貴女の隣を歩みたい   作:アイスの種

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展開遅くてすみません。
ギャグもシリアスも書けないの。ゆるして。


これが私の

 

 

 

 

 前回のあらすじ。

 

 香蓮ちゃんが年下の可愛い女の子をナンパから救った後、お家に連れて帰ったよ。

 

 

 

 0.rifle

 

 

 銃というものに、私は未だに慣れない。

 銃身を向けられると怖いし、緊張する。

 発砲音も大きくてびっくりするし、火薬の匂いもあまり好きではない。

 

 

 ——でも。

 

 スコープを覗いて、一つの的に集中しているときは。

 なんだか、弓を引き絞る時みたいに周りが静かになって。

 

 引き金に指を掛け、銃弾を放つときは。

 なんだか、矢を放つ時みたいに胸の奥が静かに熱くなる。

 

 

 これは、一種の中毒なのかもしれない。

 

 だって、気付いたとき。

 

 

 いつも、私の心は澄み渡っているのだから。

 

 

 

 1.

 

 

 ナンパ騒動、という程のことではないが、男二人に絡まれた風音を救った香蓮。

 お互いに自己紹介をして、しばらく雑談に興じていた。

 

 

 話していて小花衣風音という少女について、香蓮の中で初めに会った時のイメージとは少し違った少女であることが判明した。

 

 香蓮が年上だということもあるのだろうが、風音は緊張した面持ちである。

 話す時も香蓮とあまり目を合わせてくれない。

 少し伏し目がちな瞳が色っぽく見える。

 だが、久しぶりの会話が楽しいというような雰囲気を感じる。

 

 風音の振る舞いを観察して至った結果。

 恐らく、人付き合いが苦手なのだろう。

 

(わたしと、似てるのかも)

 

 失礼ながら、この可憐な少女と自分を重ねてしまう。

 

 小さい頃から、この身長のせいで浮いてしまい周囲に馴染めなかった香蓮。嫌な思い出ももちろんある。

 そのせいで香蓮は必要以上に人と関わるのをやめてしまった。

 コンプレックスとして残った爪痕が、香蓮から積極性を奪ってしまったのだ。

 

 

 風音も同様に。

 状況は違えど、香蓮のように人と必要以上に関わってこなかったのだろう。

 

 傑出し過ぎる容姿は人を寄せ付けない。時には嫉妬の対象にもなり得る。

 日本人離れしたその風貌、体貌に誰もが気後れしてしまう。

 

 人は自分とは異なるものを拒絶してしまう傾向がある。

 

 だから。

 やはり。

 

 小花衣風音という可憐で秀麗な少女は、周囲から乖離され続けたのだ。

 

 

 そんな風音は、自分の容姿を気にせずに誰かとコミュニケーションが出来るVRゲームをしているらしい。

 初めは興味がなかったが、とあるクラスメイトに誘われて試しに始めたのだという。

 

「凄いんですよ!VRゲームって。みんな私に気安く話しかけてくれるし、誰も私のことを変な目で見たりしないんです」

「それ凄い分かるっ。分かるよ!」

「あっ、香蓮さんもVRゲームやってるんですね!」

「そうだよ。わたしも友達に誘われてね」

 

 風音の熱心な言葉に、心の底から共感する香蓮も随分と嬉しそうだ。

 同じ仲間を見つけたようで、風音の瞳はキラキラと輝いているように見える。

 

 思わず風音の瞳に視線が吸い込まれる。

 

「…………?」

 

 突然黙ってしまった香蓮を見て、不思議そうに首を傾げる。

 小柄な風音がそんな振る舞いをすると、小動物を連想させられる。

 

 頭を撫でてしまいそうになる衝動を何とか押さえつけて、今まで気になってたことを問いかけてみる。

 

「風音ちゃんって、何処か国とのハーフ、とか……?」

 

 名前は日本人らしい名前だが、明らかに容姿は外国の血が流れているように思えた。

 

 肌の白さ。髪の色。

 身長に行くはずだった栄養は胸に吸い込まれたようで。

 

 最も目立つのはやはり風音の瞳だろう。

 世界的に見ても緑の瞳はかなり珍しいらしい。

 

 それに、落ち着く色だった。

 何処と無く香蓮自身の故郷を思い出すからだろうか。

 

(というか、こんなこと聞いて大丈夫だったかな……?

 

 風音は自身の容姿のせいで人付き合いを避けて、というか出来ないでいた。

 その容姿に関することを聞くのは流石に不躾であっただろうか、と思ったのだが、

 

「はい。私は日本とドイツのハーフです」

 

 案外、あっけらかんとした様子で答えてくれた。

 

「父は日本人で、母がドイツ人なんです。ドイツ人って基本的に背の高い人が多いんですけど、そこは父から遺伝してしまったようで。父は小柄な方ですから」

 

 外国の血を引き継いでいるというのに、可愛いという感想が出てくるのは、日本人特有の幼さというものが滲み出ているからだろう。

 

「あ、でも私、ずっと日本に住んでますからドイツ語は喋れないんです」

「へぇ」

 

 もしかしたら、日本語が通じないのかも、とか思われてたのも風音が話しかけられない理由だったのかもしれない。

 

「そういえば、風音ちゃんはどんなVRゲームやってるの?」

 

 香蓮の予想では、『ALO』——アルブヘイム・オンラインなどの妖精ファンタジー系のゲームだと思っていた。

 可愛らしい風音にはお似合いだと思う。

 

 しかし、

 

「あっ、GGO、ガンゲイル・オンラインっていうゲームです」

「え」

 

 思っていたよりもハードなゲーム名が、嬉しそうに笑う可愛らしい口から出てきた。

 それは聞き慣れた、香蓮にとっても馴染みのあるゲームだった。

 

「……?」

 

 驚く香蓮にまたもや不思議そうな顔をする。

 偶然とは本当に恐ろしいものだと、香蓮が実感した瞬間だった。

 

(風音ちゃんのクラスメイトは、何故よりによってGGOを薦めたのか……。これがまた分からない)

 

 香蓮もGGOをやっていることを風音に伝えると、それはもう本当に嬉しそうにしていたので、そんな疑問のことはどうでもいいかと忘れてしまう香蓮なのであった。

 

 

 2.

 

 

 翌日。

 レン——の中の人、小比類巻香蓮はGGOにログインしていた。

 

 先日、せっかく同じゲームをプレイしてるんだから一緒にやりましょう、というような約束を風音と交わして、その日はお開きになった。

 

 香蓮は大学、風音は高校とそれぞれの職務を全うし、交換しておいた連絡先から『これからGGOにログインしますね』と報告があったのが数分前。

 

 待ち合わせはとある酒場。

 デザートピンクの服を隠すように、頭から足まですっぽりと隠れる大きめの外套を身に纏うレン。

 

 事前にお互いのアバターの特徴を教えておいたので、すぐに交流出来るだろう。

 

 と、酒場のカウンターの席に座り、所在無さげに足をぷらぷらと揺らしていたレンに向かってハスキーな声がかけられた。

 

「かれ……レンさんっ。お待たせしました」

「あはは……。大丈夫、そんなに待ってないよ」

 

 危うくリアルの名前を呼ばれそうになり、一瞬ヒヤッとしたレンは苦笑をこぼす。

 フードを脱ぎお互いの顔を見合わせる。

 

 中性的な、いかにも好青年といった印象の男性……に見えるが実際は風音の分身、プレイヤー名『フウ』である。レンはその正体を知っているので男性と勘違いはしなくてすんだ。

 前情報なしの初見では、男と間違えてしまうかもしれなかった。

 

 暗い青色をベースにした迷彩服。

 スラっとした体躯はモデルのようだ。

 ショートカットの下の柔和な笑みが中の人(風音)を連想させる。

 

「GGOではレンさんのアバターは珍しいから、すぐに見つけられましたよ」

「いや、フウちゃんのアバターも結構珍しいと思うよ」

 

 レアなアバターは高額な値段で売れるらしいが、レンもフウもそのつもりはないようで。

 レンに限ってはいくつものVRゲームを経て手に入れたものだったりするので、それなりに愛着があるのだ。

 

「あ、そうだ」

「どうしました?レンさん?」

 

 思い出したかのように声をあげるレン。

 

「名前。レンさんじゃなくて、レンって呼び捨てでいいよ。知らない仲じゃないんだし」

「そ、そうですか……?なら僕のこともフウって呼んでください」

「うん、分かっ……ん?」

 

 フウの台詞に少し違和感が。

 

「……僕?」

 

 一人称がリアルとは変わっていた。

 レンの疑問に心当たりがあるフウは、恥ずかしそうにはにかみながら、

 

「あはは〜。折角のアバターですし、ちょっと寄せようかと思って」

「あー、なるほど」

 

 その気持ちはレンにも分かるかもしれない。

 ゲームでもお洒落をしてみたかった香蓮は、実際に可愛いレンに合わせて服をピンクに染めたりしていた。

 それとはまた別だと思うが、まあ似たようなものだろう。

 

「ピンクの戦闘服、可愛いですね。それ何処で買ったんですか?」

「えへへ。これ初期装備を好きな色に塗ってくれるシステムでやったんだ。思ってた色とちょっと違ったけど、まあ概ね満足してる」

 

「レンはリアルでお酒飲んだことありますか?」

「まあ、一応あるけどあんまり好きじゃないかな〜」

 

「ここだとお酒を飲んでもステータスとして酔った気分が味わえるから楽しいです」

「おお、その年でお酒の良さを知ってしまったのか」

 

 

 しばらく雑談に花を咲かせていた二人。

 しかし、いつまでも酒場にいるのも味気ないので、場所を変えて広大な砂漠エリアへ。

 

 色々話していく内に、GGOらしくお互いの戦闘スタイルの話題になった。

 

「レンはやっぱり、えっと……AGI型?っていうやつですか?」

「うん。敏捷値に極振り」

「それで、小柄な体と素早さを活かした近距離での奇襲ですか」

「そ。しかもここだとわたしの色が上手く迷彩して全然バレないの」

 

 砂漠上ではレンのようなデザートピンクの服は砂漠と相性が良い。

 PK。所謂プレイヤーキルを繰り返していたレンは巷ではそれなりに有名になっていた。

 

「凄いです。僕はあまり銃撃戦とかは得意ではないので」

「うーん、確かにフウが銃をぶっ放してる姿が想像できない」

「そうですか?」

「うん」

 

 なまじリアルのフウを知っているレンからすれば、こんな鉛臭いゲームをプレイしていること自体が想像出来なかったのだが。

 

 ちょうど良く身を隠せる巨大な岩のオブジェクトがあったので、そこで休憩しながら周囲を警戒することに。

 

 銃撃戦が苦手とのことだが、一体どんな銃を使うのか気になった。

 銃が苦手でも扱いやすい銃ってなんかあったかなぁ、と思索にふける。

 

「じゃあ、どんな武器使ってるの?」

「これですよ」

 

 流れで、何気なく聞いたレン。

 虚空で手を振って、フウはメインメニューから自身の扱う銃を取り出した。

 

 

 ——ガシャン。

 

 

「よいしょっ、と」

「え」

 

 呆けた声が出た。

 フウこ手の中に現れたのは、レンの持つP90のピーちゃんより遥かに長い銃身。

 

「…………えっと、フウさん?それは?」

「……?えー、確か……『OSV-96』とかいう狙撃銃です。後フウでいいですよ?」

 

 全長1700mm超、重さ約12kg。

 口径は12.7mm。使用弾丸12.7x108mm弾。

 

 OSV-96。

 ロシアのKBPトゥーラ器械製造設計局が開発したとされる、対物ライフルであった。

 

 

「………………………すぅ〜」

 

 ゆっくりと息を吸い込む。

 

「……?」

 

 

 荒野の砂漠に、レンの叫びが轟いた。

 

 

 

 3.

 

 

 現実世界ではお姫様のような小花衣風音。

 

 仮想世界での彼女は超長距離狙撃手であった。

 

 

 

 のちに、自称・小花衣風音の友人に聞いた話によると、

 

『あー、あの子の狙撃は……。うん、絶対に敵にはしたくない』

 

 とのことだった。

 

 




作者は銃に関しては素人です。
責めないでください。
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