目を開けた先には白い天井が写っていた。
まだ覚醒しきれてない頭の状態で、何とか現実を思考する。
私は、真っ白な部屋でベッドに寝かされている?
じゃあこの部屋は何処の?
首を横に倒すと、隣の壁に窓が設置されている。
取り敢えず今ベットから見える範囲の外の風景を確かめる。
確認できた地形と目立つ建築物、そして見え方などを無意識に記憶していた東京の地図と照合し、居る場所が判明した。
ここは・・・病院?
えっと、私はなんでここに?
覚えている限りの記憶を巻き戻していく。
アリアとバスジャックに対応しに行って、ルノーの襲撃があって───
あぁ、そうか・・・アリアを庇ってから、それで・・痛っ。
私は上半身を起こそうと動かした瞬間、背中全体に鈍い痛みが走る。
痛ててて、思えばUZIの弾をあんなに受けたらこうもなるよねって遅れながら気が付いた。
この通り背中がジンジン痛むけど、それより私がここにいるという事は、事件は一応解決したのかな?
意識が戻ってからしばらくした後、様子を確認しに来た看護師さんから色々な話を聞いた。
どうやら私はアリアを庇った時、幸いにも命中した弾は全部防弾ベストのお蔭で貫通はしてなかった。
ただ前の世界より明らかに高性能な防弾ベストでも、貫通を防げるが衝撃は軽減するしか出来ない構造上、数ヶ所背中を軽く打撲したらしい。
運良く脊椎や神経は大丈夫だったから普通の生活は出来る。
でも内臓に若干のダメージがあるので、今後の食事とかは注意するようにだって。
ただでさえ常人より少ない食事量だから、どうやって栄養を取ろうかなぁ。
本格的にタブレットとかサプリでも入れようかな・・・・・
地味に大きな問題について考えている時、病室のドアがガラガラと音を立てて開かれる。
私は音の発生源であるドアの方を振り返る。
キンジ 「大和、怪我は大丈夫か?」
アリア 「・・・・・」
ドアの向こうからキンジと、俯いたままのアリアが入ってきた。
すると二人の雰囲気に違和感を感じ取った。
んー?キンジとアリアの仲がなんかこう、とても雰囲気が悪く感じる。
大和 「少々の打撲で済んだから問題ないよ。」
キンジ 「全く、心配掛けないでくれ。俺達の心臓に悪ぃからよ。」
キンジは私が無事と分かり、肩の荷が降ろす。
そしてキンジは次に、鋭い視線へ切り替わってアリアを睨み付ける。
キンジ 「───何か言う事あるだろ・・・?」
キンジの声はドスの聞いた声をしていて、確実に心から怒っているのが分かる。
一方アリアは身体がビクッと震わす。
アリア 「 ンタ はも タシの ゃな わ。あ は勝 して。」
俯いたまま口をパクパクさせるアリア。
何かを話しているのは分かるけど、声の音量が低くてよく聞こえない。
キンジ 「なんだ、聞こえないぞ。はっきり言え。」
キンジに言われてアリアがゆっくり顔を上げる。
アリアは私に向き直ると、予想外の言葉を叫んだ。
アリア 「アンタ達はもうアタシのドレイじゃないわ!後は勝手にしてっ!!」
これには流石にポカーンと呆然してしまう。
感謝は言われないとは思っていたよ。
でもこれは流石に予想外。
以上の台詞を叫んだアリアは、クルッと回って病室を出ていこうとする。
キンジ 「おいアリアッ!!」
同じく呆然としていたキンジが、さっさと出て行こうとするアリアに向かって怒気を含んだ声で叫ぶ。
考えてみればキンジが怒るのも当たり前。
キンジとしたら無理矢理事件に巻き込まれ、元パートナーを怪我させられた上、謝らずに去って行こうとするのだから。
キンジ 「それがミスを庇って貰った恩人に対しての言葉かよ!」
アリア 「そうよ。だから後は勝手にしなさい。」
キンジ 「ふざけんなよお前!お前のせいで大和が怪我したんだぞ!感謝の一つすら言えないのか!!」
アリア 「うるさいうるさーい!!アタシ達には期待していたのに・・・アタシの探していた人は───アンタ達じゃなかったんだわ!」
アリアは一通り発言して病室を飛び出し、アリアの廊下を駆ける足音が部屋まで届く。
キンジ 「待てよアリアっ!!」
大和 「キンジ待って!」
アリアを追おうとするキンジを急いで止める。
はぁ、本当に手間のかかる子だよね。
少し素直になったら皆と良い関係を築けそうなのに。
キンジ 「なんで止めるんだよ・・・・・」
誰から見ても分かる位不満そうにキンジは私へ振り向く。
大和 「いいの別に、気にしないから。」
冷静に口にした私の言葉にキンジが大きな溜息をつく。
キンジ 「はぁー、お前は少し人に甘過ぎるぞ。それにだ、致し方ない時はしょうがないとは言え、自ら盾になりに行くのは感心しないぞ。こっちの事も考えてくれよ。」
大和 「ごめんね。可能な限りは何とかするけど、やっぱり難しいかな。」
キンジ 「そもそも、なんで自ら盾になりに行くんだ?」
私の言葉に疑問を持ったキンジが聞いてくる。
どうして自ら盾になりに行く・・・か。
なんでかと言われると、「 」を持っていないからかな。
キンジ 「・・・すまん。難しいようだったら言わなくてもいい。」
どうも私の雰囲気を察してか、キンジが気を使わせてしまったみたい。
正直あまり言うべきじゃない内容。でも、少しだけなら良いかな?
大和 「私は悲しい事は嫌。キンジもそうでしょ?」
キンジ 「そんなの当たり前だろ。」
大和 「人は人を失うと悲しくなる。だから私が盾になって少しでも無くしたいから、かな。」
キンジ 「だがな。それでお前が居なくなったら意味がないぞ。」
私はここで首を左右に振る。
大和 「私は私をそう思うから自ら盾になる。知らない、分からない、だからこそ私はそう動いてしまう。まぁ、手の届く範囲だけだけどね。」
キンジ 「───それは、どう言うことだ?」
キンジは私の言っている言葉の真意が分からないご様子のキンジ。
答えてもいいけど、教えるにはもうちょっと先になるかな。
大和 「さぁー、どうだろう。この話はまた今度。」
私はわざとらしく話を切る。
キンジは相変わらず?が浮かべ、頭を捻る。
大和 「それより私の頼みをちょっと聞いてくれる?」
キンジ 「頼み?頼みってなんだ?」
大和 「一つは、私の部屋からSVUとノートパソコン取ってきてくれる?」
キンジ 「一つはって、いくつ頼む気だよ。それで他には?」
大和 「日曜日の昼過ぎに、ある美容院の付近を歩いて欲しいの。これ、その美容院が書いている紙。」
その美容院の名前が載ってある紙をキンジに手渡す。
私の真偽が分からず、キンジは疑問符が浮かびつつも受け取る。
えっと、最後に一番大事なやつはっと。
確か内側の胸ポケットに、あったあった。
そして一番渡したかった物かつ重要な代物を。
大和 「最後にこれ。」
キンジ 「これは、御札か?」
私が渡したのは二枚の御札。
御札はそれぞれ赤色と緑色をしている。
大和 「出来るだけ無くさないように武偵手帳にでも入れておいて。」
キンジ 「それはいいけどよ。何の札だ?御守りか?」
大和 「簡単に言えば薬みたいなものかな?」
キンジ 「薬って、札がか?」
キンジは半信半疑といった感じ。
うん、そりゃあそうよね。
いきなり御札を渡されて、薬とか言われても困惑するに決まっているもんね。
大和 「もしアリアか他の人が倒れたら、緑から赤の順番で心臓の上の皮膚に貼って。緑から赤だよ、ここ間違えないでね。」
キンジ 「うーん。まぁ一応は持っておくぞ。」
大和 「あと質問を一つ。864年───これの意味をキンジは知っていたりする?」
キンジ 「なんだそれ?俺は知らないが、大事な年かなんかか?」
文字通りキンジはまったく知らないと言う。
嘘は───ついてなさそう。
大和 「知らないなら気にしないで。それより頼んだよ。」
キンジ 「お、おう。じゃあ行ってくる。」
こうしてキンジは病室を出ていく。
病室から私以外誰もいなくなると、私は起こしていた上半身をベッドへ倒す。
そこで私は、色々な出来事を引き起こした武偵殺しについて考える。
今のところ、武偵殺しが起こしたであろう事件はキンジのチャリジャック、私達の居たバスジャック、過去に起こったらしいバイクジャックとカージャック。
時系列的にはバイク、車、自転車、バスの順番で引き起こされた。
でもここでの疑問が一つ。
大和 「バイクと車と一旦大きくなった所で、急に自転車なんかをジャックしたんだろう?」
武偵や警察に追われて怖じ気づいたから?
いや、あれだけ計画的ならむしろもっと大きな標的を選ぶはず。
というか、車と自転車の事件の間隔がかなり空きすぎているんだよね。
別の事件と思われる程に。
考える要因は、一つ目に犯人に何かしらの原因があったから、二つ目はこれも計画の内だから、三つ目は可能性事件かな。
可能性事件とは事故として処理されているけど、隠蔽工作の可能性がある事件の意味。
一つ目を判断するにはまだ情報が足りないからスルー。
二つ目は今までの傾向的に武偵殺しの性格とは違うかな?
三つ目は・・・・どうだろう?
可能性事件だとするなら、去年に起こった大きな事故を知っている限り思い出す。
車より大きくなると、電車や飛行機、でも去年はそんな規模の事件や事故は無かった。
電車や飛行機より大きくなる乗り物って言ったらそれこそ船くらいしか。
んっ?・・・船?
その時、去年起こったある船の事故が浮かんだ。
大和 「浦賀沖海難事故・・・・・」
キンジのお兄さんが殉職したあの浦賀沖海難事故。
武偵殺しは文字通り武偵を殺す犯人。
時期的にも、事件の内容や大きさを考えても丁度いい。
もしこの事件が武偵殺しの仕業なら、キンジのお兄さんは船からの脱出を妨害された、もしくは戦闘になったのかも。
なら今回の武偵殺しの目的は何?
あの武偵殺しの事だし、お金や事件の甚大さじゃなく、多分優秀な武偵を狙っている。
特に自分を熱心に追っている武偵を───狙う・・・?
ひょっとして、アリア?
アリアは優秀な武偵で、前から武偵殺しを一生懸命探している様子だった。
それに殆どの武偵殺しの事件に何かしらの関わっている。
だとするなら、武偵殺しの目標は多分アリアな気が。
んーまだ合ってるかは分からないけど、私なりの推理でここまで出せた。
そう言えば、事件の中心的に巻き込まれたキンジはどこまで知っているのかな?
864年を知らないなら、そんなに情報を持ってなさそうだよね。
一応そう予想して頼んでいたからいいけど───ってあれ、おかしいな?そもそもなんでキンジは知らないんだろう?
確かこの前レキの言う通りなら、キンジが調査を依頼したのは理子だったよね?
理子はAランク並みの諜報能力があるから、私より細かく詳しく情報を知っているよね。
ちゃんとした依頼で受けていたから、得た情報は全て提示しなきゃいけない。
じゃないと武偵とって命綱の信用を失う。
だとすると・・・理子はキンジに対して隠したって意味になるかも知れない。
何の為に?
まぁでも、本当に知らなかっただけかも知れない。
でももしわざと隠したとした仮定するなら、もしかして理子は、武偵殺しと何かしらの繋がりがある・・・かも?
うーん話が飛躍し過ぎだし、理子は友人の一人だから、けど。
────ねぇ理子。貴方じゃ、違うよね・・・・・?
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
日曜日の昼頃、俺は学園島の片隅にある美容院の付近にいた。
ここ、だよな?大和に指示された美容院は?
外から一見すると、若干高級そうな普通の美容院で特に怪しそうな所は見られない。
ここに一体何があるんだ?
俺は外から美容院内を覗き込む。
外見通り、中もそれなりに高そうな内装をしていて、立派なシャンデリアとかが吊るされていた。
人の方だと美容師達が客の髪を切ったり、パーマをかける良く分からない機械を使ったりしている位───
キンジ 「うげっ!」
一応店内を更によく見渡した結果、端の席に座って髪を弄って貰っていた予想もしない人物を発見してしまう。
完全にプライベート状態の、私服姿のアリアが座っていた。
だが幸いにもアリアはこっちに気がついていないようだ。
大和の奴め、アリアが今日ここを利用すると知って俺を送ってきただろ。
今の仲で俺達を会わせるなんて、どういう意図があるんだよ。
さっさと仲良くなれとでも言う気なのか?
そんな事を考えている時、会計を終えてアリアが美容院を外に出そうになる。
俺は慌てて近くの木の裏へ隠れ、アリアを観察する。
美容院を出たアリアは、どうもモノレールの駅に向かっている感じだな。
今一真意が読めないが、取り敢えずアリアの後を尾け始める。
アリアはモノレールを新橋に移動、電車で神田を経由して新宿駅で降りた後、新宿駅西口から高層ビル街の方へとゆっくり歩く。
この高層ビル街の方はオフィスビル位しか無かった気がするが、何かの話し合いか?
だったらわざわざ私服じゃなく制服姿でもいいはずだよな。
おっアリアが立ち止まった・・・って、ここは!
アリアの立ち止まった先の建物にちょっとばかり驚く。
美容院でキッチリ整ったアリアの着いた先は、新宿にある新宿警察署だ。
こんな所に何の用事があるんだ?
アリア 「下手な尾行よ。もう少し腕を上げなさい。」
アリアは振り返って俺の隠れている所に視線を合わせる。
やっぱりか、半分想像ついていたぞ。
俺の尾行程度、アリアの腕だと簡単バレるとな。
キンジ 「・・・お前、前に言っていたよな。質問せず、武偵なら自分で調べなさいって。」
俺は無意識的に嘘をつく。
キンジ 「て言うか、気づいていたならもっと早く言わなかったんだ?」
アリアとしても俺にここを知られたくはないだろう。
だったら途中で引き返させれば簡単に解決する。
アリア 「迷っていたのよ、どうするべきか。アンタも一応武偵殺しの被害者だから。」
キンジ 「何か関係あるのか?」
アリア 「大有りよ。それにアンタの事だから今更帰ったりしないで───キンジ、アンタ今日一人?」
今まで呆れた目線や迷った反応をしていたアリアだったが、急に険しい顔になって周りを警戒する。
キンジ 「俺一人だが、どうした?」
アリア 「アンタ。誰かに尾行されてないわよね?」
キンジ 「何!?」
アリアの台詞を聞いた瞬間、俺は急いで周囲を確認する。
特に何も視線を感じなかったが、腕の良い奴なら普段の俺じゃあ気づけない。
しかし確認したところで、辺りは様々はビジネスマン達の人通りが多く、大きな高層ビルが何十も建っている。
もし尾行じゃなくスコープや双眼鏡などで監視されていたら、まず何処にいるか見つけるのは不可能だ。
アリア 「仕方ないわ。早いうちに入るわよ。」
キンジ 「あぁ。」
アリアは俺を連れて警察署に入っていく。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲
大和 「入っていったね。」
私は街を見おろすような位置にある、高いビルの屋上に、SVUを構えてスコープを覗いていた。
スコープの見える先は新宿警察署。
予想通りアリアとキンジがちゃんと来るか不安だったけど、ちゃんと来た様子でよかったよかった。
ただ、アリアが一瞬私の方を見たのは流石に驚いたけどね。
でもすぐに視線を別の方向に逸らしたからバレてはないよね?
しかしちょっとでも情報をあげようとキンジをアリアに近づけたけど、正直やり過ぎた感が・・・
あとでキンジに謝っておかないと───あっ。
そこである出来事を思い出す。
そういえば、もう一つキンジに謝らないといけない事があったね。
でも、結局それもまだ先になっちゃいそう。
にしても・・・・・
大和 「はぁ~。」
正直に言ってアリアとキンジ。
二人が持っているものが私から見たら羨ましいよ。
いや、同じものを他の人も持っているよ。
白雪、レキ、武藤に不知火etc、でも私は持っていないもの。
人によってはいらないと切り捨てるもの。
でも隣の芝生は青いって事よね。
私はSVUをケースに片付け、髪が強い風でなびく中、ビルの屋上を後にした。
アンデッド・モンスター:最初は人だと思った。たが本当は違った。あれは死んだ人間だ、死んだ人間が動いている!