貴女の隣を歩みたい   作:アイスの種

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今回、特に面白くないと思います。
説明ばっかですみません。


私の新たな

 

 

 前回のあらすじ。

 

 フウはピトフーイとフレンドになったよ。

 ピトフーイに射撃を見せたフウに、なにか教えてくれる約束をしたよ。

 

 

 

 0. skill

 

 

 私の世界は灰色だった。

 

 

 何をしても、周りの人達は私を忌避した。

 

 妬み。

 嫉み。

 僻み。

 恨み。

 

 きっと、それは私が悪いのだろう。

 

 

 だけど。

 

 初めて私を受け入れてくれたこの世界が、私の世界に色を与えてくれたのだ。

 

 

 1.

 

 

 誰もいない訓練場にて、

 

「これよりっ、特殊訓練を開始する!!」

「了解ですっ!先生!!」

「先生じゃなーい!ここでは"教官"と呼びなさい!!」

「はいっ!教官!!」

 

 変なノリに身を任せた、二人の女性がいた。

 

 二人とも長身痩躯で、その身体にはそれぞれ戦闘服のような服を身に纏っている。

 

 一人は全体的に濃い紺色の迷彩服でまとめた男性にも女性にも見える中性的な容貌をもつ女。人の良さそうな柔和な顔立ちをしている。

 先のやりとりで、左手の指をピンッと伸ばし肘を曲げ、軍人のように自身の頭の前部へと当てている。

 

 もう一人は両頬にタトゥーを入れ、黒髪をポニーテールにした女。身体にピッタリと張り付いているような黒の戦闘服は鍛えられたシャープなシルエットを浮かび上がらせている。

 

「そうそう。左手での敬礼は相手を侮辱する意味とかもあるから、やるなら右手でやった方がいいよ」

「え、そうなんですか?分かりました!教官!!」

 

 改めて右手で敬礼をする。

 綺麗な敬礼に満足気に頷くポニーテールの美女。

 

「うむ、よろしい。——さてフウちゃん。おふざけはこの辺にして」

「あれ?ピトさん、やめちゃうんですか……?」

「何でちょっと寂しそうな顔してるんだか」

 

 リアルでは出来ない、学生のようなノリを楽しんでいたフウはしゅんと肩を落としてしまった。

 

「はいはい、また後でやってあげるから。本題に入るよ〜」

「了解です……。きょうかん……」

 

 目に見えて落ち込んでいるフウに、流石のピトフーイも苦笑を隠せない。

 いつまでもそんなやりとりを続けて、今回の本筋から外れるわけにはいかないので、フウには我慢してもらって話を本題に戻す。

 

「今日集まってもらったのは他でもない、この前話した"面白い技術(こと)"をフウちゃんに教えるためっていうのは、分かってるよね」

「はい。昨日言われましたので」

 

 先日、レン経由で初顔合わせを済ませたフウとピトフーイ。

 フウの射撃能力に光るものを見たピトフーイが、"特殊訓練"という名目でフウを呼び出したのだ。

 

「ピトさん、何で僕だけなのでしょうか?レンは呼ばなくてよかったんですか?」

 

 この訓練場にいるのはフウとピトフーイのみ。

 デザートピンクのチビ助(レン)は今回においては呼び出されていないようだ。

 

「そうねー。言っちゃ悪いけど、レンちゃんは狙撃に向いてないし、どうせ後で実際に見ることになるだろうから、レンちゃんはお留守番ってこと」

 

 レンはP90を使用し、小さい体と持前の高い敏捷性を活かした近距離戦闘を得意としている。

 

「今回教えるのは狙撃の時に大きなアドバンテージになる技術。知ってて損はしないよ」

「おおーっ!」

(ま、フウちゃんは8割がた、無意識に実行しちゃってるんだけどね。自分がどれだけ凄い事をしてるか理解もしてないだろうし)

 

 ——だから面白い。

 

 頬を緩ませながら、口には出さず、心中で呟く。

 

「一体どんな技術なんですかっ?」

 

 未知の技術に、年相応のはしゃぎっぷりを見せる。

 

「まあまあ、落ち着きなさいな。その前に、GGOのシステム面の説明を簡単にしてあげましょう!」

「わー!パチパチッ」

「いいねー!フウちゃん!教え甲斐があるってもんよ!」

 

 まるで恋愛トークに華を咲かせる女子高生のようなテンションだ。

 

「とりあえず、フウちゃんはGGOのシステムアシストは知ってるでしょ?」

「はい。着弾予測円(バレット・サークル)弾道予測線(バレット・ライン)ですよね」

「その通り。着弾予測円は攻撃的システムアシスト。弾道予測線は防御的システムアシスト。この二つのシステムアシストのおかげで私達はGGOをゲームとして楽しめているの」

「そうなんですか?」

「レンちゃんにも話した事があるけど、こと狙撃に関して言えば、システムアシストの恩恵をかなり受けてるの。GGOがアシストなしで銃を撃つゲームだったら、普通の人だとたった100m先の的にも当てられなくてGGOはクソゲーになってたわね」

「こうしてゲームとして成り立ってるのは、システムアシストのおかげなんですね」

「そゆこと。んで、こっからが重要なとこなんだけど……二つのシステムアシストには共通してる部分があるの。フウちゃん分かる?」

「んー………」

 

 首を傾げて、唸る。

 が、思い当たることがあるのか、おずおずと答える。

 

「……発現の条件、ですか?」

「正解っ!流石はフウちゃん!やっぱり頭の回転が速いねぇ。リアルでも成績いいでしょ?」

「どう、でしょうか。誰かと比べたりしたことないので……」

「あらそう。——で、さっきの答えの補足として、"引金に指を掛ける"ことがシステムアシストの発現条件なわけ」

「ですが、それと教えてくれる技術にどんな関係が?」

「関係があるというか、これから教えてあげる技術のメリットとデメリットを理解しやすくなるのよ。まっ、実際に体験してもらった方が早いか。百聞は一見に如かずってね」

 

 ストレージからAK-47を取り出したピトフーイから「私から50mくらい離れた所に立っててー」と、言われたフウは適当にピトフーイから距離をとる。

 

「当てたりしないし、安心していいからー」

「はーいっ」

 

 返事をして、ピトフーイが銃口をフウへと向けた、その瞬間。

 

 

 ——風を、切り裂く音が聞こえた。

 

 

「え……?」

 

 それが、自身の耳を掠めた銃弾だということを理解するのに数秒を要した。

 理解すると同時にフウを混乱させる事実に気づいた。

 

 ——弾道予測線(バレット・ライン)が見えなかった?

 

 お互いの位置が割れている時は、例え初弾であってもバレット・ラインは狙われた者には赤い光線となって表示されるはず。

 

 ピトフーイがAK-47を構えている位置はフウの約50m先。

 銃口にも気を配っていた。

 バレット・ラインを見逃すはずはない。

 

 だが、見えなかった。

 

 

 ——いや、()()()()()()()()

 

 

「どーおー?フウちゃん?」

「バ、バレット・ラインが見えなかったですっ!!」

「それならよかった」

 

 不敵な笑みを浮かべながら感想を求めるピトフーイに急いで駆け寄る。

 

「もしかして、今のが……」

「そう。これからフウちゃんに教えてあげる"ラインなし狙撃"だよ」

「ラインなし狙撃……」

 

 ピトフーイの台詞を繰り返して呟く。

 聡明なフウは今までの説明とラインなし狙撃とを関連させて、そのメリットとデメリットを、そしてラインを発生させない方法も既に把握していた。

 

「なるほどです。引金に射撃直前まで指を掛けないことで、相手にバレット・ラインを見させない。だから相手は狙撃の場所も把握できず、避けることも困難になる。確かに有利です」

 

 ですが、とフウは続ける。

 

「それは射撃する側も同じでバレット・サークルの支援なしで、現実で狙撃するのと同様の狙撃をしなければならないのですね。凄いですピトさんっ!こんな事を思い付くなんて!!」

「……………………。いや、正直一発撃っただけでここまで理解してるフウちゃんの方が凄いと思うわ……うん、ホントに」

 

 フウの要領の良さに、珍しくピトフーイも引いていた。

 私が説明する必要もなくなったし、と役目を盗られたことを気にしているようだ。

 

 先程まで目を輝かせていたフウも冷静なると、困ったように眉を下げる。

 

「でも、僕には出来ないですよ……。現実での射撃経験なんてないですし」

「いや、フウちゃんにならできるよ」

 

 即座にピトフーイが否定する。

 

「だって、無意識の内にラインなし狙撃も同然のことしてるからね?」

「え?」

 

 困惑するフウへと諭すように語りかける。

 

「昨日フウちゃんの射撃を見せてもらった時、私に言ったよね。"バレット・サークルはあんまり見てない"って」

「あ……」

「気付いた?それって相手には一瞬しかバレット・ラインが見えてないってこと。フウちゃんはラインなし狙撃の未完成版を無意識にやってたわけ。しかも、これは私の予想でしかないんだけど、バレット・サークルを邪魔だと思ったことない?」

「……………」

 

 思わず息をのむ。

 胸の奥がドクンと跳ねた。

 

 一瞬表示されていた着弾予測円(バレット・サークル)

 射撃練習の際、フウは時たまそれを煩わしいと思うことがあった。

 

 感覚では的の中心に命中するはずなのに、着弾予測円の内側にランダムに着弾するシステムによって、中心から少しズレることが多々あったのだ。

 

「フウちゃんにはね、狙撃の才能がある。狙撃だけじゃなくて、頭もいいから、弾丸の落ち方、風圧による弾丸のズレ、気温や湿度、高さや角度なんかも自然と計算して、感覚として撃ってる」

「だから、私に教えてくれたんですか?」

「そうよ。この子は絶対に強くなるって思ったの。後、一人称。素が出ちゃってるよー」

「あわわっ」

 

 慌てて口を塞ぐ動作をするが、特に意味はない。

 

「じゃあフウちゃん!ラインなし狙撃、やってみようか!」

「は、はいっ!!」

 

 二人しかいない訓練場に、元気な声が響いた。

 

 

 

 2.

 

 

 ——一発で充分だった。

 

 

 それだけで、フウの才能は証明された。

 

 

 M24による狙撃。

 

 フウ曰く、OSV-96より"使い慣れた"M24を使用した方が良いとのことで、ラインなし狙撃はM24で行うことになった。

 

 

 結果は、一発の銃声と着弾の音が明らかにした。

 

 腹這いに構えたボルトアクション方式のM24から放たれた7.62x51mm NATO弾は、高速回転しながら吸い込まれるように着弾した。

 

 しっかりと、ど真ん中に。

 

 

「…………………フフっ」

 

 

 的の横でバレット・ラインが発現していないのを確認していたピトフーイは、ニヤリと口元を歪ませる。

 

 

 ——予想外だ。

 

 

 才能があるのは分かっていた。

 目の良さ。勘の良さ。感じの良さ。

 

 全てが狙撃に適していると確信していた。

 

 だが、ピトフーイにとってもこの結果は想定外のことだった。

 

 的の近くにいるピトフーイにも、システムが狙われていると感知してラインが表示されるはずであった。しかし、ラインは見えなかった。

 

 ラインなし狙撃を修得していた。

 たった一発で。

 

 だから、ピトフーイは笑いを止められない。

 

 遠くから「どうでしたかー?」とフウの声が聞こえてくる。

 

 

「ピトさーん?」

 

 

 ピトフーイは初めて目の当たりにした。

 

 

 

 ——本物の、天才という化物を。

 

 

 

 3.

 

 

 閉じられた瞼を開ける。

 

 見慣れた天井。

 仮想世界から帰ってきたフウ——小花衣風音はゆっくりと起き上がる。

 

 フワフワとした、色素の薄い髪が揺れる。

 所々がヒラヒラのレースであしらわれた寝間着を身にまとった風音は、ベッドに腰掛ける。

 

 部屋の中は簡素なものであった。

 

 机と椅子。

 大きなベッド。

 シンプルなフロアライト。

 教科書や本の入った本棚。

 人感センサー付きのクローゼット。

 今は暗い画面のテレビ。

 備え付けのエアコン。

 綺麗に掛けられた制服。

 

 年頃の女の子の部屋としては、やや物寂しいものだろう。

 

 時計の針は19時過ぎを示していた。

 

「あ、夕飯……」

 

 そう呟くと頭からアミュスフィアを外し、フロアライトの淡い光に照らされた部屋から出た。

 

 部屋を出たフウの鼻に、食欲をそそる良い香りが届いた。

 

「こんばんは。風音さん。もうすぐ夕飯の支度が終わるのでちょっと待っててくださいね」

「こんばんはです。常陸(ひたち)さん」

 

 風音を迎えたのは、薄いピンクのエプロンを身につけた20代程の女性。

 小花衣家と契約しているハウスキーパーの常陸真緒(まお)であった。

 おっとりとした面持ちで、艶やかな黒髪をお団子にしてまとめているその姿はある意味で色気を漂わせている。

 

 今晩のメニューはビーフシチューのようだ。

 机の上には色鮮やかなサラダが盛られてある。

 

 匂いにつられて、風音のお腹が空腹を主張してくる。

 

「………」

 

 節操のないお腹をさすりながら、椅子に座る。

 

「はい。どうぞ」

 

 澄んだ声と同時に、風音の目の前にビーフシチューが盛られた皿が置かれる。

 そして、風音の向かいに座った真緒。

 

「それじゃあ——」

『いただきます』

 

 二人だけの静かな、だが心地よい夕飯の時間だった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ご馳走様でした」

「お粗末様です」

 

 たわいない会話をしながら夕飯を終えた。

 食器は食洗機の中に入れるだけなので、今日の真緒の仕事は完了した。

 

 自身の荷物をまとめ、帰り支度をしている。

 

 玄関まで見送るのは風音に義務はないが、いつも見送っている。

 

「今日も、ありがとうございました」

「いえいえ、お気になさらず」

 

 玄関前。

 これも、いつものやりとり。

 

「……あの」

「はい」

 

 恥ずかしそうに頬を染めて、もじもじしながら口を開く。

 この歳になって我儘を言っているのに気恥ずかしさを感じているようだ。

 

「今日は、泊まっていかないんですか……」

「また今度。お仕事じゃない時にお泊りさせていただくわ」

「そうですか……」

 

 シュンとする風音に困ったような笑みを浮かべた真緒は、一歩風音に近付き、豊満な胸の中に風音を包み込む。

 風音も真緒の背中に手を回す。

 

 

 そこには、まるで母親とそれに甘える子供のような姿があった。

 

 

 

 




もしかして、喋らせすぎ?
だから展開が遅いのか?
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