貴女の隣を歩みたい   作:アイスの種

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感想と評価に舞い上がって、急いで書きました。


貴女との

 前回のあらすじ。

 

 GGOにて再び再開したフウとレン。

 そこで、レンはフウの装備を目の当たりにすることになったよ。

 

 

 

 0.joint struggle

 

 

 私が銃を選んだのではない。

 銃が私を選んでくれたのだ。

 

 うん。だからこそ。

 

 私はそれに、全力で答えるのだ。

 

 

 

 1.

 

 

 

 小さな体から、大きな声が飛び出す。

 

「ちょ!ちょっと待って!」

「はい。どうしたんですか?そんなに慌てて」

 

 OSV-96を抱えるフウに詰め寄るレン。

 無骨な銃をチラチラと見ながら、驚愕の表情を隠せない。

 

 何故、そこまでレンが驚いているのかフウには理解できていなかった。

 

 しかし、レンの知り合いに様々な銃を集めてはそれらを使いこなすかなり変わったプレイヤーの知り合いがいて、

 

『対物ライフルっていうのは、現在のGGOでの環境ではかなーりレアなライフルなんだよねぇ。そもそも数が少ないし。あ〜私も欲しかったぁ〜っ!』

 

 と、話していたのを覚えていた。

 いくつかの対物ライフルの種類を教えてくれたが、その中にOSV-96の名前もあったのだ。

 

「だってそれすっごいレアアイテムでしょ!?なんでそんなの持ってるの!?」

 

 明らかにガンショップには展示されていないであろう対物ライフルを、大事そうに抱えるフウは困ったような顔をしている。

 自身の持っているレアアイテムの価値をまるで把握していない。

 

「なんで、と言われましても……。え〜っと、確か……気付いたら変なダンジョンに迷い込んでいて、無我夢中に敵を倒して、やっとの思いで外に出たらいつの間にかアイテム欄にあったので」

 

 なんというラッキーガール。

 

 無知は大きな可能性の枠を与える、と何処かの誰かが言っていたが、なるほど確かに。

 物欲センサーというものが彼女には働かないようだ。

 

「この話、他の人にはしない方がいいと思う。いやホントに」

「はあ、そうですか……?」

 

 ネットゲーマーの嫉妬ほど怖いものはない。

 意味もよく分からないままだが、フウは了解したようだ。

 

「にしても、フウは狙撃手だったのかぁ。私とは全く真逆だねー。私、狙撃の才能はないみたいだから」

 

 羨ましいっ、と口を尖らせる。

 チュートリアルでボロクソに言われたのを思い出したのだろう。レンの頬は膨れていた。

 

「そんな!僕だって近距離の銃撃戦は苦手、というか怖いので……。レンが羨ましいですよ」

「そうかなぁ?」

「そうですよ。僕には出来ないことですから」

 

 そう言われると悪い気はしないレン。膨らんだ頬も元どおりだ。

 このちっこい少女。案外チョロいのだ。

 

「さて、と」

 

 慣れた手つきでOSV-96をストレージ内に戻す。

 

「あれ?使わないの?」

「あは〜……」

 

 てっきり使用するところを見せてくれると思っていたレン。

 ちょっとがっかりしてしまう。

 そんなレンに苦笑し、申し訳なく思いながらフウは続ける。

 

「これ、見て分かるように、すっごい重いんですよ。だから持ち歩くのも大変で……。まだ射撃場でしか撃ったことがなくて。あと少しSTR値があったら楽になるんですけどね」

「なるほど。うん、わたしじゃ絶対に持ち歩けないや」

 

 もしレンが対物ライフルを持って戦場に立っていたら、例え狙われたとしても逃げられずに蜂の巣にされてしまうだろう。

 敏捷性の高いレンにとっては、重くて強い銃がむしろ足枷になってしまう。

 

(しかも、遠くからだとわたしじゃ当てられないだろうし……)

 

 動けないし、当たらない。

 チームを組んだら、確実にお荷物になっている自分が想像できたらしい。

 諦めた目をしている。

 

「というか!それをいつも使ってるんじゃなかったの?」

「僕としても、使ってあげたいですよ?ただ……」

「ただ?」

 

 少し考えるように目を閉じて、やっぱり困ったような笑みを浮かべながら、

 

「まだ、()()()ないんです」

 

 そう告げた。

 

「……?慣れてないって?」

 

 レンが疑問に思うのも当然だった。

 

 GGOの特徴としてシステムアシストがあるのだ。

 

 その一つとして、着弾予測円(バレット・サークル)というものがある。

 銃を撃つ際、引金に指をかければ銃撃者の視界には収縮を繰り返す円が表示され、発射された弾丸はその円の中にランダムで着弾することになっている。

 

 このシステムアシストのおかげで、GGOはゲームとして機能しているといってもいい。

 

 つまり、現実で銃を撃ったことのない素人でもある程度システムを理解していれば標的に弾丸を命中させることが可能ということだ。

 

 そのため、現実世界のように練習をしなくてもGGOで銃を扱うのには苦労しない。慣れる必要はないのだ。

 

「ん〜、どう言えばいいのか……」

 

 フウも自身の発言が筋違いだと理解しているのか、頬に手を当ててどう言葉で表そうか悩んでいる。

 

「えっと。一緒に戦う仲間のことはよく知っていないとダメ、ですよね?……なんか違うような気がしますが、……うーん、気持ち的な、感覚的なものかもしれないです」

「……ふむ。フウは真面目ってことだね!」

 

 一通り話を聞いたレンはそう結論を出した。

 

「……そうなんでしょうか?」

「つまり自分の相棒になる銃のことをしっかりと理解してから使いたいってことでしょ?意識が高いってことだよ」

 

 うんうん、と頷きながら解釈する。

 

「じゃあ、実戦ではどんな銃使ってたの?」

 

 現状OSV-96を使用していない、ということが判明したため、新たな疑問が生まれるのは当然のことであった。

 

(聞かなくてもなんとなく分かるけど)

「そうですね〜……」

 

 やはり、慣れた手つきでストレージ内からアイテムを探していく。

 

「あっ、あった」

 

 と、虚空からフウの手には新たな銃が。

 

「それは?」

「確か、『M24』です。実戦で使ってるのはこっちです」

「それも……」

「狙撃銃です。結構メジャーらしいです」

「ああ、やっぱり」

 

 アメリカのレミントン・アームズ社製のボルトアクション狙撃銃。

 全長1092mm。重量は4400g。

 口径は7.62mm。使用弾薬7.62x51mm。

 

 狙撃銃として安定性もあり、狙撃手にはよく信頼される銃である。

 軍や警察にも採用されているらしい。

 

(いや、まあ。分かってたけどね)

 

 この人畜無害そうな中性的な女性が、狙撃手なのは分かっていたのだから。

 特に驚くことではない。

 

「よしっ!」

「んん?どしたの?」

 

 先程、レンが狙撃銃を撃ってほしそうな顔をしていたのを思い出したフウはM24を両手に抱えながら立ち上がって、

 

「さて。では、ちょっと撃ってみましょうか」

 

 そう切り出した。

 

 

 

 2.

 

 

 本日の収穫は概ね満足のいくものであった。

 

 リアルの知人で結成された男性プレイヤー四人のスコードロン。

 そのリーダーに位置する男は今日一日をそう評価した。

 

 今日一日で彼らのストレージはモンスターからのドロップアイテムで満たされていた。

 比較的換金率の高いアイテムを重点的に集めたのだ。全て売れば、かなりの額になるだろう。

 

「いや〜、今日のドロップ運はいつにも増してよかったな!」

 

 手ぶらで頭の裏で手を組んで歩くチャラい男が上機嫌に語る。

 

「ああ、これだけあれば全員分の新しい銃も買えるだろう」

 

 反応したのは『SCAR-L』を装備したリーダーの男。

 

「銃だけじゃねぇ、防具も買う余裕あるんじゃねえか?」

「ふぅ〜大漁大漁ぉ」

 

 残りの二人はモンスター狩り用の光学銃を装備していた。

 

 目的はスコードロン全体の強化。その為の資金集めが終わったその帰り。

 今日はドロップ運が良く、かなりの資金が調達できたと皆表情は明るい。

 

 新たな武器にウキウキとした足取りで岩に囲まれたエリアを進んでいく。

 

 話を切り出したのは、余裕そうに武器も持たない軽装の男。

 

「なんの武器買おっかな〜?あ、一時期流行った『光剣』!正式名称なんだっけ?あれ、買っちゃおうかな!」

「……『フォトンソード』な。というか、武器くらい装備しとけ」

 

 リーダーは呆れた顔をしながら、正式名称を教える。

 調子に乗る男に注意を呼びかけるが、聞く耳を持たないらしい。

 

「おおっ、それそれ!ん?大丈夫だよ!撃たれても避けるし」

「狙撃されたら終わりだろ。……にしても、ロマンあるよなぁ光剣」

「ああ。ライトセーバーみたいでかっけぇしな」

「だろだろ!」

 

 光学銃を持つ二人も同意する。

 テンションの上がった仲間たちに思わず溜息が出てしまうリーダーの男。

 

「やめとけ。光剣なんか無駄に高いだけで役に立たないぞ。ただでさえGGOは銃撃戦がメインだ。そんな中で、超近距離まで近づかないと攻撃ができないような武器なんて、使い物になるわけがないだろ」

「………それもそうか。近づく前に蜂の巣だな」

「意味ないな」

 

 あまりにも正論な意見に先程まで光剣賛成派の二人も同意せざるを得ない。

 

「えー!?でも実際に光剣使ってスパスパ銃弾切ってたプレイヤーがいたらしいぜっ?」

「そんなの話題作りのためのフィクションだろ。それに釣られた奴らの間で一時期流行ったってだけだ」

 

 リーダーの言葉に反論出来なくなった男は不貞腐れたようにそっぽを向く。

 

「ちぇっ。いいと思ったんだけどな〜」

「そう不貞腐れるな。…………はあ、分かったよ。一本だけ買っていいさ」

「うわ、お前だけずりーぞ!」

 

 めんどくさくなったリーダーが折れることになった。

 してやったりといった顔で光剣を欲しがっていた男の機嫌も直る。

 

「マジでっ!?ィヤッホーッ!流石リー——」

 

 流石リーダーだぜ!

 そう言おうとしていたが、続きを口にすることは叶わなかった。

 

「——なっ!?」

 

 代わりに仲間達に聞こえたのは、男の体がポリゴン片に砕け、散布する音。

 

「狙撃かッ!?」

「クソッ!どこから!?」

 

 状況を理解し、即座に臨戦態勢を取る三人。

 瞬間、光学銃を持つ男に向けられたのは崖上から長く伸びる赤い光線。

 

 これがGGOにおいてのもう一つのシステムアシスト。

 ——弾道予測線(バレット・ライン)

 名前の通り、銃の弾道が表示される防御的システムアシスト。

 

「上か!おい!バレット・ラインを避けるんだ!!」

「分かってるよッ!」

 

 転がるようにバレット・ラインを避ける光学銃持ちの男。

 

 だが、銃弾は放たれなかった。

 そのかわりに、

 

「はぁぁぁ————ッ!!」

 

 男の後ろからデザートピンクのちっこい少女が、およそ人間には出せない速度で岩陰から飛び出した。

 同時にピンク色に染められたP90から雪崩のように銃弾が放たれた。

 

 バレット・ラインを避ける為に態勢を崩した男は、ピンクの少女の敏捷性に対応できるはずもない。至近距離で大量の銃弾に襲われ、遺言を残すことなくポリゴン片に姿を変えた。

 

「後ろにも!?くっ!挟まれてたのか!?」

「このチビっ!!よくも!!」

 

 もう一人の光学銃持ちの男が咄嗟にピンクの少女に銃口を向けるが、それは悪手であった。

 

 狙撃手に背を向けるということは、彼にはバレット・ラインが見えなくなるということ。

 

 リーダーの男は相手の狙いに一早く気付き、狙撃手の方へ銃口を向けるが、それはもう遅かった。

 

「——ガッ!?」

 

 光学銃を撃つ前に、正確に頭へと弾丸をぶち込まれた男は声もなく死亡する。

 

 それを見届ける前に、リーダーの男の背中にはP90の銃口が突きつけられていた。

 

「ごめんね」

「ちょっ、まっ——」

 

 命乞いもさせてもらえなかった。

 

 可愛らしい少女の声と共に、乾いた音が鳴り響く。

 死亡を知らせる赤いポリゴン片が宙を舞う姿を認めて、少女は軽く息を吐いた。

 

 最初の一発の弾丸から、およそ数秒の間の出来事であった。

 

 

 

 3.

 

 

 岩陰から崖下を覗ける、絶好の狙撃スポットにて。

 

 M24を抱えながら、仲間である少女を待っている男性にも見える中性的な女性の姿があった。

 

 しばらくしないうちに、耳に軽い足音が聞こえてきた。

 足音の方へ目を向けると、手を振りながらこちらに駆け寄ってくる小さい影が。

 

 狙撃手の元へ、物凄い速度で走ってきた全身デザートピンクの少女は、到着するなり満面の笑みを浮かべた。

 

「すごいすごいっ!!四人も倒しちゃった!!」

「はいっ。レンのおかげですよ」

「ううんっ!フウがいなかったら追撃されてたよ!」

 

 ピョンピョンと小さい体を跳ねさせて喜びを表現するレンに、フウも嬉しそうに微笑む。

 

「まさかバレット・ラインを牽制に使うなんて思い付かなかったよ!そして、敵の目をわたしに逸らしてその隙に狙撃しちゃうなんて!」

「バレット・ラインがあると避けられちゃう可能性が高いので。レンの敏捷性がないと出来ない作戦ですよ」

 

 今までは一人で倒せる人数に限りがあったので、レンのテンションは爆上がりだ。

 

「じゃあ、二人の勝利だねっ!」

「はいっ」

 

 一組のスコードロンをものの数秒で壊滅させた二人は、仲睦まじくハイタッチを交わすのであった。

 

 

 

 ドロップした戦利品を売りに行った二人は、その金額に更に喜んだそうな。

 

 

 

 4.

 

 

 その後、ピンクの悪魔の噂は更に広まったようだ。

 

 

 余談だが、壊滅させられたスコードロンの男達は、ピンク色に恐怖心を抱くようになったとか、なってないとか。

 

 

 

 

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