暴走神に敗れし者、この地に現れる   作:弓風

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6:キンジの兄

 四対四戦から数日経った放課後。

 俺は自室に帰ってのんびりとインスタントコーヒーを味わいつつ、ソファーに座ってテレビで適当な番組を観たりなどの、変わらない日常を過ごしていた。

 すると、ズボンのポケットの入れてあった携帯が震え始めた。

 

キンジ 「んっ?」

 

 誰からだ?

 コーヒーを持たない左手をポケットに入れ、携帯を取り出して誰からの電話か確認してみる。

 開いた携帯の画面は大きく金一と表示されていた。

 普段から忙しく、あんまり連絡の取れない兄さんからの電話に珍しさを感じた。

 珍しいな兄さんから電話なんて、ともかく出てみるか。

 通話のボタンを押して携帯を耳元へ持っていく。

 

キンジ 「もしもし。」

金一 「「おっキンジか、久しぶりだな!学校は楽しいか?」」

 

 電話越しから元気そうな兄さんの声が聞こえてくる。

 兄さんの声を聞いて、俺は自然と表情が弛む。

 俺にとって兄さんは大きな憧れで目標だ。

 俺なんかより凄く強いし、義に厚い性格をしているから俺も兄さんみたいになりたいと頑張っている。

 実際俺が武偵の道を選んだのも兄さんが要因だ。

 

キンジ 「まぁまぁ楽しいよ。それでどうしたんだ兄さん?電話なんて掛けてきて。」

 

 兄さんに電話して来た理由を言ってから、右手に持つコーヒーを口に含む。

 

金一 「「あぁ、その事なんだが。キンジ、お前・・・パートナーが出来たらしいな。それも女子となったら連絡するに決まっているだろう。」」

キンジ  「───ブッ!?」

 

 兄さんが言ってきた台詞に思わず口に含んだコーヒーを吹き出す。

 ゲホッゲホッ!あっしまった!

 コーヒーを吹き出したせいで床が汚れちまった・・・って、今はそんな事はどうだっていい!

 

キンジ 「ちょっ!なんで兄さんが知ってるんだよ!」

 

 俺は動揺しながら口を開く。

 大和と組んでからほんの数日しか経ってないぞ!

 情報流れるのが早すぎるだろ!

 

金一 「「おいおいキンジ、俺の情報網を舐めるなよ。このくらい即座に判明するぞ。」」

 

 一方兄さんは当たり前だろ的な口調で返答される

 兄さんこえーよ!冗談抜きでこえーよ!

 んっ待て?これって、つまり俺の恥ずかしい情報も知られているって事だよな・・・・・

 おーい、俺のプライバシーは兄さんから丸見えって意味じゃねぇか!

 

キンジ 「まぁ・・・いい。それで兄さん。俺のパートナーがどうしたのか?」

金一 「「いやな、女が苦手なキンジがパートナーにした女子が気になったんだ。だから出来れば少し顔を見せて欲しいと思っているが、大丈夫か?」」

 

 なるほど納得したぞ。

 要は大和と会いたいから連絡してきたと。

 確かに女が苦手な俺がパートナーに女子を選んだんだからな。

 兄さんとしても気になるよな、そりゃあ。

 

キンジ  「そうだなぁ。大和が言ったら問題ないと思う・・・ちょっと聞いてみる。」

金一 「「ほう?パートナーの名前は大和と言うのか。キンジ、普段の会話でも情報が抜かれるから気を付けるんだぞ。」」

 

 げっ!今のは完全に迂闊だった。

 兄さんの注意通り、武偵にとって情報が引き抜かれるのは色々とやべぇ。

 

キンジ 「・・・気を付けます。取り敢えず聞いてみるから一回切る。」

金一 「「良い連絡を期待しているぞ。」」

キンジ 「それは俺に言わないでくれ。」

 

 良い連絡っても、まぁ大和なら間違いなくOKを出すとは思うけどよ。

 俺は兄さんとの通話を切って、大和の携帯番号で再び連絡する。

 大体数コールした後、電話が繋がった。

 

大和 「「もしもし。キンジ、どうかしたの?」」

キンジ 「あぁ実はな───」

 

 大和に兄さんが会いたい事を一通り伝える。

 伝えた時の反応は悪くはなかったが、どうだろうな。

 

大和 「「うんうん。つまりキンジのお兄さんが私に会いたいと。」」

キンジ 「もし嫌なら無理と伝えるぞ。」

大和 「全然大丈夫だよ。私もキンジのお兄さんに会ってみたいし。」

キンジ 「じゃあ兄さんにそう伝えておく。」

 

 大和から会う了承を取り付け、翌日の休日に俺の実家に集合となった。

 

 

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 いやー、まさか昨日いきなりキンジのお兄さんが私に会いたいと言われるなんて思わなかった。

 そもそもキンジにお兄さんが居たんだね。

 相手の家族構成とかは極力聞かないようにしていたから知らなかったよ。

 しかしキンジのお兄さんかぁ。どんな人なんだろう?

 兄弟だからって互いに性格とかが全員似ている訳なんてないから、正直想像も出来ない。

 でも外見に面影はあるかも知れないかな?

 大人になったキンジみたいな感じを想像する。

 こうして予想するのも良いけど、時間に間に合うようにしないとね。

 えーと、キンジの実家には電車で行くから途中で何か買って行って。

 

大和 「忘れ物は無いかな?」

 

 銃よし、フックショットよし、服よーし。

 普段は武偵高の制服か寝間着位しか着る事のない私だけど、キンジの実家に行くんだから制服で行くのはどうかと思って、今日は数ヶ月ぶりの私服。

 といってもそんな大層な物ではないよ。

 白シャツに黒のロングスカートの簡素な物。

 シンプルな白黒だけど、人前には見せれる位にはなったのかな?

 基本ファッションに興味ないから本当にこれで良いのか判断出来なくてね。

 色々詳しい弓が居れば聞いたんだけどねぇ。

 前の世界で弓に口うるさく服について指導されたのが懐かしいよ。

 おっと、呆けている暇はないんだよね。

 そして危うく忘れる所だったよ。雨風改を持って行かないとね。

 普段は持って行かないけど、ちょっと前に誰かが部屋に侵入した形跡があった。

 幸い何も取られてなかったけど、今後の為に安全第一を考え、出る時は鞘袋に入れて一緒に持っていく事にしていた。

 小太刀の方は置いておくよ。

 手間と世間体を考えれば二本持ち歩くのは少し厳しい。

 それに最悪取られてもまだ痛手で済む。

 雨風改はそれ自体が爆弾みたいなものだし、私にとっても死活問題。

 

大和 「よし、それじゃあ出発しますか。」

 

 白いリボン付きの黒い中折れ帽を被って寮を出る。

 寮から駅まで徒歩で移動し、駅前の店で適当な手土産を買ってから電車に乗る。

 うーん。手土産に和菓子を選んだけど、洋菓子の方が良かったかな?・・・まぁいっか。

 手土産の中身について考えたりしながら電車に揺られる。

 しばらく揺らされていると降りる駅に到着し、駅を出た頃には既に日が真上に上がりきっていた。

 改札口の前にいる広場で腕時計を確認する。

 時間は、何もなければ十分間に合うね。

 私は駅からキンジの実家まで再び歩いていく。

 駅から何kmか歩いた所で、キンジの実家だと思われる家の前に到着する。

 ここでいいのかな?

 一見すると古そうな大きな平屋、でも見る限り結構状態は良さげ。

 これなら少々の地震が来てもびくともしなさそう。

 さてと、チャイムを鳴らす前にもう一度教えて貰った住所と合っているか確認しないと・・・うん、多分合ってるね。

 もし間違っていたらちゃんと謝らないとね。

 それじゃあ押そうかな、よっと。

 指でチャイムのボタンを押すと、中からピンポーンと音が聞こえてきた。

 鳴らして二十秒位したら、家のドアが開いて中からキンジが現れる。

 

キンジ 「おっ来たか。ほら入って来い。」

大和 「お邪魔します。あとキンジ、これ手土産。」

 

 駅前で購入した手土産を差し出し、キンジが申し訳なさそうに受け取る。

 

キンジ 「あぁ、すまないな。別にそこまでしてもらわなくても良かったのだが。折角だ、ありがたく貰っておくぞ。それでこっちだ。」

 

 玄関で靴を脱ぎ、木製の廊下を通過して奥のドアをキンジが開く。

 案内された部屋は畳の敷かれた部屋で、中央に大きめの机が一つ置かれ、周りに座布団が幾つか並べられていた。

 

キンジ 「兄さんを呼んで来るから好きな所に座って待っといてくれ。」

 

 キンジはそう言って部屋を出ていった。

 んー好きな所、これって何気に難しいと思う。

 中央に座るのもどうかと思うし、かといって端過ぎても失礼に当たりそうよねぇ。

 ちょっとだけ考えて、端から一個隣に座るようにした。

 そしてちょうど座ったタイミングで部屋のドアが開き、若干キンジの面影がある若い男性が入ってきた。

 

金一 「ようこそ遠山家へ。俺は遠山金一。知っているだろうがキンジの兄だ。」

 

 へぇーこの人がキンジのお兄さんなんだ。

 何と言うか、キンジには悪いんだけど正直印象的にはキンジより頼りになりそう。

 

大和 「初めまして。キンジに御世話になっております、宮川大和と申します。私の事は大和とお呼び下さい。」

 

 スッと立ち上がり、私は頭を深く下げる。

 

金一 「じゃあ遠慮なく大和と呼ばせて貰おう。今キンジにお茶と菓子を頼んであるから、ちょっと待ってくれ。」

大和 「ありがとうございます。」

金一 「ハハッそんな固く苦しくする必要はない。まずはお互いの事を良く知ろうじゃないか。座って話でもしよう。」

 

 お兄さんは私の正面の座布団へ行っても直ぐには座らなかった。

 ここでキンジのお兄さんなら多分キンジみたいに律儀だと考えて、客人である私が先に座ると、思った通りお兄さんが後から座布団に座る。

 そしていきなり私が話すのが難しいと考えたらしく、お兄さんの方から簡単な自己紹介を始める。

 

金一 「俺から自己紹介をしよう。さっきと重複するが俺の名前は遠山金一。キンジから聞いていると思うが俺の職業は武偵だ。依頼の内容は警備やら犯人探しやら、救助とか。良くあるのはそこら辺だな。」

 

 お兄さんの自己紹介をした後は私の順番。

 ここは物怖じせずハッキリと答える。

 

大和 「キンジのパートナーの宮川大和です。キンジとは同じクラスメイトで、同じ強襲科に所属しています。」

金一 「強襲科か。正面から戦い合う難しく死亡率の高い役職だ。苦労が絶えないだろう。それで話せるならで構わない、可能ならランクを教えて貰えないか?」

大和 「一応Sランクです。」

 

 するとお兄さんは、驚いて感心するような様子を見せて言った。

 

金一 「ほぉ、Sランクとはすごいな!」

大和 「いえいえそんな事は。」

金一 「謙遜する必要はないと思うが。Sなんて才能があっても中々取れないからな。」

キンジ 「そうだぞ、大和。」

 

 その時キンジがタイミングよくお盆を持って来て、お茶やお菓子を机に置き、私の隣に腰を下ろす。

 

金一 「所でキンジは迷惑を掛けてないか?」

大和 「・・・そういえば、この前の四対四戦で見事に私の所まで敵を誘導してくれた事があったなー。」

 

 と、若干首をかしげながら棒読みで口に出す。

 

キンジ 「ちょっ大和!」

 

 多分キンジとって嫌な思い出であろう出来事を口に出されて慌てたキンジに、お兄さんの若干鋭くなった視線で睨まれると反射的にすぐに引っ込んだ。

 今の状況で、キンジはやっぱりお兄さんには勝てないんだねって実感したよ。

 

金一 「こんな弟ですまないな。」

大和 「いえいえ、別に問題ありませんよ。場所によっては私がバックアップしますから。それに今は私の大切な人ですから。」

 

 私は穏やかな顔で本心からそう伝える。

 でも本心からそう想う一方、今後周りの状況や性格の変化でもしかしたら敵になるかも知れない。

 ひょっとしたら最悪手を掛ける可能性も0ではない。

 だからどうしても今はって意味になっちゃう。

 でも私のわだかまり知らないお兄さんは、私の言葉で良い意味で解釈して笑顔になる。

 

金一 「ハハハッ良かったキンジ。こんないいパートナーを見つけて。」

キンジ 「あぁ、ありがとな・・・・・」

 

 私が横を振り向いてキンジと目と目で視線が合うと、キンジはスッと視線を素早く逸らす。

 視線を逸らしたキンジの耳が赤く変化している。

 あれあれ?キンジは照れてるのかな?

 

キンジ 「そっ、それより大和について聞いたらどうだ!」

 

 よっぽど恥ずかしいのか、話題を強引に変えてくる。

 

金一 「それもそうだな。うむ、なら例えば戦闘とかで何が一番得意なんだ?」

 

 得意・・・得意って言っても結構複数出来るし。

 うーん、なんだろう?何があるのかな?

 狙撃とか?でも別段上手い訳でもないから得意じゃないと思うし。

 

大和 「得意なもの・・・・うーん、キンジどうだろう?」

キンジ 「得意といっても大和は結構何でも出来るからな。よく考えて見れば、近接、狙撃、諜報、手当て、思い付くもの何でも出来そうだよな。」

大和 「それは買いかぶり過ぎだよ。」

 

 私もキンジもお兄さんの質問に対する解答に困る。

 

金一  「聞いた限りだがなんと言うか、えらく万能だな。そこまで出来るなら一人いるだけでだいぶ助かるだろうに。」

 

 じゃあ格闘?一応人並み以上には自信があるけど、所詮は防御位しか・・・・・あ、一つだけ飛び抜けて得意なものがあった。

 

大和 「得意なものが一つだけありますよ。私は防御だけはある程度自信があります。」

キンジ 「それがあったか!」

金一 「防御?キンジ、大和はそんなに上手いのか?」

 

 お兄さんが興味深そうにキンジに問いかけ、キンジは大きく頷く。

 

キンジ 「間違いねぇよ兄さん。多分大和以上に防御が出来るような奴はあまりいないと思う。今のところ、うちの学校で大和の防御を越えた奴はいないからな。」

金一 「それはちょっと気になるな。」

大和 「えーと今度、手合わせでもします?」

 

 私もキンジのお兄さんがどのくらい強いのか気になるしね。

 

金一 「おっそれは今度快く受けさせ貰おう。ところで話は変わるがいいか?さっきから気になっていたのだが、その棒状の物はなんだ?」

 

 キンジのお兄さんはそう言いながら、私が床に置いた刀に興味を示す。

 

大和 「これですか?ちょっと待って下さい。」

 

 私は刀を袋から取り出し両手で支えてお兄さんへ手渡す。

 渡された刀をお兄さんとキンジは眼を凝らして眺める。

 

金一 「これは───刀か?」

キンジ 「あれっ?お前、刀なんか身につけていたか?」

大和 「いやいや、ちょっと事情があってね。」

金一 「抜いても大丈夫か?」

 

 お兄さんが確認を取ってくる。

 まぁ抜くのはー、これから暫く携帯するから別にいいかな。

 

大和 「どうぞ。」

 

 私が許可を出すと、お兄さんが割れ物を触るみたいに慎重に刀を抜く。

 抜かれた私の雨風改は、天井に吊り下げられた照明の光が透き通った紺青色の刀身に反射し、机の上にステンドグラスを通したような反射光が当たる。

 普通の鋼鉄とは全然違う色、二人が興味津々なご様子。

 

金一 「持っただけで分かる・・・良い刀だ。」

キンジ 「何で色が青いんだ?」

大和 「悪いけどそれは言えないかな。」

金一 「───まさか、な。」

キンジ 「どうかした?」

金一 「いや、何でもない。良い物を見せてくれありがとう。」

 

 お兄さんはお礼を伝えて私に刀を返す。

 何か言ったら気がするけど、気にしないでおこう。

 

金一 「ところでキンジ。あれはしっかり話したのか?」

キンジ 「あれって?」

 

 お兄さんにあれの意味が何なのか分からないらしく、キンジは逆にお兄さんに問う。

 前の優しい雰囲気は無くなり、真面目に真剣味を帯びた目線であれの意味を言い放った。

 

金一 「HSSだ。」

キンジ 「─────ッ!!」

 

 キンジの表情が最悪の出来事を目の当たりにした風に強ばる。

 HSSってなんだろう?

 反応から見て、少なくともキンジの嫌がるものだとは判断出来るよ。

 

金一 「はぁ。これからパートナーになる相手だぞ。ちゃんと話しておけ。」

 

 キンジの様子から私にHSSについて何も話していない見切ったお兄さんは呆れて大きなため息をつく。

 

キンジ 「いずれ話さないとは思っていたんだが、なかなか踏ん切りがつかなくて・・・・・」

 

 キンジは頭を掻きながら下へうつむく。

 割と冗談抜きで何やら深い事情がありそう。

 

金一 「まったく、しょうがないから俺が話そう。大和も大切な話だからしっかり聞いてくれ。」

 

 お兄さんは遠山家について話し始めた。

 その話の中にHSSが登場する。

 ヒステリア・サヴァン・シンドローム。

 通称HSS───それは性的興奮によって能力を上げる遺伝子が存在しているらしい。

 しかもHSSが働いている間は大きく性格も変わるらしい。

 HSSは遠山家全員に組み込まれており、それは勿論キンジにも遺伝していると。

 確かに他人には言いづらい。

そ れに性的興奮って言う事は、一部の例外を除けば私みたいな女性が原因で起こる。

 成る程ねぇ。

 道理でキンジが女性が苦手な様子で、四対四でも急に雰囲気が変わった訳ね。

 

キンジ 「ハッハッハ!軽蔑しただろう・・・・・」

 

 うわぁ外からでも感じる。

 キンジが負の雰囲気で一杯になっているよ。

 キンジにとって巨大な黒歴史を出されたようなものだからそうなるよね。

 私は同情しながらもキンジの言葉を考える。

 まぁでも・・・軽蔑ねぇ。

 

大和 「私は特に軽蔑したりはないよ?」

キンジ 「はっ?普通に考えれば気持ち悪いだろ。」

 

 顔を上げたキンジからあり得ないだろお前的な感情が見て取れるが、私は変化なく言い続ける。

 

大和 「もう一回言うよ?私はキンジを軽蔑したりはしないよ。」

 

 キンジはHSSを爆弾並みのデメリットだど考えているけど、それはあくまで自分の主観でしかない。

 私のように他の人の価値観だとキンジの思うHSSと違う風に見えるもの。

 と言っても、確かに他人から見えても嫌な気持ちになる子が多いのは否定しないよ。

 公共の価値観と正反対だし、いきなり想定しないものが露になって動揺する子もいるだろうね。

 でもね。このくらいなら私にとって嫌とは思わない。

 キンジには失礼かもだけど、HSSは私にとってキンジを構成するものの一つ。たったそれだけの話。

 

大和 「大丈夫だよ、安心して。HSSがあってもキンジはキンジだよね。」

 

 ニコッと笑顔を見せながら私はキンジへ伝えると、キンジは無言で居間で出ていく。

 一方お兄さんは安心したように小さく呟いた。

 

金一 「本当に良かったな。大事にするだぞ、キンジ。」

 

 その後、お互いに質問をしていろんな話が聞いている間、キンジのおじいさんとおばあさんが帰ってきて、宴会騒ぎになってたりもした。

 そこでお兄さんが銃弾撃ちっていう技を見せてくれたりもしたね。

 こうしてたまには盛り上がるのも悪くないと思う。

 それからというもの、キンジとパートナーを組んでから小さいけど様々な依頼を受けたよ。

 HSS無しのキンジは結構ヘマをするので、その都度援護に動いた。

 なんか子守りみたいだよね、これ。

 あとは・・・なんだかんだキンジの実家に時々お世話になってもいる位かな。

 私としてはそのまま楽しい日常を過ごせると良かった───けど、日常は突如崩れ去るものと私は昔も今も先になっても知っていたし、分かっていた。

 実際キンジとのパートナーを組めた期間は僅か数ヶ月。

 これからお互いに大きな事件に挑もうかなって思う頃だったね。

 そして日常が崩れ去った理由は、2008年12月24日の浦賀沖海難事故。

 ある意味この時からが───全ての始まりでもあったよ。




 答えを知らない科学者の体験:目に見えない空間の下が溶解しているみたいだ。しかし熱は発していない、どういう事だ?
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