普段から一万超える人凄くない?と。
ゴールデンウィークの連休が終わったら、東京武偵高の名物イベントの一つ、アドシアードが開催された。
アドシアードは国際的なイベントなので、競技の為に各国からいろんな人物が参上している。
つまりそれだけ人が多いと場所にもよるけど、名所の大通り並みの人々が密集してたりしている。
その頃、私はアドシアードの係として動いていた。
私の担当は各地の連絡役で、文字通り会場を行ったり来たりを繰り返している。
というか一応護衛も受けている訳だし、係の免除とかの配慮が欲しいなぁとか、電話とかの連絡じゃあ駄目なのかなと思う。
まぁ一緒に荷物も運ばされていたりするから、そのついでにって感じなのかな?
でも幸いだったのは担当が連絡役で良かったって事。
広範囲を移動する性質上、複数の細かい所まで目が届くからね。
私は移動中に今日動くと予想する魔剣の移動ルートを予測しながら作業を行う。
陸路は何かあった時にすぐ検問が張られるだろうね。
それに陸路なら至るところに監視カメラが設置されているので、足が掴まれる可能性があるから来ないかな?
空路はもはや論外、隠密以前に恐ろしく目立つ。
他にはぁ、東京武偵高は巨大な人工浮島の上に建っているから、一応海路も可能。
海岸線付近は警備も薄く安全そうだけど、行きはともかく帰りが大変。
水上は隠れる物が無いから発見されやすい。
それこそ、ヘリなどから広範囲を索敵されたら一瞬で捕捉されるからね。
潜水艦でもあれば話は変わるけど、こんな浅瀬を潜水艦が通るのも厳しい。
んー、ならやっぱり可能性が一番高いのは陸路かな?
なら門の周辺を多めに通って作業をしよう。
それに今日、私は白雪を囮にしてでも魔剣を捕まえるつもり。
明らかに護衛としてやったらいけないのは分かっているよ。
でももし魔剣を逃がしたら、また別の日に誘拐しに来る事が考えられる。
それも今回の問題点を改善して、以前より優秀な計画を立てて───
以上の事を考えてたら、ここで確実に仕留めて置くべきだと私は判断する。
それに一応魔剣は行動からして、後者の策士だと判明している。
だったら後は簡単、相手の嫌がる事をすればいい・・・・って、あれ?
人混みに紛れているけど、どう見ても十歳以下だよね?
その位の小さな少女が、建物の壁に付近で不安そうに辺りを見回していた。
私も周囲の状況を確認する。
どうにもその通路を通り過ぎる人達は、少女に気が付いた様子や探している風には見えない。
そこで私は少女の所へ人混みを掻き分けて傍まで行く。
大和 「どうしたのかな?」
私はしゃがんで少女と視線の高さを合わせてから、怖がらせないよう満面の笑顔で話し掛ける。
すると少女は、突然話し掛けた私に驚きながらも静かに口を開いた。
少女 「あのね・・・ママがいなくなっちゃったの。」
ママが居なくなったって事は迷子かな、この子。
さっき周りを見た時には母親らしき人物は見つからなかった。
それに直射日光に晒され続けるこの場所に居させる訳にもいかないから、何処か良い場所ないかな?
確か、通信科の方が臨時の迷子センターを担当していたはず。
大和 「一人で怖かったね。でも一緒にいるからもう大丈夫だよ。あっそうだ!私は大和って言うの、貴方の名前は何かな?」
愛 「えっと、愛っていうの!」
大和 「愛って名前なんだ。いい名前だね!それじゃあ一緒にママを探しに行こうね!」
愛 「うん!!」
私が右手を差し出すと、愛が左手を出して離れないよう手を繋ぐ。
そしてはぐれないよう人通りが比較的少ないルートを選びつつ迷子センターへ向かう。
するとその最中、愛が唐突に立ち止まる。
大和 「どこか痛い所でもある?」
愛 「あし・・つかれちゃった。」
愛の言葉に、武偵高がとんでもなく広い立地である事実を失念していた事に気が付いた。
そっかぁ、そう言えばここ広かったよね。
慣れですっかり忘れていたよ。
加えて人通りの少ない遠回りの道を選択していたのも失敗したかぁ。
今回の反省は愛の対応が終わってからにして、彼処でいいかな。
大和 「はい、おんぶするから乗ってくれるかな?」
道の端に寄ってから、愛の前で私がしゃがんでそう言う。
愛は私の背中に乗って、自分の両手を後ろに回して愛を支える。
その後、愛をおんぶしたまま迷子センターへ移動した。
数分掛けて到着した迷子センターでは、ゆとり先生や通信科の生徒達がそれぞれ迷子の世話や放送を行っていた。
するとゆとり先生が入り口に立つ私に気づいて、こっちに歩いて来る。
ゆとり先生 「あら、宮川さん。どうしました?」
大和 「この子、迷子みたいなんです。」
少し体を捻り、ゆとり先生に愛を見せる。
愛の姿に気が付いたゆとり先生が、両手を合掌のように手を合わせる。
ゆとり先生 「では中空知さんに放送を掛けるように言っておきます。親御さんが来るまでは宮川さんが見てて貰えますか。その子も宮川さんが気に入ったみたいですから♪」
ゆとり先生が何故か暖かい目で私を見つめる。
大和 「えっ?」
何だろうと首を回して背負う愛を確認すると、移動中に寝てしまっていたらしく、目を瞑っていた。
私は愛を起こさないように気を付けて、邪魔になり難い壁側の方に移動する。
それから愛の放送が流れて、少し経った頃───
女性 「あのー、迷子センターはここで良いでしょうか?」
ワンピース姿の若そうな女性が迷子センターに戸惑いながら入る。
その女性へ一番近くで作業していたゆとり先生が対応する。
ゆとり先生 「もしかして、愛ちゃんのお母様でしょうか?」
愛の母親 「あっ、はいそうです!」
ゆとり先生 「愛ちゃんはこちらです。」
ゆとり先生に案内された母親が私の方にゆっくり近づく。
すると母親が近付くのに反応したらしく、背中で起きる気配が直前まで無かった愛が瞼を上げる。
眠たそうに目を擦る愛の視界に母親の姿が写ると、眠気が吹き飛んだように声を出した。
愛 「ママだー!」
愛の母親 「愛ッ!!」
愛の叫び声に反応した母親は嬉しい悲鳴を発する。
私が背中から慎重に愛を降ろした途端、一目散に母親に走って行く。
愛の母親 「良かった。一人で怖くなかった?」
愛 「うんうん、やまとのおねえちゃんがいたからだいじょうぶだった!」
愛は私を指差す。
そして指を差し先に居た私へ、母親が目の前で深々とお辞儀をする。
愛の母親 「愛を助けて頂いて、ありがとうございます。」
大和 「いえいえ、放って置けなかっただけなので気にしないでください。それよりも、アドシアードを楽しんで行って下さい。」
愛の母親 「本当にありがとうございます!愛もちゃんとお姉さんにお礼を言うのよ。」
愛 「やまとのおねえちゃん、ありがと~!!」
私達と周りで会話の聞こえていた人達全員がニコッ笑い、柔らかい雰囲気が流れる。
一通り会話を済ませた後、母親と愛が迷子センターを出ていく。
外へ出ても愛が私へずっと手を振ってきたので、こっちも同じように手を振って返す。
ある程度距離が離れると、二人の親子の姿は人混みの中に消えしまった。
愛が見えなくなるまで外で手を振っていた私に、後ろからゆとり先生はクスクスと笑いながら私に話し掛ける。
ゆとり先生 「本当に宮川さんは、困った人を放って置けませんね。」
大和 「いえいえ。ただの自己満足、偽善ですよ。手の届かない人達までは手を差し出せません。」
ゆとり先生の言葉を私が軽く否定しても、ゆとり先生は笑顔を浮かべたまま答える。
ゆとり先生 「確かにそうかもしれませんが、やらない善よりやる偽善ですよ。ところで、今の時間帯は担当でしたよね?大丈夫ですか?」
大和 「間違いなく蘭豹先生にどやされます。でも愛を放置するよりは全然マシです。」
その急いで強襲科に通達や連絡を届けたら、予想通り蘭豹先生にどやされた後、また別の連絡を行いに走り回った。
私のシフト期間の午前が完了して、これからは自由行動になった。
しかし今は護衛もあるので残念ながら好き勝手には動き回れない。
うーん、今の内に逃亡ルートになりそうな場所をあらかた回って目星を付けておこうかな。
入り口にヘリポート、水路や海岸線などを索敵する。
そして魔剣の動きがあったのは、時間の経った五時頃になってからだった。
私の携帯に一つの周知メールが届いた。
周知メールの種類はケースD───アドシアード期間中の武偵高内の事件を意味する。
それでいてDの7は《ただし事件であるかは不明瞭で、連絡は一部の者のみに行く。保護対象者の身の安全の為、みだりに騒ぎ立ててはならない。武偵高もアドシアードを予定通り継続する。極秘裏に解決せよ。》という意味になる。
メールの内容は、《星伽白雪が失踪した可能性あり。なお、昼過ぎから連絡が取れなくなっているという報告が上がっている。》
メールを読み終えたら、すぐにキンジと連絡を取るため電話を繋ぐ。
でもキンジはどうやら他の誰かと電話中らしい。
電話中って事は、キンジもメールに気づいているね。
なら私もやるべき事をするかな。
魔剣が侵入した箇所は一応目星は付けてある。
複数の目星した箇所で可能性が一番高いのは、第九排水溝からだと予想する。
あそこだけ海水の流れが詰まった感じになってたし、蓋に細工をした跡があった。
もし魔剣が第九排水溝から侵入したとするなら、その行き先は地下倉庫。
地下倉庫は排水設備やデータサーバーが置いてある巨大な地下施設。
しかし一番の問題は東京武偵高の危険地帯の一ヶ所、大量の火薬と爆薬が無造作に放置された大型倉庫に繋がっている事。
もし引火しようものなら密閉された倉庫で爆圧で反射し増幅、多分浮島は丸ごと消し飛んでしまうね。
是非ともそうならない事を祈りつつ、私は地下倉庫に繋がる入口へと駆ける。
大和 「ここを降りたら、次は変圧室。」
地下倉庫は地下二階まで階段で降り、それ以下はエレベーターなどを使わないと降りれない。
と言っても、流石に目立つエレベーターを使う訳にもいかないので、近くにある変圧室から非常用梯子で行く事に。
そう思って変圧室に到着したら、非常用梯子のハッチが既に開けられていた。
魔剣は多分排水溝から入ったと思うから、おそらくキンジやアリアが先に突入しているんだろうね。
錆び錆びになった梯子を降りている途中、地下倉庫全体に響く重い振動。
何か嫌な予感がして、一番下の第七層ではなく第六層
で一旦様子を確認する。
すると張り巡らされた排水溝から、ゴポゴポと海水の漏れ出す音が聞こえてきた。
大和 「これは排水系がやられたね。」
地下倉庫は水面下に存在しているので、排水系が破壊されたら第七層から海水が這い上がって来る。
これで第七層は水没するだろうけど、私は第六層は水没しないと予想する。
何故なら水没すればするほど行動範囲が小さくなり、隠れる所も減っていき、状況は私達有利になる。
魔剣もそれくらい分かっているはず。
でも排出系を壊したなら間違いなく、キンジ達が第七層に居ると予想出来る。
じゃないとわざわざ壊す理由がない。
しかし念の為、囮の可能性も考慮を入れて動く。
キンジ達が無事な事も祈って、第六層で魔剣を捜索する。
大和 「んっ?・・・シンプルだけどえげつない罠を設置するねぇ。」
廊下の途中に魔剣が仕掛けたであろう罠が仕掛けてあった。
私のアンカーショットでも使用されているTNKワイヤーが高さ違いに計三本。
それも私やキンジ、アリアの首の位置に斜めから当たるように張っている。
魔剣を追う為に慌ててここを走ったら、そのまま首と体が分離、分離せずとも出血で天に召される。
しかもワイヤーが設置している位置から更に奥に、本命の黒く塗装されたワイヤーが張られている。
手前のワイヤーを切断して油断した所をサクッと。
何処までも用心深い性格だねぇ。
ワイヤーに切られないよう、しゃがみながら通る。
本当はワイヤーを切断した方がいいんだけど、ワイヤー自体に細工がされていないとも限らない。
トラップを回避して先を急ぐと、とりあえず近くにあるドアを音を立てないよう開ける。
その部屋は大型コンピューターが大量に設置されたサーバールームだった。
ここら辺からいつ魔剣と会うか分からないので、FN5-7を引き抜き両手で構える。
気配を消して、静かに移動及び索敵を平行で行う。
サーバールーム内を捜索していたら、奥の方に何かがいる気配を感じた。
私は気配の正体知る為に、コンピューターの陰に隠れてこっそりと奥を覗く。
エレベーターホール近くの3m程の大型コンピューターの傍に、全身巫女装束の白雪を発見した。
大和 「白雪、大丈夫?」
白雪 「ケホ、ケホッ・・・や、大和っ!」
私が駆け寄って見た白雪は全身が海水で水浸しになっていた。
大和 「ごめん、来るのが遅れて。」
白雪 「うん、いいの。私よりもキンちゃんやアリアは?」
大和 「まだ会ってないよ。とにかく二人と合流しよう。」
白雪 「うん。」
白雪の手を引いて立ち上がらせて移動しようとした時、私は右手に持つFN5-7を構え、サーバールームの一角を狙う。
大和 「白雪、私の後ろ居て。」
白雪 「どうしたの?」
白雪の疑問の呟きをスルーしてトリガーを引き、大きな銃声と共に一発撃つ。
放たれた弾丸がコンピューターの側を通って壁に命中。
そのまま跳弾して奥に消えてしまった。
私は一旦銃を納め、雨風改を抜かずに抦を握る。
白雪 「大和、何かあったの?」
大和 「あーちょっと待ってね。白雪、先に一つ聞きたいけどいいかな?」
私は白雪に背を向けたまま質問する。
白雪 「えっいいけど、何?」
大和 「そうだねぇ、私が聞きたいのは白雪───貴方は誰なのかな?」
キィィィィン!!
甲高い金属同士の接触音がサーバールームに響き渡る。
私の目の前で雨風改と、白雪だった者の日本刀が十字の形で交差する。
アリアの対決でやったように白雪の・・・いや、魔剣の攻撃を防ぐ。
魔剣 「やはり気づいていたか、貴様は。」
大和 「当たり前だって、私の前で変装なんて無意味だから。分かっているよね?魔剣。」
魔剣 「ふん!私をその名で呼ぶな。」
お互いに剣の擦り合いを止めて後方にバックステップで距離を取る。
そして口にされた名前が嫌なのか、魔剣が不快な顔をする。
大和 「おっとこれは失礼。なら貴方をなんて言えば良いの?」
魔剣 「随分と余裕だな。まぁ、いいだろう。」
魔剣は白雪姿のまま宣言した。
ジャンヌ 「私の名は───ジャンヌ・ダルク。誇り、名、知略を子孫に伝え続けた策の一族。私はその三十代目だ。」
ジャンヌ・ダルクと言えば、英国と仏国の百年戦争を仏国の勝利に大きく貢献した軍人。
今もなお伝説が伝えられている英雄で、仏国の聖女。
大和 「確かジャンヌ・ダルクって、処刑されたと記憶していたけど?」
ジャンヌ 「あれは我が始祖ではない、陰武者だ。それに、だ・・・・」
ジャンヌは片手を私に向けて伸ばす。
その瞬間、嫌な予感がして再び床を蹴って後退すると、移動する前に居た場所の床が凍りつく。
ジャンヌ 「ほう?初見で避けるとは、なかなかやる奴だ。やはり双剣双銃の代わりに、絶対守護を貰って行こう。無論、奴もだが。」
魔剣は奇襲を見破った私に感心して、薄く微笑を浮かべながら勝利宣言とも取れる台詞を発する。
大和 「ちょっとそれは傲慢過ぎない?」
ジャンヌ 「そんな事はない。それでは他の奴らが来る前に貴様を確保しておこう!」
ジャンヌは白雪の姿のまま、日本刀を振りかぶって来る。
私は雨風改で防御して右手でFN5-7を発射する。
しかしジャンヌの着ている巫女服は、防弾製のようで意味がない。
更に巫女服は全身の広い範囲を防御している。
唯一服で守られていない箇所は、首など重要部位で即死する恐れのある場所ばっかり。
無論、ジャンヌも分かって着ているのだろうね。
銃の攻撃を諦め、打撃メインの攻撃に切り替える。
ジャンヌの連撃をいなして出来た隙を、左足で足払いをするが回避される。
しかしそれは予想していて、遠心力をそのままに今度は左足を軸に回転して、右足で横腹に回し蹴りを繰り出す。
ジャンヌ 「ぐっ!」
回し蹴りはジャンヌの右側の横腹に見事命中する。
しかし───
大和 「───痛っ!」
ジャンヌに命中した右足に激痛を感じ、一旦距離を開ける。
脚を見ると、靴ごと足首が氷で凍っていた。
今もなお激痛が続き、足首が動かない事で行動を制限される。
ジャンヌ 「噂通りの防御だな。ほんの僅かな隙を突いてくるとは。だがどうだ、足ほ凍る気分は?」
大和 「まさか身体に接触した足を凍らせてくるとは思ってもみなかったよ。でも、対策してない訳ないよね。」
ジャンヌ 「なんだと?」
ジャンヌの顔から笑いが消える。
私は懐から青の御札を自分の足首へ叩き付ける。
すると足首の氷が即座に溶けて、ただの水へと変化する。
ジャンヌ 「貴様、何をした?」
ジャンヌは自慢の超能力が無効化された事実に警戒心をより強く抱く。
大和 「備えあれば憂いなし、わざわざ敵に情報を流す必要性もないよね。それよりタイムオーバーだよ、ジャンヌ。」
ジャンヌ 「何を言って・・・ハッ!!」
ジャンヌの驚く姿をニヤニヤしながら観察する。
策士が最も嫌がる事。
それは誤算、予想外と言った自身の予想しない、経験してない攻撃や事態。
例えば戦いが起こる前に放った弾、あれは何かを狙った訳ではなく発砲音を出す為。
その理由は簡単な事。
この封鎖された地下倉庫での発砲音は爆圧と同じく壁で反響増幅し、広範囲に広がる。
するとあら不思議、私達の位置が丸分かりなんだよね。
パァン!!パンパン!!
私の後ろ側のコンピューターの角から銃声と同時に、ジャンヌに向かって三発の弾丸が私の隣を通り抜け飛翔する。
右側から9mmパラベラム弾、左側から二発の45ACP弾がね。
ジャンヌ 「───ッ!」
ジャンヌは日本刀の腹を盾にして、三発全部を弾く。
そして弾を放った人物達がコンピューターの陰から私の左右に移動する。
アリア 「やっと見つけたわよ!魔剣!!」
キンジ 「悪いが、ここで終わりだ。」
私の思惑通り、銃声が耳に届いたキンジやアリアが到着する。
そして口調と反応的にヒス状態のキンジが話し掛けて来た。
キンジ 「大和、怪我はないかい?」
大和 「大丈夫だよ。それより正面に居るの彼女は、ジャンヌ·ダルク。氷を扱う超能力者だから気をつけて。」
アリア 「ジャンヌ・ダルクッ!?どういう事よ!」
多分さっきまでの私と同じ認識だったアリアが、処刑されたジャンヌ・ダルクが存在している理由を理解しきれず聞いてくる。
でも残念ながら今はそんな時間は使えない。
大和 「ジャンヌを捕まえてからゆっくり話すよ。」
アリア 「むぅー・・・わかったわよ。」
疑問が晴れずに少し不機嫌で膨れ顔のアリアだけど、一応は納得したっぽい。
ジャンヌ 「フッ、私を捕まえるだと?よくそんな事が言えるな。」
私の逮捕という単語にジャンヌは面白く嘲笑う。
ジャンヌ 「貴様らが三人集まろうが、私には勝てないぞ!」
大和 「あれ、おかしいなぁ?私達がいつ三人だって言ったっけ?」
白雪 「ジャンヌ・ダルク───ッ!」
いつの間にジャンヌの後方に回り込んでいた本物の白雪が、分銅付きの鎖をジャンヌの持っている日本刀に巻き付けて、思いっきり引っ張る。
ジャンヌはバランスを崩すのを阻止する為、反射的に日本刀を手放す。
武器を失ったジャンヌにアリアが一気に走って接近。
ジャンヌは超能力でアリアに対抗しようとするものの、そうはさせない。
私とキンジがそれぞれ早打ちの要領で、FN5-7とベレッタM92Fを連続で発砲する。
ジャンヌの意識が弾に向いてる間に、アリアが強烈なドロップキックをかます。
思いっきりアリアのドロップキックを腹部に食らったジャンヌは白雪の位置よりも後方側まで吹き飛ばされ、壁に激突する。
ダメージを受けたジャンヌは少しフラフラしながらも立ち上がる。
ジャンヌ 「・・・こうも集まれると面倒だ。」
するとジャンヌの足元に円筒状の物が転がり、白い煙が大量に噴き出す。
キンジ 「発煙筒か!」
白煙は少しずつ大きくなって、ジャンヌの姿が煙幕で消え去る。
次いで天井にある火災報知器が、発煙筒の煙を火事だと誤認してスプリンクラーから水が撒かれる。
奇襲を警戒して煙の近くにいた白雪とアリアが、私達の方に駆け足で避難する。
合流した白雪にキンジがある質問を問う。
キンジ 「白雪、聞きたい事があるがいいか?」
白雪 「あ、うん。」
キンジ 「アドシアード準備委員会の会議があった日、大和と会ったか?」
白雪 「え、えっとぉ・・・どの会議だろう?」
複数の会議を平行している白雪には、キンジの言う会議の日がどれを指すか分からないみたいで混乱する。
キンジ 「他の委員会の女性に台場に行こうと誘われた時の会議だ。俺も一緒にいたはずだぞ。」
白雪 「あの日?あの日は教室以外で会ってないよ。」
白雪からの解答でキンジはより険しい顔して言った。
キンジ 「いいか?その日に大和が白雪と出会っているんだ。会議をしているはずの白雪が。つまり奴はずっと君に変装して武偵高に潜入していたんだ。もっとも、大和は最初から気づいていたらしいが。」
アリア 「キンジ・・・?アンタ───なれたのね!?」
明らかに見分けれるキンジの急激な変化に、アリアが望むヒスった状態になったとようやく気が付いた。
そしてヒスったキンジが居る事に気を大きくしたのか、アリアが大きな声でジャンヌを挑発する。
アリア 「大和から聞いたわよ!魔剣のご先祖様がジャンヌ・ダルクって凄いわよねぇ!まるで貴方には似合わない!!」
ジャンヌ 「人の事を言えないだろう。ホームズ、貴様もな・・・・・」
煙幕の奥からジャンヌの声が聞こえてきた。
それとほぼ同時に部屋の室温が急激に低下する。
スプリンクラーから撒かれる水が、氷結になるほど急激に室温が低下する。
これ以上室温が下がると行動にも支障をきたすと想定した私は、近くのコンピューターに青の御札を投げる。
御札はコンピューターの側面に貼り付き、瞬時に半径5m圏内の円内が超能力を反射し暖かくなる。
その現象にアリアやキンジだけでなく、白雪も理解が追い付かず一瞬呆ける。
私は御札が効果に問題ないと確認したら、私はジャンヌの居るであろう煙幕に向かおうとした。
白雪 「大和、待って!」
すると白雪が慌てた様に私の肩に手を置き、制止させられる。
大和 「白雪?」
白雪 「ジャンヌの相手、私にやらせて!」
そう宣言した白雪の面影にはいつもの弱気な白雪は居なかった。
覚悟を決めて闘いに行く戦士としての顔をしていたよ。
普段のオドオドした白雪からの変化に、何故か自然と笑顔が出る。
大和 「本当に危なくなったら援護するから。良いよ、行ってらっしゃい。」
今度は逆に白雪の肩に手を置き、白雪の決断を尊重する。
キンジ 「白雪・・・」
キンジも白雪だけで戦わせたくないという気持ちがあったみたい。
でも、私と同じく白雪の覚悟を優先させたみたい。
私と白雪が入れ替わる形ですれ違う。
白雪が前方に歩き、数m先で立ち止まって言った。
白雪 「ジャンヌ。もう・・・終わりだよ。私は誰も傷つけたくないの・・・たとえ、貴方だったとしても・・・・・」
ジャンヌ 「何故私相手に勝利を前提に話している?貴様が原石として良くても、所詮は未加工。既に極限まで研磨された私に勝てるとでも?」
白雪との一対一なら絶対に負けないという余裕のあるジャンヌの声が、煙の奥から届く。
白雪「貴方は知らないかも知れないけど。私、G17の超能力者なの。」
えっG17?
超能力者の出力はグレート、Gで表される。
基本的に正面から超能力者同士で戦えばGの高い方が勝つ。
しかも白雪の言ったG17って、世界にも十人と居ないトップクラスの強さだよね?
大半の勝負に勝てる世界最強レベルの超能力者。
ジャンヌ 「───いや、ただのブラフだ。万が一真実だったとしても、貴様は星伽の掟を破ることは出来ない。」
口ではブラフと言っているものの、もしもの懸念がジャンヌの声に余裕が無くす。
白雪 「今までならそうかも知れない。いや、そうだった。でもねジャンヌ、人って凄いよ。ある一つの存在を護る為に、今までの全てを投げられるから。」
白雪の纏う雰囲気が大きく変わる。
全てを捨てる覚悟した最強の白い鳥は、今までの安全な籠を捨てて旅立つ。
たった一つの存在を護る為、その翼を大きく羽ばたかせた。
ジャンヌ 「───こ、こうなるのも想定していた。だが超能力者はGに比例して精神力を失いやすい。貴様が先に倒れれば私の勝利だ。」
ジャンヌの真剣見を帯びた声───やがてジャンヌを覆っていた煙幕が晴れる。
髪はダイアモンドと言うべき透明感のある銀。
そして鋭い刃を思わせる眼は宝石のサファイアのようだった。
まさにジャンヌ・ダルクは仏国の聖女に相応しい女性。
しかしジャンヌのサファイア色の眼の奥には、黒の陰りが確実に感じられる。
───本気で殺る気ね。
白雪 「キンちゃん。私を、見ないで・・・」
白い鳥が大きく羽ばたく事へ僅かな恐怖が感じて怯える。
白雪 「今から、星伽の禁忌を使う。でも、キンちゃんは・・きっと、恐ろしく感じる。貴方に・・・恐怖を刻んじゃう。私を───怖いと思っちゃう!」
白雪は左手で頭に着けている白いリボンに触れる。
しかしその手は微かに震えていた。
キンジ 「大丈夫だ。何があっても、雪を怖いって思ったりしない。何当たり前のこと聞いているんだ。」
白雪 「・・・そっか、分かったよ。じゃあ、行ってくるね。」
手の震えが消え、髪に結ばれていた白いリボンほどく。
そして白雪がジャンヌに対し、始めて見た構えで日本刀を構える。
白雪 「ジャンヌ。私は、貴方は逃がす選択は絶対に出来なくなった。星伽の巫女の秘める本当の力、禁制鬼道を見てしまうから。それは、今この時までずっと継がれてきた。とても永い時間の中・・・・・」
刀の先端からロウソク程の大きさの緋色の炎が生まれ、油に引火したみたいに瞬く間に刀身全体に広がる。
緋巫女 「白雪は、本当の名を隠す名前。私の本当の名前は───緋巫女。」
名前を言った途端、緋巫女はジャンヌに突撃する。
ジャンヌは急いで背中に隠していた洋剣で攻撃を防ぐ。
───緋巫女は何でも燃やし尽くす炎を・・・・・
───ジャンヌはあらゆるものを凍らせる氷で・・・・・
炎と氷───正反対の属性が衝突し合う。
二人はお互いにお互いを押し退けようと力を込める。
無限に続くかと思われた硬直状態から、ジャンヌは緋巫女の攻撃をいなす。
いなされた攻撃は、斬擊の範囲にあったコンピューターを一刀両断する。
その切断面は高熱によって、熱したナイフをバターに下ろすように溶解していた。
ジャンヌはいなした隙に数歩後退する。
緋巫女の燃え上がる炎に映し出されたジャンヌの顔には怯えが含み、額から冷や汗を流していた。
遥か昔、ジャンヌ・ダルクは炎で処刑される寸前だった。
なら自分を殺そうとした原因の炎を怖がるのも当たり前。
つまり嫌いな火の対策として、氷の研究を行ってきた。
それによって多少の火であれば問題はなくなっただろうけど、今相手にしているのは緋巫女の扱う類を見ない最強の炎。
緋巫女 「私はその剣を斬ります。このイロカネアヤメに斬れないものはありません。」
ジャンヌ「フッ、そんな訳ないだろう。聖剣デュランダルに斬れぬものは無い!」
ジャンヌはそう宣言してデュランダルを胸の前に掲げる。
そして再び緋巫女から動いた。
二本の得物が互いに接触する毎に激しい音が鳴り響く。
イロカネアヤメ、デュランダルに触れた物は全て切り刻まれる。
壁や床はおろか、コンピューターや防弾性のエレベーターの扉すら容易に切断される。
アリア「これが、超偵同士の闘い!」
緋と銀が何度も交差し、まるで妖精がダンスを奏でているような幻想的な風景に思わず魅了されそうになる。
キンジ 「今の間に作戦を考えよう。」
キンジの言葉に私とアリアは視線を向ける。
キンジ 「正直に言うと、俺は何処かで白雪に加勢したいと思うが───」
大和 「一流同士の闘いはタイミングが命。もしミスが起きれば瞬時に勝敗は決定づけられる、でしょ。」
キンジが小さく頷く。
キンジ 「あぁ、俺も何とかしてそのタイミングを計りたいんだが、俺は超能力相手の経験が浅い。だからアリア、君が前に超能力者相手に戦った経験があると。」
キンジの言いたい意味は理解できる。
要はアリアに絶好のタイミングを判断して、攻撃の指示をして欲しいと。
しかしアリアが難しい顔をして悩む。
アリア 「こんなレベルの超能力者とは会った事もないわ。でも強いて言えば超能力は凄い精神力を使うの。それにこの規模なら確実にガス欠を起こすわ。その瞬間だけが唯一のチャンスよ。」
キンジ 「そのチャンスは分かるか?」
アリア 「多分いけるとは思う。でも大半は感ね、それでもいい・・・?」
アリアの声にほんの少しだけど不安が混じる。
キンジ 「ああ頼む。以前の俺は馬鹿だったすまない、パートナーを信じれなくて。だが今は違う。アリアの感を百パーセント信じる───何がなんでもだ。」
アリア 「そこまで言うなら、わかったわ。やってみる!」
キンジの言葉に鼓舞されたアリアからは先ほどの不安感は一切感じられなくなった。
特にサポートする必要がないと判断して、私は緋巫女とジャンヌの剣が激突するタイミングに合わせ、片側のアンカーショットを天井に打ち付ける。
大和 「私はあの二人居る場所の側面の壁に居るね。今はお互いに相手しか見えていないから、予想外の奇襲になると思う。」
キンジ 「わかった。ただ気をつけてくれ。」
私はアンカーショットを巻き取り、緋巫女達の側面にこっそり移動する。
おっと、やっぱり危ないなぁ。
数m手前に何度も斬擊が走るせいで時々斬られそうになる。
勝負に一生懸命の本人達は気づいていないだろうけどね。
しかし戦闘が続くにつれて、確実に二人の疲労が重なっていく。
体力的にも精神的にも随分疲弊した二人は、まだまだ諦めずに懸命に剣を振り合う。
緋巫女 「キャ───ッ!!」
そして斬撃が交差した瞬間、突如緋巫女の悲鳴が上がって押し飛ばされ、床に転がる。
更に手に持っていたイロカネアヤメが衝撃で遠くのコンピューターの裏手に飛んで行ってしまった。
緋巫女 「はぁ、はぁ、はぁ・・・!」
ジャンヌ 「フッ・・フフッ・・・・・」
ジャンヌは遂に最高の好機を得たと薄く笑う。
ジャンヌ 「この勝負───貴様の負けだ!」
ジャンヌはデュランダルを高く掲げる。
そして室温が氷点下に急激に下がる。
多分そろそろ。
キンジの方を見ると、飛び出したい気持ちをアリアが手に制していた。
無論アリアも同じ気持ちだろうけど、何とか堪え忍んでいる。
ジャンヌ 「確保する予定だったが仕方がない。貴様は運がいい、何故なら我が一族の奥義で死ねるのだからな。食らえ!オルレアンの氷花───銀氷になって、散れっ!!」
ジャンヌのデュランダルが青白い光を蓄える。
アリア 「キンジ!アタシの三秒後に続いて!」
アリアは二本の小太刀を取り出し、ジャンヌとの空間を一気に走り抜ける。
一秒・・・
突然の奇襲にジャンヌが慌てて振り返る。
二秒・・・
ジャンヌ 「ただの武偵が───邪魔だ!!」
妨害に怒ったジャンヌが剣を橫薙ぎに払う。
アリアはジャンヌの行動を予測していたようで、ジャンヌの変装に使っていた巫女服で視界を塞ぐ。
更に視界を塞いだら、スライディングでジャンヌの股下を潜り抜ける。
今はアリアに意識が向いている。
出来れば使いたくなかったけど───ここしかない!
大和 「白雪っ!」
私は腰に着けていた雨風改を鞘ごと緋巫女へ全力で投躑。
サーバールームの空中を飛ぶ雨風改を緋巫女が受け取る。
緋巫女 「これって・・・?」
───三秒!
視界を覆い隠していた巫女服を押し退け、ジャンヌの周りから青の濁流が起きた。
青い光は天井に砲弾のように命中し、天井が巨大な氷の花みたいに凍っていく。
───って、ヤバっ!!
このままだとアンカー経由で凍らされる!
瞬時に天井に打ち付けたアンカーを外して事なきを得り、床に着地する。
アリア 「キンジ今よ!!」
あらかじめ次の指示が分かっていたキンジはジャンヌに向かって駆ける
バババンッ!!
三点バーストに切り替えたベレッタをジャンヌに銃撃する。
一方ジャンヌは、手に持っていたデュランダルで弾き返す。
この距離では効果がないと思ったのか、キンジは更に距離を詰めて連射する。
そして私もキンジを援護するため、FN5-7を発砲する。
でもジャンヌはむしろキンジに突っ込んで行き、デュランダルを大きく振りかぶって切り下ろす。
このままだとキンジが斬られると思った瞬間、デュランダルは止まった。
ジャンヌ 「ま、まさか!?」
勿論ジャンヌが止めた訳ではない。
その理由はキンジが片手で真剣白刃取りを決めた事。
本当にそのまさか、何をどうしたら人差し指と中指に挟んだだけであのデュランダルが止められるのかと。
今やジャンヌには頭は驚愕で埋め尽くされる。
ジャンヌ 「いや、まだだッ!」
何とか冷静になって対応しようとする。
でも残念だけど貴方の負け、ジャンヌ。
この状況はよくに言う詰みってやつ。
緋巫女 「キンちゃんに手を出さないでええええッ!!───緋緋星伽神───!!」
緋巫女は私の渡した雨風改を、居合い切りと同じように抜く。
ほんの一瞬だけ見えた鞘から出された刀は、緋色の火ではなく───青色。
緋色の炎を超える圧倒的な熱量を誇った青い炎。
下から切り上げた刃はデュランダルをすり抜けて、直接当たっていない天井や壁に一線に炎が直撃する。
壁は大きく溶解、天井はデュランダルが凍らした氷を一瞬で蒸発させる。
更に熱に耐えられなくなった瓦礫が落下してくる。
ジャンヌ 「───ッ?!」
ジャンヌは、自分の愛剣が溶断された事実にただ呆然していた。
アリア 「ジャンヌ!」
ジャンヌが床に伏せられてアリアが上に馬乗りになり、両手に銀の手錠を付ける。
アリア 「ジャンヌ・ダルク!逮捕よ!!」
アリアはそう高々と宣言する。
こうして、魔剣の闘いは終わった。
私はジャンヌが捕まった事に一安心する。
さてと、ってあれ?
ジャンヌを倒した白雪の様子を見ようとしたら、白雪はキンジに抱きついて泣いていた。
それは嬉しい涙か、恐怖からなのかはわからない。
流石にじっと見つめるのもあれなので、最後の斬擊の状態を確認する。
パッと見て、深さ数十mはあろうかと思う巨大な斬擊の跡。
しかも断面が完全に溶解しているし、というか臭いからして溶解を通り越して蒸発しているでしょこれ。
はぁ~・・・・
私は白雪に渡した雨風改に対し、小さなため息を出す。
これでまた秘密事が増えちゃった。
でも白雪の事を考えたら、これもしょうがないよね。
供物を作る原住民:私達を襲ってきたのは、小さな人間達だった。私達が武器を構えた頃には、仲間が目の前で血を吹き死んでいた。