今回は姫路さんのポイズンクッキングのお時間です。
それでは、どうぞ!!
Dクラス戦を終えた翌日、俺達は作戦会議を兼ねて昼食を屋上で取ることにした。もしかしたら優子と遭遇するかもしれないがその時はその時だ。
「やーっと午前中の授業終わったな……くたびれたぜ」
「晴人…お主は半分以上寝ておったじゃろ……」
「まあな、今年は目一杯寝るつもりだよ、去年は優子に散々邪魔されていたからな」
「そこまで言い切られてしまうとワシらがズレてるような気がしてきてしまうぞい……」
去年は授業中寝ようものなら優子の鉄拳が後ろの席から飛んできたから大人しく眠れなかった。
「それにしたって、僕は怒られるのにどうして晴人は怒られないのさ…ずるいじゃないか!」
「それは多分質問をされても晴人が即答してるからだろ…」
明久が憤慨し、雄二が呆れたように言ってくる。
「まあ、そんなことよりさっさと飯を食いに行こうぜ。今日は屋上で作戦会議兼昼飯なんだろ、雄二」
「そうだったな、おい島田と姫路、康太も行くぞ」
雄二が声をかけると三人がこちらに来るが、姫路が若干挙動不審だ。どうかしたのか?
「あ、あの…みなさん」
「ん?どうした、姫路?」
おずおずと声を出す姫路に雄二が疑問符を浮かべる。
「その、昨日お話していたお弁当なんですけど……」
「えっ?!本当に作ってきてくれたの?!」
明久の方を見て笑いかける姫路。
「はいっ!一生懸命作りましたのでよかったら食べてもらえませんか?」
「勿論!僕、砂糖と塩と水以外のものを食べるなんて久しぶりだよ!」
明久はビタミンとかを体内で生み出して生きてるのか……?もしかして寝てる間に餓死して復活を繰り返しているんじゃ……。
明久の亜人説を少し真剣に考えていると雄二に声をかけられる。
「おい、晴人。俺と島田とお前で飲み物買いに行くぞ」
「了解」
秀吉達は先に屋上に行ってるようで、俺たちは飲み物を買いに行くことになった。
「なあ……雄二、島田。姫路の料理の腕をお前らは知ってるか?」
「な、何よ八坂。そんな怖い顔して」
ふと、とある噂を思い出したので道中話をふってみると二人とも疑問符を浮かべている。
「噂?なんだよそれ。聞いた事ねぇぞ」
「俺も風の噂でしか聞いたことが無いんだが……アイツは料理に猛毒の化学物質を入れるらしい」
「「………は?」」
二人とも同時に固まってこちらを見て来る。
「去年、調理実習が家庭科から消えたのはどうやらそこに原因があるようなんだが……噂だろうな」
「な、何よ八坂…びっくりさせないでよね……姫路さんの学力は最強格なのよ?毒とそうじゃないものの区別くらい…」
「ま、全くだ。おどかしにしてはレベルが低いぞ、晴人」
「まあ、小粋なジョークだよ」
「「全然イケてないぞ(わよ)!!」」
特に事件などはなく俺たちは屋上に戻った。
「やっと屋上だな。おーい、飲み物を──」
そして屋上のドアを開けた俺達は言葉を失った。
「………戻ったのか……助けろ…!」ガクガクガクガク
震えているムッツリーニが目の前で倒れていた。
「あ、あぁ…さ、三人ともおかえりなのじゃ……」
「ま、待ってたよ……?」
あ、これマズいヤツかもな。咄嗟の判断で島田に耳打ちする。
(おい、島田……話がある)
(なによ)
(……この状況をなんとかしたい。俺が指示を出したら姫路を連れ出せ。後はこちらで処理する)
(……癪だけどあんたの提案に乗ってあげるわ。ウチも命は惜しいから)
「島田さん達はどうかしたんですか?」
コソコソと話している俺と島田をみて首を傾げながら雄二に尋ねる姫路。
「いや、気にするな。時に姫路。ムッツリーニはどうしたんだ?」
「いえ、食べたら眠くなってしまったとか…」
「そうか。んじゃあもう一つ聞くが、この料理、お前は味見をしたのか?」
「太ってしまうのでしてません」
恥ずかしそうにモジモジしながら答えているが全く可愛さを感じない。雄二…頼むから何が入ってるのかは突き止めてくれよ。
「そうか……無粋だと思うが、何か隠し味でも入れたのか?」
「あ…はい。えっと…クロロ酢酸と」
「………は?」
クロロ酢酸:劇物に指定されている腐食性の強い物質…だよな?
「濃硫酸と……」
濃硫酸:不揮発性の粘性の高い物質。衣類に付いたまま放置すると服に穴が空き火傷する恐れもある。紛れもなく猛毒だ。
「あとは長持ちするように硝酸ですっ!」
「「…………」」
「…????」
明久は本気で首を捻ってるな。島田と雄二はあまりにスラスラと口に出される物騒な単語に空いた口が塞がらないようだ。
「…秀吉。布施先生に話をして化学室の鍵を開けてもらってきてくれないか。毒物処理だ……」
「了解したのじゃ」
立ち去っていく秀吉を横目で見つつ明久に買ってきた緑茶を渡して康太に飲ませるように指示する。
「姫路、お勉強の時間だ。クロロ酢酸にしろ濃硫酸にしろ硝酸にしろ、人体にはすべて猛毒だ」
「はい、そうですね」
「料理ってのは人が食べるものだよな?」
「はい。それがどうかしましたか?」
「………お前、食ってみろこれ」
「なんてことを言うんだ晴人!!そんな事をすれば姫路さんが…」
「安心しろ、骨は拾ってやるから」
「そういう問題じゃないよ!!」
「お前は黙って康太の看病してろ──姫路。もしお前がこれを毒じゃないって言いきれるなら一口でいい、食って証明してみろ」
末路は見えてるけどな。
「……わかりました……いただきます」
箸を使って口に卵焼きを入れる。
「………きゅぅ…」バタン
そりゃそうだ。
「ごめんなさい……」ズーン
その後、必死の努力の末に康太は息を吹き返し、姫路は島田に頼んで女子トイレへ連れていかせて中身を吐き出させた。その後はとりあえず缶のお茶を飲ませておく。
病院行きにならないこの二人はかなりタフだと思う。
「だ、大丈夫だよ姫路さん。料理ならゆっくり練習すればいいんだからさ」
普段塩水で生きてる明久が言ってもなぁ…。
「さて、一応我がクラスの主戦力が全員息を吹き返したんだ。いい加減にミーティングを始めるぞ。姫路もいつまでもへこんでないでくれ。お前はうちの大切な主戦力なんだ」
「はい………」
「さて、今回Bクラスと戦うことにおいての理由を説明しよう」
面々を見回すと雄二は言葉を続ける。
「今の俺達ではどんな策を立てたとしてもAクラスには勝てない」
まあ、それはそうだろうな。
「何よ坂本、だからってウチらの最終目標をBクラスにするつもりなの?」
「いや、Aクラスを殺る。その為にもBクラス戦は厳しい戦いにはなるが必要なプロセスなんだ」
「それで、Bクラス戦の作戦は?」
「Bクラスの連中をあいつらの教室に押し込めたあとに姫路と晴人の我がクラス双璧に前線に出てもらう。そして、相手がそちらに意識を向けてる時にDクラスに室外機の破壊をしてもらう」
「ほう…?」
「春とはいえ白熱した戦争だ。教室に押し込んでしまえばもうこちらの勝ちはほぼ確定だ。冷房のストップした教室に熱気が篭れば当然窓を開けるだろ?」
「そこでムッツリーニに窓から保健体育の大島先生と飛び込んでもらって一掃するわけだ」
薄々わかっていた詰めを俺が代わりに言うと雄二が恨めしげにこちらを睨んでくる。
「おい晴人。最後まで説明させろや」
「ははっ、わり」
「はぁ…まあいい。今回は晴人、宣戦布告してこい」
「なんて言えばいいんだ?」
「そうだな…明日の昼休み終了後から開戦する、と言ってこい」
「ちょっと待って雄二!今度こそ雄二が行けばいいじゃないか!晴人が死んじゃうよ?!」
「おい待て明久。お前は俺をどれだけ弱いと思ってんだ?!これでもお前より強いぞ?」
いくらなんでも貧弱扱いされるのは納得いかない。
「別について行ってもいいぞ明久…命の保証はしないけどな」
「ごめん……晴人」
明久弱すぎないか?
「ま、そういうわけだから行ってくるわ。直接教室に戻るから残りの作戦会議は任せた」
「はいよ。細かい打ち合わせはお前にはいらんだろ、お前は自由に動いてこちらの生徒を救出してくれればそれでいい」
さて、俺もさっさと仕事を片付けて教室に戻るかね。
えーっとBクラスはここか。
「失礼します。Fクラスの八坂晴人です」
『あ…ねえねえ、八坂君よ!』
『本物見たの初めて!かっこいいわね!』
『さ、サインもらってこようかしら……?』
『『『チッ!』』』
視線に晒されるのはもう慣れた。別にかっこよくもないんだが女子の基準はわからんな。
「そちらの代表はいらっしゃるか?取り次いでいただきたい」
「フン…俺が代表だが、何か用でもあるのか。『元』次席殿?」
元、をやたらと強調してくるイヤミな男。こいつは──
「へぇー、アンタが代表なのか、誰だっけ。根腐れ?」
眉をピクリと動かしたが殴り掛かるのは堪えたようだ。
「根本 恭二だ。それで?Dクラスの次は俺たちに挑むってか?」
「その通りだ根本。我々Fクラスは貴殿らBクラスへ宣戦布告をさせてもらう!!開戦は明日の昼休み終了後!正々堂々としたフェアな戦いを楽しみにしている!!」
Bクラスの雰囲気が死んだ。そりゃそうだ。突然最下層クラスに宣戦布告されたのだから。この学校では下のクラスからの宣戦布告は断れない。つまり彼らはDクラスを打倒した
「使者としての俺の役目は以上だ、失礼するよ」
『ちょっと待てやお前!!』
『宣戦布告の使者が無事に帰れると思うなよ!!』
『やっちまえ!!』
『八坂君逃げてっ!!』
なんかしらんが勝手に安いドラマみたいな展開になってて至極心外なんだけどまあいいか。
「よっと」
『なに!ぐふっ?!』
殴りに来たのをそのまま避けてまず腹に一撃を入れる。
『なっ──ぎゃぁぁあ!!』
呆気に取られてる奴の股間を蹴り上げ悶絶させて
『こうなりゃヤケだ畜生がァあ!!』
「ヤケになるくらいなら来んじゃねえアホ!!」
ゴツン!!
最後の一人は頭突きで落とす。
『『『きゃああああ!!八坂君カッコイイ!!』』』
……本当に女ってのはわからん。
教室に帰ると無傷で戻ってきたことに周りは唖然としている。そして雄二だけがニヤニヤとしている。
「なんだよ雄二?宣戦布告は済ませてきたぞ?」
「いや、それだけじゃねえよ、ほれ見てみろ」
雄二が見せてきたのは
「なになに……彼氏にしたい男子生徒ランキング?そんなもんあったのか?」
「ああ、さっきランキングが更新されてお前が一位になった。Bクラスで何かやったのか?」
「向かってきた男子生徒三人を潰して女子に悲鳴をあげられたがなんで周りの奴らは殺気立ってこちらに上履きを向けてくる?」
「ちなみに、彼氏にしたくないランキングもあったぞ」
雄二は高らかに名前を呼び上げる。
「彼氏にしたくないランキング第一位は須川だ、おめでとう!」
あ、泣き崩れた。
「彼女にしたいランキングは1位が姫路、2位は秀吉の様だ。3位は…晴子……?知らない名前だな…?」
俺は秀吉と康太に全力で知らぬふりをしろオーラを出す。
二人は無言で首肯してくれた…とりあえず安心だ。
「まあいい、彼女にしたくない女子ランキングは堂々の第1位が島田だ。我がクラスは粒ぞろいだな!」
「それよりも晴人!君はもしかして女子からラブレターなんて貰ってないよね?!ないよね!!?」
「ラブレター?受け取ったことな「嘘つくでないぞ晴人。お主は女子から恋文をよく受け取っておるじゃろ。悉く断っているようじゃが」………」
『殺せぇぇええええ!!!』
クラスの大半が俺を殺しにくる。動かないのは秀吉と女子二人、雄二と康太くらいだ。
だが残念だったなお前ら。この時間だともう──
「何をやっておるのかこのバカども!!貴様ら全員時間外補習行きだ!!」
『ギャァァアアアアア!!!!』
西村先生が来る時間だ。
明久を筆頭にクラスメイトの八割以上が連れていかれてしまったため、教室が無駄に広く感じられる。
「お前達には悪いが俺はこいつらを一日みっちりと補習してやらねばならん。話は通しておくから午後は各々自分の学力にあったクラスで授業を受けてくれ」
「「「「「「あ、はい…」」」」」」
西村先生が去っていくと俺たちはとりあえず固まって相談する。
「さて……まず姫路はAクラスだろ?」
「いや、待て晴人。俺たちは今のうちに補充試験を受けるぞ」
「補充?あんた達は兎も角としてウチと土屋は受けても大して時間かからないわよ?」
「お前達二人は明日リラックスして戦争に望んでもらわなきゃ困る。作戦の要と部隊指揮官なんだからな」
「そういうことなら分かったわ」
「………俺は保健体育から受け直してくる」
「姫路と晴人は全科目満遍なく点数をとってきてくれ。お前達も部隊長なんだ、頼んだぞ?」
「「おう(はい!)」」
「秀吉も頼んだ。お前は士気をあげるのが上手いからな」
「了解したのじゃ!」
「俺たち六人は補充試験を切り上げ次第解散する」
その一言の後、俺達は各自のテストを受けに行った。
開戦のときは、近い。
いかがでしたでてしょうか?
次回よりいよいよBクラス戦の開始でございます。できるだけ次回も日曜日更新できるように頑張ります!
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回もよろしくお願いします!!