イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
「あ、お帰りヘルメス様、アスフィ!」
「やあ、ただいまルルネ。留守番ご苦労!」
「ルルネ、ただいま戻りました。オラリオで何か変わったこととかありましたか?」
「オラリオで変わってないことなんてあるわけないじゃんか」
「・・・それもそうですね。で、何かあったんですね?」
旅先でヘルメスに散々苦労をかけさせられて、やっと帰って来たら早々に面倒ごとがある事に思わず溜息を漏らすアスフィ。
「あ、いや、まあね。アハハ・・・あ、そうだ!ヘスティアファミリアってとこの真っ黒の奴から伝言があったんだ!」
ルルネは話を変える為にシエンに頼まれていた伝言の事を思い出して話した。
「ヘスティアファミリア?聞いたことがありませんが・・・」
「へぇ、ヘスティアはようやくファミリアを作る事ができたのか、どんな子供がいるのか興味があるな」
「最近できたみたいだぜ?そんでその団員から伝言なんだけど、『イーリスの魔道士がオラリオに来た』だったはずだ」
「ッ!!・・・そうですか。でしたら一度会っておかないといけませんね」
「あれから3年・・・やっと来たか。イーリスの英雄よ」
「え、英雄!?どういう事、ヘルメス様!?」
「完治まで2週間だな」
「そうですか・・・」
怪物祭の次の日、オレは左腕の怪我を【青の薬舗】にいる神ミアハに診てもらったら治るまで2週間ほどかかることがわかった。安静にしていてそれくらいの時間がかかるので何が起こるかわからないダンジョンに潜ることはやめておいたほうがいいと止められた。
「もっと早く治る方法はないですか?ウチは貧乏ですから金を稼がないと」
「うーむ、ウチには置いていない万能薬のエリクサーを飲めばすぐ治るのだが・・・一番良いので50万ヴァリスするぞ?それを買う為に稼いでいる間に治ってしまっているはずだ」
「そうですか・・・ではホームで大人しくしていようと思います。診察してもらってありがとうございました。これは怪我を見てもらった診察料です」
「いや、ただ診ただけだから別に代金は「・・・有り難く頂いておく・・・」別にいいではないか、ナーザよ・・・」
神ミアハの喋っているところに割り込んで来たのは犬人のナーザ・エリスイスさんだ。
おっとりとした喋り方の人で何かとオレとベルに商品を買わせようとしてくる。
まあ、実際にオレはここのマジックポーションにはお世話になっているが。
「診察をしたんだから・・・その分を貰うのは当然」
「ミアハ様、オレもちゃんと払わないと気が済まないので払わせてください」
「う、うむ・・・すまぬな」
「はい、ありがとうございました。それじゃ」
そうしてオレは青の薬舗を後にした。2週間かぁ、金もないのにどうしよう・・・
「ただいまー!神様、シエン!」
「お帰り、ベル君」
「お疲れ、ベル」
本日のダンジョン探索を終えてベルはホームに戻ってきた。ベルはダンジョンの6階層のモンスター相手では歯ごたえがなく7階層をソロで探索しているようだ。
・・・え?何この子怖い・・・
「ソロでの探索は危険だから慎重に行けって言ってんのにお前という奴は・・・」
「う、うん。エイナさんにも言われたよ。それで防具が頼りないから一緒に買いに行く事になったんだけど・・・」
「なん・・・だと・・・?そうか、楽しんで来いよ、エイナとのデート」
「ぬわぁにィィイ!?デートだとぉ!ボクもベル君とした事がないのにあのアドバイザー君なんて強かなんだ!!」
「いや、違いますって!シエン、ややこしくしないでよ!」
ヘスティアも会話に混じってきてカオスな事になった。取り敢えず明日はベルのダンジョン探索はお休みになるという事が分かった。
2週間もあればマジでオレのステイタスが魔力以外ベルに抜かされるかも・・・
そんなこんなでベルの買い物デートも終わり新しい防具を身につけたベルはひたすらダンジョンに潜りメキメキと力をつけていった。
オレがダンジョンに潜れなくて魔石やドロップアイテムを持つのが困難なので他の派閥の冒険者にサポーターを頼んだりとなんとかやっているみたいだ。
そのサポーターの名はリリルカ・アーデといい、髪はブラウンの背がかなり低く幼い犬人の子供だが会って話してみると結構しっかりした子だ。それで所属のファミリアはソーマ・ファミリア、生憎と知らないファミリアだったのでギルドで調べると・・・あまりいい噂は聞かないファミリアのようだ。
だが、ベルの決めた事なので文句を言うつもりはない。その人物が本当に悪い子なのかどうかは一緒に冒険していないオレにはわからないからだ。
ただ一つ気がついた事といえば【魔法】を持っている事、しかも常時発動しているみたいだ。そのお陰で【魔力】はもう覚えていて居場所はすぐに突き止める事ができる。何かやろうものならば逃しはしない。
ベルがダンジョン攻略を続けているところ、オレはというと魔道書の研究と修行しかやる事がなかった。
片腕が使えないのでペンが片腕でしか使えず、書くスピードが遅くなっている為研究は遅れている。インクも紙も少なくなってきているから替えの物を買ってこよう。
お金は持っていなかったがソードスタッグを倒した時のドロップアイテムを売ったことで多少できたので良質の魔道具の素材を買いたいな。
北西のメインストリートを歩いてリーテイルに向かっていると懐かしい【魔力】を持った人物が近くにいる事が分かった。その人物はオレに気が付いていないので近付き話しかけた。
「よお、久しぶりだな。アスフィ」
「シエン、ですか。お久しぶりです。本当に来ていたんですね」
久しぶりに会ったのはヘルメスファミリア団長のアスフィ・アル・アンドロメダ。髪は水色で銀縁眼鏡を掛けたキリッとした表情の女性だ。そしてヘルメスのお守りをしている苦労人でもある。
「ああ、まあな。こっちに来てまだ数週間しか経ってないからここのことはよく分からないが退屈しない賑やかな街だな」
「まあ、問題ごともたくさん起きますけどね。シエン、怪我をしているのですか?」
「怪物祭の時にモンスターが脱走したみたいでな。その時にソードスタッグってのと戦う羽目になってやられちまったよ。前のオレなら近づける前に仕留められただろうに」
「前のオレという事は今は違うという事ですか、確かに前に会った時に比べてなんだか【魔力】の圧が違うというか・・・」
「流石にわかるか、こっちに来る時に門を潜ったろ?あの時にアクシデントが起きて多分弱体化したんだと思う」
「そうですか、それは困りましたね。少し困った事が起きたので力を貸してもらおうと思ったのですが」
どうやらアスフィは困っている事あるようだ。以前のオレの力を借りたいってことはかなり強いモンスターの討伐とかそんなんだろうな。というか、サラッと困り事に巻き込もうとしないでくれ。
「代わりに魔道具を作ってはもらえませんか?」
オレを連れて行けないと分かるとアスフィは魔道具を求めてきた。が、オレには戦闘で使う便利な魔道具は材料がないから作れないし、まだこっちではライブの杖しか使った事がないのだ。その事をアスフィに伝えたら少し考えた後に
「ならば、必要になりそうな材料は私が提供します。余った材料はシエンの好きにしてもらって構いません。勿論別に報酬も渡します」
どうやら必要なものは用意してくれるみたいだ。だが怪我をしている今の状態でちゃんとしたものができるかどうか・・・
「どうやら怪我もしているようですし前報酬としてこれが良さそうですね」
アスフィはオレの包帯ぐるぐる巻きになった左腕を見て自分の腰につけているホルスターから何かの液体の入った試験管を取り出した。
「これはエリクサーです。これならばすぐに治るでしょう」
「ちなみに期限は?」
「明日の夜までです。その日の夜に使い勝手を確認して次の日にダンジョンに行くつもりです」
・・・報酬はどんなものになるかは分からないが、かなり無茶な依頼だった。
オレの力が必要なくらいの危険な事に挑むのだったら死人も出るだろう。
アスフィの真剣な表情からどんな手で打っておきたいのだろうな、どこまで力になれるか分からないがやるだけやってみよう。
事情を知っていて力を貸さないで知り合いが死にましたなんて絶対に嫌だ。
「分かった、どれだけ力になれるか分からないけど。作れるだけ作ってみる、任せてくれ」
「すみません、かなり無茶ですがお願いしますね。頼みましたよ、魔導軍将殿」
「恥ずかしいからそれを言うのはやめてくれ」
アスフィの言った【魔導軍将】とはオレ達がギムレーを倒した後、クロムからイーリスで最も優れた魔道士ということで名乗るように言われた事が原因だ。
ルフレの方が潜在的なスペックも上だからルフレが名乗ればいいじゃないかとは思っている。
ちなみに他の将軍はみんな知り合いばかりでクロムの自警団からの出身がほとんどだ。
「では、私はホームに戻り材料を持ってそちらのホームに向かいます。エリクサーは先に渡しておきます」
「わかった、それと言わなくてもわかってるとは思うけど魔道具を作ったのはオレだと言うなよ?いつかはバレるだろうけどまだまだ秘密にしておきたい。悪目立ちはゴメンだ」
「ええ、分かっています。それではまた後で会いましょう」
アスフィにオレが魔道具を作っている事を言わないように約束してもらいひとまず別れた。
せっかく手に入れたお金は魔道具を作るために精神力を使うので全部マジックポーションに変わるのだった。
魔導軍将
イーリス聖王国の魔法の扱いが優れている将軍の事。
原作ではウダイオスをアイズが倒した2日後の夜にフェルズが24階層の事件の事に手を打ち始めるので、その次の日にヘルメスファミリアのルルネに接触して前書きに繋がっています。