暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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16:護衛

 キンジの部屋が破壊されてから暫く経ったある日。

 アリアと白雪は互いに若干行動が変化したね。 

 アリアの方は、キンジを見たら顔を赤くしたり硬直したりしていた。

 しかし相手が私の時に至っては、発見された瞬間即座に逃げ出すようになった。

 まぁ・・・あの後本当に三時間程空けて部屋に戻ったら、アリアが完全にオーバーヒートして虚ろな目をしちゃってね。

 私が急ぎで手枷と足枷を外すと、フラフラしながら一言の言葉を発ぜずに部屋を出て行っちゃった。

 あの時は流石にやり過ぎちゃったと反省する。

 しっかしアリアの凄い所は、なんだかんだ言って時間が経過すればいつも通りに戻っている事。

 いつもの暴力的なアリアに戻るのも色々参ったものだけど、手がつけられなくなったらこのネタを使えばきっと止まるだろうし、結果的には良かった・・・のかな?

 そして白雪の方は───

 なんて考えつつ武偵高内を歩いている時。

 

大和 「あれ?」

 

 ふと視界に入ってきた掲示板に、見覚えのある名前が見えた気がした。

 少し気になり掲示板に近づく。

 何枚か張られている紙の中で、生徒呼び出し欄に私の名前が書いてあった。

 別に変な行動はしてないはずだし、なんだろう?

 大きなミスとか目立つものも特に思い浮かばない。

 にしても嫌だなぁ、教務科に行くのは。

 教務科は、武偵高の中では強襲科よりも面倒な場所とされていて、多方面のスペシャリストが集まり生徒に指導する。要は先生だね。

 ただし中には・・・間違えた。

 大半が精神面に問題を抱えているせいで、別の意味で危険地帯になっている。

 更に呼び出しの先生を確認して気を落とす。

 しかも呼び出しは綴先生かぁー。

 拷問が得意で情報網もかなり広い先生。

 これならまだ蘭豹先生のマシなんだけどなぁ~、しょうがないか。

 びっくりする位モチベーションが低下した状態で、綴先生の個室へ足を運ぶ。

 でも綴先生の個室の前に到着してドアを開ける前に、私の存在感知に何かが引っ掛かった。

 これは、天井裏のダクト・・・空気の乱れから、人数は二人?

 まさか教務科に潜入してくる命知らずがいるとは思わなかったよ。

 バレたら地獄のような扱いされるのにね。

 私はそんな事を考えながら、ドアをノックして室内に入る。

 中には、黒のレインコートを羽織った綴先生が煙草を吸いつつ椅子に座って脚を組んでいた。

 そして先生に加え、向かいの椅子には白雪が俯いたまま座っている。

 私は白雪に対して意外感を持つ。

 白雪が呼び出されるなんて珍しいね。

 

綴先生 「おー、ちょうどいいところに来たなぁ。」

大和 「私に何かご用件ですか?」

 

 室内に入った私は、白雪の隣に腰を降ろし綴先生に質問する。

 

綴先生 「実はなぁ~、宮川に星伽の護衛して貰いたいんだぁ。」

白雪 「えっ!」

 

 私よりも隣の白雪が驚きの表情を浮かべる。

 綴先生の言う護衛をしろ。

 当たり前だけど、護衛対象に実害を与える敵がいる時に依頼されるもの。

 つまり白雪を狙う恐れのある敵が存在するという意味。

 

大和 「白雪の護衛ですか。相手は?」

綴先生 「あー・・・えっと、あれだあれ・・魔剣や。」

大和 「魔剣。」

 

 魔剣は・・・聞いた話だと確か、超偵だけを狙う誘拐犯だっけ?

 と言っても、誰も姿を見た事がないからデマとか言われていたはず。

 隣に座る白雪に横目でチラッと見る。

 白雪も超偵だから、一応誘拐犯が狙う範囲にも入っているよね。

 

大和 「ちなみに期間は?」

綴先生 「アドシアードが終わるまでして貰ってたらえぇ。それ以降は多分なんとかなるやろ。」

 

 アドシアード期間中は外部の人が沢山入ってくるから、初対面の人や民間人も多く、どさくさ紛れて誘拐するには最適。

 逆にそれさえ越えてしまえば、ランクは様々と言え、武偵が何百人もいる場所に攻めてくる者はいない・・・よね?

 白雪の安全の為にこの依頼は受ける気持ちで行くつもり、ただ今後の用に一応拒否した時の綴先生の対応も確認しておく。

 

大和 「もし断ったらどうなるのでしょうか?」

綴先生 「そうやな~・・・宮川大和───装備はFN Five-seveN、刀に小太刀、中遠距離用のOTs-03。近中遠距離どれでも対応でき、ナイフ・長物を使用した防御は目を見張るものがある。性格面は優しく穏やか、他人思いで能力も含めて周りからの信頼が厚いが、仲間の為なら自らを犠牲にする傾向あり。二つ名は絶対守護。」

 

 いきなり私の情報を羅列して喋り出した綴先生。

 しかしねぇ、流石教務科と言わざる負えない情報量。

 一方的に情報を取られるのはあまりよろしくない。

 今後は少し気をつけないといけな────

 

綴先生 「そして、推定G3の超能力者。実際はまだまだ上だろうなぁ?」

 

 綴先生が疑惑を含んだ悪どい笑顔で、私の反応を観察する視線を向けてくる。

 うーん、やっぱりハイジャックの時のが流れているよねぇー。

 

白雪 「えっ!そうだったの?」

 

 ハイジャック時に別の所へ行っていた白雪は、どうも初耳だったらしい。

 

大和 「さぁ、どうでしょうか?」

 

 私が適当にはぐらかしたら、綴先生は何かを思い出したみたいに頭を上げる。

 

綴先生 「そう言えば思い出したなぁ。どこだっけ、超能力捜査研究所からだったけなぁ・・・宮川の超能力を調べたいって要請が来ていた気がするぞぉ~?」

 

 綴先生が口元がニヤけながら、かなり面倒な事実を伝えられる。

 勿論綴先生の方も、こちらの心境がわかって言ってきているのだろうけど、調べられるのは色々と困る。

 何せ正確に調べられたら発狂者や自殺者が大量に続出するだろうから、とんでもない被害が出るんだよ。

 

大和 「わかりました。受けさせていただきます。」

綴先生 「よしよし、んじゃ頼むぞー。」

 

 快く承諾してくれると知っていた綴先生はそう言う。

 そして次に口を開いたのは護衛対象の白雪だった。

 

白雪 「あの、大和。迷惑じゃないの?」

 

 白雪は心配そうな視線で私の顔を覗き込む。

 その瞳にはこんな事に巻き込んでしまったと言った、申し訳ない感情が混じっている。

 

大和 「別にこれは依頼だから問題ないよ。ところで、私以外の武偵が追加で参加させるのは大丈夫ですか?」

綴 「そこら辺は自由にしてかまへんがぁー、誰を増やす気や?」

大和 「それは、そこにいる鼠さんに聞いてからじゃないと───」

 

 そう言い、私は天井にある通風口のカバーに視線を上げる。

 すると────

 

 ガシャァン!

 

 通風口のカバーが吹き飛び、ダクトからずっと覗き見ていた鼠さんが降り立つ。

 突然の事で白雪も綴先生も目を丸くする。

 そして降り立った鼠さんはこちら側を向いて宣言した。

 

アリア 「その依頼、私達も参加させて貰うわ!」

 

 アリアが叫んだ途端、その上からダクトから滑り落ちたであろうキンジがアリアに乗し掛かる。

 

キンジ 「うわぁ!?」

アリア 「むふぅつ!!」

 

 そしてそのままキンジが乗し掛かった事で、下敷きなったアリアがペチャンコに潰れる。

 

アリア 「キ、キンジッ!重いからさっさと退きな───ぐぇぇ!?」

 

 ダクトから落下してきたキンジを怒鳴ろうとしたら、二人共綴先生に襟首を掴まれて、猫みたいに持ち上げられる。

 綴先生は持ち上げた二人の顔をじっと確認して、誰か思い出す。

 

綴先生 「んー?なんだぁ、あぁこの間のハイジャックカップルじゃんか。」

アリア 「このー!放しなさいよー!」

 

 嫌がる猫みたいにアリアは手足をバタつかせるけど、全く綴先生には面白い位効いていない。

 

綴先生 「えーとぉこのピンクのが、神崎・H・アリア。M1911コルト・ガバメントに小太刀の双剣双銃。欧州で活躍していたSランクの武偵。でもアンタの功績は全部ロンドン武偵局が自らの手柄にしてたねぇ。相変わらず協調性の欠片の無いからだよ。」

アリア 「貴族は自らの手柄を自慢しないものなの!その位くれてやるわ!」

綴 「あらら、やっぱり平民の方がゆっくりのんびり出来るから良かったぁー。あーそう言えば、アンタ確か泳───」

アリア 「わぁー!!わぁー!!」

 

 綴先生が何か言おうとしたら、アリアが顔真っ赤にさせて声を全力で張り上げ妨害する。

 でも悲しいかな。

 私には綴先生の話した内容が、存在感知で解っちゃうんだよ。

 

アリア 「ふふっ大丈夫よ!浮き輪さえあれば何の問題も無いもの!」

 

 というか勝手に自爆して大公開しているし。

 武偵は常に冷静で居なきゃいけないんじゃなかったっけ、アリア?

 こうしてアリアが盛大な自爆をした後、綴先生はキンジに視線を移す。

 

綴 「それで、こいつがぁ。遠山キンジ君だっけ?」

キンジ 「あのー・・・俺は来る気無かったんですが、アリアが勝手に突っ込みましてね。」

 

 キンジな弁解を聞こえない風の綴先生は、キンジの情報を口にする。

 

綴 「性格は非社交的。他人、特に女性に対し距離を置く傾向が強い。しかし強襲科では元Sランクだった事もあり、ある程度の人望がある模様。解決事件は青海の猫探しとANA600便のハイジャック。解決事件の触れ幅が随分大きいねぇ?」

キンジ 「と言われても、どうしようもないですよ。」

綴 「装備はバタフライナイフと、単発、三点バースト、フルオートが可能なベレッタM92Fキンジモデル、だっけ?」

キンジ 「いえいえ、今は米軍払い下げのベレッタを使って────」

綴 「確か、装備科に改造の予約入れていただろ?」

 

 改造の予約を入れているのが完全にバレてるという風なキンジ。

 やがて二人を降ろした綴先生は、口にくわえて吸っていた煙草を持って、キンジの手の甲に押し付ける。

 

キンジ 「熱っ!!」

 

 煙草を押し付けられたキンジは、熱で反射で手を引く。

 煙草が当たったのは一瞬だから跡は付かないけど、生徒に煙草押し付けるのはどうなの?

 キンジの反応に綴先生が面白そうに笑った後、二人に聞く。

 

綴 「ところでよぉ。依頼に参加するって言ったが、どういう意味だぁ?」

アリア 「そのまんまよ。私達も白雪の護衛に参加するわ。」

綴 「おー良かったな星伽。ボディーガードが増えて先生安心だー。」

白雪 「嫌です!アリアなんかと一緒に居るなんて、絶対に嫌です!!護衛は大和だけで十分です!」

 

 前に喧嘩した影響で白雪はアリアの護衛を強く拒否する。

 まぁなんというか、こうなるって概ね予想は付いていたよ。

 一方アリアも想像していた感じで、無理矢理でも護衛の許可を手に入れようとする。

 

アリア 「アンタ!このアタシを護衛に付けないと、コイツのこめかみ撃つわよ!!」

 

 アリアが隣に立ってたキンジのこめかみに合わせてガバメントを動かす。

 

白雪 「キ、キンちゃん!」

 

 白雪は予想外の出来事に思わず立ち上がる。

 なんて言うか、思ったより随分と派手な事する。

 アリアの事だから本当は撃ったりしない・・・撃たないでよ?

 あくまで脅しに留まるとしても、白雪相手なら十分な効果が認められる。

 その頃キンジは瞬き信号で助けてって私に意思表示を送ってくる。

 でも悲しい事に、この状況で私が介入すると事態が悪化する可能性がある。

 アリアも間違ってトリガーを弾く恐れがあるから、意識を集中しておく。

 結果的には綴先生が悪い意味でこっそり笑い、白雪に判断を仰いで争いが止む事に。

 

綴 「なぁーるほど、これはこれは面白くなって来たじゃん。星伽はどうするのぉ?」

白雪 「キンちゃん・・・わ、分かったよ。アリア、護衛に含めます。でも条件があります!キンちゃんも一緒に護衛に参加して!私もキンちゃんと一緒に居たいの!」

 

 白雪は複雑に絡み合った感情の中、涙目でそう叫んだ。

 そして白雪の台詞を聞いた途端、キンジの口から白い何かが出ていった。




 幸運な不幸:馬に似た顔をし、像より大きな体をした生物に何故か乗る事が出来た。しかし、この謎の生物は、一体何処に行────
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