僕らのアヴェンジ・アカデミア!!   作:章介

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第三話

 

 

 

 場所:訓練場 待機室

 

 

 

 

「―――さて!!随分予定から外れた事態になってしまったが、何はともあれお疲れ様!!さあ、さっそく講評と行こう。勝ちも負けも振り返ってこそ糧に成るからね!!今回のMVPは飯田少年だ!何故だかわかる人!!?はい、八百万少女!!」

 

 

「はい。まず初めに、爆豪さんは独断専行で飛び出し、奇襲が失敗しても無計画に戦闘を続行しました。この時飯田さんと連携をするなり、即座に妨害を加えながら撤退していれば幾らでも巻き返しの機会があったと思われます。また、仲間がいるにも拘らず屋内での大規模攻撃を敢行したことはヴィランとしては基より、ヒーローとしても完全に失格です。

 

 次に出さんですが、爆豪さんの大規模攻撃の後に行った関節技、あれだけの動きが可能な出さんならあの時点で確保テープを巻くことが出来たはずであり、その後の追撃は私怨による行動としか思えません。これに関しては爆豪さんの行動からみても致し方ない部分はありますが、もしすぐにテープを巻いて上の階に向かっていたなら十分勝ちは狙えたはずです。

 

 そして麗日さん、貴方は自らの役割を全うしようと奮闘しておられましたが、制限時間が迫っていたあの状況なら無線で出さんに相談なり助けを求めるなりすべきでした。自分だけの力で解決しようとするあまり視界が狭まっていたように見受けられます。

 

 最後に飯田さんですが、爆豪さんの行動に慌てることなく自分のすべきことを考え、状況設定から鑑みても無理がありませんでしたし、その上で勝利に貢献しておられました」

 

 

 すらすらと流れるような八百万の意見に、周りはシーン、となっていた。しかし全くの正論だったため特に誰からも突っ込まれることは無かった。

 

 

 

「(思ってたより言われた…)ま、まあ飯田少年もまだ固すぎる節はあった訳だが…それぞれこれからの課題が見えただろう!皆もそれぞれ意識して頑張ってくれ!八百万少女ありがとう、続いては……(ごそごそ)―――うむ、次はBチームの障子少年と轟少年がヒーローサイド、そしてCチームの焔紫少年、八百万少女がヴィランサイドだ!グッドラックッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 Side 焔紫

 

 

 

 ……思ったより早く俺の番が回って来たな。出来れば出のフォローを入れておきたかったがまあ良いか。どうにも昔のトラウマのせいか、成果を出せないことを異様に怖がるんだよな。親父の事だから、勝利宣言より仇敵をボコボコにしたことの方が喜びそうだけど。

 

 

 まあ、とりあえず気持ちを切り替えて頑張りますか。とはいえ―――

 

 

「――――勝ったぞ八百万、この闘い、我々の勝利だ☆」

 

 

「……あの、あまり訓練の場でふざけるのは如何なものかと。それに随分強気な発言ですが、相手は私と同じく推薦組の轟さんに、索敵に秀でた障子さん。勿論自信が無い訳ではありませんが、決して生やかな相手ではありませんよ?」

 

 

「―――む?いや、俺は決してあいつらを軽視している訳じゃないぞ?誤解を招くようなことを言ってすまない。ただ、勝利のピースが完璧にそろっているからな。制限時間という勝利条件があるヴィランサイド、相方は八百万、そして最後に俺がいる。一つでも欠けていれば必勝とはいかなかったが、ここまで揃えば負け筋を完全に絶つことが出来た!」

 

 

 ―――そう、まさかクジ運が微妙な俺がここまで神引き出来るとは思わなかった。敵の難易度も最高ランクではあるが、ヴィランサイドは勝たなくても勝利できるから問題ない。

 

 

 

「……本当に自信がおありですね。ではその必勝の策とやらを利かせて頂いても?」

 

 

「勿論だ。まず核は5階に設置するだろう?それから―――――」

 

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――10分後。

 

 

 

 準備時間が終了し、開始の合図が流れる。ヒーローチームの障子は早速ビルの外から個性『複製腕』を用いて内部偵察を行う。しかし、どうやらBチームはもう行動はしていないらしく、音を拾うことは出来なかった。

 

 

 

「……むう、足音の類は聞こえないな。恐らく罠か何かでも張っているのかもな。心音がかなり遠いから二人揃って5階にいると思う」

 

 

「そうか、八百万相手に頭脳戦は悪手だな。……じゃあこのまま外からケリをつけるか。危ないからちょっと離れてろよ?籠城戦なんざ俺には関係ない」

 

 

 言い終わるや否や、轟は個性『半冷半燃』を一気に解放してビルを丸ごと凍結させてしまう。内部まで念入りに凍りつかせたのは恐らく仕込まれているだろうトラップ諸共無力化するためである。とはいえ、のんびりしていてはCチームが凍傷を患ってしまうので足早にビルへと向かう。

 

 

 ところが、いざ入口まで来た途端轟が大きく飛び退いて後退する。突拍子もない行動に慌てて近寄る障子であったが、轟に手で制止されて立ち止まる。――――瞬間、入口奥から紫色の炎が入口周りまで飛び出し、そこからは拡散することなく延々と燃え盛っている。

 

 

 

「―――なッ!?だ、大丈夫かとどろ…って何だこの臭い!!?は…鼻が曲がる!!―――あ、消えた……」

 

 

「……焔紫の仕業か。ちくしょう、やられた。狙いは妨害じゃなく酸素か」

 

 

 轟の呟きに、事態についていけていない障子が首を傾げるが直に状況を理解した。ポケットに入れていたティッシュに『個性』で火をつけ、それを入り口に放り込むと途端に消えてしまったからだ。

 

 

 

「消えた……そうか!さっきの炎で酸素が燃やし尽くされたのか。で、でもそれじゃあいつらも窒息―――いや、八百万が居るなら酸素ボンベもガスマスクも思いのままか!」

 

 

「入口は開いてるから全くの無酸素じゃねえだろうが、締め切られてる上階は無理だろうな。あとこの臭いの原因も分からない以上、俺達じゃ突っ込むリスクが高すぎる。何処に核があるか分からない以上氷を足場に外から突入も現実的じゃないな」

 

 

「……冷静に分析してるところ悪いんだが、この状況を打破するには――『無理だ』――即答ッ!?」

 

 

 轟からのあんまりな回答に驚く障子だが、実際彼らに打つ手はないのである。創造系や酸素を発生させる個性を持たない以上、どう頑張っても最短で5分以上かかる距離を無呼吸で駆け抜けることになり無謀である。しかも向こうからのギブアップ宣言やオールマイト先生による制止が無いため、轟の奇襲も上手く躱したらしい。

 

 

 

「これを実戦だと考えたら、悔しいが俺達に出来ることはねえ。下手に突入して力尽きたら人質にされるだけだ。やる事と言ったら、これ以上事態が悪化しないように注意を払うか、それこそ八百万みてえなヒーローの到着を待つくらいだ」

 

 

「勇気と蛮勇は違う、耐えることもヒーローの仕事という訳か。分かった、せめて複製腕を使って相手に隙が出来ないか伺おう。ヒーローは最後まで諦めるわけにはいかんからな」

 

 

「……すまねえ、偉そうなこと言っておいてこの様だ。―――次は絶対に負けねえッ!!」

 

 

 ―――血が滴るほど拳を強く握りしめながら、氷漬けのビルを睨みつける轟。最後の一秒まで諦めず機会を窺う二人であったが、逆転の目は起きることなく、タイムアップのサイレンが鳴り響くまで事態が動くことは無かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――数分前、ビル最上階。

 

 

 

「ふっはははッ!!どうだ八百万、この守屋 焔紫の勝利の方程式に間違いはなかっただろう?」

 

 

「……ええ、見事です。ですがいくつか疑問が。なぜ強化ガラスの構造なんてご存じなんですか?それから、轟さんがビルを氷漬けに出来ることを事前に知っていたんですか」

 

 

「いや?もしかしたらこちらの慢心に期待して特攻でも仕掛けてくるかと思ってな。あの二人は物理的な瞬間火力が無いから保険に丁度良かっただけだ。まさかここまで凄いとは流石に思いもしなかったぞ☆」

 

 

 

 ――――最上階にて、ヴィランチームは万全の態勢で待ち構えていた。ただし、強化ガラス製の特大ショーケース内にて核と共に引き籠るという、傍から見れば少々コメントに困る布陣であるが…。

 

 

 

「それにしても、先程のアレが焔紫さんの『個性』ですか。『体内の毒素を強力な可燃性劇物に精製する能力』と『既に発生している火を意のままに操作する能力』の複合個性『紫炎』。あれほど離れた距離にある炎に、短時間で酸素を消費しきるように燃焼させるとは素晴らしい制御力ですね」

 

 

「……『個性(・・)』、か。まあ、往来では使いにくい難しい能力だからな!操作には人一倍力を入れてきたからそれなりに自信はあるぞ☆ただ、今回の勝利は正直初見殺しの要素がかなり強い。次はこうは行かないだろうな」

 

 

「ですがヒーローの現場は常に初見で最善を尽くす必要がありますわ。今回の様な『対応策が無ければどうにもならない状況』は相対した彼らは勿論、間近で拝見した私も大いに参考になりました」

 

 

「ふむ、そう言って貰えると頭を使った甲斐があったな。それじゃこの後は…ふ……ぶえっくしょいッ!!――――八百万、すまんが暖房器具を融通してくれないか?氷結は免れたが、冷気まではどうにも出来ん……」

 

 

 

 ――――その後湯たんぽやカイロに飽き足らず炬燵まで強請って用意して貰い、自宅の様に寛ぐ焔紫の頭にはこの瞬間も余さずカメラで見られているという事実が抜け落ちていた。最後の最後まで締まらないまま焔紫の戦闘訓練は幕を閉じた。講評に置いてどう評価を付けたものか、オールマイトが頭を抱えたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 




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