イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
オッタル
「(先程から会う新種のモンスター、この階から出現しているのか。人の気配が多数あるな・・・この気配はあの男か、また再戦する機会が来るとはな)」
ダンジョン10階
頼もしい2人の冒険者と共に11階層へ向かおうとすると屍兵特有の【魔力】をオレのスキルが感知した。
「・・・どうやら来るみたいですよ」
オレの言葉に武器を構える2人。そして霧の中から赤い目の光が多数見えてオレたちを見つけると襲いかかって来た。
『オ、オオオオオオオオ!!』
「これが屍兵か、確かに見たことのないモンスターだね」
「本当に死んだ人のようだな、アイズに見せないというのも頷ける」
そんな感想を言う2人。さて、さっさと始末しないとな。探知しながら【トロン】発動し的確に頭と心臓付近を撃ち抜き、頭は無くなり体の真ん中辺りには風穴ができた。そして体を維持できなくなった屍兵は黒い霧となって消滅した。
フィンさんは屍兵のいた場所に移動し落ちているものを拾う、拾ったものは魔石と武器だった。魔石が取れたと言うことは狙いが少しずれたか。
「魔石を持っているということはガレスの予想通り強化種になっているようだね」
「屍兵を倒すと武器が残るのか、だが他の屍兵も持っていたから出るはずだが・・・ないな。倒すとドロップアイテムを落とすといった解釈で良さそうだな」
「2人共落ち着いてますね・・・」
「今まで様々な経験をして来たからね」
「そういうことだ」
「それじゃあどんどん行きましょうか」
ダンジョン中層 フィン・ディムナ
「オ、オオ・・・」
「ウ、ガァ・・・」
「悪いがなんにもさせやしない」
現れた屍兵という新種のモンスターに対して瞬殺していく目の前にいる魔道士シエン。彼は味方でいる時はとても頼もしいが、もし敵対した場合、逆にとても恐ろしい存在になるだろう。敵対した時、シエンを倒す為にもシエンの持っている力を見極めなければならない。そのために今回ついて来た。
膨大な【魔力】と【精神力】、多才で強力過ぎる【魔法】。今まで見た感じだとシエンはモンスターを倒すよりも人を殺すことに特化しているといってもいい。リヴェリアが言うには【魔力】を探知して人を探すと言うのだから僕らの居場所は常にバレバレだ。匂いで僕の居場所を分かるティオネも怖いがシエンの方が恐ろし過ぎる・・・
敵対している場合は落ち着いて寝ることはできないだろう。昔、オラリオにいた闇派閥にシエンがいなくて本当に良かったよ・・・
それにしてもこれだけ強いのにシエンがオラリオに来るまでに彼についての噂が全く無いなんてとても考えられない。イーリス聖王国というところから来たといっているが僕らは知らない。神ヘルメスは知っているようだけどロキにまた話を聞いてもらうように頼んでおこう。
シエン、君は一体何者なんだい?
18階層 シエン
無事オレ達は屍兵が湧いて出て来ているであろう階層にたどり着いた。そこでの光景は以前来た時と全く違っていた。
「なんだ・・・これは・・・?所々森が無くなっている・・・」
「これはひどいね、あちこちがめちゃくちゃに荒されているよ」
天井にある大きな水晶から放たれる光は立ち昇る黒い煙によって遮られ視界は薄暗く。森があった場所は所々木々がなぎ倒されていたり、火によって焼き尽くされていた。
湖に浮かぶ島にあるリヴィラの街の上空には大きな飛行物体の影が見える。
「リヴィラの街が屍兵に制圧されていて黒い煙は森の方からのようですね」
「シエン、どうするんだい?」
フィンさんは俺に尋ねてきた。少し考えて俺は言う。
「・・・そうですね。森に行きましょうか、おそらく屍兵が現れている原因はあの黒い煙です。あれを止めることができればこれ以上は出てこないですから。そこから一体一体始末して行きましょう。それにリヴィラの街を取り返して森に向かったとしてもまた空から制圧されるだけで意味がないと思います」
「黒い煙が原因?」
「はい、あの立ち昇る煙で分かりました。おそらく屍兵を出現させる匂いの箱という道具を使ったんでしょうね」
「モンスターをおびき寄せるアイテムはあるけどモンスターを出現させる道具があるなんてね」
「危険ですけど箱を開いた人と同じくらいの強さの屍兵が出てくるので見方を変えると強くなるにはもってこいなんですけどね」
「・・・他のファミリアには言えないな。その箱を手に入れ強くなろうと躍起になるだろう」
「何故それを僕らに教えてくれたんだい?」
「ティオナが開けたら第一級冒険者クラスの屍兵が出現しますからね、それの出現を防いでもらうために言いました」
「知らなかったら確かにティオナが見つけたらとりあえず開きそうだね」
「確かに否定できないな」
ロキファミリア
「へっくち!」
「ティオナ、大丈夫?」
「うーん、風邪かなぁ?」
「ハッ!バカゾネスのテメェが風邪を引くわけねぇだろうが」
「なにをー!!ベートのバーカバーカ!」
ダンジョン18階層
オレ達は森に入り黒い煙が上がっているところを目指し歩いていく。
「ウガァ!」
「ハッ!」
フィンさんは持っている黄金の槍で襲いかかってきた屍兵を突き殺し。
「セイ!」
「グギャ!?」
リヴェリアさんは持っている杖で屍兵の顔を殴り潰し頭は千切れ飛んでいった・・・
信じられねぇ、なんてパワーだ・・・オレはありえないものを見たかのようにリヴェリアさんを見る。
「【魔法】を放つよりこちらの方が速いからな。だからそんな風に見ないでほしい」
「アッハイ」
前に手を握られた時も【力】はあるように思えたがここまであったのか・・・今明かされた衝撃の真実だった。首を千切飛ばしても動揺しないこの王女様怖ェ!
「それにしても黒い煙が上がっているところに近づいて行っているのに屍兵とあまり遭遇しないね」
「そうですね、探知しても屍兵の数が少なく感じます。あ、また一つ【魔力】の反応が消えた・・・19階層へ向かう方の反応が消えたから19階層から誰かが上がってきて黒い煙を目指しているのかもしれません」
「もしかしたら下層から戻ってきた人がいるのかもね」
「L v.4クラスを軽々と倒せるほどの人物はそうはいないが、【魔力】を持っているものだけとはいえ居場所が分かるその【スキル】は反則だろう」
「【魔力】を強く感じ取るように修行しただけなんですけどね。・・・そろそろ黒い煙にも近いですね、さっさと終わらせに行きましょう」
「少し待ってくれないかい?あそこの草陰に何かあるみたいだ」
先に行こうとするとフィンさんが何かに気がつき静止するように言ってきた。
「フィン、何かあったのか?」
「・・・死体だよ。服や道具も落ちているね」
フィンさんが見つけたのはどの種族か判断できないほど食い千切られた死体と服と道具があった。道具の方をよく見るとギムレー教団の人が身につけているものがある。なるほど、コイツが匂いの箱を持って来たということか。オレは死体となった人の荷物の中身を見ると見た感じ何の変哲のないが何か強い力を感じる石を見つけた。これは・・・
「シエン、どうやら下層から上がって来た人物の登場だよ」
石に気を取られていたらどうやらこの階層に来た人が近くに来ているとフィンさんは言った。この威圧感はあの男か、鈍色の石を手に掴みこの気配を放つ男が来るのを待つ。
「フィンにリヴェリアにお前か」
2M以上もある大きな体を持つ猪人のオッタルが現れた。前にあった時には持っていなかった大剣を持っている。
「オッタルならあの新種のモンスターも倒せてもおかしくないね」
「馬鹿にするなフィン、あの程度造作もないことだ」
「リヴェリアさん、フィンさんとオッタルは知り合いなんですか?」
「ああ、昔からそれなりに会う機会があってな。私やガレスも同じくだ。シエン、その手に掴んでいる石は何だ?」
「あの死体の持ち物だったんですが拾っちゃいました。これは竜石ですね」
「竜石、シエンの話していた物語に登場したマムクートという種族がそれを持ち戦うと言っていたな。まさか物語にある物が実際に存在するとは」
「流石にこれを置きっぱなしには出来なくて。もしかしたらダンジョンのモンスターが食べた場合また違った強化種が出来てしまうかもしれませんから」
「それはまずいな」
「なのでひとまず地上まで持って行こうかと思いまして拾ったんです」
「そんなこと言わなくても別に私が取ろうとしないから安心してくれ」
リヴェリアさんは苦笑しながらそう言った。オレがこれを欲しがっているのはリヴェリアさんにはバレバレだった。
「二人共、もういいかな?早くこの黒い煙を止めに行こうか」
「あ、すいません。今行きます・・・ってこの人も行くんですか?」
「ああ、そうみたいなんだ」
「そういや、前あった時にオレの名前は言ってなかったな。オレはシエン」
「・・・オッタルだ」
互いに自己紹介をしてその後黒い煙を吐き出している箱まで辿り着いた。
「ありましたね、取り敢えず匂いの箱を閉じましょうか」
オレはマントを伸ばして今も煙を出している箱を閉じた。手で触れるのもなんか危険そうだからマントでやった。これでもう屍兵は湧かないな。にしてもこれの処理どうしようか・・・地上には持って行くわけにはいかないし壊して大丈夫だろうか?
ゲームだったら使ったら無くなるけど実際にあったらどうやって処理するんでしょうね