イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
「なあ、アスフィ。」
「何ですか?」
「いっつもサンダルだけど寒くないのか?」
「寒くありませんよ。私は神の恩恵を授かっており、その影響で身体が強化されていますので寒さとか暑さには強くなっているんです。」
「へー、結構便利なんだな。その【おんけー】てのは。」
「シエン、せっかくだしオレの眷属にならないか!」
「自称神は黙ってろ。」
「ヒドイ!」
「そんでその金の翼が付いたサンダルだけど普通じゃねぇな。何かあるのか?」
「詳細は言いませんがこれは私が作った物でして、とても大切な物なんです。」
シエンは知らなかったがアスフィはとある海の王国のお姫様で籠の中の鳥のような生活をしており。そんなアスフィをヘルメスが連れ去ってオラリオに連れてきた。
宮殿にいる時に外に飛んでいた鳥を見て自分も何にも縛られずに自由に空を飛べたらと思っていた。
その時のことを思い出し、【神秘】で作ったのがそのサンダルだった。
スキル【呪い】の具現化を実体化に変更しました。
こいつ、意味知らずに使ってたらしいっすよ?
シエンの戦いが終わった後、試合は順調に進んでいった。シエンはロキ達のいる観客席に移動してそこで観戦をしていた。
闘技場では覆面をしたエルフが冒険者を圧倒していた。
「あのエルフ、アストレアファミリア所属だっけ?なかなか強いな。」
「そうだね。今、勢いのあるファミリアの一つで君たちと同様に物凄い勢いで強くなっているエルフだ。二つ名は【疾風】、疾風のリオン。」
「ふーん。ま、一応【魔力】を覚えておくかな。」
「【疾風】の勝利!では次の試合はこの2人です!」
ヘルメスファミリア
アスフィ・アル・アンドロメダ 対 イシュタルファミリア タンムズ・ベリリ
「・・・私ですか。」
「イシュタル様に勝利を」
「今回のルールは、決まりました!【魔道具使用不可】と【アンティルール】です!魔道具使用不可は説明しましたので省略させてもらいますが、アンティルールは勝者が相手の持ち物を一つ奪うことが出来ます!」
『!?』
「早めに降参しといて良かった・・・」
今回のルールに会場にいる人たちは驚き、シエンは【魔道具】を奪われる事にならずにすんでホッとしていた。
「(何ということです・・・【魔道具】が使えないとなれば、最初に戦っていたあの子供と同様に私には勝機がありません。降参するべきなのでしょうが、敗北者は持ち物を奪われる。嫌でも戦わなければならない!)」
【万能者】の二つ名を持つアスフィは【魔道具】と短剣を使って戦う冒険者である。【魔法】もあるが詠唱に時間がかかるので実質使用不可。シエンと同様に不利な条件で戦うことになった。
「降参・・・します・・・」
「勝者、タンムズ・べリリ!」
しばらく戦った後勝ち目がないと察したアスフィは悔しげに降参した。
「さあ、アンティルールにより【万能者】の持ち物を手に入れられます!」
黒髪褐色の少年タンムズはアスフィを見て身につけていた【魔道具】に興味を持ち、アスフィの履いている金の翼が装飾されているサンダルも【魔道具】なのではないかと思いそれを欲した。見た目も悪くないし主神に献上する為でもあった。
「では、【万能者】が履いているそのサンダルを貰う。」
「!?」
「早くしろ。」
「クッ・・・」
アスフィはその場でサンダルを脱ぎ、裸足になって手を震わせながらタンムズに手渡した。
「次の試合を始めます!両者会場から降りてください!」
アスフィは肩を落とし拳を握りしめて控え室に向かった。
「やあ、アスフィ。運が悪かったね。」
「ヘルメス様・・・」
アスフィの主神ヘルメスは観客席から控え室の行く通路に立っていた。アスフィはヘルメスに詰め寄り言った。
「ヘルメス様ッ!なぜ私をこの大会に参加させたんですか!!そのせいであのサンダルが・・・」
「お、落ち着けって。いや、神のカンってやつでね?参加させた方がいいな〜って。」
「そんな適当な・・・」
「それにそう悲観する必要はなさそうだぜ?」
「え?」
「あの小さな竜が取り返してくれるかもしれない。」
ヘルメスは観客席でアスフィの試合を見ていたシエンを見ていた。一度も会ったこともないのに妙に集中して見ており、アスフィがサンダルを脱ぎ、手渡す時は顔を歪ませていたのだ。
「そんな事が・・・でもなぜ?」
「さあ?俺にもわからないけど。もしかしたらね。」
ロキファミリアが座っている観客席
「・・・」
シエンは黙っていた。だが体からは凄まじい【魔力】を滾らせ怒りを抑え切れずにいた。
「ア、アキ。何でシエンはあんなに怒っているんすか?」
「知らないわよ・・・」
2人は小声で会話する。シエンが怒ってるのは少し前のことだ。
アスフィの試合が終わった後、タンムズは闘技場から降りずに観客席に跳び移り褐色の美の女神イシュタルに手に入れたサンダルを献上した。
「イシュタル様、こちらが【万能者】から手に入れた物にございます。」
「タンムズ、見事な勝利だったな。褒めてやるぞ、流石は私の自慢の眷属だ。」
「ハッ!」
そう言ってイシュタルはサンダルを履こうとしたがサイズが合わなかった。
「献上してくれたものだが、少しばかり私の足に合わないな。お前の気持ちは嬉しいが他の奴に渡すことにしよう。」
そう言ってイシュタルは足を軽く振って履いていたサンダルを放っぽり出した。そして床に落ちたサンダルは落ち方が悪く金の翼の付いた部分から落ちて翼が折れた。
「おや?壊れてしまったな。後で捨てておけ。」
「ハッ!」
そう言ってタンムズはサンダルをそこらにいた同じ眷属の仲間に手渡して自分も控え室に向かって移動を始めた。
「ふざけやがって・・・!!」
シエンは今の一部始終を見ていた。見ていたことで美の女神の【魅力】に若干やられていたがアスフィのサンダルを雑に扱ったことで【魅力】から醒めて激怒していた。シエンの【魔力】が一気に吹き荒れた。
「シ、シエン!?いきなりどうしたっすか!?さっきまでなんかトローンとしていたのに!?」
「お、落ち着いて!!」
「止めるな、あの女神をぶちのめさないと気が済まねぇ!!」
『!?』
いきなり物騒なことを言うシエン。ロキファミリアの眷属達に衝撃が走る。
「あ、アカン!?それだけはあかんて!」
「ンー、流石にそれは許可はできないかな。」
「落ち着くんじゃ、まだ大会は終わっとらんぞ。まだ何があるかわからんじゃろうに。」
「落ち着け、【大木の心】を忘れるなと言ったはずだぞ。シエン。」
「クッ・・・」
フィン達の言葉で少しは落ち着きを取り戻すシエン。だかシエンの怒りは収まらない。
あのサンダルはアスフィの大切な物なのだ。それを雑に扱って壊れたからおそらく捨てるのだろう。シエンはそれが許せなかった。
シエンは降参した事を後悔した。もしかしたらあのタンムズとかいう奴と戦い、アンティルールになってサンダルを奪い返すことができたかもしれなかったからだ。
今のアスフィは自分の事を知らないだろうがシエンにとっては友人なのだ。大切にしているサンダルをなんとしてでも取り返したかった。
「・・・ちくしょう。」
シエンは俯き、服を強く握りしめ怒りを抑えようとするしかなかった。
そうしている間に時間過ぎ、アイズは一回戦を勝ち再び出番が来た。
ロキファミリア アイズ・ヴァレンシュタイン 対 イシュタルファミリア タンムズ・ベリリ
「そして特殊ルールは、神ロキが引いたカードは【タッグバトル】、神イシュタルが引いたカードは【ガチアンティルール】!」
『?』
「説明を致します!タッグバトルはお互いにもう1人冒険者を加えて戦うというものです。加わった冒険者が敗れても負けにはなりませんが今回対戦する2人が敗北、もしくは降参した場合は試合終了となります!」
「お助けの人は負けても問題なくて、アイズたんかタンムズって子が負けたらゲームセットって事やな。」
「ガチアンティルールは前のアンティルールとは違い相手の持ち物だけではなく、なんでも一つ手に入れる事が出来ます!!」
「ほう。」
「まじかいな・・・」
『オオオオオオオ!!??』
「ではまず選手は闘技場に上がってください!」
アイズとタンムズは闘技場に上がった。妙に盛り上がっている会場を不思議に思い、そして先程の説明を受けて驚いた。
「ではまず共に戦ってくれる仲間を決めてください!」
「ゲゲゲゲ!!それは勿論アタイだよなァ、タンムズゥ?」
そう言って観客席から飛び上がって闘技場に着地したおかっぱ頭の2Mくらいの大きさのモンスター・・・いやアマゾネスのLv.3【男殺し】フリュネ・ジャミールが言った。
カエルの鳴き声のような声にシエンは聞き覚えがあったが今は気にしなかった。
それよりも気になったのは武器だった。
「ゲゲゲゲ!【人形姫】!その不細工な面ァぶっ潰してやるよォ!」
自慢の大戦斧を担ぎ、反対の手には雷の形をした斧を持って物騒な事を言うフリュネ。
「(あの雷の形の斧は・・・まさか!?アイツらのファミリアにも商人が接触したのか!?)」
「では【剣姫】はどうしますか?」
「えっと・・・」
そう言われて自分の仲間達がいる観客席を見るアイズ。
アイズはフリュネのレベルに興味がなくて知らないが一緒に戦う仲間をリヴェリアにしようかと考えていたが【魔力】を滾らせてやる気満々のシエンが目に映った。オレを選べとそう言っているように見えた。
「なら、シエンで」
シエンは観客席から闘技場に降り立ち、アイズの隣に移動した。
「おおっと!レベル差があるにも関わらず【ファヴニール】が参戦だ!なんだか一回戦の時と違い様子がおかしいですが、どうしたのでしょうか?」
「ちょっ!?アイズたん!?そんな簡単に!?」
「フフフ、こちらが有利になったな。」
「では何を手に入れるか決めます。神イシュタルからどうぞ!」
「そうだな、ならば・・・最近話題になっているその【ファヴニール】という小僧を貰おうか。」
そう言ってイシュタルは自分を睨めつけている子供に視線を向けた。
「チッ!ふざけおって!ならば「待ってくれロキ!」・・・ん?」
「オレが相手から手に入れられるのを決めてもいいか?」
「・・・ええで」
そしてロキは自分が決めるよりも賭けられている本人に任せた方がモチベーションが上がると思いシエンに任せた。
「アイズ、悪いけどオレが決めてもいいか?」
「うん、特に欲しいものとかはないから。」
「ありがとな。ではオレが相手から貰うものは【万能者】から手に入れたサンダルを貰う。」
『!?』
「うそ・・・」
「だから言ったろ、アスフィ?」
金や道具ではなく壊れたサンダルを要求するシエンに会場にいる人達は驚いた。
「フ、フハハハハ!!
シエンにとって苛立つ言葉を言うイシュタルにさらに腹を立てた。
「アイズ。」
「ん?」
「絶対に勝つぞ。」
「うん。」
「ゲゲゲゲ!!ぶっ潰してやるよォ!!」
「イシュタル様に勝利を!!」
「では、試合開始です!!」
前書きの鳥のカゴ云々カンヌンはオリジナル設定です。お姫様は本当です。
【魅力】に抗ってくれないと物語が・・・