23:理子の頼み
魔剣を逮捕したアドシアードの日の深夜に、女子寮のある一角のドアに佇む一人の影。
その影の正体は理子ちゃんでしたー!
理子 「くふふっ!ここがみーちゃんのお部屋かぁ~!」
いやー、遂に帰ってきたって気分だよぉ。
アリアとキーくんのせいでハイジャックの計画が失敗しちゃったから、イ・ウーを退学されるし大変だったんだよ。
しかも理子の大切な物が取られてマジ最悪。
だから取り返しに行くの!
キーくんやアリアは当然として、みーちゃんも何かと居た方が成功率高いし、みーちゃんの性格なら拒否出来ないだろうしね。
でも普通に行くのは面白くないじゃん。
フフッだからこの深夜に襲うの、だって襲って驚かせた方が面白そうじゃん!
普段から常に余裕のあるみーちゃんの驚く姿かぁ~、興味がバンバン出ますよッ!
黒っぽい服装の女性に変装もしてきたから準備万端!
理子 「それじゃあ侵入開始~!」
わたしは意気揚々と偽造したカードキーで、みーちゃんの部屋にお邪魔する。
部屋の中は深夜とあって真っ暗。
でも、前に教授の指示でこっそり入った事があるから問題なし。
そういえば前に侵入した時、跡を残さないように逃げたのにすぐに侵入がバレちゃってたから、そこは流石みーちゃんだよね。
あっ!
みーちゃんの寝室に繋がる廊下を静かに歩いていたら、いっぱいの鍵で厳重にしている部屋のドアをまた発見した。
ここ、前に来た時から気になってたんだよねぇ。
一体こんなに厳重にするなんて、中に何かあるのか知りたくなっちゃうじゃない。
凄い大事な物でもあるんだよきっと!
みーちゃんも気を付けないと、泥棒が盗んで行くかも~♪
でも今はみーちゃんの驚く姿を見に行くのが優先、名残惜しけど後にしよ。
静かに忍び寄って寝室の前のドアに到着する。
よし着いた!みーちゃんの寝室!
音は・・・特にしないから、寝ている絶好のチャンスじゃん!
さーて、後拝見させて頂きますよ~。
ドアノブをゆっくり捻り、音を立てないようドアを少しづつ開けて、僅かな隙間から覗き見した中の光景は───
あれ?なんか金属質の鋭い物が見える・・・近づいて来てない?
わたしは何故か見覚えのある形状に頭を働かせる。
そして金属質の物の正体に気づいた。
あっ!ナイフだこれ────ッ!?
わたしは全力で首を傾ける。
室内から飛んできたナイフがドアの隙間から飛び出し、わたしの顔の側面ギリギリ通り、視界外でドスッと鈍い音が鳴る。
体を動かし後方を確認したわたしは、後ろの壁へ突き刺さるナイフから視線を逸らし、嫌な予感がしながらドアを開ける。
行き先の寝室では、ベッドに腰掛け二本のナイフを使って片手でジャグリングをしているみーちゃんの姿が微かに認識できた。
みーちゃんはスイッチで点照を点灯させ、笑顔をまま聞いてくる。
大和 「こんな夜遅くに何の用事かな?ねぇ理子?」
笑顔で聞いてくるみーちゃんに、わたしは若干の恐怖を覚える。
しかも変装しているのに完全にバレてるじゃんか!
理子 「えっと・・話すついでに、みーちゃんを驚かせようと・・・もしかして、怒っていたり?」
わたしが恐れつつそう言うと、みーちゃんはきょとんして優しい微笑を浮かべる。
大和 「あれ?もしかして怒っていると思った?別にこれくらいで怒ったりしないよ。」
みーちゃんの言葉を聞き、肩の荷が降りると同時にわたしの中から悔しさが沸き上がってくる。
理子 「もぉー、みーちゃんは本当に余裕はあっても隙が無いんだから!なんでこっそり入って来たの分かるのぉ~。」
わたしは変装を解きながらそう嘆く。
一方みーちゃんは困った表情で答える。
大和 「そんな事を言われてもねぇ。分かるからどうしようも」
理子 「みーちゃんは模擬戦でも不意討ちでも、いつも同じ事しか言わないよね。」
みーちゃんはどうやって周囲の状況を確認して判断しているのかな?
オルメスの感とは違うし、変装も見破られるから経験?
理子もその力欲しいなぁ・・・それさえあれば、オルメスなんかに負けたりしなかったのに。
大和 「それで、私に話があるって言っていたけど?」
理子 「そもそもみーちゃん。理子がここに居る事に何か疑問を持ったりしないの?」
大和 「ここに居るって事は、既に司法取引でもしているんじない?してなかったら、私に捕まるだろうから来ないと思うよ。」
理子 「うん当ったりー!ちゃんと司法取引してるから安心して話せるよ。」
確かにその通り。
一応みーちゃんならちゃんと話を聞いてくれると思っていたよ。
でも万が一戦いになったら逃げれる自信はないから、予め司法取引をしておいたの。
それにしても、さっきからずっと翻弄されてばっかりで面白くない。
───あっそうだ!わたしを虐めた仕返しに良い事が思いついちゃった!
不思議と表情が自然とニヤける。
大和 「・・・なんか凄く悪どい顔をしてるけど、何をする気かな?」
理子 「そんな事ないよぉ~だ!一つ質問するよ!」
その質問は武偵にとって凄く嫌がる人の多いと思う。
更に人によっては激怒する質問だったり。
理子 「みーちゃん。一般市民を殺すのって・・・どんな気分だと思う?」
わたしはやってやったとほくそ笑む。
武偵が守る対象である一般市民を殺す感覚なんて、武偵に対してのただの挑発だよね。
でも殺すって言っても、オルメスを殺そうとしたことはあっても、他の人を殺すつもりはさらさら気ないよ。
みーちゃんは顎に手をやって考える仕草をする。
大和 「うーん、赤子の手を捻るより簡単だよね。」
───ゾクリッ!
背筋に氷柱を当てられたような寒気が走る。
あ、あれ?なんだろう・・・なんか嫌な寒気が───
わたしの身体は無意識に小さく身震いを起こし、全身の毛という毛が逆立つ。
大和 「どうしたの?様子が変だよ?」
みーちゃんは様子の変わったわたしを心配して声を掛けてきた。
わたしはこの変な気分を払拭する為に、何時もより元気な声を出して話を変える。
理子 「なんでもないよ!それより頼みがあるの!」
大和 「頼み?」
理子 「あのね、一緒にドロボーしようよ!」
意気揚々と発言する私に対し、みーちゃんはドロボーと言う単語で難しそうな表情になる。
みーちゃんは悩みながらナイフをベッドの隣にある机に片付け、気分の乗らなさそうに口を開いた。
大和 「理子って、武偵三倍の刑を知ってるよね?」
と、みーちゃんは苦笑い気味に返答してくる。
武偵三倍の刑は武偵全員が知っての通り、法を守らせる武偵が法を犯した場合、通常の三倍の刑が処させるもの。
軽い犯罪でも重罪にされるとあったら、みーちゃんもうんとは言いにくいもんね。
でも、理子はみーちゃんの性格は熟知しているし、大切な物物を取り返す為だからしょうがないよね!
わたしはみーちゃんのお腹の辺りに抱きつき、下から見上げて追撃を続ける。
理子 「知っているけど、理子の大切な物なの!お願い!」
大和 「それって、本当に理子の大切な物?」
理子 「そうだよぉ!それに元は理子のだよ~!」
視線を一回ずらして再び考えるみーちゃんは、数秒してから大きなため息を一つ吐き出す。
大和 「・・・・・はいはい、一緒にドロボーしよっか。」
理子 「やったぁ!ありがとう、みーちゃん!!」
イエーイ、作戦成功!
にしても思ったより早くみーちゃんの口からOKを出せた。
もしかしたら、あのキーくん以上にみーちゃんって押しに弱いのかも。
盛大に喜ぶわたしにみーちゃんはいつもの微笑を浮かべつつ、わたしの頭を優しく撫でてくれる。
う~ん、みーちゃんに頭を撫でられるのは気持ちいい。
大和 「いつ開始予定?」
理子 「もうちょっとしたら理子が学校に戻るの。だから内容は後で。」
大和 「んっわかった。それじゃあ私はまた寝かせて貰うから。ふぁ~、まだ深夜だしね。」
するとみーちゃんは眠たそうに欠伸をする。
理子 「あっ!理子もみーちゃんと一緒に寝たい!」
大和 「えっ、このベッド一人用なんだけど。」
理子 「大丈夫大丈夫、端に寄れば問題ないって!」
大丈夫と言うわたしに、みーちゃんが座っていたベッドから床に立ち上がってリビングに移動しようとする。
大和 「じゃあ理子はこのベッドで寝て、私はリビングのソファーで寝るから。」
みーちゃんの台詞にわたしは思わず頬を膨らませる。
キーくんは殆ど全部だとにしても、みーちゃんもみーちゃんで結構鈍感だよね。
理子 「違う違う!一緒に寝るのー!」
わたしはベッドに飛び込み、掛け布団を被ってみーちゃんに手招きする。
すると、みーちゃんは諦めと優しさの混ざりあった表情しつつ、明かりを消して一緒にベッドに入る。
みーちゃんが中に入ったら、みーちゃんの背中に思いっきりしがみつく。
そしておでこをみーちゃんの背中にスリスリ~。
わーい、みーちゃんのいい匂いがするぅ~。
大和 「おやすみなさい、理子。」
それからすぐにみーちゃんの寝息が聞こえてくる。
犯罪者だったわたしが居るのにすぐ寝るなんて、そんのに信用されていたりするのかな?
それに少し嬉しさを覚える。
そしてわたしの目の先にはみーちゃんの綺麗なうなじが見えて、思わず変な想像しちゃう。
もし今みーちゃんの首を掻っ切ったら、絶対守護のみーちゃんでも死んじゃうのかな?
勿論わたしは絶対にそんな事しないし、みーちゃんは理子の大切なお友達だもん!
でも───
さっきの寒気が気になる。
あれって、わたしの質問が原因だよね?
みーちゃん、やっぱり怒っていたのかな?
うーん多分違う、その後の反応的に怒ってない。
ならもしかして、みーちゃんは───
うんうん違う!気のせい、そう気のせい!みーちゃんはそんな人じゃないもんね!
強引にわたしは自分を納得させる。
ふぁ・・・わたしも最近色々あったから凄く眠いや。
おやすみ、みーちゃん・・・・・
喰われた遺言:巨大な芋虫に似た形をしている生き物がいる。私はそれからもう逃げられない。何故なら既に目と鼻の先にいるか───