Side 焔紫
―――さあ、今日からピッカピカの一年生!身に余る大望も、ちょっと痛い妄想も何もかもが許される高校生活!!しかもここは国立雄英高等学校、普通なら妄想と切り捨てられてきたことを現実に成してきた偉人たちの通過点である。ここなら他の学校とは一味もふた味も違う清く正しく壮大な生活が送れる。そう思っていたのだが…。
「机に足をかけるな!諸先輩方や製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!!」
―――何だこの低レベル過ぎる会話は。無駄に潔癖な上に無暗に干渉してくる人間と人からの見られ方が及ぼす悪影響や周りの被害すら想像できない人間。こんなのが将来有望なヒーローの卵、ねえ・・・?まあそんなことよりも――――。
「(…出、気持ちは分かるが殺気は隠せ。こんなくだらない事で悪目立ちする必要もないし、下手したら素性がばれるぞ)」
「(――ッ!?ご、ごめんね。つい…変わらないなって思ってさ。あんなことがあったのに何も……)」
「(それで変わってくれるならお前はこんなところに来ちゃいない、だろ?さ、早く席に着くぞ。入り口で屯してもはた迷惑だからな)」
となりで着火しかけている爆弾に水を差してから席に着く。『かっちゃん』とやらの真横を通るが特に気にする様子もなし。まあ人相が大分変わっているからしょうがない。濃い緑色のもじゃもじゃヘアーは僅かに毛先に緑色が残ってる白髪のストレートヘアー(ただし縮毛強制までかけてるのに毛先だけはすぐにもじゃる)だし、パッチリ開いていた目も今は常に不機嫌そうに細めて眉間にしわ寄せてるからな。名残なんて精々毛先とソバカス位だ。
なんて考えていると、寝袋から小汚い男性が脱皮して出てきた。口ぶりから察するに雄英の教師のようだな。合理性がどうとか言っていたが、少し手入れすれば無くせる悪印象を放置しておくのは非合理ではないのだろうか?
―――所変わって、現在俺達はグラウンドにいる。初日から『個性把握テスト』という個性ありのスポーツテストを行うらしい。その時誰かが口走った『面白そう』が逆鱗に触れたらしく、トータル成績最下位は除籍処分にすると公言した。
近くに居たポニーテールの女生徒ははったりだと考えているようだが、それは恐らく半分正解で半分間違いだ。『成績最下位』、これは嘘だろう。心構えでブチ切れたのに成績で決めるのは少々ずれていると言えるし、此処に居る連中は全員『倍率300倍を乗り越えられる程度の実力』は持ち合わせている。実力で即見込みなしとみなされる奴は普通いない。
なら何故あんなことを言ったのか?恐らく能力ではなく、メンタル的な意味で見込みのない奴を選定するためだろう。自分の能力に胡坐をかくような奴は、好成績が出そろえば間違いなく安心して肩の力を抜くだろう。それどころか真面目にはやっても全力で取り組まなくなるかもしれない。だがそんなことをすれば『そんな腹づもりで3年間過ごす気なのか?』という言葉から何も汲み取れなかったことになる。結果どうなるかは言うまでもないだろう。
長々と述べたが、そういう結論に至った俺は出に注意を促そうと思ったが、どうやら必要ないらしい。これ以上ないくらい全力で取り組んでくれそうだ、ただし先生の意を汲み取ったのではなく昔の知り合いへの報復からだが。いやよかった、このテストは出の独壇場だ。だから慢心することだけが不安だったが杞憂で終わりそうだ。
それから時は過ぎ、全ての項目が終了し残るのは結果発表のみ。―――え?内容?測定不能以外全部出が一位、以上終了。どっかの誰かの顔面が凄い事になっていることくらいしか特筆すべきことが無いんだ。俺は自慢の身体能力を駆使して下位をキープして終了だ。残念ながら俺の能力はこういった試験には不向きなんでな。
結果発表後、一部の連中が顔を真っ青にしていたが相澤先生の口から出た言葉は『除籍云々は本気を出させるための合理的虚偽』だった。まあ、一人も手を抜かずに全力で挑んでたから、かな?周りは最初からそうだと思ってたなどといってるが、多分同じこと次言ったら間違いなくそいつを除籍にすると思うんだが。
あーあ、出の奴随分色んな奴に囲まれてるな。あれだけ目立てば当然だろうが、目が笑えてないぞ。後付けされたもので他人からの目や手がこうまでひっくり返されると呆れる通り越して憎悪しかわかないだろうからな。どれ、さっそうと助けてやろう☆
「とうッ!!コラコラ、この後が幾ら放課後だからといって長く引き止める物じゃないぞ☆俺達はクラスメイトなんだ、これから語り合う時間は幾らでもある。思いやりはヒーロー活動の第一歩だぞ」
「わッ!?あ、君は…たしか全然個性使ってなかった人だよね?なのに成績が全然悪くなかった、確か守屋君、だっけ?」
「うむ、俺は守屋 焔紫。これから3年間よろしくな!あと、個性を使わなかったのは舐めプとかではなくて単純に競技でまったく使い物にならないからだぞ☆こっちの出とは似てないが一応兄弟だ!さて、そういう訳で俺達はこれで失礼させてもらうぞ!さあ行くぞ出、親父に今日のお前の活躍を存分に語り聞かせてやらねばふはははっはあッ!!!」
「え、あっちょっと……って、行っちゃった。何か体は大きいのに子供みたいな人だね」
「まあ良いじゃねえか、それにあいつが言ってた通り話なら明日でも出来るんだし。『思いやりはヒーローの第一歩』か。ここ最近競争だの比べ合いだのが多かったし、ちっと初心に帰らないとな。よーし、燃えてきたぜッ!!」
Side out
場所:守屋邸
「ほうッ!イズル君は『創造』の個性を超えて一位を掴み取ったのかね。これは目出度い!今日は御赤飯を炊かないと!!まあ実を言うと既に炊いてあるんだけどねッ☆」
「ありがとう御座います、帝司おじさん。でもあんまり嬉しくないんですよね、結局個性が全てなんだって改めて思い知らされたようで……」
「ノンッ!!君の『個性』を使える様にしたのはたしかに私だけど、完璧に制御し、ふさわしい肉体に仕上げたのは紛れもなくキミだ。『個性』を誇れないのならせめて君自身の『努力』は誇ってあげなさい。それに社会が個性しか見ないのなんて今に始まったことじゃないじゃないか!そんな社会が変えたくて我々は活動している。そうだろう?」
「……はい!じゃあさっそくお茶碗によそっていきますね。運動したからお腹減っちゃって」
「うんうん。食欲のままに貪るのも若い内の特権だよ!年甲斐もなく暴食したらすぐに腹筋の下から肉が競り出てくるからね☆あと、『おじさん』なんて他人行儀なこと言わずに『ダディ♡』と呼んでくれて良いんだよ?」
「…良い年したおじさんが語尾に☆を付ける物じゃないと思うんだが。あと微妙に犯罪臭がする言葉のチョイスは止めてくれ」
「何の、アンチエイジングは長生きと呆け防止の秘訣だぞ☆体育の成績が悪かったからってお父さんに当たっちゃ駄目じゃないか。例え順位が悪かったとしても、私にとってキミたちの頑張りはそれだけで宝物なのだから」
「……」
「さあ、これからも君達には大いに期待しているぞ!恐らく直に実践訓練が始まるだろう。その時はイズル君だけでなくホムラ君も本気が出せる。今度は二人揃っての戦勝祝いを聞かせてくれるだろう?」
ここまでご覧いただきありがとうございます!次話あたりから二人の『個性』を出していけると思います。感想・質問等いつでも大歓迎です!!