僕らのアヴェンジ・アカデミア!!   作:章介

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第八話

 

 

 

 

 

 ――――放課後。

 

 

 

「―――それにしても、まさか帝司おじさんが直接出てくるなんて思わなかったや。『施術』して貰った時や稽古付けてもらった時も凄かったけどまさかあれほどとは…」

 

 

「まさしく鎧袖一触だったな、俺も久しぶりに見たわ。にしても自分の存在を匂わせたのもそうだが、現役時代から隠し続けた個性をバラしたのは何故だ?」

 

 

「後々のための布石、とか?どうせそのうち僕達との関係もバラすんだし(・・・・・・・・・・・・・)それに強い個性に惑わされがちだけど、ヒーローにとっては分かったところでどうしようもないし」

 

 

「…自分へ過剰に注目を集めさせて、敵の敵を認識させようって魂胆か?まあ考えても答えは出ないか。ただ、あの人が動く理由は何時だって復讐だ。親父の時間は10年前から止まったままだ、俺とは正反対にな(・・・・・・・・)

 

 

 ヴィラン襲撃から数時間が経過し、現在守屋兄弟は帰路についていた。今回の事件はそれなりに大きく広める(ジャッカルとの件はオフレコ)とのこと、普通に考えれば国立高校に100人近い武装集団が不法侵入した挙句生徒及び教師計24名の殺害未遂とか社会への影響がデカすぎると思うのだがそれで良いのか雄英。

 

 

 

「ま、まあ何にせよ死人が出ずに済んで良かったね。せっかくおじさんが僕にまで用意してくれた高校生活が台無しになるところだった」

 

 

「『親が悪の組織のボスだからって、子供が同じ道に進む義務なんてないサ☆君達は君達自身が行きたい道を歩みなさい』だったな。まだ入学したてで碌に見えてこないが、後悔だけはしないように過ごさないとな。そのためにもまずしないといけないことは―――」

 

 

「「―――ロールシャッハの御仕置に巻き込まれない様時間を潰そう」」

 

 

 つい先ほどまで命のやり取りをしてきたとは思えないほど朗らかに歩く二人。今までも、そしてこれからも前途多難な二人だが、少なくとも今は穏やかな時間が過ぎていた。

 

 

 

 ――――しかし、大事件が発生したその日のパトロールが過剰になるのは当然であり、しかも当事者ともなれば反応が大げさになって然るべきである。コンビニで立ち読みしていた二人がとあるヒーロー達に補導されるのはこれから数分後。それから、軽率な行動をした罰だと言って御仕置に強制参加させられるのはさらに数十分後の事である……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:雄英高校 会議室

 

 

 ――――生徒たちを全員返した後も、雄英高校教師陣は遅くまで会議を開いていた。しかし分かったことは『分からないことが分かった』ということのみ。主犯格の素性は掴めず、これだけ大それた犯行の裏付けとなる資金の出所も不明。ましてやリーダー格であろう死柄木や検挙出来た72名のヴィランの性格からは子供っぽさや小物臭さばかり感じられ、まだ表に出てきていない未知の恐怖が見え隠れし不気味である。

 

 

 しかしこれ以上は警察の捜査の進展待ちということで締めくくられた。そうなると次の話題はやはりジャッカルについてである。

 

 

 

「5年前…オールマイトと『あの男』の最期の戦いに干渉して以来一度も姿を見せなかった超大物ヴィラン。ですが、若手のヒーローにとっては馴染がない人も少なくない。資料をお持ちしましたのでまずは此処から始めさせていただいても構いませんか?」

 

 

 全員の賛成を取ったうえで、司会を担当する塚内警部が話を進めていく。

 

 

 

――――プロフィール:

 

名前:混導 帝司

個性:『混改』

 材料を混ぜ合わせることで思い描いた通りの物へと組み上げる能力。例えば、鉄材と火薬、そして雷管があれば材料が許す限り拳銃を作りまくれる、といった具合。他にも既にある製品と材料を用意することで加工を行わずして改良品へと造り替えることが出来る。人に疑似個性を与えているのは此方の能力の応用とみられる。しかし、自身に個性を使用していた形跡はヒーロー当時から見られるが、第三者にこの個性を使用し始めたのはヴィランに転向してからである(・・・・・・・・・・・・・・)

来歴:

第二世代の個性持ち。超人社会黎明期で活躍した元トッププロヒーロー:プロフェッサーヒーロー・ライヘンバッハその人である。但しヒーロー活動はあまり精力的ではなく、個性因子研究の第一人者、そして研究から得た成果を余すことなくヒーロー養成に注ぎこんだ教育者としての顔がメインであった。しかしこれらの情報については政府から箝口令が敷かれている(・・・・・・・・・・・・・・)

 雄英高校にて長く教鞭をとっており、多くの名だたるヒーローを育て上げた一流の教育者であったが、10年前とある事件(・・・・・)をきっかけにヴィランへと転向する。

家族構成:

 妻(既に他界)・長男との3人家族。妻は無個性(・・・)であり、交際時から既に名声を得ていた彼はこの婚姻を周囲から強く反対されていた(当時は丁度『個性婚』が提唱され始め、無個性への当たりが凄まじく厳しかった)。長男が五歳になっても個性が発現しなかった(・・・・・・・・・・・・・・・・・)こともあり、一層周りの目は冷たかったと思われる。

 10年前に彼が住んでいた地域である事件(情報規制により詳細不明)が発生、妻が帰らぬ人となる。長男の生死及び行方は現在も不明であり、この件がヴィラン転向の切欠となったと予想される。

犯罪傾向:

 現行のヴィランでは非常に珍しくヒーローを敵視していない。あくまで邪魔をすれば交戦するが、一度として死傷者を出していない。彼らのターゲットは常に政府関係者やマスコミ関係者、そして警察(特に警視庁)関係者である。政府から直々に凶悪ヴィランとして指名手配がなされているが、詳しい内容については不明。

 

 

 

 

 

 

「……なるほど。資料からは典型的な『現実に裏切られた悲劇のヒーロー』のようですが、聊か妙ですな」

 

 

「ああ、妙に情報が規制され過ぎてる。いくらヒーロー社会の立役者だからっておかしくねえか?」

 

 

 資料を拝見した教師陣は口々に疑問を述べる。超人社会、特にヒーローにとっての偉人ともいうべき人物が凶悪犯に堕ちたというのは確かに無用な混乱を避けるべく規制すべき情報かもしれない。しかし犯罪歴から手口、特に重要な切欠に関わる事件についてまで秘匿とは過剰に思える。

 

 

 しかも問題なのは、雄英襲撃事件という大きなヤマを任されるほど信頼されている塚内警部ですらこの程度の情報開示しかされていないのだ。まるで『余計なことは詮索せず言われたことだけすれば良い』と言われているようで不快だというのが共通の意見であった。

 

 

「まあ愚痴を言っても仕方ないさ!我々は提示された情報を元に動くしかないのさ!相手を間違えちゃいけない、私達が戦うべきはあくまでヴィランさ。政府と喧嘩しても百害あって一利なしだからさ!」

 

 

 脱線しかけた会議を、校長が軌道修正する。不満は尽きないが、校長の口調の軽さとは正反対の、実感のこもった重みに全員が閉口する。「昔人間にいろいろされた」彼の言葉には説得力があったからだ。

 

 

 

「今わかってんのは、『消極的ではあるが、ヴィラン連合について関心がある』ことくらいか!もし次に何か仕掛けてきた場合、どう戦力を分けるか今の内から検討せんとなッ!」

 

 

「そうね、今回もしジャッカルが本腰なら戦力の大半が引き抜かれた本校側は間違いなく落とされて居た筈よ。でもそれは私達の問題、まずは議題を進めていきましょう」

 

 

 とりあえずこの話は此処までとばかりに切り上げるブラドキングと、それに便乗するミッドナイト。政府から話が聞けないならこれ以上は時間の無駄である。それに知りたければ当事者が態々向かってくるのだからそちらから聞けば良い。彼らには他にも頭を悩ませている問題があるのだから。

 

 

 

「それでは最後の議題ですが……オールマイト、その死柄木とやらが『やはり本当だったのか、弱ってるって話』と言ったのは、本当に間違いないんだね?」

 

 

「ああ、この耳でしかと聞いた。情報漏えいには最大限気を付けていたのだが、果たしてどこから漏れたのやら」

 

 

「ふむ……、そうなるとオールマイトさん。あなたの後継者の選定、急いだ方が良いかもしれませんね」

 

 

「……」

 

 

 最後の、そして本命の話題が『オールマイトの後継者』問題である。そもそもオールマイトが雄英高校の教師として赴任してきた目的でもある。

 

 

本来は十分に時間をかけて『次代の平和の象徴』を選別するつもりだったのだが、敵に情報が漏れてしまっている以上早く彼の“聖火”を引き継がなくてはならない。今はまだ敵も噂程度の確度の様であったが、確証に変わったならば間違いなく奴らは行動を激化させるだろう。オールマイトの有無はそれほどに影響が広がるからこそ連合は此処まで派手に行動したのだから。

 

 

 

「まあ、幸い『雄英体育祭』が迫ってる。あわよくばオールマイトがビビッと来るリスナーが出てくることを祈っとこうぜ」

 

 

「今さら番狂わせが起こるかねえ?“雄英ビッグ3”を超える候補者がいるとは思えねえんだがな―――」

 

 

 ――――会議はまだまだ終わらない、この分だと当分彼らは徹夜だろう。しかし皆が一丸となってこの危機を乗り越えてやろうと腰を据える。彼らの肩には、この国の平和、そして未来のヒーロー達の命が懸っているのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――数日後。

 

 

Side 焔紫

 

 

 

「うーん、峰田君の個性は捕縛・足止め・決定力の三つが揃った強個性だけど、確かに接近以外能動的に使えないのは厳しいね。―――あ、そうだ。峰田君のそのモギモギって一応髪なんだよね?じゃあ粘着力が無くなった後でバラしたりって出来る?もし出来るならこう、ヨーヨーの糸みたいに使えたらある程度レンジが伸ばせるかもしれないよ?」

 

 

「おおッ!モギッた後の再利用は盲点だったぜ。これでオイラが考えてた『アレ』が……」

 

 

「ね、ねえ出君!私も個性のレンジで悩んどるんやけど……」

 

 

「麗日さんは個性の始点が肉球に固定されるよね。相性が良い技術と言えば…、やっぱり足音を可能な限り減らす歩法かな?確か図書室に『忍者ヒーロー・エッジショット』のDVDがあった筈だからおすすめだよ。流石トップヒーローの一人だけあって身のこなしはプロの中でも最上位だと思う。後は、武器術や投擲術もおすすめだね。重さを無くせるんだから普通は投げられない鉄柱とかも即席の槍に、みたいな要領でその場にある物を選ばず武器に出来るのは強みに出来ると思う。流石に体育祭には間に合わないかもしれないけど―――」

 

 

「ううん、付け焼刃でも凄く役に立ちそう!それに、今年間に合わなくても来年には切り札に出来てるかもしれないよ?ありがとう!さっそく借りてきて練習するね!!」

 

 

 

 ―――うんうん、青少年たちが互いに切磋琢磨してる姿は本当に心が洗われるなあ。リアルタイムで動画撮ってるけど、これは親父に共有してやらねば。きっと晩飯はフルコースを用意して待ってるだろうな、うん。

 

 

 俺達が今居るのは雄英に複数ある体育館の一棟。ここは放課後になると生徒に開放(要予約)されていて、今は出と二人でクラスメイトにアドバイスやら特訓の付き合いやらをしている。何故こんな事してるかというと、HRで『雄英体育祭』に向けて焚きつけられた面々が頼み込んできたからだ。

 

 

 あのヴィラン襲撃を乗り越えたということで、大なり小なり自信はついたが同じくらい欠点が見えた奴もいる。しかし先生は事件の後始末やらに追われてとても顧問に雇ったりできなさそう。という訳で俺達に白羽の矢が立った。彼ら曰く、俺達が脳無とかいうゲテモノ相手にやり合ったのを見ていたから、だそうだ。腕千切り取ったり焼き切ったりと結構グロテスクにやらかした筈なんだが、みんなメンタル強いねえ。

 

 

 勿論出は最初断った。分かりやすいくらい不機嫌オーラで威圧してたな。それでも追い縋って頭下げてくるのに折れたのか、手伝う事になった。最初は渋々って感じだったが、今はご覧のとおりノリノリである。ちょっとやそっと嫌いになったからって、オタク根性は早々抜ける物じゃないぞ☆

 

 

「―――あー、何か悪いな焔紫。お前も自分のやりたいことあるのに突き合わせて。ちゃんと埋め合わせはするからさ、何かあったらいつでも言ってくれ」

 

 

 おっと、動画にかまけてサボってたら後が怖いな。それじゃお仕事しますか。ふむ、最初のお客さんは尾白か。個性はシンプルに『尻尾』か、なるほどなるほどこれは……。

 

 

「俺、自分で言うのもあれだけどパッとしない個性だか――『それは違うぞッ!尾白!!』―――ええッ!?」

 

 

 

 『尻尾』の個性が凡百?何を言ってるんだ!?こいつは十分オンリーワンになれる可能性が詰まってるし、それを活かす材料を彼は既に持っているじゃないか!!

 

 

 …と、力説したところで分かって貰えないだろうから実際に経験して貰おう。丁度良く俺達は壇上に上がってることだしな。とりあえず足場の淵ギリギリに立って貰い、コート側を向いてもらう。そのあと一切声掛けなど行わずに思い切り肩を押しやって突き飛ばす。するとどうなるか?普通は体が投げ出されて下に落下するだろう、しかし彼は違う。

 

 

「おいおい危ないじゃないか、こんなのが何の実験になるんだ?」

 

 

 体の殆どが空中に投げ出され、もう壇上と並行に近いくらい倒れてるにも拘らずその体制を維持できている。言うまでも無く彼の太く強靭な尻尾のお陰だ。周りも俺達が何やってるのか注目してたみたいだが、今の尾白の姿勢に結構驚いている。が、当の本人は良く分かってなさそうだ。

 

 

 尻尾は何も鈍器にすれば良いってモノじゃない。猫やカンガルーはバランサーとして使うし、チーターは高速移動時に転ばない為に使う。毛が少ないからリスの様には使えんだろうが、樹の上で暮らす動物にとっては死活問題となるくらい重要な器官、それが尻尾なんだ。

 

 

 つまり彼は、俺や出、それから爆豪なんかじゃ碌に戦えない様な悪条件下でも常に最高のパフォーマンスが期待できるという事だ。これは十分過ぎるほどアドバンテージになるだろう。例えば崩れかけて足場も碌にないビルから要救助者を助けたり、重心を支えるって意味では第二の背骨ともいえるから長時間に亘る救助でもパフォーマンスが低下しにくい、とか。

 

 

 あと、鈍器としても十分な可能性を秘めている。先ほど触ってみた感じだとまるで蛇の胴体の様に筋肉の塊だった。大凡足の5,6倍くらいあるんじゃないか?しかも彼は武道を嗜んでるから筋肉の動かし方や使い方を良く知ってる。上手く応用できれば、まさしく『突かば槍、振るわば薙刀、寄らば太刀』の如く活用できるんじゃないか?もこもこの毛に包まれてるけど先端までがっしりとしてたし。

 

 

 

 ――――といったことを伝えてみたところ、ポカーンってしてたな。まあ無理もない、切島と同じくらい地味だなんだと悩んでたみたいだからな。

 

 

「……こんなにこの個性が褒められたのって生れて初めてかもしれない。中学でも『雄英生っぽくない個性』てずっと言われてたし。―――俺、体育祭頑張るよッ!!USJであんなに凄かった君にここまで言って貰えたんだから!」

 

 

 お、良い感じにエンジンがかかったと見える。良いぞ良いぞ!変にちやほやされてきた奴より彼の様な人間の方が良いヒーローになれると思っている。俺はヒーローにはなれないし成るつもりもないから精々頑張ってくれ!!

 

 

 

Side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所:図書室

 

Side 爆豪

 

 

 

 ――――はあ、たりぃ。あのクソみてぇな事件があってから、まったくヤる気が湧いて来ねえ。もうすぐ俺が一番すげえって知らしめる行事あるにもかかわらず、だ。

 

 

 あの時のことは思い出すのも腹立たしい。オールマイト(唯一憧れた人)を爆破する妄想に気が動転して術中に嵌った自分を殺してやりてぇ。なんでたかがオールマイトの又聞きにビビんなきゃいけねえんだよッ!?烙印だか何だか知らねえが、押したのはオールマイトじゃなくてオールマイトの言葉を借りたテメエだろうがッ!?おまけに最悪なのが『生徒で唯一の負傷者』とかいう最悪の汚名まで付いてきやがった!!あのクソモブ、今度会ったら死ぬまで殺してやる。

 

 

 ……そうだ、あんなクソの言ったことなんざ何一つとして聞く価値が無かったゴミ屑だ。それが分かってるくせに何で引っかかるんだよ、クソが。このまま此処に居ても時間の無駄だ。クソモブのせいで調子落とすなんざ死んでも許さねえ。とりあえずぶっ倒れる寸前まで走れば少しは気も紛れ―――。

 

 

「―――すいませーーんッ!!『忍者ヒーロー・エッジショット』のDVD貸してくだ……あ、爆豪君?」

 

 

 




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