僕らのアヴェンジ・アカデミア!!   作:章介

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第六話

 

 

 

 

 場所:水難ゾーン

 

 

 

「――――大量の水を取り込んで馬力に変える個性にサメみたいな異形型、あとは目と…それから肺もかな?水から保護する個性。他にもいるけど全員に共通しているのは水中で意のままに動けて呼吸も困らないってとこか。惜しいなあ、汎用性はともかくここなら正しく水を得た魚だっていうのに使い熟せてない。そもそも何で人員も最適な人材もいるのに船を排除しなかったのかな?待ち伏せしてる間に壊すなりなんなり出来たのに。ああもう勿体ない!もし僕に人の個性をストックできる『個性』があれば有効活用して見せるのに、例えば―――(ぶつぶつぶつ……)」

 

 

「出ちゃん止めて、怖い。考察も大事だけど次どうするかじゃないかしら?」

 

 

 

 ――――時間を遡ること十数分前。水難ゾーンへと飛ばされた出は同じくここに来ていた蛙水 梅雨と峰田 実と協力することで待ち伏せしていたヴィランの撃退に成功した。今はちょうど水から上がり今後について相談している所だ。

 

 

「ああごめん、それから二人ともありがとう。流石に一人で全部潰すのは骨だったから助かった。水中でサポートしてくれてた蛙水さんは勿論、峰田君も伸した奴を片端から磔にしてくれたおかげで手を汚さずに済んだよ」

 

 

 

 朗らかな表情を浮かべながら礼を言う出。その雰囲気や物腰は戦闘訓練の時とはかけ離れており、本来なら取っつきやすくなったと喜んでいたことだろう。言葉の内容はアレだが。

 

 

 しかし、二人はむしろ訓練時以上に引いてた。というのも―――。

 

 

 

「いや、出が一番やばかっただろ。オイラはお前が放り投げてきた奴にモギモギくっつけてただけだから良いけどさ。それよりもッ!水中からでもバキゴキとか、メキボキって聞こえてきたし、来るヤツ来るヤツ首や腰が曲がっちゃいけない方に曲がっててそっちの方がよっぽど怖かったっつうのッ!!なんだよアレッ!?一人くらいマジで殺ったかと思ったッ!!?」

 

 

「まっさかぁ。殺すつもりなら態々神経や気道を傷つけないように気を付けないし、死なせるつもりなら放置して水死させてるよ?」

 

 

「だから、笑いながら怖いこと言うんじゃねえよッ!?こいつ物腰は柔らかいけど物騒さは爆豪と大差な――『…うん?』―――ヒイイィイッ!?ウソウソ冗談!!オイラが悪かったから勘弁してくれ!!クラスメイトに殺気ぶつけんなよ!?」

 

 

 

 ―――顔色一つ変えずに、『異形系が多いから、脳震盪くらいじゃ後で起き上がってきそうで面倒』という理由で首やら腰の骨を破壊していった(勿論死なないように加減している)からだ。行動そのものより、それを平然と実行するメンタルにドン引きしていたのである。

 

 

 

「………まあ良いけどさ、それよりこれからどうする?考えられるのは、①安全を確保した此処で待機。②他のゾーンのクラスメイトを助けに行く。③広場に向かう。大体この3つかな」

 

 

「ケロ、①が一番魅力的だけど最も悪手ね。もし連中がオールマイトも殺せる手段を持っているなら、待ってるだけじゃ駄目よ。救援が間に合う保証もないわね」

 

 

「じゃあ②にしようぜ!オイラ達以外のとこで苦戦してるかもしれねえし、大人数で集まれば良い考えも出るかもしれないッ!!」

 

 

「それも一理あるね。常闇君や切島君みたいに白兵戦向きの人はともかく、上鳴君や轟君は下手に味方がいる方がやりにくいだろうし。それじゃあ二人は他の訓練ゾーンを回ってきて、僕は広場に向かうから」

 

 

「オイィッ!?何で自分からヤバい方に行くんだよ!!オールマイト殺せるヤバいのが居るかもってお前が言ったんじゃねえのかよ!!?」

 

 

「……焔紫ちゃんがいるから、かしら?」

 

 

「うん、まあ僕の『個性』がヴィラン退治に特化してるから邪魔にはならないだろうってのもあるけどね、本心はそっち。……一人になった僕を拾い上げてくれた大切な『家族』だからさ」

 

 

「(…一人(・・)?)うぅ、そ、そうだよな。家族が一番やばい所に居たら不安だよなあ。―――よし!オイラ達急いで後追いかけるから、絶対無理すんじゃねえぞッ!広場でもさっきの奴等みたいな残虐ファイト見せてやれ!!」

 

 

「頑張って戦ったのに酷くないッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:セントラル広場周辺

 

 

 

 ―――相澤先生、改めイレイザーヘッドが単身敵陣に飛び出した後、黒霧と名乗るヴィランによる分散を免れた13号と残った生徒たちはこの中で最も機動力のある飯田を外に逃がすべく奮戦した。しかしそれは数分前までの出来事、今では一人を残して全員が地に伏せていた…。

 

 

 

「「「「……」」」」

 

 

「―――さて、飯田も送り出せたことだし、どう考えても今回の計画のキーパーソンのアンタも潰せたし上出来かな?参謀役を気取ってたみたいだが、プロヒーローを倒して油断してる様じゃ二流だな」

 

 

「……仰る通り油断が過ぎたようです。あちらこちらに火をつけていたのはてっきり足場潰しかと思いましたが」

 

 

 

 ―――そう、飯田はもう既に逃がし終えていた。それどころか焔紫の個性『紫炎』にて、この事件の主犯格の一人の制圧も終わっている。尤も、その所為で周囲の味方まで巻き添えを喰らって倒れてしまっているのだが。

 

 

 

「あ、あのさ焔紫くん…、しょうがない事だと思うんだけどせめて一言言って欲しかったかな……?いきなり飯田君の首筋に注射打ち込んだ時はおかしくなったかと思ったけど」

 

 

「いやすまんすまん、変に小細工すると警戒されると思ってな。あと相手が生物に見えない姿してるから下手に加減したら失敗する危険があったからな」

 

 

 

 焔紫の能力『紫炎』は体内で可燃性の有害物質を精製してそれを火種にしていると以前説明したが、ここでそれに補足を加えよう。彼は普段体内の毒素から有害物質を創り出しているが、その性質や毒性、さらには抗体と解毒剤の作成まで彼の意のままに出来るのだ。ただし、精製し過ぎると自家中毒を起こしたり、状況に合わせて一から精製するにはそれなりの時間が必要になるのだが。ちなみに今回は熱されても毒性が薄れず、呼吸器からでも作用する神経系の有害物質(勿論後遺症は無し)を使用した。

 

 

 

「まあ薬のストックはまだあるからちょっと待っていろ。(本当は下手に敵の標的になると不味いから寝ててほしいんだが…)ええっと…あった。こいつを首に―――『フフッ』―――……何がおかしいんだヴィラン?」

 

 

「いえいえ、貴方達ヒーローの卵に足元掬われた私が言うセリフじゃありませんが、ご自分で言ってた割に油断が過ぎるのでご忠告をと思いまして。……“対平和の象徴”本命は私などではありませんよ?」

 

 

 

 ―――瞬間、焔紫は自分に何があったか知覚する暇もなく吹き飛ばされる。下手人は対平和の象徴、“改人 脳無”、コレの指揮官である首魁、死柄木 弔は黒霧がいつまでも戻ってこないことを訝しみ、脳無と共にここまでやってきていたのである。そして会話を盗み聞き、恐らく焔紫が持っているであろう解毒剤を出す瞬間を待っていたのだ。

 

 

「はぁ、お前何やってんだよ黒霧。たかが餓鬼共にやられやがって」

 

 

「も、申し訳ありません死柄木 弔。まさか風評重視のヒーローに毒の個性持ちが居るとは思いませんでした。それから…、重ねてすいません。13号は無力化したのですが散らし損ねた生徒一名を逃がしてしまいました」

 

 

「………はあ?お前ふざけるのもいい加減にしとけよ。ワープゲートじゃなかったら粉々にしてたぞ、マジで…。いつ逃がしたのか知らねえが、もうあんま時間残ってねえだろ?流石に何十人ものプロ相手じゃかなわないし……帰ろっか」

 

 

 

 ヴィラン達が自分たちのすぐ近くで何やら会話しているが、傍に居た雄英生徒たちの耳には入ってこない。それもそうだろう、間違いなく自分たちの中で上位に入る実力の人物が一瞬でやられてしまった。一切の加減も躊躇もない一撃が顔面に、しかも目に映らないほどの速さで直撃したのだ。生存を絶望視しても仕方ないだろう。そんな状況を目の当たりにしてしまった以上、『帰ろっか』の一言に僅かでも安堵してしまうのもまた仕方がないと言えるだろう。しかしそれは儚い願望と言えよう、目の前にいるのは本物のヴィランなのだから……。

 

 

 

「よっこいしょ、ぶす…っと。おら、これで動けんだろ。さて、と。帰るのは良いけどさ、こんだけやっといて死んだのが一人じゃ花火にはしょぼすぎるよな?まあこれでも平和の象徴の矜持に傷くらいはついたと思うけど、せっかくなら圧し折っておきたいよな?5人も殺せば折れてくれるかなあ?」

 

 

「「「「「――――ッ!!!?」」」」」

 

 

 

 その一言に全員が震えるが、彼らには成す術もない。誰一人として動くことさえ出来ないのだから。手始めに、一番近くに居た麗日を掴み上げ、ゆっくりと右腕を彼女の顔へと近づけていく。イレイザーヘッドとの戦いを見ていなかったが、先程の発言からこの行為が相当不味いことは分かった。それ故に次の瞬間来る痛みを覚悟して目を瞑るが、何時まで経っても何も変化することは無かった。

 

 

「……はは。本っ当に格好良いぜイレイザーヘッド!教え子の死に様を見せてやろうと連れてこさせたのは失敗だったか?まあせっかくだから楽しませてもらうか。俺はこのままこの餓鬼に触り続けるから、どれだけ目を瞑らずにいられるか精々頑張ってみろよ」

 

 

 

 麗日の窮地を救ったのは直前まで気絶していた彼らの担任だった。彼は脳無に両手足と顔面の骨を砕かれ気絶していたが、子供たちの未来を預かる矜持がなせる業か、運ばれていた数分に気合で復活し個性まで使って見せた。普通なら一週間目が覚めなくても不思議ではない重傷でだ。

 

 

 しかしそんな重傷で、しかも生徒の命が懸っているという緊張感の中では、長く目を開け続けるなど不可能だ。唯でさえ人はストレスが掛ればまばたきが多くなるのだから。死柄木もそれが分かっているからこの期に及んで遊んでいるのだ。

 

 

だが、相澤先生が稼いだこの数秒が希望の到着へと結びつけることになる。あとわずかで目が閉じてしまう、そんな瞬間に後方から凄まじい轟音と爆風が鳴り響き死柄木たちを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫。

 

 

私が来たッ!!」

 

 

 

 

 

 その一言に、その雄姿に、誰もが言葉を失った。かたや自分たちは助かったのだという安堵に、かたや自分たちの最大の敵が現れてしまったという危機的状況に。だがオールマイトはその一切に見向きもせず、相澤先生以(・・・・・)外に怪我をした人物が見当たらなかったため(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)、まずは相澤先生の周りに居たヴィランを瞬殺し彼を救助し続いて死柄木の傍に居た生徒たちを掻っ攫った。

 

 

 

「すまない相澤君、それに皆も…。私がもう少し早ければ――――」

 

 

「いま…そ、な…を言うのは非合理で、す。あいつの…怪力はおそ、く薬物で、あ…と互角で。他、まった…めいで、す」

 

 

「それ以上喋ってはいけない!ありがとう、奴の脅威度はよくわかった。大丈夫!後は私に任せてくれッ!!」

 

 

 動ける人間が居なかったため一旦全員を入り口付近まで運び出し、間髪入れずに脳無へと肉薄するオールマイト。そして全力の『CAROLINA SMASH』が撃ち込まれるが、脳無は避ける素振りすら見せず、それどころか喰らった後も即座に反撃まで仕掛けてきた。

 

 

 

「―――マジかッ!?全然効いてないな!!」

 

 

「効かないのは“ショック吸収”だからさ。脳無にダメージを与えたいのなら殴打以外で攻めなきゃね」

 

 

 

 自身の呟きに対してそう返してくる死柄木。勿論これが誘いであるというのは分かっていたが、他に方法が思い浮かばない以上敢えてその罠へと飛び込んだ。オールマイトに残された時間がそれほどないという焦りもそうさせた一因であろう。そして悪辣なヴィランの罠は容赦なく平和の象徴へと牙を剥く。

 

 

 

 オールマイトは脳無の後ろを取りバックドロップを仕掛けた。彼の実力ならコンクリ相手でも巨大な縦穴を穿ってみせる、目の前の改人はパワーと速度は確かに凄まじい。しかし跳躍力はどうか?もし外れても唯仕切り直しになるだけ、しかし当たりなら戦力外にすることが出来る、そう考えての一撃だった。

 

 

 しかしコンクリへとめり込む直前、ようやく有害物質から解放された黒霧がワープゲートを設置したことで不発に終わった。それどころか、オールマイトの無防備なわき腹を文字通り鷲掴みにし拘束されてしまう。

 

 

 

「あイタッ!?君ら初犯でこれは……ッ覚悟しろよ!!」

 

 

「―――そんなことを言う余裕がどこに?これで貴方はもう瞬速で動くことは出来ない。後は貴方を引き摺りこみ、半端なところでゲートを閉じ切断させていただく。他人の血や臓物でも、他ならぬ貴方のソレなら汚れ等呼ぶのも恐れ多い。喜んで受け入れましょう」

 

 

 

 ―――死柄木はこの瞬間勝利を確信した。多少以上の誤差はあったが、結果としてこの理想的なシチュエーションにまで漕ぎ着けた。しかも救援が未だ訪れない今、オールマイトに成す術は無い。たとえ彼でなくても同じ思いを抱いただろう、しかし――――

 

 

 

 

『ブチッミチミチ、グチャッ!!』

 

『ゴトンッ』

 

 

 という二つの音を聞いてそれが間違いだったのだと思い知らされることになる。

 

 

 

「…………ハァ?」

 

 

「なッ!?ば、馬鹿なッ貴方は先程確かに脳無に殺された筈ッ!?」

 

 

 

 

 

 脳無の右腕は力任せに螺子切られ、左腕は有り得ないほどの高熱にて切断されたことにより、オールマイトは自由の身となった。つい先ほどまで全く姿が無かったその下手人は二人、一人は水難ゾーンから駆け付けた守屋 出、そしてもう一人は五体満足の(・・・・・)無傷で立ち上がっている守屋 焔紫(・・・・・・・・・・・・ ・・)であった。

 

 

 

 

 

 




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