貴女の隣を歩みたい   作:アイスの種

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たまには会話多めでもいいよねってことで。
読みづらかったらごめんなさい。


私にとって一つの

 

 前回のあらすじ。

 

 レンとフウの二人で共闘したよ。

 少しレンの噂が広まったよ。

 

 

 0. a gift

 

 

 銃はとても面白い。

 最近は、そう思えるようになってきた。

 

 どうすればちゃんと弾丸を当てられるのか考えるのが楽しい。

 

 この銃はどのくらいの距離でどのくらい弾丸が落ちるのか。

 この距離ならどのくらいの時間で弾丸が標的まで届くのか。

 風によってどのくらい弾道が逸れてしまうのか。

 動く標的にはどのように標準を合わせればいいのか。

 

 

 色々と試行錯誤していくうちに、私は感覚的に引金を引き続けていた。

 

 

 1.

 

 

「会わせたい人がいる、ですか?」

 

 ハスキーな声でそう聞き返したのは、M24を抱えながらGGOの曇った空を見上げていたフウ。

 背後に聳え立つ大岩を背もたれにして、だらりと長い両足を伸ばしている。

 

「うん。その人、わたしのフレンドなんだけどね、フウのこと話したら会ってみたいって言ってたから」

「なるほど〜」

 

 ぼけーとしたフウの真横。

 フウと同じく大岩に背を向けて座っている、フウよりも一回り小さいデザートピンクの少女——レンが事の発端を説明していた。

 

 愛銃のP90を我が子のように撫でながら、フウへと視線を向ける。

 

 二人はただ何もせずに呆けていたついでに、こんな話をしていたわけではない。

 

 レンはフウに出会う前にPK——プレイヤーキルに興奮とやりがい、そしてGGOでの対人戦闘の楽しさを実感していた。

 そのレンに触発されたのか、フウもPKには以前に比べて随分と積極的になってしまったようだ。

 

 結果、二人での奇襲PKに二人とも味を占めてしまったので、こうして待ち伏せしているのであった。

 

 といってもこちらは二人。

 流石に数が多かったり、明らかに装備が強かったりしたら、無理せずスルーすることにしていた。

 

 そのため、待ち伏せしている間は特にやる事もなく、雑談に耽っていたのだが、思い出したかのようにレンが先の事情をフウに伝えたのだ。

 

「どうかな?会ってみる?」

「レンのフレンドですし、悪い人ではないでしょうから別に問題ないですよ」

「よかった〜。あ、その人もわたしたちと同じ女性プレイヤーだから、仲良くできると思うよ」

「このゲーム、女性プレイヤー少ないですからね」

 

 フウの言う通り、GGOで女性プレイヤーは珍しい。

 

『ALO』という自身が妖精になり、魔法や剣を使って戦うファンタジーなゲームがあるらしいが、やはりそちらの方が女性プレイヤーも多いようだ。

 しかも、()()()らしい。妖精だから。

 

 そう考えれば、硝煙と油の匂いが蔓延るGGOは確かに女性向きとは言えないだろう。

 

 だからこそ、女性プレイヤー同士での繋がりが増えるのはフウとしてもありがたいことなのだ。

 

「じゃあ、とりあえずメッセ送っとくね」

「はい、お願いします」

 

 フレンドの欄から目当ての人物を探し、メッセージ機能を開く。

 

「ん〜………。えっと、『この前、話した私のフレンドについてなんですが、会えないか聞いてみたら会ってくれるらしいです。時間や場所に指定があったら教えてください』っと。まあこれでいいかな」

 

 簡単に用件だけを書いた文を送信のボタンを押す。

 すると、すぐに返信が返ってきた。

 

「うわ、はやっ」

 

 返信の早さに若干引きながらも、メッセを開く。

 

 そこには、

 

『よぉーし、今すぐ会おう』

 

 と、簡潔に書かれていた。

 

(……いや、場所くらい指定してよ)

 

 呆れた目で返ってきたメッセを見つめる。

 どんだけフウに会いたいんだ、と思わずにはいられなかった。

 

「レン?どうしました?」

 

 何も反応しないレンが心配になり、顔を覗き込むように声をかけるフウ。

 

「え、ああ、大丈夫大丈夫。返信がきてね、今から会おうって言ってる」

「そうですか。では、待たせると悪いですし、行きましょうか」

「あ、ちょっと待って」

「はい?」

 

 立ち上がるフウを呼び止める。

 

「……先に、待ち合わせ場所だけ聞いとくね」

 

 と、レンは乾いた笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 2.

 

 

「というわけで、私はピトフーイ。呼びづらいって不評だから略して"ピト"でいいよ。よろしくね、フウちゃん」

 

 あの後、すぐに返信が来て、ピトフーイ行きつけの酒場でようやく落ち合うこととなった。

 

 褐色の肌に、露出度が過ぎるビキニのような服を身に纏った長身の美女。引き締まった肉体をこれでもかという程に見せつけているようだ。

 両頬には煉瓦色をした幾何学的なタトゥーが刻まれている。

 

 乱雑にまとめたポニーテールをゆらゆらと揺らしながら、フウとレンを交互に見る。

 

「いやー、レンちゃんもそうだけど、フウちゃんもなかなかレアなアバターを引いたもんだねー」

「僕ですか?」

「おっ、ボクっ娘か〜。いいねー!ちゃんと別の世界の自分を楽しんでるみたいで!」

「………ボクっ娘?」

 

 M型(男性)にも見える、中性的な容姿をしたアバターのフウ。

 子供のような、というか見た目は完全に子供なアバターのレン。

 

 見る人が見れば高額なマネーを払ってでも買い取りたい程のレアものだ。

 

「……。そうなのでしょうか?」

 

 とりあえず"ボクっ娘"のくだりは理解出来なかった本人だか、レアだという自覚は全くない様子だ。

 自身のアバターより、フウはピトフーイの姿の方が興味あるようで、下からゆっくりと眺めている。

 

「ピトフーイさんは……すごい格好ですね」

「……まあ、ピトさんだから」

「なるほどです」

「んん?ちょっとー?それどういう意味かしらー?」

「そのままの意味だよ」

「ま、確かにその通りなんだけどね」

「……えー」

「というか、"ピトフーイさん"なーんて他人行儀な呼び方、ここではなしにしましょ?言ったでしょ?ピトでいいって」

「では、ピトさんと呼ばせていただきますね」

「んー、固いなぁー。ホントは敬語もなくていいんだけど。フウちゃんってリアルでも誰に対しても敬語使う人でしょ?」

「わっ、よく分かりましたね」

「口調とか動き方とかで結構分かるもんなのよ。こういうのは」

「フウ。気をつけた方がいいよ。この人、すぐにリアルの情報(あば)いてくるから」

「そうなんですか?」

「あらあら〜、人聞きが悪いなぁ。私が暴いてるんじゃなくて、レンちゃんが勝手に喋ってくれてるの。レンちゃんは隙が多いから」

「なんだとー!」

 

 女三人寄れば姦しい、とはよく言ったもので、話は途切れることはない。

 酒場の飲み物とおつまみを食べながらガールズトークを楽しんでいる。

 

「あっ、そうそう。レンちゃん、また懲りずにエゲツなーいPKを繰り返してるみたいじゃない」

「え、エゲツないって……」

「なんでも、あのピンクの悪魔は狙撃にも手を出したらしいって噂があるんだけど?レンちゃん狙撃も出来たんだ?」

「えっ、ちょっと!?それ、わたしじゃないよ!多分フウのことだよ!」

「あ、それ僕のことなのですか?」

「あら?フウちゃん狙撃上手いんだ」

「上手いかどうかは分かりませんが、狙撃しか出来ないので……」

「なるほどね。そりゃ"狙撃してから瞬間移動して姿も見せずに奇襲してくるピンクの悪魔"なんて噂、一人じゃ土台無理な話だし」

「なんか、いろいろと噂に尾鰭(おひれ)がついてるんだけど……。というか悪魔って……」

「そりゃまあ、噂だし?」

「もぅ、ピトさんは他人事だと思って〜」

「他人事だからね」

「でもでも、噂されるって逆に言えば、レンは凄いってことですよねっ?」

「まあ噂の内容はどうあれ、レンちゃんの実力があってこその噂なわけだしね」

「……わたし的には勘弁してほしいところだけど。後、フウは一応当事者だからね?」

 

 話の内容は、ガールズトークと言っていいものなのか。

 

「とりあえずレンちゃんの噂は、今はどうでもいいとして」

「ヒドイや!ピトさんが言い出したのにっ」

 

 ピトフーイの理不尽に若干涙目になるレン。

 よしよし、とレンを(なだ)めるフウだが、ピトフーイはそれすら無視する。

 

「私が気になったのは……フウちゃん!!」

「はいっ?何でしょうかっ?」

 

 矛先が突然自分に向けられて、少々驚いて背筋が伸びる。

 ピトフーイの目が怪しく光る。

 

「さて、フウちゃんは一体どんな銃で狙撃してるのかな?」

「M24ですよ?」

「あーいいよね。安定性バッチリだし、狙撃にはもってこいの銃だ」

「はい。とっても使いやすいですよ」

「でもね。私の野生の勘が言ってるんだよ。フウちゃんからレア物の匂いがするってね!」

「ピトさん………」

 

 ビシィッ!とドヤ顔全開で指を突きつけるピトフーイ。

 レンはピトフーイが何を言いたいのか分かっているようで、残念な人を見る目を向けていた。

 

「レア物ってOSV-96のことですか?」

 

 安々とその名を口にした。

 条件反射のようにピトフーイの目が輝く。

 

「おほ〜!やっぱり持ってたかー!しかもアンチマテリアルライフル!!」

「あ、あんちまてりある………?」

「対物ライフル。つまり、フウのOSV-96みたいな銃のことをそういうらしいよ。確かモノによっては対戦車ライフルとも呼ぶっぽい」

「へぇー、そうなんですね。勉強になります」

 

 銃の知識についてはからっきしのフウに銃の事を教えてあげると素直に喜んだ。

 

「で!で!フウちゃんっ、そのOSV-96、私に売ってくれないっ?」

「ダメです」

「なん……だと……っ」

 

 即答であった。

 

「まだちゃんと実戦では使ってあげてないので。あと少し経験値を貯めて、STR値をあげればこの銃も楽々持ち運びができるはずなんです。それに、きっと僕はこの銃に会うためにGGOをやってるんだなぁって思ったんです。だからダメです」

「レンちゃんのP90と同じで、フウちゃんはOSV-96に一目惚れしたのね〜」

 

 OSV-96に対する愛を打ち明けるフウに納得した様子でピトフーイは引き下がる。

 

 RMT——リアルマネートレードで銃を収集しているピトフーイは以前にも対物ライフルの所持者に直球で売買交渉を試みたが失敗に終わっている。

 この女、まるで学習していない。

 

「OSV-96は諦めるとして、私はフウちゃんの狙撃にも興味があるのよ?レンちゃんからスゴイって聞かされてたからね」

「レン、そんなことを話していたんですか?」

「あはは〜。わたしは狙撃出来ないから、実際に撃ってるのを見るとやっぱりスゴイなぁって思って」

 

 レンに褒められて嬉しいのか、頬にはうっすらとピンク色が灯る。

 

「じゃあ、ちょっとおねーさんにもレンちゃんお墨付きの狙撃を見せてもらおうかな。よしっ、そうと決まったら即行動!行くよ!二人とも!」

「え、えぇ〜……」

 

 半ば強引にピトフーイに引っ張られるフウとレン。

 STR値で負けているから振りほどけないので、ピトフーイのなすがままに射撃場へと連れて行かれることになった。

 

 

 

 3.

 

 

 OSV-96を構える。

 スコープ越しにターゲットの的がしっかりと見える。

 

 距離、凡そ1000m。

 

 弓を射る時よりも遥かに遠い距離。

 

 集中する。

 だんだんと周りの音が聞こえなくなってくる。

 

 狙うは的の頭部。

 一撃で仕留めることのできるその部位に、狙いを定める。

 

 息をゆっくりと吐き出し続け、全て出したところで引金を引く。

 

 

 ——ダァンッッッ!!

 

 

 お腹に響くような重低音。

 長い銃身から発射された12.7x108mm弾は、轟音を響かせながら標的の頭部を撃ち抜いた。

 

「……ふぅ」

「おー、当たった?ピトさん?」

「ひゅ〜。バッチリド頭に命中。これが対人だったら間違いなく即死ね」

「持って移動するのが大変なので、実践にはまだ使えないですけど」

 

 単眼鏡を覗き、命中箇所を確認するピトフーイ。

 弾丸が当たったことに安堵の息を吐くフウを一瞥し、ニヤリと口を歪める。

 

「さっきは頭だったけど、今度はど真ん中。心臓部を狙ってみようか」

「了解です」

「がんばれー」

 

 先程と同じように、苦もなく標的へと被弾させていく。

 

 その姿を観察していたピトフーイは面白いものを見つけたような表情をして呟く。

 

「ふーん。なるほどね〜」

「……?どうしたの?」

 

 隣にいたレンには聞こえていたようで、ピトフーイを見上げながら問いかける。

 

「んー?ああ。フウちゃんはおそらく着弾予測円(バレット・サークル)()()()()見てないと思ってね」

「バレット・サークルをほとんど見てないってどういうことなの?」

 

 ピトフーイの言うことに理解ができないレンは首を傾げる。

 

「そのまんまの意味だよ。意図的なのか無意識にやってるのかは分かんないけどね」

 

 確証は出来ないけど、と前置きをして説明をしてくれた。

 

「フウちゃんが引金に指を掛ける時間と引金を引く時間の間が極端に短かった。GGOじゃ引金に指を掛けると自動的にシステムがバレット・サークルを表示するけど、フウちゃんの間隔なら本当に一瞬しか表示されていないはず」

「だから、フウはバレット・サークルを見てないってことなんだ!」

「まあ、ただの予想に過ぎないんだけどね」

 

 

 いや、ピトフーイは確信していた。

 自身の強者を求める感覚がそう告げていた。

 

 この子(フウ)は狙撃手としての才能がある、と。

 フウがOSV-96を手に入れたのは本当に運命かもしれない、と。

 

 フウの性格から、リアルで銃を扱っているとは到底思えない。

 だが、GGOという環境がフウに狙撃の才能を開花、いや、引き出したのだとしたら。

 

 本当にバレット・サークルを見ていないのであれば、フウは感覚的に弾丸が命中すると理解している。

 

 ならば、

 

「ねえ、フウちゃん」

「はい?」

 

 射撃を一旦止めて、ピトフーイへと視線を移す。

 

「フウちゃんはバレット・サークル、ちゃんと見てる?」

「……あー、最近はあんまり見てないですね。あ、でも最初の頃はちゃんと見てましたよ!」

「そっかそっか。じゃあ何で最近は見なくなったのか教えてくれる?」

「んー……。撃ってるうちにどうやって撃てば弾丸が当たるのかがなんとなく分かってきたので……。だったらわざわざバレット・サークルを収縮させて狙いを定めるよりはマシかなぁって思ったんですけど……」

「クフフッ、あはははっ」

 

 思わず笑いが溢れるピトフーイ。

 

「な、なにかいけなかったですか?」

「あーごめんごめん。フウちゃんはなにも悪くないよ。強い子の所には強い子が集まるんだなぁって思っただけ」

「…………?」

「…………?」

 

 相変わらずピトフーイの言うことはよく分からないといった風にレンとフウは顔を見合わせる。

 

(この子達はもっと強くなれる)

 

 自身の勘を信じるピトフーイは、フウにとある提案をする。

 

 

「よしっ!フウちゃんにぴったりな、面白い技術(こと)、教えてあげる」

 

 




文書く上で才能って便利な言葉な気がする。
いや、ただの技量不足です。すみません。
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