暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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18:ねぇ、貴方は白雪?

 皆が食事を終えた少し後、私は男子寮近くのコンビニで買い物をしてキンジの部屋に戻る。

 レジ袋を持ったまま玄関からリビングへ歩くと、キンジとアリアが顔の掴み合いをしていた。

 一瞬なんだろう?と思ったけど、二人がテレビの前に居る事。

 そしてすぐ傍にテレビのリモコンが置いてあるのを発見して、多分見るチャンネルの奪い合いでも起こってるのだろうな~と予想する。

 これ自体は特に放置してて問題はなさそうなので、私は近くのソファーに座り、ポケットに入れてあった音楽プレイヤーにイヤホンを差して音楽を聴く。

 そして三分位の曲が五曲目になる程時間が経ったのに、未だに二人は正面から掴み合いをしている。

 流石にそろそろ仲介に入ろうかなと悩んだタイミングで、白雪がトランプのようなカードを手に持ってリビングに来る。

 私はイヤホンを外して視線をカードに合わせ言った。

 

大和 「何それ?」

白雪 「これはえっとね。あっキンちゃん、今は大丈夫?」

キンジ 「おっ、どうした?」

 

 白雪の声で掴み合いを一旦止めて、キンジは白雪の方に振り返る。

 

白雪 「こっこれ、巫女占札って言うの。」

キンジ 「なんだ?占いみたいなものか?」

白雪 「うん、そうだよ。キンちゃん、最近色々気にしてたみたいだから、どうかな?」

 

 確か超能力者の占いは当たり易いと聞いた覚えがある。

 これって、簡単に言えば卜占みたいなものなのかな?

 

キンジ 「まぁ、そうだな。ここは一つやってもらうか。」

白雪 「うん!」

 

 白雪は大変ご機嫌でカードを準備していると、テレビの前に居たアリアが占いという単語に誘われ、近くまで寄って眺める。

 

アリア 「なになにー、占い?」

大和 「そうだよ。」

 

 アリアの疑問を白雪が返すとは思えないので、空気が悪くならないよう私が何気なく返答する。

 

白雪 「キンちゃん何を占う?いっぱいあるよ。仕事運と恋愛運とか、金運に結婚相手に恋占い、沢山あるよ。」

 

 うーん、白雪の出した例に恋愛関係が多いのは偶然、だといいけど。

 キンジは腕を組み、何を占うか考える。

 

キンジ 「そうだなぁー、俺の先がどうなるか頼む。期間は・・・今から数年以内程で。」

白雪 「・・・チッ。」

 

 また一瞬小さく白雪が舌打ちする。

 でもやっぱり満面の笑顔で変わってカードを星の形に広げる。

 そして五枚のカードを星の頂点に置き、典型的な五芒星の形を作る。

 一応それで準備が整ったご様子で、白雪が一枚一枚表にする。

 そして全部を表にした時、白雪の異変を感じ取った。

 ほんの僅かな異変だよ。

 でも、白雪は大きな衝撃を受けた時みたいに脈拍と呼吸が乱れた。

 

アリア 「それでどうだったのよ!」

 

 一方白雪の異変に全くと言っていいほど気づいてないアリアは、結果を教えろと急かす。

 

白雪 「だ、大丈夫だよ。全体的にいい感じ、だけど細かい所はわからないかな。」

キンジ 「出来ればその細かい所を知りたかったところだが、占いならこんなもんだよな。」

 

 私から見る白雪はキンジに対して一生懸命笑顔を繕っている感じがする。

 このパターンは多分嘘をついていると思う。

 でもあのキンジ好きな白雪がキンジ相手に嘘をつくなんて・・・一体どんな結果が出たのやら。

 言える事は一つ。キンジ、ドンマイ。

 

アリア 「次はアタシよ!」

 

 そう叫んでアリアがキンジの上に思いっきり乗し掛かる

 

アリア 「何か必要なものってあるの?アタシの星座は乙女座よ!」

白雪 「へぇーそうなんだー。」

 

 アリアが話し掛けて来たので、少し不満げな白雪は淡々と返事する。

 それにイラッとして顔を歪ませるアリアだったけど、内心占いをして欲しいのか、まだ大人しい。

 対する白雪はカードを一枚だけひっくり返すと。

 

白雪 「総運、最悪の一言です。」

 

 そう吐き捨てた白雪は巫女占札を回収してさっさと片付け始める。

 

アリア 「ちょっとー!アンタ巫女なんだからちゃんと占いなさいよ!」

 

 明らかに雑に終わらせた白雪にアリアが怒る。

 一応一枚だけは捲ったし、最低限占ったと思うよ・・・多分。

 

白雪 「ちゃんと占ったよ。それとも何?文句あるの?」

アリア 「当たり前でしょ!文句しかないわよッ!!」

 

 何度目か忘れたくなる程、二人の間にバチバチと火花が飛び交う。

 更に時間が経つにつれて火花が弱くなるどころか強くなり、一気即発に近づいていく。

 まるで二人の様子は、まるでキューバ危機を迎えた冷戦の大国みたい。

 

キンジ 「まったくなぁ!なんでお前らはそんなしょうもない事で喧嘩になるんだ!!」

 

 二人の間にキンジが入って、無理矢理二人を引き離す。

 

アリア 「もういいわ!」

 

 アリアは強く声を張り上げ自室(キンジの寝室)に閉じ籠ってしまう。

 白雪の方も大変ご機嫌斜めで、文字通り喧嘩した子ども同士の状態になっているよ。

 

白雪 「・・・悪口はあまり言いたくないのだけど、アリアはお人形さんみたいで可愛いと思うよ。でもすごく生意気だよね。キンちゃんにもたっくさん迷惑掛けているし、みんなは好きでも私は大嫌いっ!」

 

 私は白雪の言葉に軽く驚きを覚える。

 白雪は誰にでも丁寧で優しくする。

 そして周りからそんなに尊敬される子の口から、明確な悪口が出てくるなんてかなり珍しい。

 しかしキンジは白雪の悪口に別の疑問を持ったらしく、一つ質問をした。

 

キンジ 「なぁ白雪。お前、本当にアリアの事が嫌いなのか?」

白雪 「えっ?」

 

 キンジの話を聞いて、白雪自身がなんでと突飛な声を出す。

 するとキンジは言葉に表現するのが難しそうにしながらも、少しずつ口にしていく。

 

キンジ 「ほら、お前って、自分が嫌な事でも拒否しないでやるだろ。だからあまり本音を言わない気がしてな。その、なんて言えばいいのかよくわからないが・・・アリアに対してだけは確実に本音を言えている気がするんだ。」

白雪 「そう・・・なのかな?」

 

 今一困惑したままの白雪に、助け舟になるかは分からないけど、私からある問題を提示してみた。

 

大和 「んーそうだね。白雪、好きの反対はなんだと思う?」

白雪 「そんなの・・嫌い、じゃないの・・・・・?」

大和 「残念、不正解です。」

 

 やっぱりその解答で来た。

 私の予想通りの回答をした白雪は何が間違っているのと首をかしげる。

 

大和 「好きは相手に感心があるかは好きと思う。だから好きの反対は感心が無い、つまり無関心。でも嫌いって事は、その人に感心があるから嫌いと感じるわけ。」

白雪 「つまり、どういう事?」

大和「良くも悪くもその人に感心があるから嫌いと思う。白雪もどこかアリアが気になっているの所があるんじゃないの?」

白雪 「どこか気になる所?」

 

 一通り伝えたらキンジへ視線を移す。

 すると、視線で察したキンジが白雪に対して口を開く。

 

キンジ 「あいつは自分勝手でボロクソに言ってくるが、なんだかんだ戦いとかでは頼れるヤツだからな。白雪もそういう場所が気になっているのじゃないか?」

白雪 「・・・・ごめんなさい。やっぱり分からない。」

 

 白雪の様子がさっきと大きく変化して、申し訳ないと言った感情が表に現れ始める。

 

大和 「別にこれから少しずつ気付いて行けばいいんじゃない?それに、私は白雪がキンジに固執する理由を知らないから強く言えないけど、様子から見て、一つはキンジが凄く大切と思っているからだと私は思うよ。だよね、キンジ?」

 

 キンジは照れくさそうに明後日の方に視線を反らす。

 顔を赤くしてるのを隠す位だったら、素直に言った方が楽だと思うよ。

 まぁキンジがそんな事を自然体で出来る訳ないよね。

 

大和 「まぁ、どちらにせよ。今分からない事を考えてもしょうがないよ。だからこの話は終わり。」

 

 暗い流れを変える為に、少し強引ながらも話を区切り終わらせる。

 

キンジ 「そうだな、終わらせるか。」

 

 キンジ側も同じようにタイミングを見計らっていたらしく、一緒に乗ってくれる。

 さて、話が終わってこれからどうしようかな?

 この話の後を一切考えていなかったよ。

 次に話す内容を思い浮かべていると、白雪が人差し指でほっぺを軽く掻きながら申し訳なさそうに話す。

 

白雪 「あはは・・また迷惑かけちゃった。だ、だから大和も巫女占札、やる?」

大和 「私を占うの?別に構わないよ。そうだねぇ~、範囲を決めても大丈夫?」

白雪 「うん、ある程度なら大丈夫。」

 

 うーん、金運とか恋愛は興味ないからそうねぇ。

 さっきキンジの言った内容が数年以内の出来事なら、私は逆で行こうかな。

 

大和 「じゃあ、ここ最近の起こるであろう大きな出来事を占ってみて。」

白雪 「やってみるね!」

 

 キンジと時と同じやり方でカードを置いて、五枚全部表にした結果。

 

白雪 「えっと、古い友人に会うかも?だって。」

大和 「古い友人?」

 

 古い友人という単語に私は疑問を抱いた。

 古い友人って言っても数年位の付き合いの友人は居ないし、なんだろう?

 一応占いも全部が当たる訳じゃないから、もしかしたら外れを引いたのかも知れないね。

 

大和 「どうやったら会えるの?」

白雪 「うんと、木と鯨と羊とお城に会えたらいいみたい。」

キンジ 「なんだそりゃ?」

 

 それぞれの関係性が無さすぎて逆に凄いと思う。

 生き物かと思えば城が混じっているし、地上のものかと思えば鯨があるし、本当になんだろう?

 

大和 「まぁ、そのうち意味が分かるといいね。」

 

 私を占った後の白雪が綺麗にカードを片付けている間に、白雪に聞こえないようキンジに話しかける。

 

大和 「これ、アリアに渡して。」

 

 私はコンビニで買った紙袋をキンジに手渡す。

 

キンジ 「何が入っているんだ?」

大和 「アリアの。ちゃんと夜食べれてないよね。中にももまんが入っているから、白雪にはバレないように。」

 

 中身を知ったキンジは良い意味でため息をついて、渡されたももまんから私に視線を移す。

 

キンジ 「お前はとことん優しくやつだよな。」

大和 「それはキンジもだと思うよ?」

 

 お互いにニヤっと笑い、私達の間で柔らかい雰囲気が流れる。

 

大和 「それじゃあ私は寮に戻るから。」

キンジ 「んっ帰るのか?」

大和 「ただでさえ女子が二人居るのに、更に増えたら大変じゃない?だから私は離れておこうかなって。ボディーガードは二人入れば十分でしょ。」

 

 それに先日調べた過去の行動を繋ぎ合わせたら、魔剣が策士なのは何となく判断できた。

 策士なら今はリスクが高くて突撃したりはしないはず。

 て言うか策士じゃなくても、余程の人物でない限りない確率が高いからね。

 

キンジ 「あぁ、本当に助かる。」

 

 キンジにとっては、危険な爆弾が一つ減って若干気分が楽になった感じだね。

 寮に帰る為、靴を履き替えて玄関のドアを開けたまま外からお休みと言った。

 

大和 「じゃあ、お休み~。」

キンジ 「おう、じゃあな。」

白雪 「あっお休みなさい!」

 

 ドアを閉め掛けた瞬間、遠くの方で白雪が慌てて挨拶をしたのが耳に届いてからドアが閉まる。

 

 

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 白雪が引っ越してから少し経った今も、魔剣からの襲撃や兆候は特になかった。

 お陰様で普段は比較的平和に過ごせている。

 でもアリアからしたらそんな事はないらしい。

 キンジから聞いたけど、アリアの警戒度は異常程だって。

 深夜に小さな物音を感じただけで銃を振り回したり、外に出れば常に周りを警戒しっぱなし。

 常時警戒する為に気を張っているお陰で、最近はストレスフルで不機嫌なのよねぇ。

 しかも事ある毎に私やキンジ、白雪に当たるせいで更に負のループに突入していく。

 私は別に構わないけど、他二人がどこまで堪えれるか心配だなぁってね。

 更に最近アリアは単独行動を目立つようになったら、三人ローテーションを二人で回さないといけなくなったりとか。

 まぁでも今週はキンジが護衛担当なので、ゆっくり自分の用事が終わらせれるよ。

 武偵高の放課後に平賀の所で弾の補充しに移動している最中、廊下の先で見覚えのある人影が近づいていく。

 

白雪 「あっ、大和!」

大和 「こんばんは、白雪。確か今の時間帯は・・・生徒会の仕事があるんだっけ?大変そうだね。」

白雪 「別に大丈夫だよ。私が生徒会長なんだからしっかりしないと。」

 

 白雪は小さくガッツポーズする。

 複数の部長兼任、生徒会長、SSRのお仕事。

 こうしてみると白雪って随分ハードスケジュールで行っているよね。

 

大和 「そっかぁ、頑張ってね。ところでキンジは?一緒に居ないの?」

白雪 「キンちゃんはお手洗いに行ってくるから、先に行ってって言われたの。」

大和 「あーなるほどね・・・・・」

 

 やっぱり白雪が気づいた様子は無いし、これは当たりを引いたね。

 でもこっちの準備がまだ整ってないから泳がしておこう。

 

白雪 「えーえっと、生徒会のお仕事あるから、急がないと。」

大和 「あっごめんね引き留めて。じゃあね。」

白雪 「うん、またね!」

 

 そう伝えて白雪は私の来た方向に走り出していく。

 一方私は遠く小さくなった白雪の後ろ姿を目で追う。

 そして白雪の姿が見えなくなった頃、私は一言小さく呟いた。

 

大和 「ねぇ、貴方は本当に白雪?」

 

 私の呟きは感とかに頼ったものではなく、少し調べれば十分な証拠は出てくるものだった。

 何せこの時間の今、生徒会で°会議°をしているはずの白雪がここにいるからね?




 無数の奉仕種族:砂に覆われた恐ろしい顔をしたコアラみたいな奴が少しづつ傍に寄ってくる。やめろ!来るなッ!!
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