暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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 今回からスマホを変えましたので若干文が変わっておりますが、宜しくお願いします。


32:予定された行動

 午後十二時、本来であれば武偵高で四時間目の英語の授業を受けている時間帯。

 でも私はその時間別の場所にいた。

 アドシアードの集まりに使用したファミレスの一角で、ある人物を待っている。

 そして約束の時間通りに私の席へ近付く一人の足音が聞こえた。

 コツコツ、カツンッとね。

 ・・・うん?カツンッ?

 明らかに足音とは違う別の音に疑問を抱く。

 

??? 「こんな時間に呼び出すな。今の私には少し手間なんだぞ。」

大和 「えっと、それについては謝るよ。ところでどうしたの、それ?」

 

 私が呼び出した人物はジャンヌ。だったんだけど、何故か足に包帯を巻き松葉杖を突いている状況に疑問を感じざる終えなかった。

 

ジャンヌ 「朝に遠山にも言われたが・・・虫、が原因だ。」

大和 「虫?」

ジャンヌ 「道を歩いていたら虫が足に張り付いて、慌てた私は道の溝に足を踏み入れ動けない所をバスに轢かれた。」

大和 「えぇ・・・」

 

 もはや何かの陰謀で狙ってやられたみたいなレベルで悲惨じゃん。

 まだ足を溝に入ったまでは理解できるけど、オマケでバスひかれるって不幸にも程がある。

 そもそもひかれてその程度の傷なのも凄いんじゃ?

 にしてもジャンヌって、意外と運がないのかな。

 

ジャンヌ 「それよりだ。」

 

 ジャンヌが私の正面の席に座り、ウエイトレスに注文した後に私を見据える。

 

ジャンヌ 「ブラドの件は終わった。お前にも情報を与えた。今度は何の用だ?それも他の生徒に見られ難いこの時間帯に。」

 

 ジャンヌの問いに対して、私は竹刀袋に偽装した袋に入った雨風改を机の上に置く。

 

大和「保険の為、少しの間だけ預かってほしいの。」

ジャンヌ「───宮川。お前はその意味が分かっているのか?」

 

 私の言葉にジャンヌは目を細め、軽く睨み返す。

 ジャンヌの言う意味。

 それは剣を持つ者にとって半身と同等の価値のある剣を差し出す。

 実質自らの魂を差し出すの同義である事、だと思う。

 と言っても私には武器や物にあまり執着しないから、そこまで気にしない。

 だけど、ジャンヌの言いたい意味は十分理解可能。

 

大和 「勿論。」

ジャンヌ 「・・・・・・・」

 

 ジャンヌは何も言わず、目を瞑り思考する。

 そしてゆっくりと目蓋を開き、一線に私を見つめる。

 

ジャンヌ 「何故私なのだ?私はお前達から見て敵だった。宮川にとって他に私より信用出来る奴が居るはずだ。」

 

 つい先日まで殺そうとしてきた敵を容易に信用する私に、ジャンヌは納得出来ないと言った様子で話す。

 

大和 「今日の友は明日の敵、明日の友は今日の敵。敵味方なんて状況によって何度も変わるんだから、必要なのはその個人に対する信用度だけ。ジャンヌはそれに値すると私が判断したから。」

ジャンヌ 「ふむ?随分と私を買っているようだが、まぁいい。これは預かろう。私だって剣士の端くれ、丁重に管理するさ。で、この保険は一体何に対する保険なんだ?」

大和 「詳しくは教えられない。ただ確定じゃないけど、ピラミッドの元へ鉄の鯨が姿を見せるかもね。」

ジャンヌ 「・・・・・?」

 

 言葉の意味を分かりかねたジャンヌは首を傾げた。

 予想通りの反応に私は内心納得する。

 そうなるよね。むしろあの言葉だけで気付かれたらその人は超人的な名探偵だと思うよ。

 

大和 「これでこの話は終わり。私も五時間目には武偵高に戻らないといけないから早い所お昼食べて戻ろか。呼び足したお詫びとして奢るから。」

 

 これ以上この話をされるとボロを出す可能性があるから、半強制に話を終わらせて別の話題に流す。

 

ジャンヌ 「ほう?なら遠慮なく頂こうか。」

 

 こうしてファミレスで食事を終えた後、武偵高にジャンヌと共に戻った。

 時間的には五時間目の途中くらいかな?

 手持ちの時計を確認し門でジャンヌと別れた後、真っ先向かう先は強襲科棟の第一体育館。

 武偵高では体育館と言っている反面、実際は防弾ガラスで覆われた楕円形の闘技場に近いんだよね。

 コロシアムの現代版みたいな感じ。

 予定通り行動するなら、多分今頃のタイミング。

 駆け足で第一体育館に到着した時、何発かの銃声が響く。

 私が銃声の発生源を視界に捉えると、体育館の中央でアリアと前に理子が化けていたカナという人物が真正面から戦っていた。

 

キンジ 「おい蘭豹!早く止めさせろ!じゃないと死人が出るぞ!」

蘭豹先生 「おうおう死ねぇ!!せいぜい足掻いて死にやがれぇぇぇ!!」

 

 闘技場を覆う防弾ガラスの前で観衆と化した生徒達が興奮気味に声を張り上げる中、キンジが教科担当の蘭豹に勝負の中止を求める。

 しかしお酒片手に酔っぱらった蘭豹先生は関係ないとばかりM500を天井に乱射し勝負を楽しむ。

 これでは埒が明かないと判断したキンジが闘技場の入り口に向かうと、私も同じく入り口に駆ける。

 

大和 「キンジ!」

 

 予想通りキンジがICカードでロックを解除して入り口を開けようとした時、ギリギリの所で腕を掴み制止させる。

 

キンジ 「なっ!大和!?ちょっ離せ!このままだとアリアが!!」

大和 「分かっているよ。だから代わりに私が行く。」

 

 私の言葉に一瞬を動きを止めたキンジは、我に帰って拒否する。

 

キンジ 「駄目だ!大和はここに居ろ!」

大和 「じゃあキンジが行ったら、あのカナって人を止めれるの?」

キンジ 「そ、それは・・・そうだが・・・・」

 

 慌てたキンジに私がそう言うと、直ぐに言い澱む。

 入り口に向かう途中に見たカナさんの腕前を考えると、ヒステリアスモードのキンジならともかく普段のキンジでは戦力になる事は厳しい。

 アリア相手に圧倒的優勢に闘っているのがその証拠。

 キンジ自身も気が付いている。

 それでも私を行かせたくなさそうなのは、多分何か別の理由があると思う。

 私の性格か腕前か、それとも他にもあるのか知れないけど私には分からない。

 

 パシンっ!!

 

アリア 「うっ!!」

 

 今の鞭の鳴る音に近いのは、アリアの防弾制服に弾が命中した着弾音。

 ここで悩んでいる暇は無さそう。

 真剣見のある目でキンジにもう一度確認する。

 

大和 「キンジの代わりに私が行くよ?」

キンジ 「くっ・・・・アリアを頼む。だが危なくなったらすぐに戻って来い!」

 

 キンジは苦い顔をしつつ苦渋の決断をする。

 一方私は微笑を浮かべつつ、キンジに伝える。

 

大和 「大丈夫、アリアはちゃんと助けるから。」

 

 私はこの日に備えて用意した発煙弾を手に持ち、ピンを抜いて入り口から中央付近に投擲する。

 投げ込み転がった発煙弾が破裂し白い煙を撒き散らす。

 

生徒1 「うわっ!煙で何にも見えない!換気扇のスイッチは何処だ?」

生徒2 「おいおい良いところだったのに、誰だ発煙弾を撒いたのは!!」

生徒3 「待て、これは何かの策かも知れないぞ!」

 

 周囲の生徒から突然の煙に驚きの声が上がる。

 うん、ちゃんと視界は切れているみたい。

 

アリア 「えっ何よこの煙!うっゴホゴホッ!しかも妙に煙たいわ!」

 

 一方視界が突如白煙で覆われたアリアは、咳き込みながら奇襲に備えて周囲を警戒する。

 その間私は存在感知を使ってアリアに近付く。

 

アリア 「そっちにいるのね!!」

 

 私の気配をカナと勘違いしたアリアが、私にガバメントを向けトリガーを引こうとする。

 

大和 「アリアストッブ。私、大和だよ。」

アリア 「大和?何の用事?今アタシは忙しいのよ!」

大和 「貴方のパートナーのキンジが心配しているから、勝負を止めて欲しい。」

アリア 「嫌よっ!!このまま逃げるなんてバッカじゃないの!!」

 

 視界不良の中、アリアはその犬歯のような歯を剥いて私に叫ぶ。

 それに対して私はアリアに諭すようにゆっくり伝える。

 

大和 「武偵は何時でも冷静にだったよね、アリア。この勝負、私に譲って貰えない?アリアも分かるでしょ?パートナーを心配させたらいけないって。それに私がアリアの代役になるからアリアは逃げた事にはならないよ。」

 

 最初は血の気満載のアリアだったけど、キンジの単語が出てきてから大人しくなり、犬歯を納めて言った。

 

アリア 「・・・悔しいけど、キンジを心配させる訳にはいかないわね。良いわ、変わって上げる。でも!アンタが負けたらアタシは絶対許さないわよ!!」

大和 「勝てはしなくても負けはしないよ。今向いている方向にそのまま真っ直ぐ進めば入り口まで行けるから。」

アリア 「分かったわ───あ痛たっ!?」

 

 惜しいアリア。

 絶妙に入り口から1m横に逸れてガラスに正面衝突している。

 でも何とか外に出れたみたい、良かった良かった。

 

生徒 「ようやく煙が消えて───おろ?」

生徒 「なんで宮川さんがいるんだ?神崎さんの代わりって事か?」

生徒 「だがあの絶対守護との闘いだぞ!また面白いそうじゃねえか!」

 

 やがて煙が換気で流され、アリアの代わりに私がいる事に歓声が上がる。

 防弾ガラス越しに浴びせられる興奮を尻目に、私は姿の見え始めた正面のカナさんへ視線を移す。

 

カナ 「あら?私はあの子と闘っていたのだけど、邪魔しないで貰えるかしら?」

大和 「アリアとは交代しました。だから代わりに相手になります。」

 

 丁寧に伝えた私の言葉にカナさんの目が鋭くなる。

 

カナ 「へぇ~そう。じゃあ絶対守護にお相手して貰おうかしら!」

 

 ───パァン!!

 

 カナさんの腰の辺りから閃光が煌めき、ほんの僅かに遅れて銃声が響き渡る。

 放たれた一発の弾は一直線に私の頭部へ飛翔する。

 でも私は回避しないし動かない。

 やがて銃弾は私の耳の側を通り、後方の防弾ガラスに着弾する。

 何に一つ行動を起こさなかった事にカナさんは意外そうな表情に変化した。

 

カナ 「撃たれても動かないなんて、反応出来なかったのかしら?ひょっとして、貴方はその程度?」

 

 カナさんの売り文句に乗らず、私は逆に否定する。

 

大和 「当たらない弾を避ける必要はないよね。それに貴方の使う銃。コルト・シングル・アクション・アーミー、通称ピースメーカー。違う?」

カナ 「これは驚いたわね。まさか一度で見抜かれるなんて思ってもみなかったわ。」

 

 カナさんは即座に行動や呼吸などを判断出来るよう、私に観察する視線を合わせる。

 にしてもさっきの攻撃。

 やり方は単純だけど、限界まで磨き上げる事で手に入れた奇襲に特化した業。

 

カナ 「是非とも、どうやって気付いたのか教えて欲しいわね。」

大和 「噂で聞いたりしない?私には奇襲は通用しないよ。狙撃でも変装でも暗器でも、そして早撃ちもね。」

 

 最後の単語言った途端、僅かにカナさんの瞳が大きくなり内心の動揺が見て取れた。

 その時、入り口から女性の声が聞こえる。

 

??? 「あー!何やっているんですか!C装備を着用しない模擬戦は武偵法違反行為ですよー!!」

 

 近くの湾岸署から来たであろう、私の知っている小柄な婦警がピーピーと笛を鳴らす。

 

婦警 「はいはーい!ここにいる皆さんは逮捕します!暴れないで下さい!」

 

 予想外に現れた国家権力の登場に、武偵三倍の刑を恐れパニックに陥る周りの生徒。

 

蘭豹「ふん、折角の余興が覚めたじゃねぇか。」

 

 更に追い打ちを掛けるように不機嫌の塊に変化した蘭豹先生が、周りの生徒にさっさと立ち去れと強力な殺気を放つ。

 すると動かないでと言った婦警の言葉なんか忘れて、生徒達が我先に体育館から脱出する。

 そして蘭豹先生が婦警をギラリと睨み付け口にした。

 

蘭豹 「教務科に来い。後でしっかり落とし前つけろよ───峰理子。」

理子 「あっあははは・・・・・」

 

 婦警に変装していた理子は、大量の冷や汗を流しながら空笑いをする。

 私は理子に対して冥福をお祈りをしてから正面に佇むカナさんに視線を動かすと、カナさんからの視線が芯のある別のものに変化していた。

 

カナ 「ごめんなさい。私は貴方を誤解してたわ。」

大和 「出来れば誤解し続けた方がありがたいんですけど。」

カナ 「貴方はいずれ・・・いや、もうすぐ混沌への入り口になりうるかもしれない。次は今回みたいに甘くないわよ。」

 

 そう話し、最初に私が投げ込んだ発煙弾をチラッと確認してクルリと反転。

 途中で軽く欠伸をしつつ第一体育館から去って行った。

 私はカナさんの一連の行動に疑問を持った。

 カナさん、貴方は何時だって何処だって本当は甘いんじゃないんですか?

 次はじゃなくて──╴今、仕留めない時点で砂糖や人口甘味料よりも遥かに甘過ぎます。

 何故その時まで私が生きていると思えるんですか?

 何故その時まで貴方が生きていると思うんですか?

 どうして当たり前のように次があると考えられるんですか?




科学の成れの果て:私には体が無いが生きている。何故ならカプセルの中の脳しか残っていないからな。
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