暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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2:武偵試験

大和 「なんと言うか、地図で大きいとは思っていたけどまさかここまで広いとはねぇ。」

 

 翌日に転移させられたと思う部屋から、徒歩で一時間掛けて東京武偵高校の校門に到着した私は、その高校の異常な広さに驚愕する。

 本当にここは学校?規模が東京ドームとかの比じゃないよこれ。

 

大和 「おっと、ここだと邪魔になるね。」

 

 校門の前に突っ立てたら周りの邪魔になるので、ひとまず中へ入って行く。

 学校内に入った途端、至るところから発砲時の硝煙の臭いが鼻を刺激する。

 そして建物やら射撃レーンやらを見ながら歩いていると、ここの制服を着ている生徒達と何度もすれ違う。

 すれ違った生徒には一般的な普通な感じの生徒がいるけど、武偵高だけあって明らかに危険な雰囲気を隠している生徒もいた。

 んー、気配のまだ完全に隠して切れてない感じかな?

 それにしても───

 生徒の腰に着けている物に視線を動かす。

 普通は学校と言われれば学生鞄などを想像すると思う。

 でもここは武偵を育てる学校、勿論そんな学校の生徒は危険な任務をする事もある。

 だからなのか、この学校の生徒は全員拳銃を持っていた。

 持っている拳銃を見る限り、ルガーP1900みたいな古い物からベレッタPx4などの最新まで様々な物が使える様子で、使用者の使い易い物を自由に選べるのかな?

 私は愛銃であるFN 5-7を使う予定だけど。

 まぁそんな風に考えつつ校内を移動していたよ。

 ちなみに武偵校の試験は科で別れていて、たった今通り過ぎた建物は通信科の試験会場で、主に通信機器を使ったオペレーターなどのバックアップを学ぶ科。

 前に見えるのは車輌や船舶などの運転操縦を学ぶ車輌科の建物、他にも探偵科や狙撃科など複数の科が存在するらしいね。

 私はこの中で強襲科の試験を受ける事になっていた。

 だからその強襲科の試験を受ける為に試験会場に向かっている所。

 でも思ったより分かりやすい配置をしてあるから、これなら念の為に本に挟まっていた地図を持って来る必要はなかったかも知れない。

 

大和 「んっあの子?」

 

 近くの建物に視線を動かそうと右を振り向いたら、視界の端にやけに周りをキョロキョロと見渡す男子受験生がふと目に入った。

 服装はここの学校のじゃないから、私と同じ受験生かな?

 何かあったのかな?と思い、その受験生に話しかける。

 

大和 「ねぇ、どうかしたの?やけに周りを見てたけど。」

受験生 「おわぁっと!・・あっ変な声を出してすまない。えっと・・・俺に何の用事だ?」

 

 私が話し掛けた途端、表向き問題なくても視線が明らかに警戒のそれ。

 ・・・なんか凄い苦手意識持たれてるんだけど、私そんなに変な事したっけ?

 話し掛けた反応といい、謝りながらも少し後退りされているのも、正直私も対応に困る。

 

大和 「何か困ってそうだから、迷惑だった?」

受験生 「いやいや迷惑なんてないぞ。あー、まぁそれがな。ここの試験に来たんだが試験会場がわからなくて。」

大和 「なるほどね。一応ここの地図を持っているけど欲しければあげるよ?」

 

 地図は別に無くても問題ないし、不要な物はそれが必要な人に渡った方が遥かにいいからね。

 私の何気ない提案に、受験生は何故か呆気を取られた表情して言う。

 

受験生 「それ、貰って大丈夫か?」

大和 「私は使わないから、なんなら地図を渡すより案内した方が良かったかな?」

 

 受験生は手を左右に振って申し訳なさそうに断る。

 

受験生 「いや、地図で頼む。流石に案内までさせるのは気が引ける。」

大和 「わかった。はいこれ。」

 

 私はカバンから地図を取り出して手渡し、受験生は申し訳なさそうに地図を受け取る。

 

受験生 「悪いな。」

 

 地図を渡す頃には最初の警戒心はもう持っていないようで、自然体で受け答えをしてくれる。

 やっぱり原因は分からないものの誤解は解けたご様子。

 

大和 「気にしてないで。そんじゃ私は行くから、じゃあね。」

男子 「あっ!ちょっと待ってくれ。」 

 

 受験生に背を向けその場を立ち去ろうとしたら、受験生から呼び止められる。

 呼び止められて疑問に思った私は後ろに振り返る。

 

大和 「うん?」

男子 「お前もここに受験しに来たんだよな?ならいつかここで会えたら、その時お礼させて欲しい。」

 

 若干恥ずかしそうに口にする受験生に、私は微笑を浮かべて返答を返す。

 

大和 「また今度会ったらその時は宜しく。私は宮川大和。もしお互いに受かって顔を会わせたら、その時は大和って呼んでね。」

キンジ 「あぁ分かった。俺は遠山金次。周りにはキンジと呼ばれているからそう呼んでくれ。」

大和 「そっか、そっちも受験に受かるといいね。キンジ、good luck(幸運を祈る)。」

 

 今度こそ私は立ち去り、その後は特にめぼしい出来事も無いまま試験会場に到着する。

 会場の受付で受験票を渡して、矢印に沿って受験部屋に移動し、自分の番号が書かれている席に座って待つ。

 座ってのんびり待機していると、さっき地図を渡したキンジの後ろ姿が先頭付近の席に見えた。

 へぇー、キンジもここの試験を受けるんだ───あれっなんか雰囲気が?

 先ほど会ったキンジとは違う雰囲気を放っていた。

 うーん?試験だからスイッチでも入ったのかな?

 武偵は命に関わるからそうかもしれないね。

 そんな感じに考えていると、前の扉が大きな音を上げて開かれ、ガラの悪そうなポニーテールの女性が現れた。

 女性は受験生を一望出来る位置に付き、突然大声で叫んだ。

 

女性 「ガキどもが、静かにせいっ!!試験を始めるぞ!」

 

 いきなり怒声で部屋にいた殆どの受験生が一瞬で口を閉じる。

 その女性は一般市民だったら動けなくなるほどの迫力を持っていた。

 やっぱ、武偵高の教師は伊達ではないと言う事だね。

 

蘭豹先生 「私は蘭豹や!しっかり覚えておけ!まずはこのペーパーテスト、その後は実際に戦ってもらうからな。今から配るぞ。」

 

 先頭から順番にまわされたテストを自分の分を回収して、残りを後ろにまわす。

 一番最後の人に届いたのか、蘭豹先生が始めの号令を発する。

 

蘭豹先生 「全員届いたな。時間は五十分、始めぇ!」

 

 この部屋の受験生全員がテストを書き始める。

 カキカキとペンを動かす音が部屋中の至るところから響く。

 テストを開始して数分後、私は別の意味で苦笑いをしてしまったっていた。

 理由は単純明快。

 テストは問題が簡単すぎてほんの五分程で終わってしまったから。

 私は本格的にこの学校の学力を不安がる。

 これは流石に簡単すぎだよね。大丈夫なの、この学校?

 まぁ、受験にはあまり詳しくないから良く分からないけどね。

 しかし受験かぁ。

 私自身の覚えている記憶を辿って思う。

 実際に私はこんな風に受験をした事はあるのかなって?

 

 

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蘭豹先生 「そこまでや!後ろから回収して来い!」

 

 ペーパーテストが終わった後、別の部屋に移動させられた。

 その部屋で閃光手榴弾(スタングレネード)と防弾ベスト、サバイバルナイフが配られ、更に蘭豹先生が大きな段ボールを机にドカッと雑に置き蓋を開けた。

 

蘭豹先生 「そこの箱から自分の銃に合う銃弾を十発づつ持ってけ!銃が無い奴は貸し出したる。先に言っておくが十発以上を持っていこうした奴は私が相手したるわ。」

 

 蘭豹先生から脅しにしか聞こえない警告を聞きながら箱を覗くと、様々な口径の弾薬が収まっていた。

 9mm弾や357マグナム弾などの弾薬が入っていたけど、さっき箱を雑に置いたせいで中身がぐちゃぐちゃに混ざり合い、全員が捜すのに苦労している。

 幸い私のFN5-7はライフル弾に近い形状の5.7mm弾なので比較的簡単に見分けられたよ。

 ちなみに用意してあった弾薬は実弾ではなく、比較的ダメージの少ないゴム弾。

 死者をあまり出さないないようにするから当たり前だよね。

 

蘭豹先生 「全員準備が終わったな。今からお前らには殺し合いをしてもらう!」

 

 

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 周囲は薄暗く埃っぽい、それでいてコンクリート製の柱や壁はキズやひび割れが多く、床に至っては一部崩落し下の階層が覗ける大穴が開いている。

 そして至るところから、銃撃や閃光手榴弾の音が反響して耳に届く。

 私は建物の中で通路の傍に置かれた机の影に身を潜めていた。

 なるほど、ある意味殺し合いね。

 そんな感想を抱きつつ辺りを警戒する。

 今回の試験では前半組と後半組に別れ戦う。 

 現在戦っているのは前半組であり、場所は東京武偵高の管理する十四階建ての廃屋。

 この建物の中に受験生が詰め込まれ、バトルロイヤル形式で勝ち残る試験。

 なぜこんな試験なのかと言うと、純粋な戦闘力を測る為かな? 

 とにかく戦闘が始まって十五分が経過した。

 始まったばかりの時は銃声がよく聞こえてきたけど、十五分経過した今はあまり聞こえてこない。

 ちなみに開始地点はランダムで、私は二階から開始だった。

 まず最初に一階に降りて敵を捜索し別々の物陰に二人見つけた。

 どうも行動が明らかにぎこちない二人だったので、多分一般からの生徒だと考え、一応手加減しつつ気絶させる。

 それから一階づつ上がって索敵を続ける。

 私の居る階層は九階目で、こちらに向かって歩いてくる受験生が来るまで机に隠れて待ち、そして横に来た瞬間机から飛び出る。

 

受験生 「なっ!?」

 

 その受験生はこちらに驚いた拍子に一瞬だけ身体が固まってしまった。

 少ししてハッと我に帰った受験生は右手に構えるグロック17を急いで向けるが既に手遅れ。

 身体が硬直する一瞬の隙をついて懐へ飛び込み、自分の左手で銃を持つ受験生の手を外側に反らし、右手で受験生の着ていた服の首元を掴んで、流れるように背負い投げの要領で床に叩きつける。

 

受験生 「ごっ!!」

 

 こうして受験生は床に叩きつけられた衝撃で気絶した。

 私が無力化したのは七人目である。

 よしよし、これでこの階も終わりかな?あとは、さっきからずっと後ろをついてくる人だけだけど・・・

 私の後方をずっと追跡してくる人物がいた。

 その人物は後ろからただ追跡してくるだけで、攻めてくる様子が見えないから放置していた。

 でも今後を考え、念のために倒しておく事に決めた。

 先制として温存していた閃光手榴弾のピンを抜き、後方に投擲。

 すると後ろにいた人物は閃光手榴弾から逃げるように物陰に隠れた。

 そうやって視界が外れた瞬間、身体を低くしながらその人物の側面へ障害物を使いながら回り込む。

 次いで先ほど投げた閃光手榴弾から、キイイイインッ!と閃光と音が弾ける。

 私は能力を使いながら相手の位置を把握してゆっくり進む。

 その時気配を感じ取られたのかわからないけど、こちら側を警戒する様子を見せた。

 おっかしいな?結構気配を消しているはずなんだけど、勘かな?

 んーこれは参ったなぁ、これどうしようか?

 現状相手に警戒されているので何か良さげな物がないかと見回し、ちょうど相手と私の間にコンクリート製の柱が立っていた。

 あの柱──いけるかな?

 ある事を思いつき、相手に向かって一気に駆け出す。

 走りながら相手の容姿を確認する。

 その姿は明らかに生徒や受験生ではない容姿をしており、相手は濃い顎髭の目立つ男性だった。

 その男性はこちらに気づくと、私に向かって拳銃を発砲してきた。

 男性の持つ巨大な拳銃は357マグナム弾を使うS&W M27。

 私は予め射線を読んで、相手がトリガーを引く瞬間にスライディングで射線から待避し、そのまま間合いを詰めてさっきと同じく懐に潜り込む。

 しかし相手側も懐に入られないように銃を持たない左手で拳を振るう。

 一方その拳を受け流しながら左足を前に踏み込み、体を右へ捻り右面打ちを叩き込もうとする私に対して、男性が首を大きく反らし回避される。

 そして男性から反撃で胴打ちが飛び出し、私は腰を内側に捻りつつ左前腕部を円弧を描き打ち落とすように受け流す。

 そして再び攻撃の合間を突き、私の掌底が男性の顎へ向かって叩き込む───が、それも避けられる。

 思ったよりやるけど。

 このままでは埒が明かないと思った私はここであえて後ろ側に重心を崩すと、私のミスと判断した相手がチャンスとばかりに全力で振りかぶってきた。

 男性の拳は直線的で明らかに勝つと油断した動き。

 私は思いっきり後方に床を蹴り、同時に腰に着けた拳銃を抜き、二発発砲する。

 一発は柱に進み、もう一発は相手へ飛翔するが体を捻って回避された。

 そして相手は私に銃を放とうとするが、先に放った私の弾が柱に命中し跳弾、相手側に進路を変えて突き進む。

 それに驚き相手は跳弾した弾をなんとか避けようとする。

 しかし一発目を回避した時に無理に避けた為、横腹に直撃する。

 

男性 「ごはっ!」

 

 相手は被弾した時に崩れたバランスを取り戻そうとするが、そんな事はさせない。

 体の動きを反転させ前方向に一気に相手に近づき、まわし蹴りで爪先を男性のみぞおちにめり込ませる。

 みぞおちど真ん中に回し蹴りを食らった男性は一瞬呼吸が止まり、力が抜け動きが完全に止まった瞬間に男性の背後へ回る。

 右腕を男性の右肩から回し首筋に沿って差し入れて、今度は左腕を男性の左脇を経由して入れたのち、両手で思いっきり締め付ける。

 すると頸動脈を絞められた男性は私の腕を振りほどこうと動かすが、まわし蹴りのダメージで冷静さを失い力ずくでほどこうとする。

 しかし力もまだ戻って来ていない男性には技がほどけずに、およそ十秒程度で意識を失い床に倒れて動かなくなった。

 

大和 「ふぅ、なんとかなった。しかしこの人やけに強いけど、明らかに生徒じゃないよね。・・・というか生きてるよね?」

 

 一応男性の血流と呼吸を確認して一安心したよ。

 やった本人が言うのもなんだけど生きててよかった。

 男性の生存を確認してすぐ建物全体に試験終了の放送が響いた。




 狂人の警告:理解する必要はない。ただ知らなければいいだけだ。
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