イーリス聖王国の魔道士がオラリオに来るのは違っているだろうか? 作:カルビン8
「いらっしゃいませー!!あっ、タケじゃないか!」
ヘスティアがバイトをしていると客として、タケ、神タケミカヅチが現れた。
彼はまた別のところではあるが同じジャガ丸くんを販売するお店にてバイトをしている。
「おう、ヘスティア。ジャガ丸くんの売り上げもいいし、ファミリアの経営も順調のようだな」
「えへへ、まあね。今日からベル君達は中層に行くんだぜ!」
「もう行くのか、実は俺の眷族たちも今日中層に挑戦するんだ。アイツらならきっと全員で帰ってくるはずさ。それと一つ気になっていることがあるんだが、ヘルメスのヤツがお前んとこのベル・クラネルに興味を示しているようだから気をつけた方がいいぞ」
何気ない会話ではあったがこの後にこの二つのファミリアの眷族達が出会い、アクシデントが起きる事を二神はまだ知らなかった。
中層13階層 通路
現在オレ達は中層に来ている。13階層はルームとルームを繋ぐ通路が先が見えないほどに長く、上層に比べると暗いが通路の幅は少しばかり広い。
また、壁の隅には井戸のようにぽっかりと空いた縦穴、下の階層に繋がる落とし穴があった。上層にはなかった物だ。一筋縄ではいかない、そんな感じを思わせてくれる。
「それにしても派手だな、コレ」
ヴェルフはそう言って着流している光沢に溢れた赤い生地の【サラマンダー・ウール】に触れる。
これは精霊が己の魔力を編み込んで作成した一品、精霊の加護が宿った特別の装備品でべらぼうに高かった。4人分でゼロが五つ並んだほどだった。因みにウチのファミリアの総資金は40万ヴァリスだ。
ベルとヴェルフは防具の下にインナーと着流を身につけオレとリリは服の上から全身を覆い隠すほどのロープを着ている。オレも似たような事をしているから、精霊レベルにはいかないかもしれないが作ることができるかもしれない。
それにしても派手な色だ、真っ黒野郎から真っ赤野郎に大変身だ。
これを着ているのはヘルハウンドの吐く炎対策だ。なんでもレベル2にランクアップを果たした冒険者の死ぬ原因がこのモンスターなんだそうだ。
新しく行けるようになった場所で死ぬ要素が満載とはダンジョン探索は本当に地獄だな。なんでこんな自殺行為をするのか、自分が言うのはおかしいが訳わからん職業だ。
そんな事を考えていると一本道の奥から何かが駆けてくる音が聞こえてきた。
オレ達は臨戦態勢を作る。
現れたのは真っ赤な目をした黒色の四足獣のヘルハウンド、3匹だ。それにしてもどうしてダンジョンのモンスター達は目が赤く光っているのだろうか・・?
「よし、行くぞ。ベル!」
「うん!シエン、頼んだよ!」
ベルとヴェルフは三匹のヘルハウンドに突撃していく。2対3では不利ではあるがそこはオレの出番だ。二匹のヘルハウンドを取り囲むようドーム状の障壁を出現させる。
「【ミラーバリア】!」
突然に現れた謎の障壁に激突して動きを阻害されて動けない犬二匹。前にもやったこの戦法はどうやら中層のモンスターにも通用するようだ。
「バッ、・・・バゥ!」
自由に行動できる一匹のヘルハウンドは2人によってあっさりと倒されてしまって残るは檻に閉じ込められた怯えた犬二匹だ。
少しずつ距離を縮めてくる冒険者達を退ける為に下半身を高く、上半身を低くし炎を溜めて放った。
しかしその放った炎はドーム状になっている障壁によって阻まれ、それどころか跳ね返ってきた。もちろん逃げ場所などない。
「「グルッ!?オオオオオオオオオオオッ!??」」
自業自得、自身の放った炎にてヘルハウンド二匹は焼き払われるのだった。
「(頼もしい、頼もしいんだけど・・・)」
「(なんてえげつない事をしやがる・・・)」
「(魔法の殺意が高すぎませんか、初見殺しが過ぎますよシエン様!)」
ベル、ヴェルフ、リリはこの無慈悲すぎる光景を見てこの男を敵に回してはいけないとそう思った。
地上
「アスフィ、彼らの近状はどうだい?」
橙黄色の髪色の男神ヘルメスは側近の水色の髪のアスフィに尋ねた。
「どうやら彼らは今日人数分の【サラマンダー・ウール】を購入したとバベルの者が言っていました」
「へぇ、ランクアップしてから僅か10日で中層に挑むか、早いね」
「また、高威力の魔法も有しておりインファントドラゴンを一撃で仕留めたと言う情報がありました」
「そんな強力な魔法も持っていると」
「また、ミノタウロスを倒したのもロキファミリアが弱らせたのを掠め取ったからだと【インチキ・ルーキー】とも言われています」
「ハハハッ、面白い事を言うじゃないか!!けどオレ達の恩恵はそんなに甘いもんじゃないんだけどなぁ。ま、気持ちは分からなくはないけどね。それでシエンは?」
「変わった魔道具で多数の魔法を使い続ける金持ちの冒険者という風に言われているようです。また、豊饒の女主人で同じレベル2相手に少し力を見せたようでただの冒険者ではないという様にも見られている様です」
「ふふふ、やはり目立ってきているなシエンは。彼はあまりにもこの世界の者達とは違い過ぎる、目立つのは当然さ。ロキもフレイヤ様もシエンに興味を示している様だし、モテる男は辛いね。彼、取られちゃうかもよアスフィ?」
「何のことでしょうか?」
「いや、10日間ほどシエンには会っていないし寂しいんじゃないかなって、イテテテテ!?」
「はあ、馬鹿なこと言ってないでさっさと行きますよ。私はヘルメス様と違って忙しいんですから」
アスフィはヘルメスが冗談を言うとヘルメスの耳を引っ張りながら歩いていく。それを見た街の人達はいつもの光景とばかり苦笑をしていた。
再びダンジョン
ヘルハウンドを倒して長い通路を抜けルームに辿り着いた。そのルームはドーム状で天井が高く中央には尖った巨岩がある。なんだか今すぐ落ちて来そうな風に錯覚してしまう。
ルームにある岩陰に赤い光が六つあるのが見える。モンスターが三匹、いや三羽が待ち伏せしていた。ウサギの外見をしたモンスター【アルミラージ】、額には鋭い一角が生えていて後ろ足で立っているため大きさはリリくらいの大きさだ。
「あれは・・・ベル様!?」
確かにオレもベルに似ている様に見えるな。
「いや、違うよ!?」
「ベルが相手か・・・冗談きついぜ」
「だから違うって!!」
『キュイイイ!!』
そんな事を言っていたらモンスターはそこらにある大岩を砕いてその中から天然武器を手に入れた。そんな簡単に武器が手に入るのか!?
「グルル!!」
「ガウガウ!!」
「ヘルハウンドが二匹現れました!!まだ増えてます!!」
「チィ、もう増援か!」
「流石は中層、上層とは全く違うな!」
次々に現れるモンスター達を撃破していると見知らぬ冒険者達六人組がオレたちが入ってきた入り口とは別のところからルームに入って来てオレ達の方へ向かってくる。なんだ?なぜだか猛烈に嫌な予感がする!
オレ達のすぐそばを通り過ぎる様にして俺たちの後ろへ駆けて行きルームから脱出した。
「いけません!モンスターを押し付けられました!」
ダンジョン経験の長いリリだからこそ分かった。自分が遭遇したモンスターを他のパーティになすりつけるこの行為を【
そしてすぐさまこのルームに大量のアルミラージにヘルハウンド、ハード・アーマードが侵入して来た。
いくら何でも多すぎる、やろうと思えば倒せるがベル達が巻き添いをくらってしまう。
場所を変える必要があるな、オレ達も押し付けた奴らと同じように撤退しなくては!
「ベル!一旦引くぞ!オレ達も通路に逃げるんだ!!」
「そうですね。ベル様、ヴェルフ様、急ぎましょう!!」
しかし、悪い事が起きると立て続けに悪い事が起きるのはよくある事でビキリ、ビキリとダンジョンのどこかが割れる音が聞こえてきた。
「・・・上!?」
先に気づいたのはベルで全員で上を見ると大量の蝙蝠型のモンスター【バッドバッド】が出現した。大量に出現したのはまだいい。問題は天井が脆くなった事で崩れ落ちて来た。このままだと生き埋めになっちまう!?
「【ミラーバリア】!!」
オレはすぐさま自分達の頭上に複数の障壁を展開してルームの端から端まで伸ばした。自分達の頭上だけだと結局は身動きが取れなくなってしまう。そして間に合った障壁の上に落石が落ちた。
「・・・グッ!?」
さ、流石にこれは動きながら障壁を展開し続けるのは無理か、誰かにオレを抱えてもらわないと逃げられない。だがベル達は大量にいるモンスター達を相手にしていてそんな余裕はない。
「・・・しまっ!?」
「シエン、後ろだ!」
ベルが相手にしていたモンスターの中でハード・アーマードがベルを避け転がりながらシエンの背中に体当たりをかました。ヴェルフが声をかけたが間に合わなかった。
背中から突然の衝撃によりシエンは転倒してしまい更に魔法も解けてしまった。再び落石が始まった。
「逃げろ!!!」
シエンは転倒したまま【呪い】を使いハード・アーマードを掴み持ち上げひっくり返して、自分の上に覆い被せながらベル達に言った。
ベルはヴェルフとリリを抱えて出来るだけ落石に巻き込まれない位置に全速力で移動した。
そして地に落石が落ち轟音が鳴る。ルームは無茶苦茶になり砂煙が舞っている。
ベル、ヴェルフ、リリは多少怪我をしているだけで済んだがシエンはどこにいるのか分からなかった。
「シエン・・・」
「早く探さねえと!モンスターが!」
「ヴェルフ様、もう遅かったみたいです・・・」
「グルル・・・ッ!」
「キュイイ!!」
ルームが崩れた轟音が聞こえた他の場所にいたモンスター達がこのルームにやって来てしまった。入り口と出口、どちらからも現れて逃げようにも埋もれているシエンを見捨てることはできない最悪の事態だった。
「ふざけろ・・・ッ!モンスターの出現が早すぎる!」
愚痴も言っている暇もなく再び戦いが始まろうとしていた。あまりにも悪い事態にリリは目を伏せていると近くに落とし穴があることに気がついた。リリはこれを使いこの事態を脱する事を思いついたが、それは生き埋めになっているシエンを見捨てる事になってしまう。
しかしこのままでは全滅だ。それだけはしてはいけない、それにシエンも逃げろと言っていた。彼ならば必ず何とかするはず・・・
リリは考えば考えるほど自分達に都合のいい言い訳を思いついてしまう自分が嫌になってくるがここは自分が悪者になることを決意してベルに言った。
「ベル様、もうこのルームから出ることは不可能です。ですのでこの落とし穴に落ちて生き延びましょう」
「リリ、何を言ってるの!?シエンを置いて逃げるわけには・・・」
「シエン様はリリ達に逃げろと仰いました。それはシエン様が自分の事は自分でするから大丈夫だという事です。ですが現状、リリ達は大丈夫ではありません」
「リリスケ、お前・・・」
「酷い奴と蔑まされても嫌われても構いません!ベル様、ご決断を!」
ベルは必死に懇願をしているリリを見た。彼女の目には涙が浮かんでいて歯を食いしばっている。彼女も本当はこんな事をしたくはないのだと理解した。
目の前にいるモンスターもいつ襲ってくるか分からないすぐ行動に移さなければならない。
「・・・分かったよ。行こう・・・」
「ベル様、ごめんなさい・・・」
「ううん、後でシエンにたくさん謝らないとね」
「はいッ」
そう言ってリリはバッグパックの中身を落とし穴付近に巻き散らした。シエンが這い出て来た時に自分達がどこに行ったかを知らせるためだ。その行動を見たモンスター達が一斉にベル達に襲い掛かった。
ベルはまた2人を抱えて落とし穴に落ちた事でその場の窮地を脱する事ができた。シエンを置いて・・・
ベルを落とし穴に落とすのにすごく苦労しました・・・
シエンとかいう奴のせいで落ちてる最中に足場作ってやり過ごした後に出てきたり落石を防いだりと全然落ちる気がしませんでしたから。
蝙蝠君は落石と障壁にサンドイッチされて全滅しました。