僕らのアヴェンジ・アカデミア!!   作:章介

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第二話

 

 

 

 

 

 数日後、雄英高校における授業は恙無く行われていた。内容は世間一般に教えられている五教科も含まれており、この一面だけで見ればヒーロー科とは思えないだろう。ただし、難易度は世間とは比べ物にならないほどであり、どのくらいかというと倍率300倍を乗り越えてきた連中の多くが今から中間試験に怯えているくらい、と言えば分って貰えるだろうか?

 

 

 しかし、次の時間は違う。誰もが(約2名を除く)期待に胸を膨らませ、今か今かとその時を待ち焦がれている。そう、次の授業はヒーロー基礎学。彼の平和の象徴:オールマイト先生による初授業だからだ。

 

 

 

「わーたーしーが、普通にドアから来た!!」

 

 

「おおおおおッ!!本物、本当に先生やっているんだな…!!」

 

 

「銀時代のコスチュームだ!画風が違い過ぎて鳥肌が…」

 

 

 

 なので、先生が壇上に上がるだけで大騒ぎとなる。これが相澤先生なら『授業の進行妨害だ』と言ってキレている所だが、オールマイトは全く気にしておらず、寧ろ自分を歓迎しまくってくれているこの雰囲気を喜んでいるほどだ。

 

 

 

「早速だが今日はコレッ!!戦闘訓練!!当然唯の組手なんかじゃない。実践を見据えた演習だ。だから――――」

 

 

 説明しながらオールマイトは手元を動かし、それに連動するようにロッカーが現れる。その中には、生徒其々の要望を忠実に取り入れた『戦闘服』が収納されている。

 

 

 

「―――まずは恰好から入ってもらう。これもヒーローへの第一歩だ少年少女!!そして自覚するのだ!!今日から自分は、ヒーローなんだと!!!さあ、始めようか有精卵共!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Side 焔紫

 

 

 

 ――――マズイ、これまでも色々トラブルがあったが今回は本当にやばい。俺自身については全く問題ない。寧ろ考えうる最高のカードが揃った。ここまで来ると負ける方が難しいくらいで、個性把握テストの成績を挽回するこれ以上ないチャンスだ。

 

 

 じゃあ何が不味いのか?それは勿論出の方だ。よりにもよってあの『かっちゃん』とやらとの対決だ。まず冷静ではいられないだろうしなあ。やり過ぎてヒーローに相応しくないとかにならないよな…?

 

 

 あ、誤解の無いように断っておくが、出が膝を着かされるとは欠片も考えてない。試合の方はどうなるか知らんが、はっきりいって個性持ちはあいつに勝てるはずが無い(・・・・・・・・・・・・)。そのくらい対人及び競争に置いて理不尽な『個性』だ。それからもう一つ、こっちも不味いと思うんだが―――。

 

 

 

「……なあ、もうちょっと大衆向けにデザインしろって言わなかったか?せめて顔は出そう、笑顔が見せられないじゃないか」

 

 

「……顔が割れるのってリスク高すぎない?色合いが暗いのは認めるけど、サポート会社がオッケー出したんだし問題ないと思うけど。それに引き替え焔紫君は逆にベタすぎない?これぞ戦隊レッド!みたいな意匠だけど(シュコォーッ)」

 

 

 ――――うん、何でこれ審査通ったんだろうな?ヒーローっていうより暗殺部隊の一員みたいに見えるんだが…。全身黒装束に顔がすっぽり隠れるガスマスク、様々なサポートアイテムを収納したベストと、どう見てもヒーロースーツじゃなくてヴィラン戦闘員の支給服なんだが。あ、ちなみに俺の服装は赤と黒を基調としたレーシングスーツの様なデザインだ。詳しい性能はまた今度な。

 

 

 

「それじゃあさっそく始めようか!まずはAチーム、守屋少年…は二人いるんだったね。出少年と麗日少女はヒーローチームに。Dチーム、爆豪少年と飯田少年はヴィランチームだ10分後に開始するから準備しておくように!!」

 

 

「あ、呼ばれたから行くね。今日もしっかり勝って、帝司おじさんに良い報告しないとね!」

 

 

 ……行ってしまわれた。くわばらくわばら、爆豪少年の冥福をお祈りいたします。

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 場所:訓練場外

 

 

 

「―――よし、それじゃ頑張ろう出君!私達はヒーローチームだけど、どんな作戦で行こうかな?」

 

 

「うーん、多分作戦は必要ないと思う。慌てなくても向こうから来てくれそうだし、悪いけど麗日さんには遊撃を任せても良いかな?」

 

 

「ええッ!?も、勿論頑張るけど、向こうはいわばデュフェンスなんだし、打って出てくるものかなあ?」

 

 

「……普通ならそうなんだけどねえ。あの毬栗みたいな人、テストの時でも凄い顔してこっち睨んでたから、多分訓練そっちのけで突っ込んでくると思う。そっちは僕で潰して置くから、飯田君の方はお願いしても良いかな?終わったら駆けつけるし」

 

 

「う、うん。分かった!(さっきから思ったけど、対戦相手が決まってから出君の表情が凄く怖い。……大丈夫、だよね?)」

 

 

 訓練開始までの10分間の準備時間であったが、これといった作戦も打ち合わせもすることなく本番となった。出が自身の個性を開示しなかったことと、遊撃を任せる以外に意見を言わなかったことが原因であるが、麗日は文句ひとつ言うことが出来なかった。深く追及できるような雰囲気で無かった事もあるが、ブツブツと呟く言葉の節々にヒーローらしからぬ発言が聞こえてきたからだ。彼女は唯不安を感じるか、それを忘れようと自身に喝を入れるくらいしかできなかった。

 

 

 

 ――――戦いは、訓練開始の合図があってすぐ、頭上からビルを破壊しながら爆豪が姿を現したことにより始まった。崩壊とともに大量に降ってくる瓦礫に紛れた奇襲であったが、出は表情一つ変えずに、余裕を持って回避してしまう。

 

 

 

「チッ!端役の分際で避けてんじゃねえよ、クソが」

 

 

「…はあ、思った通りに突っ込んで来たね。それじゃあ麗日さん、核の方はよろしく」

 

 

「テメエッ!無視してんじゃねえぞカスが!!」

 

 

 

 突然の奇襲にも拘らず歯牙にもかけず、それどころか見向きすらせず麗日に指示を出す出。当然そんな彼の態度に爆豪が我慢など出来るはずもなく、全速力で飛び込んでいく。

 

 

 まずは右腕のフック、それにより起こした体で本命のストレート、それが躱されても爆風で体を後退させ、さらに左腕の爆破で引き戻しより加速を持たせた左の拳を叩き付ける。……ところが、ここまでの流れるような連撃すら掠る事なく、それどころかカウンターをわき腹に見舞われてしまう。

 

 

 

「おっと、危ない危ない。個性抜きであの速度って、本当に『肉体は』凄いよねキミ。でも手加減とかキャラじゃないでしょ?ただでさえ自慢の個性が相性悪いんだし、早く本気を出してよ。こっちも全力でやりたいし」

 

 

「……クソがッ!!見下してんじゃねえぞクソモブ如きが!!」

 

 

「(やれやれ、今更ちょっと我慢したくらいで今までやってきたことを隠そうだなんて、随分蟲の良い話じゃないか。早く昔みたいな人でなしに戻りなよ)」

 

 

 

 終始優勢をアピールする出だが、勿論これは挑発である。そも、彼はこういった個性で自らを顕示するのは嫌っており、それは嘗ての仇敵であっても変わりない。ならばなぜそんな真似をしているのか?それは本当にしたいことをするために必要だからである。

 

 

 今自分が実行しようと考えていることを先んじて行ってしまうと、色々な方面から睨まれてしまう可能性があり、それは今後の学生生活において非常によろしくない。ではどうすればそれを回避できるか?簡単である、先に相手にしてもらえば言い訳など幾らでもできるのだ。

 

 

 

 それ故出はじっくりとその時を待った。そしてその瞬間は思ったより早く訪れた。度重なる挑発に業を煮やした爆豪が、ついに腕に取り付けられたギミックを解禁したのである。

 

 

『―――ッ!?爆豪少年ストップだ!!それは―――』

 

 

「当たんなきゃ死なねえよ!!コイツなら尚更な!!」

 

 

 

 言い終わるや否や、激しい閃光と共に轟音が響き渡る。爆豪の個性の火力は汗の量に比例する。そして今日初めてヒーロースーツを纏うということは、爆豪本人すら初めて目の当たりにする今まで以上のフルパワーを、一切加減することなく解き放ったのである。その結果―――ビルは辛うじて倒壊を免れているが、そのほとんどが吹き飛ばされてしまったのである。

 

 

 

 カメラ越しに見ていた面々があまりの惨状に言葉も出ない中、いち早く我に返ったオールマイトが口を開こうとする。今の一撃は完全に致死性のそれであった。屋内での大規模攻撃どころの話ではない、そもそもヒーローは相手がヴィランだったとしても殺しはご法度である。それをよりにもよって学友に向けて放ったのだから論外である。

 

 

 

 しかし、その口から言葉は発せられることは無かった。なぜなら、土煙の向こうで服こそ吹き飛んでいるものの、無傷で静止している出を見て言葉が出なかったからである。

 

 

 

「……せっかく色々考えて仕立ててもらったのに、何一つお披露目できずに粗大ごみ行とか本当に最悪」

 

 

「は……?何で・・お前……無傷…?」

 

 

「……はあ、そんなに驚くことでもないでしょ?個性、君たちの大好きな個性のお陰さ。そんなことよりもさ、僕だから死なずに済んだけど、下手したら殺される所だったんだよ?それも君の気まぐれなんかで。だからって訳じゃないけど、キミも一回くらいされる側になってみたら?後学の為にもさあッ!!」

 

 

 言いながらゆっくりと爆豪へ近づく出。その怒気に、将又ゴミを見るような目に気圧されたからか爆豪は咄嗟に彼の顔面へ向けて拳を突き出し、ゼロ距離で爆破を行った。しかしそれすら怯むことなく、逆に無防備となった腕を掴み取り、そのまま関節を極め肩を外してしまう。

 

 

「君の個性は掌からしか使えないし、見たところ腕以外にそれを使ったギミックもなさそうだ。なら、腕が上がらなくしてしまえば一件落着だ。さて、ここから先は消化試合だけど、もし君が僕の個性を言い当てられたらすぐに終わらせてあげるよ?君頭良いんだしわかるよね?」

 

 

「……クソ、クソッがああああぁあッ!!?」

 

 

 まるで震える自身を鼓舞するかのように吠える爆豪であったが、ここから先は一方的な蹂躙であった。前置きしておくが、決して爆豪の実力が低い訳ではない。片腕しか使えないとはいえ、爆破による牽制に優れた反射神経によるガードと回避、何よりずば抜けたセンスが常に彼に最適解を選ばせる。これだけのカードを持つ彼なら、多少の不利は軽く払いのけて見せただろう。

 

 

 しかし目の前の人物は多少などでは無く、その力も不自然極まりないものであった。飯田よりも早く動き、麗日では触れることさえ許さないほどの瞬発力と動体視力、そして自身のタフネスを容易く突破するほど重い一撃を何十発と打ち込まれては、どれだけ防いでも時間の問題であった。

 

 

 そのうち左腕も右の様に上がらなくなり、無防備となった顔面に拳を叩きこまれ吹き飛ばされる。立ち上がる暇もなく無理矢理起こされ、『答えは分かったかい?』と問いかける。返事を返さず諸共に爆破しようとすればそれより早く拳をもう一度顔面に打ち込まれ、再び吹き飛ばされる。さらに胸倉を掴み上げ同じ質問を投げかける出であったが、拳を振り上げるより先にオールマイトにストップをかけられる。

 

 

 

『い、出少年!それ以上はストップだ!!無力化したヴィランへの追撃・尋問は法律で禁止されている。君の怒りは分かるが、その先はヒーローが歩む道ではない!!』

 

 

 水を差されたことによって、燃え盛っていた出の憤怒も沈下していく。制止を振り切って続行すればせっかく我慢した最初の数分が無駄になる。手早く確保テープを巻き付けると、辛うじて意識がある爆豪を適当に投げ捨てた。―――と、同時にタイムアップの合図が鳴り響く。どうやら麗日は飯田を仕留めることが出来なかったらしい。勿論彼女だけでなく、爆豪への報復に熱中していた出も敗因の一つであるが。

 

 

「……ま、しょうがないか。ああ、そうそう。答え合わせを忘れてた。僕の個性はね、『英雄狩り(プレデター)』、相手が個性因子によって得たアドバンテージを必ず完封できるよう自己改造する個性さ。便利なんだけど、欠点は多いし『敵』が居ないと無個性と変わらない三流個性さ」

 

 

 

 こうして、第一回目の戦闘訓練は幕を閉じた。勝利者が重傷で敗北者が無傷というあべこべな形によって……。

 

 

 

 

 




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