを見るが、あれは中国の劣化コピー品。
それに比べ純正という事は、旧ソ連本場のバリバリの軍用突撃銃じゃねぇか!
キンジ 「おいおい、なんでそんな物をテロリストグループが持っていたんだよ。」
理子 「なんでも、どっかの組織が裏で繋がっているらしいって聞いたけど、理由はまだ回ってないから詳しくは知らない。それより事件の方!うんと銀行を突入して制圧しようとした時、テロリストの一部が人質を撃とうとしたんだよ!でもテロリストグループと人質の間にみーちゃんが颯爽と現れ、テロリストグループの撃った弾を全部刀で跳弾させたらしいよ。」
・・・・おい待てや・・・確かに防御が得意と言っていたが、ライフル弾を刀で跳弾させるってあいつも大概人外じみてるな。
キンジ 「それで大和の二つ名はなんだ?」
理子 「えーとねぇ、それはねぇ・・・」
理子はあえて置いたような言い方をした後、その二つ名を言った。
理子 「絶対守護!」
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
ギィィィィン!!
金属同士が高速で衝突し、高く反響する悲鳴が闘技場に木霊する。
アリア 「なッ!?」
音が響いた時、私の後方を取った筈のアリアは、私の正面。
そしてお互いに視線を合わせていた。
まさか防がれると思ってなかったアリアは、思わず目を見開き驚愕する。
先程の攻撃を私は左手のFN5-7を捨て、腰にかけていた小太刀を抜き、左足を軸にして全力で回転。
アリアの縦の斬撃を回転する時の遠心力を使い、横一線の斬撃で防御した。
アリアにとってすれば、並みの者なら反応すら出来ず、熟練者でも目で追うのが精一杯で防げない一撃必殺だっただろうね。
しかしまさか防がれるという想定外に、アリアは大きく動揺するのが読み取れる。
正直驚いてくれるのは嬉しいね───でも、それは大きな隙でもあるよ。
私はアリアの腹部に向かって蹴りを放つ。
アリア 「グフッ!」
アリアの腹部から鈍い打撃音が聞こえる。
動揺によってアリアは私の蹴りをモロに食らい、軽く吹き飛んで倒れる。
アリアはすぐに起き上がるが、腹部のダメージのせいで大きく咳き込む。
アリア 「ゲホッゲホッ!」
大和 「その程度かな?アリア。」
アリア 「ふぅーふぅー・・・何言ってるのかしら?あんたの弱点はわかったわ。」
へぇー。私の弱点、ねぇ。
大和 「弱点って何かな?」
アリア 「簡単よ。アンタは多分防御に特化しているから、私が待ちに入ればいいのよ。」
そういってアリアは防御の姿勢に入った。
うーん、それは困る。
アリアの言う私の弱点はあながち間違っていない。
正直アリアの腕だと、普段じゃあ攻めは厳しいなぁ。
こうなると私とアリアはお互いに動かない。
そして一分、二分と時間が過ぎ去っていく。
蘭豹 「動きやがれやぁ!!」
ババァァン!!
五分経った時、私達より先に観戦者の蘭豹先生が、動きがないせいで溜まったイライラが遂に爆発したらしく、その手に持つ像殺しと呼ばれるM500を私に向かって放つ。
それに私に向かって撃ったのは、お互いにハンデを背負えって意味だろうけど。
ギィィィィン!!
アリア 「───ガハッ!?」
私が自分の周囲で刀を一閃させると、離れていたアリアが倒れた。
周りからは「えっ!なんで?」「攻撃したようには見えなかったぞ!」「何をしたんだ!」と声が聞こえる。
そんな中、蘭豹先生だけが「おもろい事しやがるわ。」と小さく耳に届く。
流石武偵高の教師、本当によく見てるよね。
私は倒れたアリアを看護しようと傍に寄ったら、小さな声が私の耳に届く。
アリア 「アンタ、何したの・・・?」
大和 「あれ?流石Sランクの武偵だね。これで気絶しないなんて。ちなみにさっきの正体はそれ。」
私はアリアの傍に落ちている、ある物を指差す。
アリアがそれに視線を写した途端、アリアの中である予想が思い浮かんだみたいで、目を大きく開かせる。
アリア 「アンタ──まさか!」
アリアの視界に入ったのは、一発の弾丸。
正確に言えば、500S&Wマグナム弾だった。
知っての通り、この弾はM500に使用する弾薬。
そう、私は蘭豹の放った弾丸を刀の角度を調整し、アリアの方向に跳弾させた。
大和 「跳弾でエネルギーが低下したとは言え、まさかこれを食らっても意識を保てるなんて、アリアぅて頑丈ね。」
アリア 「そんな事が出来るなんて・・・アンタ、一体何者?」
大和 「もしかして、私の二つ名知らない?」
アリアはなんもか首だけ振って、知らないと表現する。
大和 「絶対守護、それが私の二つ名。私は皆の盾であり、頑丈な盾は攻撃にも使える矛でもある。ほいっ。」
私はアリアを背負う。
見た目の体格通り結構軽いね。
まぁこれで重かったら、密度どうなっているのって失礼な事を思わないといけないけど。
アリア 「ちょっと!なにするのよッ!?」
アリアは思いっきり暴れようとする。
しかし蹴りと銃弾を食らっているんだから、動くのは無理だよ。
アリア 「どこに連れて行く気よ!」
大和 「そりゃあ、傷治さないといけないからね。」
アリア 「アンタなんかに連れて行かれるなんて不愉快よ!」
大和 「と言っても、動けないから仕方ないよね。」
アリア 「むぅー!」
あらあら、膨れっ面になっちゃって。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
その日の夜、私がお風呂から上がったタイミングで一本の電話がかかってきた。
大和 「誰だろ。もしもし?」
キンジ 「「大和か。済まないこんな時間に。」」
大和 「別にいいよ。それでどうしたの?」
キンジ 「「それが────」」
キンジが言うにはこの通りだったよ。
今日帰って来てからアリアと話したけど、なにやら話し合いでキンジが折れてしまって、一回だけどんな事件でもパーティーを組むとなったらしい。
しかもおまけとばかり、私もその範疇に入っているみたい。
今回キンジが私を巻き込んでしまって、現在進行形で罪悪感にうなされているって事ね。
キンジ 「「本当にすまん。巻き込んでしまって・・・」」
大和 「問題ないよ、多分私も折れちゃうと思うし。それより条件を考えるにキンジは強襲科に一時的に戻るの?」
キンジ 「「まぁそうなるな。それであんな所に戻る事になるなんて、最悪だ。」」
大和 「何かあったら、私が出来る限り対応してみるよ。それじゃあもう遅いから、おやすみ~。」
キンジ 「「あぁ、おやすみ。」」
そう言って私は電話を切った。
無力な教授の願い:太洋の海溝に変な生き物がいる噂があるらしい。私はただ発見されない事を祈るだけです。