幸村と佐助が呉に来てから数週間が過ぎた、幸村は朝の鍛錬が日課となっており、時には佐助や雪蓮や祭との組手をやっている。
今朝の組手には佐助が付き合っていた、その組手が終わると幸村は今度は呉の兵士たちを鍛えている。勿論内容は武田式修練である。
そのうち呉の中にも幸村のように熱血!!と叫びながら突進する兵や武田騎馬隊のような騎馬隊もできるかもしらない、と思うと佐助は人知れずため息を付く。
「俺様暑苦しいの苦手なんだよね」
佐助のその呟きも幸村や兵士たちの声にかき消されていった。
訓練所を後にした佐助ははっきり言って暇であった、彼の主な仕事は情報収集にある。今の所大きな動きはないのでさほど情報収集の必要はないのでやることがなく暇しているのだ。
余談ではあるが呉に所属することにしたので佐助は幸村を前の様に旦那と呼んでいる、大将は雪蓮である。
「はぁー、俺様手持ち無沙汰だね。なんかないのかね?」
「ほう、暇なならば私の仕事を手伝ってもらうか。なぁ、猿飛よ。」
後ろからの声に佐助が反応し振り変えるとそこには何処か怒った表情で断じて笑顔とは呼べない笑顔で呉の大軍師こと冥琳がそこにいた。
「あら〜、もしかしてご機嫌斜め?俺様なんかしたのかな〜?」
恐る恐るといった口調で冥琳に言葉をかける佐助、それが的中したのか冥琳の表情が更に険しくなり誰が見ても怒っている表情になった。
「いや、したのは雪蓮だ。だが残念だったな猿飛。私は今虫の居所が悪かっただけだ、そんな私の前で暇だと言った貴様が悪い。」
「ちょ?!それって八つ当たりじゃん!!俺様ただのとばっちりじゃないの?!」
「兎も角貴様も手伝え、私の…いや雪蓮の残していった仕事のな」
佐助は冥琳に引っ張られる形で執務室に連行された。
執務室に辿り着きなかに入る佐助、そこには呉のもう一人の若き軍師穏が書類と格闘していた。
「あっ、冥琳様お帰りさないませ〜。雪蓮様はその分だと見つからなかったみたいですね〜」
「ああ、その代わり佐助を連れてきた。佐助も書類整理ならできると言っていたからな」
冥琳と穏の会話を聞き軽く苦笑いを浮かべる佐助、穏の話を聞くとやはりこの書類の山は呉の総大将雪蓮のものらしい。
(うちの旦那は時間は掛かってもちゃんとやったのにな〜)
と心のなかで愚痴る、最初は苦労したな〜と何処か遠くを見る。その様子からしてかなりの苦労をしたようだ。
そうこうしているうちに佐助、冥琳、穏との三人で雪蓮の残した書類をかたずけ始めた。そんな時。
「あっ、お茶がなくなりましたね〜。私淹れてきますね〜」
そう言いながら穏が部屋から出て行く、残った二人は。
「…………」
「…………」
只々無言であった。
(き、気まずいね〜。早く穏戻ってきてくれないもんかね?)
と心のなかで愚痴る佐助であった、しかし、そんな空気を破ったのは。
「佐助、お前に尋ねたいことがある。」
冥琳からであった。
「な、何かな俺様に聴きたいことってのは。できる限りなら答えるよ!!」
この空気を変えるため冥琳の言葉に食いつく佐助。
「なら遠慮なく聞くが、佐助。貴様は何者だ?」
冥琳の言葉に再び執務室に沈黙がその場を支配する、心なしか佐助の目も鋭くなっていた。
「雪蓮も言っていたがお前はまるで人間の皮を被った何かだといっていたぞ、奴の勘は恐ろしいほど当たるからな。で、どうなのだ佐助」
冥琳の言葉に佐助はしばらく押し黙る、そして。
「そういうこと言われるの二回目だね、前も言われたよ右目の旦那に。忍の皮を被った忍だとね」
右目の旦那とは幸村の宿敵伊達政宗の右目であり伊達の軍師片倉小十郎である、上田城でのあの一戦で言われた言葉てある。
「でも、あんたらには何の危害も加えないよ。俺様はあんたらに使えているんだからね。それだけは約束するよ」
二人の視線が交わし交差する、少しの沈黙のあと冥琳が話し始める。
「なら今はその言葉を信じよう、雪蓮も多分大丈夫だと言っていたしな。」
「もしかしてそれも勘ってやつ?」
佐助の質問に冥琳は細く笑うだけであった、それを見た佐助はやれやれと肩をすくめていた。
穏が帰ってきて三人で書類を形ずけていく、終わったのはその日の夜であった。
後日佐助と冥琳の罠によって捕まった雪蓮は一日中佐助の監視下の元書類をひとりでかたずけさせられていた。